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15周年を迎えた「信長の野望 Online」。サービス開始当初から本作を見てきた開発・運営チームメンバーに“信On”の15年を振り返ってもらった
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印刷2018/07/11 12:00

インタビュー

15周年を迎えた「信長の野望 Online」。サービス開始当初から本作を見てきた開発・運営チームメンバーに“信On”の15年を振り返ってもらった

 

サーバールームのエアコンが止まった!


4Gamer:
 もう1つ,MMORPG関係で欠かせない技術というとネットワーク関係の技術があるかと思います。こちらも日進月歩で進化し続けていますが,逆に今から見ると「そんなことするの?」という状況もあったのではないでしょうか。

川又氏:
 ありますね(笑)。当時はまだデータセンターにサーバーを置くのではなく,普通に自社でサーバーを立てる時代でしたから。「このラックは重要だから触らないで」みたいに。だから当社のサーバールームのエアコンが壊れたときえらいことになりました。

4Gamer:
 ああ……。

川又氏:
 熱で次々とワールドが落ちていくなか,なんとかして機材を冷やさなきゃと焦るんですが,もうどうしようもなくて(苦笑)。扇風機を買ってこいとか,いやそんなことをしても意味がないとか,大騒ぎでした。
 「室外機を冷やすとエアコンから冷たい風が出る」ことに気づいて,それこそ総出で室外機に水をかけまくった……みたいなこともありましたね。コンピュータゲームなのに「問題への対応」がものすごくアナログで(笑)。

画像集 No.010のサムネイル画像 / 15周年を迎えた「信長の野望 Online」。サービス開始当初から本作を見てきた開発・運営チームメンバーに“信On”の15年を振り返ってもらった

4Gamer:
 それはもう「古の武勇伝」級の逸話ですね……。オンラインゲームの場合は「アクセスが集中するときと,しないとき」の波が大きく,その対応も大変だと言われます。

吉越氏:
 そうですね,しかも当時だと「対策」と言っても,できることが非常に少なくて。

4Gamer:
 昔ですと,頻繁に緊急メンテナンスが行われて,何らかの対策が打たれて解決,ということも多かったように思いますが。

吉越氏:
 何か講じうる策が見つかれば,そこで一旦サーバーを止めて対応ということも可能です。なので,逆に緊急メンテナンスがあったということは,対策が見つかっていると考えていただければ(苦笑)。

4Gamer:
 では,対策を講じるための問題点の抽出は,どのように行っていたのでしょう。

吉越氏:
 やはりログを追うところからスタートしますね。そこは今も昔も変わりません。ただ,今はいろいろと可視化・自動化も進んでいますので,だいぶ楽にはなりました。昔は本当に「何が起こってるんだ?」みたいなことも発生していまして。
 例えば,サーバーのラック自体に問題があり,全部のサーバーが一度に落ちてしまったことがあります。こちらからリモートで状況を確認することもできず,まさに「何が起こっているのか分からない」んですよ。

4Gamer:
 それは怖い……。

吉越氏:
 ですから,実際にサーバールームに行くしかない,という状況だったんです。でもちょうどお盆の時期で。

4Gamer:
 やはりそういうタイミングで起きるんですね……。

吉越氏:
 インフラを担当しているチームに連絡をとって原因を究明してもらい,なんとか復旧にこぎつけた,ということがありました(苦笑)。

4Gamer:
 それは何というか,お疲れさまです(笑)。当時のオンラインゲームを思い返して見ると,今は「サーバーが落ちる」というのが十分に珍しいと言えるようになったのではないでしょうか。もちろん,落ちるときは落ちますけど。この要因として,どんな技術的変化が挙げられますか。

吉越氏:
 やはり最近だとクラウドになったので,何か問題があっても切り替えが可能ですし,ある程度までは状態の監視もしてもらえます。昔は「サーバーのハードディスクが1台死んだから新しいのに交換してください」みたいなことを社内で手作業でやっていたわけで。これはもう格段に良くなったポイントだと思います。

2009年「新星の章」
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オンラインゲームはイベントを楽しむもの?


4Gamer:
 話は変わりますが,オンラインゲームにとって「イベント」は欠かせないものだと思います。でも自分の記憶では,タイトルに関わらず昔は今ほどイベントが過密ではなかったように思うんです。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 15周年を迎えた「信長の野望 Online」。サービス開始当初から本作を見てきた開発・運営チームメンバーに“信On”の15年を振り返ってもらった
川又氏:
 そうですね。信Onでもサービス開始直後のイベントを振り返ってみると,3か月に1回くらいでした。

木下氏:
 おそらくですが,モバイルゲームの影響も大きかったと思います。あちらはほぼ常時イベントをやってますので,ウチもやらなきゃ……というところはありますね。

4Gamer:
 今ではイベントがない時期があるだけで,「何もない」と言われたりしますよね。

川又氏:
 サービス開始直後は「これからのイベントの予定」なんてまったく組まれていなかったような記憶があります(苦笑)。「何かイベントやりましょう」と言われて,じゃあ和風なゲームだし,ちょうど時期が夏ごろだし,花火イベントでもやりましょうか,くらいの緩い運営でした。

4Gamer:
 実際に,そうした季節もののイベントが主だったように思います。

川又氏:
 イベントの方向性やキッカケも今とは違っていました。アップデートが入って,プレイヤーさんが新しいコンテンツやシステムに慣れたあたりで,「じゃあ,そろそろ何かやりましょうか」という感じだったと思います。
 「アップデート記念イベント」みたいなものに対する要求も低くて,むしろ「アップデート直後は探索で忙しいからイベントはやめてくれ」とまで言われました。

4Gamer:
 イベントの内容にしても,昔は力技というか,「人力」を感じさせるものが多かったですよね。

川又氏:
 それで言うとβ最終日に実施した「今川怨霊化イベント」は,社内では伝説的ですね。キッカケがβ最終日の2日前か3日前というタイミングで,「最終日になにかイベントやろうよ」という一言でしたから。そこから一気に突貫で作ったのを覚えてます。

4Gamer:
 完全に思いつきじゃないですか(笑)。ほかには,とくに正式サービス以後で思い出深いイベントはありますか。

川又氏:
 やはり「東西大合戦」イベントですね。先日(6月中旬)に行いましたが,これはサービス開始直後から毎年行っているイベントで,いろいろとエピソードがあるんですよ。

4Gamer:
 例えば,どのような?

川又氏:
 そもそも東西大合戦というテーマは,関ヶ原の戦いのように日本を二分し,東西に分かれてプレイヤーが戦ったらどうなるんだろう? というコンセプトに基づいたものでした。普段は各プレイヤーが好きな勢力に所属し,1大名家と1大名家の戦いという形で合戦を行っていますが,これが一斉に集まったら楽しいだろう,と考えたんですね。

4Gamer:
 なるほど,それは歴史好きとしても熱いですね。

川又氏:
 ただそのときのイベント担当が,野球やサッカーが好きで。EastとWestに分かれて戦うオールスター戦みたいな演出をできないかと言い始めたんです。それで,最初のイベントから数年後に,武将の人気投票をして,人気のある武将同士が東西に分かれて戦うというイベントに発展していったんですよ。

4Gamer:
 まさにオールスター戦ですね。でも,そうすると……。

川又氏:
 お察しのとおり,やはり人気投票の結果が偏るんです(苦笑)。上杉謙信と武田信玄が,どうしても人気上位になってしまうんです。

4Gamer:
 ああ,やっぱり。

川又氏:
 そういう事情もあり,9年前にこの人気投票方式は止めたんですが,今年は9年ぶりにやってみることにしたんです。これだけ経てば,人気の傾向も変わってるのではないかと。

4Gamer:
 やはり大河ドラマの影響が出たりしますか?

川又氏:
 出ていますね。例えば今回のイベントでは真田幸村の人気が高かったですが,やはりこれは大河ドラマの影響でしょう。もっとも,9年前には真田幸村専用のキャラクターモデルすら存在しませんでしたから(笑)。当時は「赤い具足をつけている」程度の造形だったんです。それが今ではトップ1・2に並ぶような人気ですから。

4Gamer:
 開発にも影響が出ているじゃないですか(笑)。

木下氏:
 ですね(笑)。あと,大河ドラマでちょい役だったけれど,強い印象が残った武将もランキングが上がっています。


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川又氏:
 「戦国時代」というものに対する親しみが,15年前とは変わってきていると感じます。「誰もが知っている戦国時代」を楽しむところから,「私が好きな戦国時代」を楽しむところに変わってきているんです。そういう意味で言えば,石田三成にものすごく人気が集まったのも,9年ぶりの人気投票をしてみての驚きでした。

4Gamer:
 石田三成はとくにイメージの変遷が大きいように思います。それを考えると,「15年前に多くのプレイヤーが納得していた石田三成像」と,「今のプレイヤーが納得する石田三成像」はかなり違っている可能性も高いのかな,と。そういったイメージの変化に基づいて信On内の評価や演出に手を入れる,といったことはありますか。

川又氏:
 それは難しいですね。スタンドアロンのナンバリングタイトルであれば,新規タイトルごとにパラメータに手を加えることもできます。ですが信OnはMMORPGですので数値はそうそういじれません。ただ,ある大名をクローズアップしたダンジョンを出してみるという,オンラインゲームならではの表現方法はあると思います。

4Gamer:
 それはどのような?

川又氏:
 例えば,真田にクローズアップしたダンジョンであれば,そのダンジョンにおける敵となる真田幸村は強くてもいいわけです。個別のシナリオと本体とを分離して考えられるというのは,1つの強みだと思います。
 一方,プレイヤーキャラクターは時間とともにどんどん強くなっていきます。そうなると数年ごとに大名の能力値にも調整をかけなくてはなりませんから,“全体的なアップデート”は必須ですね。

4Gamer:
 ああ,なるほど。大名それぞれのパワーバランスはともかく,プレイヤーの成長に合わせて,というのは確かに必要ですね。

2011年「鳳凰の章」
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長期運営だからこそ発生する成長の「インフレ」との戦い


4Gamer:
 「プレイヤーキャラクターは時間とともに強くなる」とおっしゃいましたが,MMORPGを長年サービスする中で,プレイヤーキャラクターの強さであれ,資産であれ,インフレは不可避だと思うんです。

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川又氏:
 そうですね。インフレはもう宿命だと思っています。RPGは「強くなっていく」のが最大の目標であり喜びですから,それを止めるわけにはいきません。そうやってプレイヤーが強くなると,それを阻むライバルも強くならざるを得ない。それをどう提供していくのか,アップデートごとに提供の順番を考えたりしていますね。その上で「強い敵」とは何かということも,しっかり考えなくてはなりません。

4Gamer:
 ただ強いパラメータの敵を出せばいいわけではないと?

川又氏:
 プレイヤーには「自分は強い!」と感じたいときと,「こんな強い敵が出てきちゃったけど,どうしよう?」と悩みたいときがありますから。そこがちゃんと循環するように「強い敵」を作らなくてはいけないんです。
 プレイヤーの周囲にいる敵が全部「弱い敵」ばかりになってしまったら,もうそれでプレイヤーとしては世界が終ったも同然です。かといって,どこまでいってもひたすら「強い敵」しか出てこないと,まったく達成感が得られません。ここのバランスが土台としてあり,その上でほかの誰かと戦う対人戦がある。そういう構造を考えながら,信Onを運営してきました。

4Gamer:
 強くなった自分が感じられるレベルの敵は必要ですね。

川又氏:
 その上で,言葉は悪いですがMMOのゲームシステムとして「なんでもあり」という側面があると思うんです。
 例えば,あるコンテンツに入ったらすべてのキャラクターは平等なステータスになる。標準化された状態で対戦を楽しんでもらう,というシステムやイベントは,MMORPGだと「あり」じゃないですか。

4Gamer:
 レベルシンクだったりは,結構前から存在していました。

川又氏:
 つまりMMORPGは,「自分が成長していく世界」だけで閉じなくてもいいんです。信Onでも対人戦の大会をするときは「全員を同じ戦力に揃えるレギュレーション」と「自分が育てた最強のキャラクターで勝負するレギュレーション」といった形で,2つのパターンを用意するようにしています。

4Gamer:
 しかし,信Onのように長く運営が続くと,当時と今とではプレイヤーさんの「キャラクターが強くなっていく」感覚の違いも大きいのではないでしょうか。
 例えば,かつての一般的なMMORPGと言えば「1時間狩りをして経験バーが1%伸びました」ということになれば,「こんな美味しい狩場は誰にも渡さない」と決意を固めたものですよね。でも,これはもう現代的な感覚ではないのかな,と。

木下氏:
 自分も昔は「1時間で1%なら絶対にその狩場から動かない」派でしたから実感として分かります(笑)。そうした頃に比べると,信Onも「緩くしている」のは間違いないです。具体的に言うと,昔はレベルがカンストするまでに3か月くらいを想定していました。もちろん1〜2か月でカンストしたプレイヤーさんもいますが。

4Gamer:
 想定以上に遊ぶプレイヤーは必ず出てきますね(笑)。

木下氏:
 一方,今はレベルカンストまで1週間もかからないんです。むしろそこがスタートラインで,装備など,それ以外のものを成長させていくことで他のプレイヤーと競っていく,という形になります。これは「みんなと一緒に遊べるようになるまでの時間」は短くあるべきだと考えているからなんです。

2013年「天下夢幻の章」
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「寸止め」が巧みな川井憲次さんの世界


4Gamer:
 プレイヤーの嗜好の変化という面では,音楽に対する嗜好の変化というものもあると思うのですが,その点はいかがでしょう。

中園氏:
 プレイヤーさんの嗜好の変化は感じますね。ですがゲームの中にある古いコンテンツが変わるわけではないですし,そこまで世界観を変えるわけにもいきません。別タイトルの音楽に聞こえるようでは困りますから。ですが同じような曲をずっと出しても新鮮味はありませんし。そのあたりは毎回苦労させられます。

4Gamer:
 あくまで「信長の野望」であり,その世界観の内部で音楽を作り続けなくてはならない,ある意味の縛りもありますよね。

中園氏:
 そうですね。作曲していただいている川井憲次さんにも「もう無理」みたいなことは毎回言われちゃいます(苦笑)。なにせ曲数が多いですから。アップデートのたびにフィールド曲,戦闘曲といった感じでいくつも作曲してもらうことになりますし,戦闘曲だけでも3〜4曲あります。それで「戦国縛り」での作曲ということもあって,川井さんには「そろそろ平和にしましょうよ」「もう戦争は止めましょう」って言われたり(笑)。

4Gamer:
 ですよね(笑)。それも15年分ですから,今まで作ってきた曲もすさまじい量になっていますよね。

中園氏:
 ええ,124曲あります……でも自分の感触だと「まだまだ新曲を作れるでしょう!」と思っていますが(笑)。
 川井さんとしても毎回新しい試みはされていまして,野心的なことも結構されてるんですよ。それで自分もつい「やりましょう」で進めていった結果,「新星の章」あたりで「ちょっとやりすぎでは」という感じになりました(苦笑)。次の「鳳凰の章」で一度戻したんですが,そこからまた新たな方向性を模索しつつ進めている感じですね。

4Gamer:
 MMORPGのBGMって,ほかのゲーム音楽とは比較にならないくらい長い時間聞くことになる音楽だと思います。そこで,発注時に注意されていることはありますか。

中園氏:
 「寸止め」じゃないですが,あまりに音楽が盛り上がりすぎると,そこが耳に残りすぎるんです。ゲーム音楽は数分の短い時間でループさせるのが普通ですよね。その時間であまりに一部のフレーズを目立たせてしまうと,聞いているほうは「ループしている」感覚を強く持つんです。それが必然的に飽きにつながってしまいます。

4Gamer:
 確かに,目安になるフレーズができてしまうと,「あ,またこのフレーズか」と気になってきますね。

中園氏:
 でも,川井憲次さんは,ここの(盛り上がりの)「寸止め」が非常にうまくて,ずっと聞いていても飽きないんです。本当にすごいと思います。

2014年「覚醒の章」
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本当の「第二の人生」としてのMMORPG


4Gamer:
 プレイヤーの嗜好の変化という点でもう少しお聞きしたいのですが,昨今ですとDiscordをはじめとしたボイスチャットがはやっていますよね。信Onのプレイヤーさんの間ではどうでしょう。

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川又氏:
 信Onはテキストでのチャット文化が強いです。もちろん使っているプレイヤーさんはいらっしゃって,対人戦の好きな方は間違いなく外部のボイスチャットを使われているでしょう。
 でもそれ以外の日常的なプレイということになると,テキストチャットが活用されていると思います。むしろテキストチャットの良さが評価されているのかな,と。言ってみれば「電話よりSNS」みたいな感じで。

4Gamer:
 MMORPGだと「ゲーム内にいるのはあくまでキャラクターであって,自分ではない」というアバター文化的な感覚があるせいで,カジュアルなプレイ環境ではボイスチャットが普及しづらいという見解を聞くことがあるんです。

川又氏:
 それはあるでしょうね。例えば僕は巫女という職業が好きですけど,じゃあこれでボイスチャットを使うとすると,ボイスチェンジャー使ったほうがいいかな? みたいな気持ちになるんですよね(笑)。

一同:(笑)

川又氏:
 これは逆も然りで,女性のプレイヤーさんで神主をプレイされていると,やはりそこで引っかかりが生まれてしまいます。プレイヤーがアバターを使って現実世界とは別の人生を歩んでいる中で,ボイスチャットは必須なものにはならないんですよ。

4Gamer:
 アバターとしてのキャラクターと,現実のボイスが混ざってしまうと,興ざめしてしまいかねないですね。それこそ,声もアバター化するしかない(笑)。

川又氏:
 ええ(笑)。あと,信Onでボイスチャットが少ないのは,コマンドバトルだというところも大きいと思います。詰将棋のような展開をしていく戦闘で,自分がコマンドを入力すると,次に入力順番が回ってくるまではテキストチャットが打ち放題ですから。
 そういう面でもテキストチャット文化は発達してきましたし,システム側としてもチャット機能は強化し続けてきました。

4Gamer:
 チャットなどはオンラインならではの機能ですが,逆に「オンラインゲームであっても自分のペースで遊びたい」という要望もまた,高まっているのではないかと思うんです。ソロで遊べる要素がもっと欲しいとか。

川又氏:
 実を言うと,信Onの企画が立ち上がった当時は,オンラインゲームが受け入れられるかどうか分からなかったので,シングルプレイモードも検討されていたんです。
 ただ,いざβテストが始まってみると,思ったより皆さんに新しい世界を楽しんでいただけたので,シングルプレイモードは実装されないことになりました。

4Gamer:
 15年前だからこそ,シングルプレイモードの構想があったんですね。どんな内容だったのか気になります。

川又氏:
 かなり壮大なストーリーや,敵の設定を考えていましたが,今でもそうしたシングルプレイモード向けに作った各種設定,ダンジョンやモンスターなどは,ゲーム内に受け継がれているんですよ。

4Gamer:
 なるほど。

川又氏:
 そしてご指摘のように,時代が進むにつれてソロで遊べるコンテンツが欲しいという要望は増えました。というよりも,要望数がトップになることもあったんです。でも,これは非常に難しい問題です。この要望にストレートにお応えしてソロ用のコンテンツをどんどんリリースしていけば,当然ながらプレイヤー間の交流は減っていきますし,「これなら信Onじゃなくていい」と言われてしまう危険性すらあります。

4Gamer:
 すべてがソロで完結できてしまうのは,オンラインゲームとして厳しいですね。

川又氏:
 はい。この問題にどう対応するかというのは実に難しいですが,少なくとも信Onでは「一人で遊んでも楽しいが,みんなで遊べばもっと楽しい」ということを絶対に忘れてはならないというポリシーにしています。ただ面白いことに,直近では「ソロで遊べるコンテンツがほしい」という要望の順位が下がってきているんです。

4Gamer:
 そうなんですか。

川又氏:
 やっぱり人と一緒に遊ぶというのが,一番楽しいんですよ。「仲間が自分を回復してくれた」みたいな協力であったり,チャットの楽しさであったり,そういった「一緒に遊ぶ楽しさ」は大事にしていくべきだと,改めて実感しています。
 もっとも,それと同時に「一人で遊べるコンテンツ」に対して何が求められているのかというのも分かってきた感があります。つまりMMORPGって,想像するよりもずっと,「第二の人生」なんですよ。

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4Gamer:
 いわゆる定型的な売り文句以上に,ということですね?

川又氏:
 ええ。まさに「第二の人生」だからこそ,リアルな人生と同じように,みんなと一緒に何かをしたいときもあれば,自分ひとりの時間が欲しいこともある。そういう,いわば人間関係の表と裏が同時にあるのがMMORPGなんだろうな,と思います。


これからの「信長の野望 Online」


4Gamer:
 最後に,信Onの今後の展望について教えてもらえますか。

川又氏:
 15年間というのは節目でもあるのですが,通過点の1つだと考えています。これまでずっとご愛顧いただいている方も,最近新たにプレイし始めたという方も,さまざまなプレイヤーさんがいらっしゃいます。中には「親子で遊んでいる」という方もいらっしゃって,文字どおり「新たな世代の方に遊んでいただいている」ことを感じています。

4Gamer:
 ああ,第1世代のオンラインゲームプレイヤーが,今では親子で遊んでいるというのはよく聞きますね。

川又氏:
 そんななか,信Onも新たな未来を目指して行かなくてはなりません。そこで,先日(6月10日)の「おかげさまで15周年!“信On”大感謝祭Live!」で新規拡張パックの開発を始めたことを発表しました。

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「おかげさまで15周年!“信On”大感謝祭Live!」告知ページ(公式サイト)


4Gamer:
 プレイヤーにとっては,信Onがまだまだ続くという嬉しい知らせですね。

川又氏:
 この拡張パックでは,原点回帰を含めた新規開発を目指し,プレイヤーの皆さんと一緒にその方向性を考えていきたいと思っています。昔から遊んでいただいている方からも,最近プレイし始めたという方からも,ご意見やアイデアをいただくのは,MMORPGにとって非常に重要です。信On自体,15年間皆様のご意見をうかがいながら,今に至れたというところがありますので。

4Gamer:
 プレイヤーが望むもの,コーエーテクモゲームスが目指すものを,より明確にすり合わせていくわけですね。

川又氏:
 はい。ですので,具体的なリリース日までは発表できませんが,「15周年記念拡張パック」と言えるように,開発を頑張っていきたいと思っています。

4Gamer:
 プレイヤーからの意見は,どのようにして集めることになるのでしょう。

川又氏:
 ソーシャルメディアを活用したり,あとは公式サイトでのご意見募集だったりを考えています。

4Gamer:
 ゲーム中で,というのはないんですか。

川又氏:
 プレイヤーさんからの意見はもちろんうかがいたいです。ですが「以前は遊んでいたけれど,今は遊んでいない」という方ともつながれるメディアを主に利用すべきだろう,とも考えているんです。

4Gamer:
 なるほど。

川又氏:
 また,公式サイトでは体験版がダウンロード可能で,14日間無料でプレイできます。新規はもちろん,「昔プレイしていたけれど,今はプレイしていない」という方でも14日間無料となりますので,これを機会に遊んでいただければ嬉しく思います。
 今なら公式サイトのトップから体験版ダウンロードページにすぐアクセス可能ですし,アカウントもゲストアカウントをその場で発行できますので,手軽に遊んでいただけると思います。

4Gamer:
 新規プレイヤーだからこそ,戻ったからこそ気になるという部分はあるでしょうから,体験版からのフィードバックがあるとありがたいですね。

川又氏:
 ええ,ぜひご意見をお願いしたいです。「信長の野望 Online」の今後のサービスはもちろん,新たな拡張パックを制作していきますので,これからもよろしくお願いします。

4Gamer:
 本日は長時間,ありがとうございました。

2016年「勇士の章」
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