インタビュー
「スカッとゴルフ パンヤ」のゲームポット&Ntreevにインタビュー。パンヤの成功を振り返る(後編)
前編では,ゲームポット社長 植田修平氏に,パンヤ成功の理由,ゲームポットの根底にある考えなどを聞いてみたが,後編となる本記事では,そのパンヤ開発元であるNtreev 社長 Jun Young Kim氏に,日本での成功と日本のプレイヤーに関して,開発元はどう感じているのかを聞いてみた。
韓国と日本のプレイヤー,
キャラクターへの愛着がより強いのは?
4Gamer:
ではパンヤの開発元である,NtreevのKim氏にお聞きしたいのですが,日本のパンヤのプレイヤーについてどう思われます? 韓国のプレイヤーと明確に違う点は,何かありますか。
韓国のプレイヤーよりも日本のプレイヤーのほうが,パンヤのキャラクターを大切に愛してくださっていますね。もちろん韓国でもキャラクターは人気がありますが,日本のプレイヤーは,キャラクターに対する愛着がより強いと思います。
4Gamer:
確かに,新キャラクターや新衣装の記事は注目されますね,いつも。
Kim氏:
やはりそうなんですね。
それから,プレイヤーの質として違いを感じるのは,日本だとプレイヤー同士の友好的な関係を維持して,コミュニケーションを楽しんでプレイしている印象を受けます。対して韓国では,プレイヤー同士は競争的な関係を持ち,最初から競うつもりでゲームに臨んでいます。
4Gamer:
それは,開発会社としてみる場合,何か違いとなって表れますか? 例えばアイテムを作るときに,日本に向けては洋服やアクセサリーが多いとか,韓国では飛距離が伸びるアイテムが多いとか。
Kim氏:
実はあまり違いをつけていません。しかし購入者数の比率で言うと,アイテムの種類にかかわらず日本のほうが多いですね。お金を払ってプレイする価値を見出している証拠だと思います。アイテムの種類に関しては,「ガチャッとポンタ」が日本では反応が良いですねえ。
4Gamer:
日本のプレイヤーがキャラクターに愛着を持っているというのは,具体的にどこで感じますか?
Kim氏:
一つの例として,日本では新しいキャラクターが登場する前に,公式サイトでキャラクターが大きく紹介されています。韓国ではそこまではしたことなかったですし,日本ではキャラクターの注目度が高いと素直に感じました。
植田修平氏(以下,植田氏):
キャラクターが登場するときに,日本では必ず特設サイトを作りますけど,キャラクターの特徴とかギミックを入れたWebサイトを作るんですよ。
Kim氏:
韓国から見ると,日本のプレイヤーはキャラクターに命が宿っている――というか生命力があるというか,そういう風に見てくれていると感じます。例えば,新しいスターが誕生するかのような期待感を楽しんでいるような。
植田氏:
ゲームポットでも,単なるアップデートだとは全然思っていなくて,ものすごく力を入れていますよ。
4Gamer:
まぁでもパンヤの場合,キャラクターが一人追加されるというのは,十分大規模なアップデートですよね。たぶん,コースが10個増えるよりキャラクターが1個増える方が盛り上がりがすごいと思います。そんな新キャラクターの追加は,どういうプロセスで決まっていくんですか?
Kim氏:
極秘です(笑)。
4Gamer:
なにか教えられることってありませんか。実はKimさんが全部書いてるとか(笑)。
いえいえ(笑)。やはりクリエイターの発想が中心です。クリエイターが日本のサービス状況を知っていますから,そこから新しい発想に繋げて,キャラクターを作り出しています。
4Gamer:
日本のプレイヤーがとても興味あることだと思うのですが,キャラクター追加のとき候補はどれくらい出るんですか?
Kim氏:
すいません,私自身は,キャラクターが出来ていく過程ではなくて結果を見ているので,正確に把握できていないんですよ。キャラクターを新しく作成するときは,開発担当のプロデューサーが深く関わっています。
おそらく,クリエイターの発想からいきなりキャラクターを作り出したり,候補を出してその中からプロセスを経て最終的に一つに決めるなど,やり方は複数あると思います。
4Gamer:
社長ですし当たり前ですね。すいませんでした。
Kim氏:
ただ,キャラクターの服装に関する部分,例えば夏なら水着が出るといったマーケティング的な観点は重視しており,そういった部分をベースにしてデザインしています。あとはゲームポットさんからいただく,このようなイベントをやるので,こういったものができませんかという意見や提案を反映させています。
4Gamer:
ゲームポットからの意見や提案は多いんですか?
Kim氏:
もう,非常に多いです(笑)。多いことは逆に良いと思いますし,だからこそ,ここまでパンヤが成功したと信じています。ゲームポットさんには非常によくやってもらっていると考えています。
ゲームポットとNtreevのパートナーシップ
関係がイコールであることが大切
4Gamer:
一般論的な話ですが,韓国のゲームを日本でサービスしているパブリッシャーがあるとして,日本側の意見はほとんど通らないというのが通例だと思いますが,そこについてどうお考えですか? また,そんなにまで日本側の意見を信じてそれを通すというのはどこから来ているものですか?
パンヤは44か国でサービスされています。その中にはもちろん,うまくいってる国もあれば,いっていない国もあります。そんな状況でうまくいってる国をあらためて見てみると,現地化がうまくいってるんですよ。日本に関しては,ゲームポットとコミュニケーションを多くとって,意見やサービス状況などの情報を活用してゲームに反映してきたことが,いい結果につながったと考えています。
ゲームポットにしても,Ntreevにしても,気持ちを一つにしてコミュニケーションをしてこれました。契約してからの3年間,非常にいいパートナーシップを維持できたことが大きいと思います。
4Gamer:
ベタ褒めですねえ(笑)。
植田氏:
パンヤに対して,Ntreevは自分の子供のように愛情を注ぎ,運営チームもパンヤをサービスするとき――パンヤに限った話ではありませんが――すごく愛情を注いでサービスするというところで,お互い意思が通じあった結果です。開発会社とパブリッシャーの関係は,日本だとパブリッシャーのほうが強いという位置づけが多いんでしょうけれど。
4Gamer:
そういうところもあるかもしれませんね。
植田氏:
しかし,オンラインゲームのパブリッシャーと開発会社の間は,上下ではなくイコールでないと成り立たないビジネスだと思っています。どっちかが強いなどのアンバランスさがあると,どこかで歪が生まれます。お互いが対等な立場でビジネスをやっていくことが,成功の大きな要因になると考えています。
4Gamer:
それを3年前から考えていたんですか?
植田氏:
いえ,実はそうではありません(笑)。サービス当初は,Ntreevに懸命に喰らいついていくという感じでした。Ntreevは,開発の部分やビジネスについて,韓国でのノウハウを持っていましたので,いろいろ教わりながらそれに追いつくために一生懸命やってきたわけです。
4Gamer:
そんな良好な関係を築いている2社それぞれにお聞きしたいのですが,今後パンヤで目指していくものを教えてください。
Kim氏:
プレイヤーに対しては,顧客満足度が優先されなければなりません。そのための意見やアイデアはゲームポットを通じて得られますし,それを開発側としてゲームに反映していくのが満足度を高める道だと考えています。ゲームに関してはプロデューサーが答える方が良いと思いますが,私自身はオンラインゲームは,時代や世の中と一緒に変化していくものだと思っています。これまでもそうでしたし,今後も時代の変化を認識して,対応していくことを引き続きやっていきます。
4Gamer:
プレイヤーも気になっていると思いますが,シーズン4の話とかはないですか?
Kim氏:
まだ準備中です。ご期待ください。
4Gamer:
何か今語れるような方向性はありますか?
Kim氏:
そうですね……ほかの国と比べると,日本ではこのゲームが非常に愛されているので,日本のプレイヤーが希望しているものが新しい要素となるかもしれません。そのあたりのバランスに関しては,開発チームがうまく調整するでしょう。
4Gamer:
ゲームポットは責任重大みたいですね,植田さん。
植田氏:
本当ですね(笑)。
Kim氏:
今後もNo.1ゲームとしての地位を確保していくと共に,プレイヤーに長く楽しんでもらえるゲームにしていきたいと思います。
植田氏:
パンヤがスタートして3年が経ちます。最初はセカンドゲームとしてのNo.1を目指していましたが,いまや家庭用ゲーム機(Wii)でも発売されましたし,キャラクターグッズや漫画,モバイルのゲームも出て,オンラインの枠を超えて,パンヤはすごく大きくなっている段階だと思います。
プレイ率No.1という形で支持されていますが,今後ゲームポットとしても,オンラインゲームの枠を超えて,No.1タイトルとしてオンラインゲームをする人もしない人も,パンヤを認知してもらえるようなメジャーなタイトルにしていきたいと思います。そのためには,進化し続けるゲームであることが大事なのかなと思っています。進化を止めることなく,常に先を行く,業界の中でも新しい試みを先にやっていくという気持ちで,パンヤをもっと大きくしていきたいと思います。
4Gamer:
最後に,パンヤはもはや立派なIP(知的財産)だと思いますが,ほかの展開などは考慮していますか? また,ほかのコンソールプラットフォームなどでの展開などは考えていますか?
植田氏:
コンソールの展開については,全然決まっていません。ゲームポットとしては,オンラインゲームをきちっと運営していこうという気持ちが一番です。それがパンヤの根幹になりますから。ほかのビジネスに浮気することはあまり考えずに,餅は餅屋できちっとパンヤを大切に扱っていこうという気持ちです。
4Gamer:
なるほど,本日はありがとうございました。
忙しく時間のない中でインタビューに応じてくれた,ゲームポット 植田氏とパンヤの開発元であるNtreevのKim氏。植田氏は,ゲームポットの根底にあるのは,「ほかが手がけていない,そこにしかないコンテンツ」だと語っていた。
ここまで多種多様な選択肢があり,似たようなものに見えるコンテンツが増えてしまっている昨今のオンラインゲーム業界では,「新しい要素を一番最初に目立たせること」が,出だしで躓かないための要因になっているように思える。「他社がやっていないことをする」ということそれ自体はなんら目新しい発想ではないが,そのタイミングと,タイトルを見出す手腕が問われるポイントだろう。そしてゲームポットは,少なくとも現在のところまではそれをうまくやりおおせている。
セカンドゲームとして,ほかのメジャータイトルの合間に遊ぶという選択肢をプレイヤーに与えてメジャー化したパンヤ。その成功とキャラクターの人気で,“時間の奪い合い”であるオンラインゲーム業界での他社との共存に成功し,広く認知されるようになったという。
ほかと食い合うことのないジャンルを揃えたい,と語るゲームポットの,今後の展開がより楽しみになった,そんなインタビューだった。
収録:2007年9月
- 関連タイトル:
スカッとゴルフ パンヤ
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