インタビュー
キム・ハッキュ氏に聞く「グラナド・エスパダ プラス」――理想のオンラインゲームとはプレイヤーの生活の一部であること
日本では「Productive Online RPG」というキャッチコピーを冠してイメージを一新するGE+だが,要(かなめ)となる開発陣がどのようなコンセプトを持ってリニューアルに臨んだのか,観念的/具体的にお話を聞いてみたので,さっそくその内容をお届けしよう。
キム・ハッキュ氏の考える
「理想のオンラインゲーム」とは?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は久しぶりの来日となりますが,GEの正式サービス開始から2年以上が経過するなかで,オンラインゲーム業界にもさまざまな変化がありました。こうした変化の流れの中で「“キム・ハッキュ”氏が理想とするオンラインゲーム像」も変わったのではないかと思うのですが,まずは大枠としてそこから聞かせてください。
もともと私の考える理想というのは,オンラインゲームが人間の生活の一部となることでした。最初に説明しておくと,IMC Gamesの社名は「Impress」「Motivate」「Connect」の頭文字を取っているのですが,いずれも人間関係を形成するうえでの重要な要素です。つまり,ゲームを通じて人間関係を形成できるように,という意味を込めています。
そうした考えのもとにGEのサービスを継続していたのですが,いくつかの壁に突き当たりました。まずオンラインゲームにはどうしても時間的な拘束が発生します。オフラインのパッケージゲームだったら,10〜30時間ほど集中すれば一通りプレイできますが,オンラインゲームは短くても数か月,長ければ3年,5年と継続してプレイするものです。その間,プレイヤーは何か別の活動に使える時間を犠牲にしながらプレイし続けることになります。
4Gamer:
たしかに,オンラインゲームのプレイは,時間だけを見れば大きな負担になりがちですね。
キム・ハッキュ氏:
それがオンラインゲームのハードルを上げている一因になっています。そこでオンラインゲームをより一般化するためには,新しい観点を提示する必要があります。
4Gamer:
その新しい観点とは?
キム・ハッキュ氏:
たとえばサッカーのゲームなら,自分が一選手となってプレイするものもあれば,監督になって選手を育成/指示するものもあります。これをオンラインゲームに当てはめると,前者は従来のMMORPGです。プレイヤーがゲーム内の一キャラクターとして行動するため,プレイするときには相当の集中力を必要としますし,拘束時間も長くなります。
またその一方で,数多くのタイトルが乱立し,市場が飽和している状況があります。
4Gamer:
タイトル1本あたりに使う集中力と,プレイ時間が長すぎるので,プレイヤーは新しいタイトルが登場しても手が回らない,ということですね。
キム・ハッキュ氏:
そうです。そして,そういった従来のMMORPGの考え方は限界に来ています。そこでGEでは,プレイヤーが監督に近い立場となり,多様なキャスト(キャラクター)を集めて操作するという観点を打ち出したんです。
4Gamer:
なるほど,常に動き回る“プレイヤー”ではなく,適時に指示を送る“監督”をプレイしていると。たしかに発表当時,四六時中PCの前で集中していなくてもそこそこプレイできる「キープモード」の存在は斬新でした。
キム・ハッキュ氏:
ただ,そういった新しい観点は簡単に受け入れてもらえませんでした。当初は今までプレイしてきたゲームとは違う,何か変だと戸惑った方が多かったようです。私自身も新しいことへのチャレンジでしたし,正直なところプレイヤーの反応には不安がありました。
4Gamer:
そうですね。日本でも,GEが持つそれまでのオンラインゲームと違う部分に対して,いろいろと反発があったように思います。
しかしその一方で,「ほかのオンラインゲームは無理だけど,GEならプレイを続けられる」という人が次第に増えていったのです。今では,ほかのことをしながらプレイできるという理由でGEを選ぶプレイヤーの割合がかなり多くなっています。
またGEの場合,ほかのオンラインゲームと比較して,プレイヤーの年齢層が高い傾向にあります。これは韓国の例ですが,ほかのゲームはまったくやらないけれど,GEならプレイするという40〜50代のプレイヤーもいます。オンラインゲームでは通常,10代半ばから20代前半の学生をターゲットにしますが,GEは主に社会人がプレイしています。これらの事実は,私の意図にかなり近い状況になっていることを示しています。
4Gamer:
時間が経つにつれ,ハッキュ氏の構想する,GEのプレイスタイルが自然と受け入れられたのでしょうね。
キム・ハッキュ氏:
たとえば,韓国のアイドルグループ「東方神起」はご存知ですか?
4Gamer:
ええ,日本にも多くのファンがいます。
キム・ハッキュ氏:
かつて彼らが日本のファンの前でGEをプレイしていると発言して,話題になったことがありました。芸能人のように忙しい人でもプレイできる,というよりは,忙しいからこそGEを選んでいるのではないでしょうか。
4Gamer:
そうですね,限られた時間でプレイするわけですから,普通のオンラインゲームでは少し難しいです。GEでは,年配のプレイヤーにしろ,芸能人にしろ,仕事などの活動に支障をきたさないからこそ,最初にお聞きしたように生活の一部としてプレイできるということですね。
キム・ハッキュ氏:
もちろん,すべてのゲームがGEのようになる必要はないでしょう。市場には,いろんな選択の幅があっていいと思います。そのなかでGEでは,最初から独自路線を目指したということなんです。たとえばMCCやキープモード,あるいは今回のアップデートで実装される「ペットシステム」には,時間的な拘束をなくすという意図があります。加えて,まだアイデアの段階ですが,空間的な制約もなくしたいと考えています。
4Gamer:
空間的な制約?
キム・ハッキュ氏:
今はまだ,たいていのオンラインゲームはPCの前にいないとプレイできないですよね。そこでWebと連動させたり,携帯電話などモバイルギアから確認/操作できたりといったようなことです。
そういったことを常日頃考えているのですが,最近では「私の作ろうとしているものはゲームなのか,それともゲームではない別の何かなのか」と自分に問いかけることが多くなりました。
4Gamer:
広義の意味でのインターネットサービスになりつつある,ということですか?
キム・ハッキュ氏:
近いですね……でもちょっと違うかな。私が考えているのは,「人と人を繋ぐ道具」という部分です。一人で遊ぶだけではなく,みんなで一緒に遊ぶと面白いおもちゃのようなものになっていく――と言えばいいでしょうか。
今はPCだけでなく,携帯電話や携帯ゲーム機でもゲームを楽しめますし,また互いに連動する機能などもありますが,正直,それぞれのハードが持つメリットを活かしきっているとはいえません。
4Gamer:
なるほど,そのとおりかもしれません。
そこで先ほども少し触れましたが,Webや携帯電話とゲームを連動させるのです。例えば朝起きて自宅のPCでGEを立ち上げ,キープモードのセッティングをして出勤します。何ごともなければ帰宅するまでキープモードは維持されますが,何かしらの理由で全滅したり,あるいはほかのプレイヤーに邪魔されたりしていることがあります。その場合に自宅から離れた会社でも,携帯電話を使えば死んだキャストを生き返らせたり,スタンスを変更したりできたりというものです。
またクライアントを起動せずとも,ゲーム内のフレンドとチャットできるWebシステムですとか。これなら,同じ党のメンバーがコロニー戦をやっている時間に自分だけが会社にいても,いつでも戦況を確認できるわけです。
4Gamer:
なるほど。直接ゲーム内のキャラクターを操作できるわけではないですが,日本では「大航海時代 Online」が「@モバイル」というシステムを採用しています。ああいったような感じを考えているのでしょうか?
キム・ハッキュ氏:
日本ではオンラインゲームと携帯電話の連動サービスが,もうすでに存在しているのですか? それについては残念ながら私は知らなかったのですが,ぜひ実際に触れてみたいですね。もちろん,そのシステムとそのまま同じものではなく,GEに合わせた仕様にする必要はあるでしょう。
4Gamer:
先ほどお話されたように,PCや各種モバイルギアからアクセス可能なコミュニケーションツールとしての機能を持たせ,さらにゲーム上に直接影響するような連動を考えていると。なるほど,ちょっと前の話に戻りますが,作ろうとしているものが“別の何か”と感じるのは,仮想空間的な形をとるコミュニティツールを作ろうとしているからではないでしょうか。
キム・ハッキュ氏:
そうかもしれません。私はもともと正統派のゲーム作りを目指していましたから,自分の作っているものがゲームではない何かになっていくことに不安を覚えます。しかし,水は一箇所に留まっていては腐ってしまいますから,常に流れていなければなりません。
同じように市場には流れがあるべきですし,そのためには新しいチャレンジもしなければなりません。また必ずしもチャレンジが成功しなくとも,そこから別の新しい何かが生まれる可能性があります。
4Gamer:
おっしゃるとおりです。
キム・ハッキュ氏:
私が理想とするオンラインゲームについて,改めてお答えしましょう。それはプレイヤーの生活の一部となって,そればかりに集中しなくとも楽しめるものです。今までも,これからも私はそこにチャレンジしています。そしてGEは,その見本としてお見せできるものと考えています。
4Gamer:
わかりました。社名に込められた原点と理想は,今でもまったくブレていないのですね。
MCCをサポートし戦術の幅を広げる「ペットシステム」
4Gamer:
それでは,そうした考えを踏まえて,今回のGE+のアップデートについてお聞きします。まずはペットシステムについて,先ほど時間的拘束をなくす要素の一つとおっしゃっていましたが。
GEには,もともと複数のキャストを同時に操作するMCCというシステムがあります。ところが,プレイヤーによってMCCの使い方や,期待する効果が異なるんです。たとえば戦闘を自動的にやりたい,効率的に特定のキャストを育成したいといったように。従来の3人一組のMCCですと,どうしてもヒーリング系のスタンスを持つスカウトなどを入れる必要があります。そのためキャストの組み合わせは限定されますし,またすべての期待に応えるのは難しかったんです。
4Gamer:
私自身も新規のキャストを育てたいだけなのに,MCCにスカウトを組み込まなければならず悩んだ経験があります。スカウトだけ高レベルになったり,あるいはスカウトを2〜3人作ることになったりしますよね。
ハン・マンジュン氏:
そこでヒーリング系のペットを使うと,メインの3キャストキャストはすべて戦闘スタンスにすることができるなど,組み合わせに広がりが出ます。また,キープモードでは基本的にドロップアイテムは全部捨てることになってしまうのですが,代わりに拾ってくれるペットもいます。ほかにはバフスキルを使うペットもいますね。
また,サービスを展開している各国から「GEの世界観やキャラクターは格好いいけれども,可愛らしいものも欲しい」という要望が寄せられていたんです。そこで動物系のキャラクターを出したというのも理由の一つです。
4Gamer:
たしかに,アイテムが出ているのに拾えないのはもったいなかったです。ですが,これでは,何でも自動で出来すぎるといったことになりませんか?
ハン・マンジュン氏:
正直,MCCにペットを組み合わせることで,いわゆるオートシステムやBOTと変わらないのではという意見もありました。なるほど,一部の機能だけを見ればそうかもしれませんが,実際には違います。自分でキャストを動かし,党のメンバーやフレンドと一緒にプレイしなければGEを楽しめないでしょう。
しかし,一緒に遊ぶためには自分のキャストを党のメンバーやフレンドと同等のレベルまで育てなければなりませんが,それをすべて自分だけでやるのは大変な時間と労力が必要になります。それを緩和するためにも,ペットシステムを採用したわけです。
4Gamer:
なるほど。長時間同じ作業を繰り返すことを敬遠するプレイヤーは少なくないですからね。
ハン・マンジュン氏:
またGEの魅力の一つに,さまざまなキャスト(NPC)を味方(家門)に編入し,自分のキャストとして操作できるようにするシステムがあり,これが一種のコレクション要素にもなっています。ところが編入時点ではレベルが低いキャストもいますので,すべてを実用レベルになるまで育成しようとすると大変です。
最初の3〜4人は誰もが一生懸命育てますが,10人,20人,30人と増えていったらどうでしょう? そこで従来のMCCに加え,ペットシステムを活用すれば,そうした育成も楽になるはずです。
4Gamer:
たしかに,一つの家門にいくつものキャストを編入して楽しめる本作では,増えれば増えるほど育成が大変です。しかし,さまざまなスタンスを持つNPCを実用レベルまで育成できれば,レイドボス戦やコロニー戦における戦術の幅も増えて,いろいろと楽しめますね。
ハン・マンジュン氏:
そうです。きちんと分析したわけではないのですが,とくに日本のプレイヤーはNPCをコレクションして,NPC一人一人をきちんと育成する傾向が強いように思います。逆にお聞きしたいのですが,そういった意味でペットシステムは日本でも受け入れられると考えているのですが,どうでしょう?
4Gamer:
ええ,確かに受け入れられる余地は大きいです。つまりペットシステムの実装は,プレスカンファレンスでおっしゃっていた「GEはキャラクターを楽しむゲーム」という言葉に繋がっているわけですね。
ハン・マンジュン氏:
そのとおりです。
4Gamer:
ところで今までお二人がお話されてきたように,私はGEをある種の革新的なオンラインゲームとしてプレイしてきました。フレンドがインしているときには通常のMMORPGのように狩りをしたりボスを倒したり,自分一人のときはMCCとキープモードを駆使して,いかに長く効率的にAIによる狩りができるか試したりと。とくに長時間の狩りを成功させるために試行錯誤する面白さは,GE独自のものだったと思っています。それがペットシステムの実装で阻害されないかと心配なのですが。
ハン・マンジュン氏:
その点は心配無用だと考えています。まず人間の心理として,ペットを使うと少し楽になるというのが実感できれば,さらに効率的な狩場を求めて戦略を練るようになります(笑)。
それにペットは万能ではありませんから,やはり試行錯誤は必要になります。今までは3人一組でしたが,これからはペットを加えた4人分の組み合わせを考えなければなりません。考えることが増えることはあっても,減ることはありません。決して単純に楽になるわけじゃないのです。
4Gamer:
たしかに,より良い場所を求めてしまいそうです。ペットの追加によって,よりキープモードでの戦術を考える幅は広くなりこそすれ,狭くはならないということですね。
ハン・マンジュン氏:
ええ,誰をリーダーにするのか,ペットは回復系にするのかアイテムを拾うタイプにするのか,アイテムを拾うタイプならどのキャストの近くに配置するのがいいのか……とにかく考えることは山ほどあります。またキープモードを使わず自分で操作するときには,基本的にペットは必要ありません。普通にスカウトなどを組み込んだほうがいいです。
ペットについては,今後さまざまな機能をもったものを追加していく予定です。時期については,少々お時間をいただくことになります。
4Gamer:
ちなみに日本だと,GEは通常のMMORPGと同様の部分ばかりがクローズアップされて,私がやっているようなキープモードの試行錯誤については,あまり話題にならないんですよ。韓国をはじめ,サービスしている各国ではどうなのでしょう?
キム・ハッキュ氏:
先ほど少しお話しましたが,各国とも共通して「オンラインゲームとはこういうもの」という先入観があります。おっしゃっているような,各ゲーム固有の楽しみ方を理解するプレイヤーはいるにはいるのですが,マニア化しているというのが現状です。
そこをもっと広めたい,知ってもらいたいという欲求はあるのですが,その一方で焦ってやってもすぐに理解されるわけではなく,意味がないとも思っています。時間を掛けて,少しずつ理解していただくのが一番じゃないかと考えています。
ハン・マンジュン氏:
GEにはいろんな楽しみ方がありますし,やり込めばやり込むほどプレイしやすい,優しいゲームなんです。ところが周囲からは難しい,マニア向けだといわれてしまいます。キープモードなどの使い方をマスターすれば,これほどレベルアップが楽なゲームはないんですけどね。
4Gamer:
そうですね。戦略を楽しめるように理解できるまでが,やはり普通のオンラインゲームと異なる部分で戸惑うのかもしれません。実際に,GEはサービスの開始が2年以上前ですから,結構な時間が経過していますけれど,そうしたプレイヤーの理解が進んでいる実感はありますか?
キム・ハッキュ氏:
まだ大きな実感はないのですが,時間は無限にあると考えていますので,理解してもらえるまで,可能な限り尽力していきます,とお答えしておきましょう。GEの楽しさを理解していただくために,まだまだ壁が存在しているのは事実です。
例えばユーザーインタフェース。今はまだ,MMORPGの経験者でないと理解できない要素がたくさんあります。そのほかにもチュートリアルをもっと分りやすくできないか,などです。このあたりは変えようと思えばすぐにでも変えられるものもありますが,今まで継続してきたプレイヤーのことを考えると,安易な変更はできないのもまた事実です。さまざまな配慮をしながら,徐々に変えていきたいです。
4Gamer:
時代に合わせた変化や方針の転換は必要なものですが,急ぎすぎるとプレイヤー離れを促進させる傾向がありますね。
そうです。もう一つ考えているのが,AIの進化などです。たとえば……キープモードを設定したプレイヤーが安心して目を離すと,それを感知して多数のモンスターが襲い掛かってくるようなものとかはどうでしょうね(笑)。
4Gamer:
え,その機能はもう実装されていませんか? どうも私が所用のためにキープモードにしてから席を離れると,数分後に戻ってきたときにはかなりの確率で全滅していたのですが(笑)。
ハン・マンジュン氏:
いやいや,そんな機能はありませんし,作りませんよ。あくまでも冗談の範囲ですから,本気にしないでください(笑)。
従来のイメージを一新し,ソロプレイの利便性とコミュニケーションの強化を両立
4Gamer:
それでは,そのほかの要素についてお聞きしましょう。ダンジョンとして,高レベルプレイヤー向けの「秘密の塔」と「リボルドウェ地下水路」が実装されますよね。
ハン・マンジュン氏:
まず秘密の塔ですが,こちらは最高レベルプレイヤー向けというわけではないです。むしろ上級者プレイヤーであっても,まだレベルが上がりきっていなかったり,あるいは党に属していなかったりして,気軽にレイドミッションに参加できなかったという方に向けたコンテンツです。
4Gamer:
なるほど。ある種の救済コンテンツといったような位置づけになりそうですね。
ハン・マンジュン氏:
もう一方の地下水路,こちらは最高レベルプレイヤー向けに作られており,とある地域への通路になります。今はまだ「その先に何かが待っている!」としか言えません。ですが,プレイヤーの皆さんはすでにご存知かもしれませんね(笑)。
4Gamer:
その先にあるのはアレかな……と予想はできそうですが,発表を待っておきます(笑)。では,ダンジョン追加に伴う,クエストやミッションも大幅に増えるのでしょうか?
ハン・マンジュン氏:
そうですね,第一弾のアップデートでは,最高レベルのものはそれほどありません。というのもGE+では,従来のイメージを一新するために当面は約2か月に1回という短いスパンでアップデートしていきます。その中で最高レベルに限らず,各レベル帯全般にクエスト/ミッションが追加されます。トータルではすごい量が追加されるのですが,第一弾では主に初〜中級部分の追加が中心になります。それに次ぐ第二弾ではGE+を極めたいプレイヤー向け,第三弾ではプレイヤー間の協力次第で内容が変わるようなものを予定しています。
4Gamer:
なるほど,段階的に実装されていくわけですね。
ハン・マンジュン氏:
GEはサービス開始当初,ミッションが充実しているという高い評価を受けました。しかしその理由は,報酬がよかったからなんです。それは決して悪いことではないのですが,結果としてプレイヤーはソロでミッションばかりプレイしてしまい,みんなで一緒に狩りに行ったりしなくなってしまいました。そこで,ほかのプレイヤーと協力したり情報交換したりしないとクリアできないような内容に切り替えました。今後実装されるクエスト/ミッションも,コミュニケーションを重視した流れを汲んでいます。
4Gamer:
キム・ハッキュ氏の話す「人と人を繋ぐ道具」からは,遠い結果になっていますね。これを正しい形に修正していくと。コミュニケーションといえば,「シークレットガード」システムも実装されますよね。
ハン・マンジュン氏:
GEは自由度の高さが特徴で,プレイヤー一人でパーティプレイを完結してしまうこともできます。つまりMCCを使うことで,タンク/DPS/ヒーラーのような組み合わせが簡単にできてしまうんですね。しかしそれは便利であると同時にコミュニケーションの促進を阻害しています。また高レベルプレイヤーと低レベルプレイヤーでは接点が少なく,情報交換もままなりません。そこで,いわゆる師弟関係を結んでもらい,いつでもチャットできるのはもちろんのこと,ボタン一つでお互いの居場所にワープできるような機能を実装します。
4Gamer:
まだ家門レベルの低いプレイヤーをサポートするために,すぐに駆けつけられるのは便利ですね。これによってコミュニティが広がればと期待しています。それでは最後に,日本のGE+を楽しみにしているプレイヤーと,4Gamer読者にメッセージをお願いします。
ハン・マンジュン氏:
私自身,数多くのゲームをプレイしてきました。その中で最も楽しかったのは,オンラインゲームで共通の話題を持つ仲間と協力し,同じ目標を達成したことです。その楽しさを分っていただくためにも,今後とも引き続きコミュニケーション部分を強化していきます。
GEは,おかげさまでサービス開始から3年目に入ります。ずっと支持してくださった日本の皆さんには大変感謝しています。GEは当初からさまざまなプレッシャーに直面してきましたが,これからも諦めずにチャレンジし続けていきたいと考えています。変化し続けるGEに期待してください。よろしくお願いします。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
筆者にとっては,実に2年半振りとなるキム・ハッキュ氏へのインタビューだったが,オンラインゲームをとりまく関連市場の的確な把握,そこに対して自らがどのような役割を果たしているのか/果たすべきなのかという客観的な分析,そして一人のゲーム好きとして何を実現したいのか/実現できるのかが,発言の中に絶妙なバランスで散りばめられていて,非常に示唆に富んだ内容となったように思う。
思えばGEは韓国における開発の遅延に始まり,オープンβテスト開始1か月後からのユーザー離れと,それを引きずったままの正式サービス開始,それからわずか5か月後の基本プレイ無料化と,どうにも順風満帆とはいい難い状況でサービスを展開してきた。その裏にはキム・ハッキュ氏の開発者と経営者,そして1ゲーマーとしての葛藤があったのは想像に難くないし,その経験が今回のインタビューにおいて何度も繰り返されたチャレンジ発言に繋がっているのだろう。
GE+に関する質問への回答を,いかにも開発者然としたシャイなハン・マンジュン氏に任せ,理想のオンラインゲーム像を熱く語るキム・ハッキュ氏に,筆者は「それで次回作の構想はどうでしょう?」という言葉を何度も投げかけそうになった。次回作のヒントはこのインタビューの中にあるのかもしれない。
(9月12日収録)
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グラナド・エスパダ
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