インタビュー
「ヤン魂。」安藤プロデューサーに聞く,“喧嘩ストロングモード”で目指すもの
ヤン魂。とは果たして,“MMORPG”なのか否か
ということは,ヤン魂。を指してMMORPGという言い方もしないほうがいいんでしょうか?
安藤氏:
いやでもね,RPGという言い方はしていただきたいんです。
4Gamer:
え……。じゃあ,アクションRPG?
安藤氏:
アクションRPGになっていくのかなぁ……。
というかアレなんですよね,試行錯誤している最中なんですけど,バンボーバトルはアクションゲームではありません。でももしかすると,喧嘩ストロングモードと並立するぐらいの仕組みになる可能性を秘めているんです。それを考えていくと,やっぱりアクションゲームだと言い切るよりは,RPGっていう大きい枠組みにしておいたほうがいいのかなと。
4Gamer:
うーん,じゃあやっぱり,“ネットヤンクゲーム”というのが一番いいかもしれませんね。
安藤氏:
一番しっくりくるかもしれないですね。ほかにないものを目指しているわけですし。
でも本音を言ってしまうと,一つのゲームの中に複数のシステムが乱立するのは,ゲームの設計としては美しくないなぁとも思っているんですよね(笑)。歴史的に見てもいいゲームって,一つのシステムを深めているもののほうが多いわけですし。
4Gamer:
まあ,本筋に確固たるものがあって,そのほかに出来のいいミニゲームが用意されているようなものはありますけど。
安藤氏:
ただヤン魂。って,乗り物に乗っているときの生き様と,降りているときの生き様が違うんでね。開き直って,メインになりうるものを複数用意しちゃおうかなって。
だから現状,喧嘩ストロングモードとバンボーバトルのどちらかを柱にするっていうつもりもなくて,どっちも盛り上がってくれればいいなと。その結果,バンボーバトルのほうが盛り上がったら,プレイヤーから見てヤン魂。はアクションゲームではなくなりますし。
4Gamer:
というと,今後の開発は,盛り上がったほうに比重を置いていく感じですか?
伊勢氏:
まあ繋がっているものとして考えているので,どちらかに偏らせることはないと思います。
4Gamer:
そしていずれは,フォーメーションバトルも……?
入るといいですよねぇ。
ヤン魂。って,フォーメーションバトル,喧嘩ストロングモード,バンボーバトルなんかが遊べるミニゲーム集みたいに考えていたこともあったんですよ。で,そこへのアクセスをみんなでできるような仕組みも考えていたんです。
4Gamer:
というと,マップがすべてミニゲームへのロビーみたいな感じですか?
安藤氏:
そうですね。ただ,「今日はバンボーバトルをやるか」なんてアイコンを選択するだけだと味気ないし,ミニゲーム集そのものになってしまうんで。マップを作って導線を作って……ってやっていると,RPG的な設計が必要になってくるんですよ。
4Gamer:
でも基本は,RPGよりも気軽に遊べるものを目指したいということですね?
安藤氏:
チャットの合間にミニゲームを遊んでみようとか,そういう感じのものですね。ただ,喧嘩ストロングモードにしろバンボーバトルにしろ本気で作っているんで,それをミニゲームって言っちゃうのはいやだなぁっていう思いもあって。
ヤンキーのバリエーションは,おいおい追加予定
昨年末に聞いたお話では,種族っぽいものも用意するとのことでしたが。
安藤氏:
あれもやりますよ。すでにステータスのところに頭文字はありますからね。“マ”とか。
4Gamer:
あ,そういうことだったんですね。
安藤氏:
喧嘩ストロングモードを深めていくためには,重要なものなんで。自分の持っている武器に属性があったり,戦うのが得意なヤツ,守るのが得意なヤツ,補助するのが得意なヤツ……っていう種族みたいなのがあって,パーティを組むメリットが生まれたり。
4Gamer:
みんな同じような能力だと,パーティを組んでも大した差が生まれませんし。
安藤氏:
それに,画面の中にヘンなヤンキーがいっぱいいたほうが面白いじゃないですか。アバターとかコミュニケーションの世界を深める意味でも。
4Gamer:
では,実装はいつ頃を考えていますか?
安藤氏:
いつぐらいになるかなぁ? まだ全然そういう話はできてないんですよね,正直なところ。
伊勢氏:
けっこう後回しにするつもりではありますね。はい。
安藤氏:
その手前のところにさまざまな課題が大量に積み残されたままになっているんで,まずはそっちを片付けないといけないですからね。ただ,最初から早期に実装するつもりはなかったんで,まあ,おいおい……そうだなぁ,家具なんかが全部できてから作り始める感じですね。
4Gamer:
だいぶ先になりそうですね……。
でも現状,ヤンキーやレディースのベースモデルのバリエーションが乏しいような気もするのですが……。
安藤氏:
一応,でっかいヤンキーのマッスルとレディースのディーバっていうのを考えていて,モデリングは完了してるんです。なので,単純に,いつ入れようかっていう話なんですけど。
伊勢氏:
見た目が違うだけですからね(笑)。
4Gamer:
では,基本的にアバターアイテムの組み合わせで,見た目の差を出していくしかないということですか?
安藤氏:
そうですね。身に付けるもので変えさせようと思っています。ヤンキーとレディースの基本的な容姿を変更するつもりは,まったくないです。
4Gamer:
例えばヤンキーの世界にいがちな,腰巾着っぽい背の低いヤツとかがほしいみたいな声もあるんじゃないかと思うんですが。
安藤氏:
それはまあ,種族的な位置づけで。いわゆるシーフ的な感じで,倒したときにいっぱいお金もらえるとか(笑)。
伊勢氏:
ドワーフみたいなパワー型とかも考えてます。
4Gamer:
では,それを現状のシステムに載せるとしたら,どういった感じになるんでしょうか。キャラクターを新たに作る必要があるんでしょうか? それとも転職……?
システム的に「卒業」があるんですよ。卒業時にキャラクターデータを引き継いで,新しいキャラクターを作ってもらうとか,そういうことを考えています。
……ただ,卒業システムっていうのは正直,オンラインゲームのビジネスに向いていない気もするんですよね。例えば,3か月で卒業できちゃったら,そのタイミングでゲームから引退してしまう人もいるかと思いますし。なので,そのあたりも考慮しつつ,どういう形で実装するのがベストなのか? というのを考えているところです。
4Gamer:
ともすれば,卒業式がエンディングになってしまいかねないですしねぇ。実際,そういうケースもありましたし。
安藤氏:
でも卒業自体,ポジティブなイベントとしてやりたいんですよ。だから,卒業しないとできないイベントを,いかに作っていくかにかかってくるんですよね。また次の卒業が楽しみになるような。
4Gamer:
確かにヤンキーの世界では,一種のお祭りみたいな部分もありますよね,卒業って。
安藤氏:
だからね,花火とか爆竹をみんなで鳴らしたいんです。その量で,自分がいかに後輩達から慕われているか,絆があるかが分かるという。
伊勢氏:
有料アイテムのアイデアとして最初に上がってきたものが,花火だったんですよ。「花火(大):1000円」なんてことになっていて。さすがにそれは……ということで,昨今のオンラインゲーム事情を説明して,思いとどまっていただきましたけど。
安藤氏:
でもねぇ,あってもいいとは思うんですよね。仲良しのアイツの卒業を祝って,1000円の八尺玉を打ち上げてやる! みたいな。
伊勢氏:
男気を見せてやる! っていう。
安藤氏:
もの凄く人気のあるヤツがいたら,それこそ多摩川花火大会みたいなことにもなるかもしれないですしね。そういうのも面白いんじゃないかなと。
そういうことはたくさん考えているんですけど,その前にやらないといけないことがホンットに多くて。
4Gamer:
まずは足元をきっちり固めていかないことには……ですよね。
安藤氏:
だから先々のスケジュールを公開するのも怖いんですよね。今まで,それで何度もヤン魂。に期待してくれている人達の気持ちを裏切ってきてしまってるので。だから最近では,確実なものに限って,時期を公表するようにしています。
伊勢氏:
とはいいつつ,バンボーバトルを2009年1月7日に実装するという発表も,かなりギリギリの感じだったんですけどね。まあ,一番キツイのは,三日後に正式サービスが始まるということなんですけど……。
シンクアーツが解散しても,第二期ヤン魂。は解散しない
最後になりますが,この話題にも触れなければなりません。
先日,シンクアーツの解散が発表されましたが,これはヤン魂。にどう影響しそうですか?
安藤氏:
ちょうどオープン特攻テストが始まるタイミングでしたからね。びっくりしました。
正直,プロデューサーとしての事務処理や政治的な動きは,いろいろあります。でも一番避けなければならないのは,ヤン魂。をプレイヤーに届けられなくなることだと思いますし,そうはならない体制も整えています。
4Gamer:
なんでも,これまでヤン魂。の開発でも実績のあるところが,担当するとのことですが……。
安藤氏:
ヤン魂。って,シンクアーツだけじゃなくて,サポートしてくださっている会社はたくさんあるんですね。なので,ヤン魂。に関するノウハウを持っていて,気心が知れた人達が,これまでよりも深くヤン魂。に力を入れてくれるような体制になるといいな……と。
シンクアーツのスタッフがこれからどうなるのか? という点に関しては,我々がタッチできる領域ではないので,なんとも言えないんですけど。
4Gamer:
それもちょっと,寂しいお話ですね。
安藤氏:
これまでシンクアーツでヤン魂。を作ってきたスタッフには,どこか別の会社に行っても,巡り巡ってまたヤン魂。を作ってくれればいいなって祈るしかないです。
4Gamer:
そうですよねぇ……。苦労が多かった分,途中で手放すのはクリエイターとしても心残りでしょうし。
とはいえシンクアーツの解散が発表された直後に,正式サービスがスタートするとなると,「もう開発ができなくなるから,少しでも資金を回収してプロジェクトを終わらせようとしているのでは?」という不安を持つプレイヤーもいると思うんです。
安藤氏:
あ,なるほど。でも,それは絶対にあり得ません。ご安心ください。それにオープン特攻テストまでは,シンクアーツのスタッフが一人も欠けることなく開発を続けてましたし,並行してプログラムや企画のサポートを担当してくれる会社もいろいろと動いてくれてきているんです。
4Gamer:
シンクアーツだけで開発をしてきたわけではない,と。
安藤氏:
例えばエンジンが二つあって,片方が消えても,もう片方が動く形になっているんで,ヤン魂。が止まることはありません。体制がきちんと固まって公表できる段階になったら,早めに発表はしますので,ちょっとお待ちください。
4Gamer:
その間,開発が停滞してしまうことはありませんか?
その辺の対策は済んでいますんで,それはないと思います。現実問題,開発が停滞する可能性があったら,オープン特攻テストを始められてないでしょうし。ここで延期してしまっていたら,逆に停滞しちゃった可能性はありますけど。
4Gamer:
とにかく走り出したからこそ,減速もできないし,止まることもできないんだということですね。
安藤氏:
ヤン魂。を突然辞めるようなことは,絶対にできないですから。そんなことになって信用をなくしたら,僕はもうゲームを作れなくなっちゃいますよ。
僕はまだまだゲームを作りたいですし。ゲームポットさんの応援だってハンパないっすからね。そういうことを考えると,絶対にやらないといけないし,辞めるつもりもまったくないですから。
4Gamer:
安心しました!
今日はありがとうございました。
インタビュー中,オープン特攻テストから正式サービスへの移行は「大丈夫」と語られていたものの,実際には予定の1日遅れになってしまったが,どうにかこうにかヤン魂。は,本格的に走り出すことに成功した。
次の峠は,「Gamepot Festa 2008」で発表された,「初日の出イベント」用のアップデートや,2009年1月7日(水)に予定されているPvP用新戦闘システム「バンボーバトル」の実装だろう。これらが大きな問題に遭遇することなく,無事に実装されるのか,それとも……? といったあたりも含め,これからのヤン魂。は,これまで以上に目を離せない存在となるだろう。
そしてある程度,ゲームとしての基盤が確立されたあと,どんな奇想天外な要素がヤン魂。に取り入れられることになるのか。“革命戦士”安藤武博プロデューサーの今後の手腕も,要注目だ。
「疾走、ヤンキー魂。」公式祭斗
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