連載
意外なところにゲーム人 第11回:オンライン麻雀のノウハウを食品の“健康度”を示すアプリに応用。シグナルトーク代表 栢 孝文氏
かつてナムコやコーエー(いずれも当時)でゲーム開発に携わり,現在はゲーミフィケーションデザイナーとして活躍している岸本好弘氏とともに,ゲーム作りのノウハウをゲーム以外の分野で活用している人を取材していく連載「意外なところにゲーム人」。
連載第11回に登場いただくのは,シグナルトーク 代表取締役 栢 孝文(かや たかふみ)氏だ。栢氏は10代のころからプログラミングに親しみ,大学院卒業後はセガとソニー・コンピュータエンタテインメント(いずれも当時)でゲームクリエイターとして活躍。2002年に独立してシグナルトークを設立し,オンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」のサービスをスタートした。
「Maru-Jan」は,2021年で17周年を迎える長寿オンラインゲームだが,シグナルトークではそのノウハウをヘルスケア事業にも活用しているという。なぜオンライン麻雀とヘルスケアが結びついたのか,今後の展望とともに語ってもらった。
岸本氏:
オンライン麻雀からヘルスケアと最初に聞いたときは,頭に「?」が浮かんでいましたが,これが不思議と繋がっていくのです。まさに目から鱗。ゲームのノウハウは素晴らしいなと思います。
プログラミングに明け暮れた少年が,憧れのセガに入社
栢氏が最初に出会ったゲームは,小学生のころ友達の家でプレイしたファミリーコンピュータの「スーパーマリオブラザーズ」だった。栢氏は「自分もファミコンがほしい」と親に頼み込んだそうだが,父親が買ってきたのはなんと富士通のPC・FM-7だった。栢氏はBASIC言語を習得し,単純なゲームなどをプログラミングして遊んでいたという。
中学生になると,親戚に譲ってもらったファミコンで「ドラゴンクエスト」シリーズなどをプレイするかたわら,エプソンのPC-9801互換機で,日本ファルコムのゲームを楽しんでいたとのこと。並行してプログラミングも続けており,当時の将来の夢はゲームのプログラマーだったそうだ。
栢氏:
中学生のころは,C言語を使ってダンジョンRPGを作りました。とはいっても初期のWizardryみたいなワイヤーフレームで表現したものでしたが。モンスターのイラストは友達に描いてもらいました。
栢氏がそこまでプログラミングに熱中したのは,父親が見せてくれたBASIC言語の基礎的なプログラムがきっかけだった。実行すると大きさの異なる円を無数に描写するというものだったが,栢氏はわずか3行の命令で多くの処理ができることに感動したという。
栢氏:
例えば人間が何十万人を1人ずつ接客しようとすると,大変ですよね。でもプログラムなら,1つ作ってしまえば何十万人に使ってもらえる可能性があります。その本質に気づいてのめり込みました。
岸本氏:
LOOP(繰り返し)処理ですね。私も大学でプログラムを学び始めたときにはビックリしました。打ち込んだアルファベットの文字列により,スクリーン上の描写が実行される。プログラムってすごいなと思ったものでした。
栢さんのすごさは,事象から本質に気づくこと。まだプログラムが一般的ではないころに,プログラムで実現できる未来を思い描いていたことだと思います。
プログラミングに夢中になっていた栢氏だが,大学受験に差し掛かるころにはゲーム開発の分業化が進み,ゲームプログラマーは与えられた仕様に沿って粛々とプログラミングをしていく職種となっていた。自分が目指していたのはむしろ,ゲームプランナーだと考えた栢氏は,よりPCについて学ぶべく,1993年に当時数少ない情報工学科のあった大阪市立大学工学部に入学する。
栢氏:
大学に入ってからは,ゲーム以外のエンターテイメントについて学ぼうと,小説を書いて賞に応募したり,バンドを組んでライブで演奏したりしていました。今後はゲームがどんどんリッチになっていくことが予想できる時代でしたから,将来ゲームを作るとなったときにそれらの経験が活かせるんじゃないかと。
ゲームは,「バーチャファイター」などセガのゲームを格好いいと思って遊んでいました。就職するなら格好いいゲームを作れるセガしかないと思っていましたね。
岸本氏:
ゲームは記号が動くだけだった時代から,ストーリー,グラフィックス,サウンドなどでプレイヤーにゲームの中で疑似体験(冒険)させる時代に進んでいきました。栢さんは先を読んで行動していたわけですね。
大学4年生になり就職活動が始まると,栢氏は憧れのセガに入社しようと試みるが,あっけなく玉砕。そこで入学した大学院で,教授のアドバイスを受けつつ学生ながら起業することになった。この経験はシグナルトークの設立時にも活きたという。
栢氏:
大学院で2年過ごしたのち,もう一度セガだけに応募したんです。当時は「beatmania」を筆頭にリズムゲームが流行っていたんですが,実は私が2年前にセガに提出した企画書がダンスゲームだったんです。
そこで面接官に「あのとき自分を採用していれば,セガが先にリズムゲームを出せたはずだ!」と言ったら,「面白いやつだ」と思われたらしくソニックチームに採用してもらえたんです。
栢氏がセガで最初に開発を手がけたのは,ドリームキャスト用の対戦アクションパズルゲーム「チューチューロケット!」だ。このゲームは,もともとセガの新入社員向け研修の課題として開発されたものだった。プランナー,デザイナー,プログラマーがそれぞれ2人ずつ,計6人でチームを組み,1か月でゲームを作っていたという。
栢氏:
先輩に「もし研修で面白いゲームができたら,発売されるんですか」と聞いたら,「お前はゲーム開発を舐めてるのか!」と激怒されました(笑)。
それでも開発中,私は毎日チームのメンバーに「良いものを作って発売しよう」と言い続けたんです。そうしたら半年後の1999年11月11日,本当に発売されることになったんです。
岸本氏:
そういえば,私のいたナムコでも「モトス」(1985,アーケード)という新人研修から生まれたゲームがありました。「チューチューロケット!」よりも14年前の話ですが。
栢氏によると,「チューチューロケット!」が発売されたのは,当時ソニックチームにいた中 裕司氏と,ドリームキャストの立ち上げに携わった内海州史氏に注目されたことが大きかったそうだ。結果「チューチューロケット!」は世界市場で100万本セールスを記録し,さらにゲームボーイアドバンスのローンチタイトルにも選出される。その後栢氏は約2年半セガに勤務し,ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時。以下,SCE)に転職する。
栢氏:
「チューチューロケット!」が出た当時,いろんなメディアのインタビューを受けたんですが,よくよく考えるとただのパズルゲームがこれだけ取り上げられるのは何故なんだろうと思ったんです。理由を聞いてみたら「最近は大作の続編ばかりで,アイデア勝負のゲームがないから話を聞いてみたかった」と言われたんです。
PlayStationの登場で開発費が高騰して,どのメーカーでも,確実に売れそうなもの以外の予算が下りないような状況になっていたんです。「それなら私がSCEを変えよう!」と思ったのが転職の理由ですね。もちろん,そのくらいの気持ちで臨んだということですが(笑)。
「認知症予防に麻雀をやっている」というプレイヤーたちの言葉が,ヘルスケア事業のきっかけに
SCEに1年間所属したのち栢氏は,新しい事業でも始めようかと知人に相談を持ちかけた。そこで設立されたのがシグナルトークである。
栢氏:
知人と事業のアイデアを考えていたとき,たまたま私は前夜に麻雀をしてたんです。そこで「改めて麻雀はすごいよね」という話になったんです。
「チューチューロケット!」だって3か月もやり続けていれば,さすがに飽きます。でも麻雀は何年やっても飽きないし,古くからいろんな人に愛されている。私たちが何日も頑張って体調を崩してまで作ったゲームが,麻雀に勝てない。そう思うと麻雀に対して尊敬の念を抱くと同時に腹が立ったんですよね。麻雀を事業にしようと思ったのはこれがきっかけでした。
岸本氏:
麻雀は,ゲームデザイン的に素晴らしいゲームだと思います。運と実力のバランスが素晴らしく,それに加えて4人で遊ぶことによる駆け引きや,場の流れなどがあります。なのでずっと遊んでいても飽きない。
栢氏が麻雀に興味を持ったのは,中学生のころ,父親が所有していた麻雀牌がきっかけだったという。大学時代にはかなりハマったそうで,結果的に麻雀はシグナルトークの事業の柱となった。
栢氏:
当時のオンライン麻雀と言えば「東風荘」が定番タイトルとして君臨していましたが,「Maru-Jan」では麻雀のすべてをリアルに再現することを目指しました。結果ヒットにつながり,2021年でサービス開始から17年目を迎えることができました。
「Maru-Jan」はとくにシニア層に広く受け入れられているが,ユーザーの中には「認知症予防のためにやっている」という人がかなりいるそうだ。
麻雀で認知症を予防できるという話は,経験則として老人福祉施設などで知られていた。栢氏はそれを科学的に証明できないかと考えたそうだ。
栢氏は,さっそく脳研究の第一人者である諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授の協力を仰ぎ,「Maru-Jan」のプレイ中に被験者の脳が活性化していることを確認できた。しかし,話はそこで終わらなかった。
栢氏:
篠原教授によると,脳が活性化されたからといって,それが認知症の予防になると証明できたわけではないそうなんです。「Maru-Jan」をプレイしている人とそうでない人を分け,長い期間をかけて何度も脳の状態を測定し,認知症になった人の数を比較して,初めて分かると。1回数十万円かかる測定を何十回も続けることは,とても無理でした。
認知症の研究が進まない理由の1つは,予算がかかりすぎるからだと知った栢氏は,研究のために,もっと簡単かつ安価に脳の状態を測定できないかと考えた。そこで開発したのが,2012年にスタートした脳の働き具合をチェック・管理できるWebサービス「脳測」(のうそく)である。
これをきっかけに医学分野の研究者とディスカッションする機会が増え,栢氏はヘルスケア事業により関心を抱くようになったという。「脳測」のデータ収集に,オンラインゲームでのユーザーデータ収集のノウハウが,変わらず活かせたことも後押しになった。
栢氏:
「脳測」はWeb上でゲームのようなテストをすると,脳の働きをスコア化するというものです。
最初は自分達の研究のために開発したんですが,ある日,医療機関で認知機能のチェックに使われるMMSE(Mini-Mental State Examinaton)の結果と「脳測」結果に相関があることが分かったんです。
もちろん,「脳測」の結果だけでは認知症かどうかの診断は下せませんが,スコアが低ければ,何かしらの理由で脳の働きが落ちているといったことは確認できるわけです。
岸本氏:
オンラインゲームにおけるユーザーデータの収集におけるノウハウがヘルスケアでのデータ収集に活用できる。意外なところでゲームのノウハウが役に立っているんです。
そして数年後,友人でもあったシグナルトークの設立メンバーがうつ病で退職したことを機に,栢氏はさらにヘルスケア事業に注力することとなる。
栢氏:
「うつ病はストレスが原因で起きる」みたいなことはよく言われますよね。彼はうつで会社を辞めたわけですから,極論,私がストレスだったことになります。正直ショックだったんですが,それから彼に治ってほしくて関連する本を100冊くらい読みました。
どの本にもストレスのことは書いてあったんですが,その一方で結構な数の本に「食生活が要因」となることも書いてあったんです。うつ病を引き起こす一因となるのは「セロトニン」が不足することだと言われていますが,これを食事で摂取していないから,そもそも体内でセロトニンが作られないのだと。
栢氏は,一昔前には当たり前に行われていたパワハラが問題視され,防止法ができるなど,労働環境は改善の傾向にあるのに,今なおうつ病患者が増えているのはなぜなのだろうか。会社を辞めてストレスの元がなくなったはずなのに,うつ病が治らない人がいるのはなぜなのだろうと,あらためて考えたという。
栢氏:
うつ病で苦しんでいる周りの人に食事に関するアドバイスをしてみたら,何年も治らなかったのに症状の改善が見られたんです。やっぱり食事は大事なんだなと思いました。
私自身も風邪を引きやすい,逆流性食道炎,歯痛,花粉症……と長らく体調不良で,かつ怒りっぽかったんです。合計で1800冊くらい健康に関する本や論文を読み込んで,そういった症状の多くは食事で改善できるという考えに至りました。
岸本氏:
以前,栢さんに「うつ病予防には,豆腐を食べるといい」と言われてからよく食べています(笑)。食事は1日3回食べるもので,人の体は食べたものからできている。食べもので病気予防が出来るなら,とても興味が湧きます。
添加物の少ない食品や健康が気になる人に選択の基準を作りたい
栢氏はこれらの研究結果を元に2014年から食事と健康の関係をテーマにしたプロジェクトに取り組んでいる。医学や栄養学の研究者と異なるのは,ネット上で次々にデータを収集するアプローチと,頭痛や腹痛,ダルい,イライラする,何となく落ち着かないといったザックリしたとした体調不良をも病気として捉えている点だ。
栢氏:
食品の添加物が身体に与える影響を踏まえて開発したのが,2021年2月にスタートした食品の健康度をAIが数値化するスマートフォンアプリ「FoodScore」(フードスコア)です。
「FoodScore」は,スマートフォンのカメラで食品のバーコードを読み込むと,その食品の原料や添加物から健康への影響を「健康度」という独自指標で示してくれるというアプリだ。食品のデータは,スーパーやコンビニ,量販店などに置かれている一般的なものを,シグナルトーク側で5万種類前後登録しているとのこと。
データがない場合には,食品の原材料記載欄をカメラで読み取ると,AIがその食品に含まれる食材や添加物から判断し,スコアを示してくれる。
栢氏:
「FoodScore」のAIは,内閣府消費者庁や米国FDA,EUがまとめた添加物が人体へ及ぼす影響をデータ化したもの,FAO/WHO合同食品添加物専門家会議による安全性評価,700人以上の専門家の知見,シグナルトークのヘルスケア事業で6年以上蓄積したデータが入っています。それをディープラーニングで学習し,食品を評価しています。
これまで,添加物が気になる消費者は商品の原材料名表示を見て,さらにその添加物がどういったものかを確認しなければならなかった。栢氏はFoodScoreによってそれを「健康度」として分かりやすく示すことで,「安い」「おいしい」といった基準で選ばれがちな食品の選択に健康に関する新たな基準が組み込まれ,消費者の選択基準の軸が増えるのではないかと語る。
栢氏:
単に無添加のものだけを食べようと言うわけではなく,上手に添加物と付き合っていこうというのが私の主張です。その度合いを「健康度」として分かりやすく示すことで「いつもはこっちを食べるけど,たまには無添加のこっちも食べてみよう」「交互に食べよう」といった使い分けをしてほしいと思っています。
岸本氏:
最近は,オンライン通販を利用する人も増えました。そうなると,こだわってものを買おうという人も増えます。レビューを見て商品の評判を見て買う人もいるわけですから,栢さんが「健康度」という基準を可視化して参考にしてほしいという主張も分かります。
ヘルスケア事業で活きているゲーム開発のノウハウ
「FoodScore」の開発チームには,「Maru-Jan」の開発に携わったスタッフもいる。栢氏によると,ゲーム開発とヘルスケアサービスの開発は必要な知識こそ異なるものの,技術的な面では同じだという。例えば「花粉症に関連する物質のデータを統計的に集めること」と,「ゲームのイベントでランキングを集計すること」に使っている技術は,まったく一緒なのだ。
栢氏:
ゲームのディレクターやエンジニアがヘルスケア事業に転職することは可能だと思っています。技術面で共通している点は多いですし,“従来の医学では解決できなかったアプローチ”を行おうとすることにも対処できますから。
栢氏はシグナルトークが一般的なヘルスケア事業の会社より一歩先を行っている部分として,UIのデザインやレスポンスの速さを挙げた。具体的には,あまり好まれない長い注意書きを表示せず,重要な注意点だけを端的に表現したり,押しやすいようにボタンを大きく表示したりといった工夫がまさにそれだ。
こうした操作を快適にするための配慮やスキルはゲーム業界では当たり前だが,ほかの業界ではそういった考え方を持っている人が意外なほど少ない。なので,ゲーム開発経験者は重宝されるのだという。
栢氏:
皆さんが使うサービスでも手続きが煩雑で,どうやって使うのか直感的に分からないものってありますよね。
登録フォーム分かりづらくていつまで経っても手続きが進まないとか,数字入力に半角と全角の指定が入り混じってるとか。ゲームだったら,誰がやってもサクサク進めるように作る。そういったゲーム業界では当たり前のことが,ほかの業界では驚くほど気遣われていないんです。世間の使いにくいアプリや機械もゲーム開発のUIやUX設計のノウハウを持っている人が携われば,もっと使いやすくなるはずなんです。
岸本氏:
UIの使いやすさは非常に重要です。操作が分かりづらくほったらかしにしていたヘルスケアアプリも,ゲーム開発のノウハウを活かした使いやすいものになれば「毎日続けよう」となるかもしれない。
栢氏は,「ゲーム業界の人間は,仕事への愛情が人一倍強い,なのでプロダクトの質が高い」と持論を語る。栢氏曰く,自分の作っているゲームを休日に自主的にプレイして改善点を見出し,出社時に直すということを行っている開発者は少なくないという。
栢氏:
愛情が強いと,プロダクトの質が良くなります。「Maru-Jan」はPC,Mac,iOS,Android,Amazon Fire TVに対応していますから,弊社の品質管理チームはそれぞれのデバイスで動作チェックをしています。OSがバージョンアップすれば当然チェックしますし,とくにAndroidは機種や画面の大きさによる違いもチェックしています。こうした「もの作りに対する姿勢」が,プロダクトの質に大きな影響を与えるのだと思っています。
目標は「ノーベル賞を取るくらい,医学に貢献すること」
今後のシグナルトークは引き続き「Maru-Jan」のようなゲーム事業,オンライン麻雀卓「Maru-JanR」を置いたリアル店舗「Mahjong+」の運営,そしてヘルスケア事業を展開していくという。
とくにヘルスケア事業では,ノーベル賞をプロジェクト単位で受賞できるくらい,医学に貢献することを目標としているそうだ。
栢氏:
潰瘍性大腸炎は,安倍晋三元首相が患っていることで有名になった難病ですが,私達がビッグデータを解析したところ,患った人とそうでない人の食生活に違いがありました。これは海外の論文にある「こういう添加物を摂っていると,潰瘍性大腸炎になりやすい」という指摘とも一致したんです。
こうした研究をしていき,「食事を改善したら治った」という人が何千人何万人と出てくるようになったら,医学研究者でなくとも医学に貢献したということでノーベル生理学・医学賞の受賞も視野に入ってくるんじゃないかと。
栢氏自身も食生活を改善したことで花粉症等のさまざまな症状が出なくなったという。こういった成果もヘルスケア事業や論文を通じて発表していくそうだ。そして最後に栢氏は,将来的に食品と症状の関係を完全に明らかにしたいと意気込みを見せた。
栢氏:
兵庫医科大学の團野大介医師(当時,現在は富永医院所属)が,「ピーマンと偏頭痛の関係」に関する研究を,弊社のヘルスケアアプリのデータを用いて学会で発表しています。
実験で被験者を集めるのは労力がいりますが,オンラインならすぐに大人数のデータを集められますからね。こうしたデータ収集の分野はオンラインゲームのノウハウを応用したもので,医学研究者がこれまでタッチできなかった部分です。
2017年には大阪市立大学などと一緒に健康科学に関する会社「ウェルネスオープンリビングラボ」を設立しました。我々の研究成果は,そこを通して発表したり,今後論文として発表したりしていきたいですね。
岸本氏:
健康や食事は皆さん気にはしているけど,病気になるまではなかなか改善しようとは思わない。また面倒な作業をやるのもイヤ。ここにゲームの分かりやすく,楽しく継続できる仕掛けを活用することができます。
ゲームは楽しいだけで出来ているのではなく,ネットワークを介してビッグデータをとる,UI・UXの使いやすさやここちよい体験を目指すなど,分かりやすく,楽しく試せるノウハウにあふれています。
健康管理や食事管理のアプリは今もありますが,それらをゲームのノウハウでより使用しやすく役立つものに作りかえていける,そんな技術がゲームにはあると私は思っています。
――収録日:2021年4月22日
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