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生産,燃料補給の概念でゲーム性がガラリと変化した「サドンストライク:リソースウォー」のレビューを掲載
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印刷2008/02/06 20:03

レビュー

新要素を追加して,硬派ミリタリーRTSの旗手に新追加パックが登場

サドンストライク:リソースウォー
日本語版

「サドンストライクII」ベースの新パッケージ


ドイツ軍とアメリカ軍の総力戦。互いの損害は非常に大きい。SSRWでは迫撃砲やロケット砲がやたら強く,数も多い
画像集#001のサムネイル/生産,燃料補給の概念でゲーム性がガラリと変化した「サドンストライク:リソースウォー」のレビューを掲載
 第二次世界大戦を扱った,ちまちま系ミリタリーRTSの旗手として根強い人気を誇る,サドンストライクシリーズ(以下,SSシリーズ)。「III」までの基本パッケージと追加パックも含めて,前世紀から今日に至るまで数多くの作品がリリースされてきた。SSシリーズといえば,ユニット生産という(当時のRTSでは定番だった)概念がなく,“援軍”と呼ばれる増援部隊によってユニットの消費が補われる点が特徴だ。非常に多くのユニットを管理しながらも,生産に手を煩わすことなく戦略に専念できるというわけだ。

 さて,このファミリーに新しい仲間「サドンストライク:リソースウォー」(以下,SSRW)が加わった。系統としては「サドンストライクII」のシリーズに当たる。すでに日本語版がズーから発売中なので,こちらを紹介していこう。
 サドンストライクIIの詳細は,過去のレビューを参照願いたい。

 「サドンストライクII」のプレビュー記事

 「サドンストライクIIヒドゥンストローク」のレビュー記事

 「サドンストライクIIヒドゥンストロークII」のレビュー記事

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整然と並んだ大量の日本軍ユニット。これからさらに腐るほどのユニットが湧き出すわけだが……まぁ非現実的である
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SSシリーズではお馴染みのブリーフィング画面。作戦の概要と,達成目標がつらつらと表示されていく

 SSRWの紹介の前に,「Real Warfare Modification」通称「RWM」と呼ばれる,サドンストライクII用のMODについて説明しておきたい。RWMは,サウンドやエフェクトをリアルにし,戦車など各ユニットの強弱バランスを現実に合わせてさらに調整するなど,文字どおりサドンストライクIIのリアルさを向上させるMODだ。
 このMODは歴史が長く,頻繁にアップデートされてきたことなどから,SSシリーズのファンなら誰でも知っているほどのポピュラーな存在である。そしてこのRWMを制作したスタッフが,サドンストライクIIをベースとして開発に携わったのが,今回紹介するSSRWなのだ。これは過去に2作リリースされている「ヒドゥンストローク」とよく似た経緯でのパッケージ化であり,公式MODとして認められたと解釈してもいいほどだが,SSRWが単なるRWMのパッケージ版ではないことを先にお断りしておく。
 サドンストライクIIにさまざまな要素を付加することにより,これまでのSSシリーズとはかなり変わったプレイ感覚が味わえるSSRWは,サドンストライクII本体が別途必要ない,スタンドアロン型の追加パックとなっている。

 「リソースウォー」というタイトル名が示すとおり,SSシリーズに資源(リソース)確保の観念を加えた新作なわけだが,もちろんマシンガン兵が野イチゴを採集したり,狙撃兵が鉱石をせっせと掘り集めたりというわけではない。
 SSRWにおける資源とは,ズバリ「石油」である。戦車をはじめとするすべての車両は,移動時に燃料を消費する。無敵の主力戦車も,燃料がなくなってしまえば単なる固定砲台と化してしまうわけだ。考えてみれば至極当然のことではあるが,これまでSSシリーズにはそういった概念がなかったのである。
 もっともこれは,従来からあった「弾薬」の概念と似たような感覚ではある。SSシリーズにおける戦車の運用に弾薬の消費はつきものであり,弾薬を撃ち尽くす前に補充する必要があった。これと同様,SSRWでは燃料の消費が追加されたと考えればいいわけだが,燃料がなくなればまったく移動できなくなるため,少々やっかいではある。

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画面を覆い尽くさんばかりの大量のユニット。ここまでくると戦術も何もあったものではないが,これはこれで楽しい
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視界の確保は非常に重要。とくに高低差がある場合は,高所にいるほうが一方的に敵を殲滅できるのだ
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巡洋艦もいちおうゲームに登場するが,さほど大きな役目は持っていない。上陸艇などは活用する機会があるはずだ
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橋をめぐる攻防。ここでも視界の確保が非常に重要になってくる。双眼鏡を使えるユニットを有効活用しよう

シリーズの伝統を根本から覆す意欲作


装甲機関車はSSRWのキャンペーンでたびたび登場する。砲塔や機銃,石油タンクなどを搭載しているうえ,視界も十分
画像集#008のサムネイル/生産,燃料補給の概念でゲーム性がガラリと変化した「サドンストライク:リソースウォー」のレビューを掲載
 では実際のプレイを通して,SSRWの独自要素がどのようにゲームに影響しているかを探ってみよう。
 まずプレイを開始してすぐに気付く点は,戦車や装甲車の視界が極端に狭くなっている点だ。これまでのSSシリーズでは車体の周囲に,円状に広く視野が確保されていたわけだが,SSRWでは車体周辺の視野は極めて狭くなり,代わりに進行方向と砲台の向きに対する直線的な狭視野が導入されている。つまり側面や後方などの視界が極めて悪く,例えば背後から敵の戦車が近寄ってきても気付かないわけである。これまで歩兵より少し視野が狭いだけで,数さえ揃えればある程度は戦えた戦車部隊も,SSRWでは歩兵などの視界の広いユニットを伴って行動しない限り,あっという間に鉄屑にされてしまうわけだ。

 さらに非常に大きな変更点として,生産の概念が追加されている。「あれちょっと待てよ,SSシリーズって生産の概念がないことが特徴だったんじゃなかったっけ?」と言いたくなるほどの変更点だ。初期配置ユニット以外,ユニット補充はすべて援軍に頼っていた従来の伝統的な設定を変更したことにより,SSシリーズ独特のプレイ感覚が一変したといっても過言ではない。
 実際,ユニットを生産(ゲーム中では「修繕」とあるが実質的には生産である)できる工場や修理基地はマップ上に1〜2か所しかなく,重要施設の支配権をめぐる争いが,ゲーム上の大きなポイントとなる。

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戦車や自走砲の視界は,ほぼ進行方向にしかないと思っていい。ただし砲台から頭を出して視界を拡大することが可能
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工場地帯を制圧。すでに作業車で工場を再建した状態だ。生産されるユニットや生産速度などがやや分かりづらい

 生産施設を稼働させるには,施設区域内に敵ユニットが存在しないこと,自軍の数ユニット(少なくとも2ユニット)が施設区域内に存在すること(場合によっては兵士を建物内に送り込む必要がある)などの条件を満たす必要がある。いったん占拠した施設では,支配権を失わない限り,自動的に生産の上限に到達するまでユニットが生産され続ける。
 生産できるユニットはプレイヤーが選択できるわけではないが,より高度なユニットを生産したい場合は,ほかの重要施設……例えば電力施設の確保などが必要な場合もある。とはいえ,生産される車両ユニットは概ね弱めのものが多く,部隊の核となる強力なユニットは依然として増援に頼ることになる。強いユニットができるだけ破壊されないよう気をつけなければならないのは,変わらないのだ。

 生産できるのは車両だけではなく,歩兵ユニットまでもが「生産」できるようになっているのだ。これは病院を支配下に置くことで可能になる。車両と同じく,さまざまな兵科の歩兵ユニットが「治療を終えた」という名目でどんどん湧き出てくるのである。ちなみに病院で生産できる兵士ユニットの兵科は,ランダムのようだ。

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こちらは歩兵ユニットを「生産」できる病院だ。見て分かるとおり,歩兵が次から次へと湧き出してくる
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建物の再建には,作業車に作業させる。数台がかりで取りかかれば,それだけ早く再建可能だ

 変更点はこれだけではなく,なんと建物の再建までもが可能になったのだ。これはダメージを受けたり破壊されたりした建物に対し,整備作業車など(国によって名称が違う)の支援車を使用することで,クレーンが現れて元通りの状態に再建してくれるというもの。町や工場区域などの建物が破壊され尽くしていても,容易に再建して施設を稼働させたり,見張り役の兵士を入れておくカゴを作ったりできるということだ。もちろん再建を行うには資材が必要になる。

 ほかにも製油所や発電施設,研究施設など,それぞれの役割を持つ重要施設をどれだけ占拠できるかが戦況を大きく左右することになる。つまりこれまでのように,破壊的戦術だけに専念しているわけにはいかず,補給から生産にいたるまでのユニット管理が必要になってくるのだ。

 さて,SSRWにはシステム面以外で追加されている要素がほとんどない。強いていえば「タンクローリー」が追加された程度だ。
 キャンペーンはドイツ軍×2,アメリカ軍,イギリス軍,ロシア軍各1本の計5本が収録されている。1本のキャンペーンに含まれるミッション数そのものはさほど多くはないものの,内容にもよるがクリアまで4〜5時間はゆうにかかるミッションも多く,さらにミッションの構成がよく練られている。追加パックとはいえ,やりごたえは十分すぎるほどだ。
 索敵の難しさはSSシリーズの特徴の一つだが,今回は高低差の分かりやすいマップが多く,その点では遊びやすさを感じた。しかしミッションによっては敵の援軍ユニットが無限に湧いてくる地点が少なからず存在し,詰めの甘さを感じる面もあった点は報告しておきたい。
 ちなみに日本軍は,キャンペーンとは別のシングルミッションでのみ登場する。太平洋戦争を扱った連続ミッションが4本入っているが,そのうち日本軍側でプレイできるのが1本だけというのは残念かも。

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重要施設の発電所。工場を稼働させるために電力や石油の供給が必要な場合もある
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ゲームシステム以外に,追加されたものはないようだ。シングル/マルチを問わずゲームのリプレイを見られるのは嬉しい

かなり楽しめる内容だが

最大のネックはマルチプレイのしづらさか


島に上陸したアメリカ軍の頭上へ特攻兵が降下してきた! 敵ユニットに接触すると自爆するのだ。損害は必至である
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 ざっとSSRWの新要素を見てきたわけだが,全体として非常に大きく変化したという印象を受けた。新しいプレイ感覚が生まれたことは歓迎すべき点で,これまでさほど変化の見られなかったSSシリーズに革命をもたらしたといってもいいくらいだ。
 しかしその一方で,ゲームのテンポが悪くなったというのは少々気になる。その最大の要因はやはり,燃料の問題に間違いない。ただでさえユニット管理の難しいゲームでありながら,燃料の管理までしなければならないのだ。燃料の消費は弾薬の消費と似たような感覚だと冒頭で述べたが,まさしく面倒な補給作業が増えただけ,という感が否めないのである。補給でのモタつきがゲーム全体のテンポに悪影響を及ぼしている。

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飛行場は砲撃などによって穴だらけだ。飛行機が飛び立つためには,作業車を使って補修する必要がある
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弾薬保管施設や製油所ではユニットに直接補給できる。だが基本的に補給作業は補給車両による運用となるだろう

 戦車への燃料補給は,タンクローリーによって行う。製油所に行って直接給油も可能ではあるが,実戦での現実的な方法はタンクローリーに限られると考えていい。このため前線に向かう戦車隊まで何度もタンクローリーが往復する羽目になるうえ,万一手持ちのタンクローリーをすべて破壊されてしまうと,ほぼ負けが確定することになる。これは,弾薬を補給する支援車がすべて破壊されるよりも深刻な事態だ。もっとも,敵の補給線を破壊して勝利するという手段も生まれるわけで,新しいプレイスタイルを提供する一要因にもなっている。

 タイトル名からもプレイした感じからも,石油や電力といった資源や重要施設の争奪戦というイメージが強い追加パックだが,最も評価すべき点は建物の再建であると感じた。瓦礫の山と化したヨーロッパの美しい街並みを,数台の作業車を使って再建していくというのは,SSシリーズだとかRTSだとかといったものを超えた楽しさがある。シングルプレイでは,ついついもう敵国との戦いなんぞそっちのけで,壊れた町を復興させることに集中してしまう……なんてことも。変な話だが,箱庭RTSとしての新たな楽しみが追加されたのだ。もちろんマルチプレイでは,そんな余裕こいてるわけにはいかないのだが。

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SSRWでは対戦車火器を持った歩兵が非常に強力。補給さえしっかりしていれば敵の戦車部隊を壊滅しうるほどだ
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本作は大量のユニットを扱うゆえに密集しやすく,敵の編隊爆撃はかなりやっかいな存在となる

 ただしSSRWは,プレイの冗長さから考えてマルチプレイに向いているとは思えない。また生産施設が非常に限定的な存在であり,先に生産施設を占拠したほうが勝ち,という単純な流れになりやすい。
 そしてこれはSSシリーズ全体にいえることだが,ロビーやクイックマッチ機能などが用意されていないため,気軽にマルチプレイをする環境が整っていないのである。IRCチャンネルに参加したり,IPアドレスを入力したり,手動でポートを開けたりと,マルチプレイに限定していえば数世代前のゲームという印象は否めない。

 SSRWを,シングルプレイを楽しむためのMODとして考えれば,かなりやりこみ度の高い,面白いゲームに仕上がっている。いずれにしても,これまでのSSシリーズとはまったく異なったプレイが楽しめることは請け合いだ。SSシリーズのファンには当然楽しんでほしいと思うし,逆に生産の概念が加わったことで,これまで一般的なRTSはプレイするけど,サドンストライク系のRTSはどうも……といった向きにも受け入れやすい印象を受けた。
 それでもなお,大量のユニットの管理,操作の煩雑さ,索敵の難しさなど,依然「非常に硬派」なRTSであることには変わりはない。ぜひ心してかかってほしいゲームである。
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鉄壁の守りを見せる敵の防衛線に爆撃機で穴をあける。この突破口から一気になだれ込むのだ
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ゲームが終了すると成績が表示される。所要時間132分は短いほうで,1つのミッションで4時間程度はザラである
  • 関連タイトル:

    サドンストライク:リソースウォー 日本語版

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