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[E3 2005#194]CEO TJ Kim氏が語るNCsoftの現状と戦略。GWやCoHの日本展開も!
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印刷2005/05/27 23:43

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[E3 2005#194]CEO TJ Kim氏が語るNCsoftの現状と戦略。GWやCoHの日本展開も!

 E3 2005に出展したNCsoftは,去年と同様に中央に対戦スペースを配し,その周囲にタイトルを並べるという陣容で臨む。その対戦スペースでは,2005年4月28日に正式サービスを開始したGuild Warsの対戦を1時間ごとに開催するなど,MMORPGだけでなくオンライン対戦(e-Sports)に注力しているイメージを前面に押し出していた。
 NCsoftのラインナップを見ても,LineageIICity of Villains,Guild Wars,Tabula RasaAuto Assaultとなっており,オンライン対戦に焦点を当てているタイトルが多いのが印象的だ。
 E3の2日めとなる5月19日,いつものように強引にスケジュールを調整してもらって,NCsoft CEOのKim, Tack Jin氏にインタビューを敢行した。オンライン対戦に注力している理由や,日本での展開など気になる話が聞けたので細部もらさずお伝えしていこう。



4Gamer.net(以下,4G):
 毎年,お時間をとっていただきありがとうございます。よろしくお願いします。

Kim Tack Jin(以下,TJ氏):
 いえいえ,こちらこそよろしく。

4G:
 さて,いきなりですが,E3 2005でのNCsoftの出展タイトルを見てみると,Guild Wars,Auto Assault,Exteelとオンライン対戦を意識したものが多くなっています。御社の方向性はどのようなものなのでしょうか。

TJ氏:
 オンラインゲームは,協力して一緒にプレイするのが基本だと思いますので,それを推進していくというのがNCsoftの基本的なスタンスとなります。韓国でもPKに否定的な意見を持つ人は多いのですが,ある程度ルールを設定して,それを守って対戦を楽しむのが韓国でe-Sportsと呼ばれているものです。

4G:
 NCsoftが開発したタイトルは,韓国の市場を牽引しつつも,少なからず韓国市場に合わせている部分があると思いますが,それを欧米市場に持ってきた場合,どのような反応がありましたか?

TJ氏:
 韓国のインターネットユーザーのトレンドが少し先にいっているだけで,求めるものは基本的に世界共通だと思います。2004年に正式サービスを開始した「City of Heroes」(以下,CoH)も欧米市場でヒットしましたし,4月28日にスタートしたGuild Wars(以下,GW)も欧米を含めて同時にスタートしたのですが,期待以上の数字が出ています。欧米市場でも受け入れられたとみてよいのではないでしょうか。

4G:
 GWは予想以上だったんですね。差し支えなければ大体の数字を教えてください。

TJ氏:
 欧米のPC部門でNo.1セラーとなりました。また,雑誌や評論家にも,高い評価をいただいています。具体的な数字としては,リリース後1週間で,アメリカとヨーロッパを合わせて30万本の売り上げがありました。

4G:
 おお,結構いってますね。確か,GWではオンラインゲームでは珍しいライセンス課金モデルが採用されましたが,これは以前から決まっていたことですか?

TJ氏:
 ええ,ゲームの企画段階から決まっていたものです。

4G:
 ほほう。では,それはGWに特化したものと考えていいでしょうか。それともほかのタイトルにも採用していくのでしょうか?

TJ氏:
 このライセンス課金は,GWのために考えました。基本的に,NCsoftではタイトルによって課金モデルを変えていますよ。

4G:
 それは面白いですね。GWの開発はいつごろから始まっていたのですか?

TJ氏:
 ええと……,約5年前です。

4G:
 とすると,5年前からこのライセンス課金モデルのアイデアがあったと。

TJ氏:
 そうです。GWは,最初の2年を技術開発に集中し,その後の3年をコンテンツ開発に費やしてきましたが,課金スタイルは当初から変わっていません。

4月28日に正式サービスがスタートしたGuild Warsは,数百のスキルから8つを選び,16人までの対戦を行うオンラインゲーム


■新しいトレンドをつくるためのミドルセクション戦略

4G:
 ところでGWは,日本でサービスをする予定はありますか?

TJ氏:
 ええ。CoHとCity of Villains(以下,CoV)は今年中を目標に日本でサービスを開始できればいいなと考えています。課金とかファシリティはエヌ・シー・ジャパンで行いますので,具体的なスケジュールや料金設定などは,私の口からは発表できません。日本での展開スケジュールとしては,まずGWをリリースし,それからCoHとCoVを同時に開始したいですね。

4G:
 同時リリースとは思い切ったスケジュールとなりそうですね。

エヌ・シー・ジャパン広報:
 この件については,追ってリリースを出しますので。

4G:
 了解しました。2004年のE3で6誌合同インタビューを行ったときに,あなたが「日本でどのタイトルが売れそうか」という質問をしたと思うのですが,そのとき我々だけがGWと答えたのですよ。なので,先にCoHがリリースされなくてよかったです(笑)。

TJ氏:
 あぁ,そういえばそうでしたね(笑)。

4G:
 あと,2004年のTGSだと思うのですが,CoHを日本でリリースするときは,アジアンヒーローを追加するというコメントがありました。そのあたりの開発状況はどのようになってますか?

TJ氏:
 安心してください,ちゃんと作っていますよ。アジアンヒーローの開発はすでに終わっていて,今は日本のヒーローを特別に追加することに注力しています。ここは逆に日本のプレイヤーの反応を見てみたいところですね。

4G:
 おおっ,日本ヒーローが登場するのですか。それは楽しみです。反応といえば,CoHの5月4日のアップデートでアリーナが実装されましたが,どんな反応ですか?

TJ氏:
 実装の前の週にアリーナのテストプレイをしたんですが,社内テストでの評判は非常によいものでした。プレイヤーの反応はまだチェックしていませんが,こちらも評判がよければアジアンヒーローを中心に追加していきたいですね。アリーナのプレイスタイルや感覚は,ゲームセンターのフィーリングに近いので,日本のプレイヤーも気軽に楽しめるのではないでしょうか。

4G:
 CoHは個人的にもプレイしているので,楽しんでみようと思います。ときにゲームセンター感覚という単語が出たので,お聞きしたいのですが,先ほど今年のE3で初出展となったExteelをブースでプレイしてきて,ゲームセンターで遊んでいる感覚に近いものを感じました。これもCoHのアリーナと同じようなコンセプトで開発されたタイトルなのですか?

TJ氏:
 ええ,今は新しいトレンドを作りだそうとしているところです。いままでのオンラインゲームに多かったファンタジーワールドから逃れて,MMORPGをプレイしたことのない人や,ゲームセンターでしかゲームを遊んだことのない人にアピールできるゲームを揃えているところです。NCSoftは,新しいことに挑戦していかなければならない段階ですので,そういうタイトルの開発は必要だと思ってます。

4G:
 インタビューをするとき,いつも長期的な目標と短期目標の二つを掲げてくださるのは,さすがですよね。

TJ氏:
 4Gamerさんは,根掘り葉掘り聞いてくるので怖くて仕方ありません(笑)

4G:
 (笑)。さて,そのExteelですが,いままでオンラインゲームを遊んだことのない人へのアピールポイントはどこですか?

TJ氏:
 基本的には簡単な操作と,香港映画が持つ派手なアクションとエフェクトをイメージしているところです。操作もFPSのように難しくするのではなく,オートターゲットにするなど,簡単にオンラインゲームの楽しさを感じさせる方向にしていきたいですね。

操作が簡単で,気軽に対戦が楽しめるExteelは,E3 2005で初お披露目されたタイトル。香港ムービーばりのアクションにも注目だ


4G:
 香港映画ってのは分かりやすいですね。

TJ氏:
 ええ,分かりやすいでしょう。横移動しながら銃を撃つのも香港映画から得たアイデアですよ。

4G:
 銃を横に構えるのもそうですよね。しかし今現在のオンラインゲームのプレイヤー層は,ピラミッド構造になっていると思いますが,Exteelを含めて御社の最近のラインナップはどこを狙っていっているものなのでしょうか。

TJ氏:
 最終的には,ピラミッド構造の全部をカバーできるように進んでいきたいのですが,今はミドルセクションをカバーするタイトルの開発を重点的にしています。弊社はすでにリネージュIIなどハードコア向けのタイトルは持ってるので,そこから下のミドルセクションを狙っていくところです。

4G:
 なるほど。やはり上の層から徐々に下の層へ広げていくという展開なのですね。しかし,昨年あたりからMMORPGのタイトル数が激減してきていますよね。オンラインゲーム市場としても変革期,過渡期に入っているのではと思うところがあります。そのような状況下でのNCsoftの戦略は,ミドルセクションへの注力以外にどんなものがありますか?

TJ氏:
 そうですね……。オンラインゲームはこれからも発展していくジャンルだと思います。ゲーム性や自由度に幅を持たせられるMMORPGも,同様に発展していくのではないでしょうか。NCsoftでも来年に,いままでになかったファンタジー系のMMORPGをリリースする予定がありますし,FPSの要素をいれて多様な感覚を持つゲームも開発中です。ほかにも,Exteelやスポーツゲームなどコンシューマ機に慣れてる人に向けてのタイトルも来年の後半にリリースできるように開発中です。

4G:
 スポーツゲームもあるんですか。

TJ氏:
 ええ。このようなミドルセクション向けタイトルでは,ゲームパッド対応も重要だと思っています。コンシューマ機でよく遊ぶ人は,ゲームパッドに慣れていますしね。PCゲームでも,パッドさえあれば同じ感覚でプレイできるように開発を進めています。

4G:
 NCsoftほどの開発力があれば,無理にPCでリリースせずにコンシューマ機への進出が考えられますが,そのあたりはどう考えていますか?

TJ氏:
 そこはいつも悩んでいる問題なのですが,いつかはコンシューマ機に対応していきたいとは思っています。いくつかのタイトルは,コンシューマ機で動くバージョンを作ってみましたが,会社全体の戦略とはまだいえません。

4G:
 お,テスト段階ということですね。いつごろ進出できそうですか?

TJ氏:
 まぁ,そこは自信が持てる時期になってからって感じですね。

4G:
 期待できそうですね。韓国ではどの機種が売れているのでしょうか。

TJ氏:
 PS2かな? でも日本や欧米と比べるとまだ普及台数は少ないですよ。

4G:
 それもそうですね……。ところで今年のE3ではコンシューマの新機種が3台発表されましたが,どう思いますか?

TJ氏:
 早めにスペックなどを発表したXbox 360と,それとは逆に遅れてしまったプレイステーション3という印象があります。プレイステーション3は,市場投入の時期も遅くなるでしょうから,コンテンツ開発には大きな影響が出るでしょう。プレイステーション3で予定されている有名タイトルが,先にXbox 360でリリースされることもあるんじゃないでしょうか。

4G:
 もしもコンシューマに進出するとしたら,どれを選びますか?

TJ氏:
 うーん,難しいですね……。プレイステーション3はHDD(ハードディスクドライブ)が標準でついていないようですので,NCsoftとしてはオンラインゲームを開発には向いていない気がします。やはり,デフォルトで付属するのか,追加で買わなければならないのかは,大きく違いますので,作る側からすれば,そこが重要になりますね。まぁこういう話をすると,メモリースティックでもいいんじゃないかということになるんですが,容量とスピードをクリアするものが出てくるにはあと10年くらいはかかりますしね(笑)。

4G:
 確かに(笑)。

City of Villainsは,悪のヒーローでプレイできるだけでなく,新パワーセットやアジト構築など新要素もふんだんに詰まっている


■RMTへのNCsoftの見解とポータルサイトへの意気込み

4G:
 さて,また話はちょっと変わるのですが,NCsoftでポータルサイトを開発しているというのをお聞きしました。現状の一般的なポータルサイトはタイトルが並んでいるだけというのが多いのですが,NCsoftが考えるポータルサイトとはどのようなものでしょうか。

TJ氏:
 どこから聞いたんですか……。まだ,開発途中ですので,ポータルサイトについてお話しできることは少ししかありません。お話できるのは,基本コンセプトとしてミドルセクションのオンラインゲーマー向けのものになる程度ですね。今の時期は,そこに入れるタイトルの開発に力を注いでるところです。ポータルサイトがどのような方向性を持っているかについてもまだ発表できません。

4G:
 ふむふむ。やはりNCsoftの戦術として重要な部分を占めているのですね。ポータルサイト用に新規タイトルの開発もあるのですか?

TJ氏:
 いろんなアイデアがありますし,また製作中に取捨選択しなければならないところも多くありますので,いまはお話できません。

4G:
 では,ポータル用のタイトルの開発も可能性としてはありうるということですね。サイトといえば,先日SOEがStation ExchangeというRMTサイトの立ち上げを発表しましたが,RMTに対してどのように考えてますか?

TJ氏:
 NCsoftとしては,基本的にRMTに対しては反対の立場,否定的な意見を持っています。ヴァーチャル世界にリアル世界の力を使って干渉するのはあまりよくないと考えています。

4G:
 このSOEの動きは,業界的にも大きなムーブメントとなりそうですが,NCsoftとしてはどのようなことを理由に反対の立場をとるのでしょうか。

TJ氏:
 ゲームはゲームそれ自体で楽しめなければならないというのが根本思想です。すでにリリースしているもの,または現在開発中のものはRMTを前提として設計してはいませんので,今は批判的な立場でしか見れませんね。

4G:
 それは,今後も変わらないですか?

TJ氏:
 これから開発を行うであろうタイトルについてもRMTを前提とした設計は入れるつもりがありませんので,今後に対しても同じ意見で行こうと思ってます。

4G:
 なるほど。日本ではコーエーもRMTに対しては同意見のようですよ。

TJ氏:
 味方が出来たような気がします(笑)。

4G:
 あぁ,時間が。最後の質問です。先日NCsoftが,Unreal Engine3のライセンスを購入したという報道がありましたが,なにか新しいタイトルの開発が始まるのですか? それはLineage3ですか?

TJ氏:
 いいえ,先ほど少しお話した,来年の後半のリリースを予定しているプロジェクト名"ANG"というタイトルの開発用です。これはミドルセクションをターゲットしていて,コンシューマ機の感覚を持ったタイトルですよ。

4G:
 初めて聞く名前が……。Lineage3ではないと聞いて,ちょっと残念な気持ちも……(笑)。今日はどうもありがとうございました。




##########

 今年の同氏のコメントで気になったのは,新しいトレンドを作りたいというところだ。オンラインゲーム黎明期では,ユーザの拘束時間を長くするという流れがあったが,現在ではなるべく短くする方向,また市場拡大という視点からライトゲーマー獲得方向のベクトルに修正したデベロッパが多い。CoHやGWで欧米市場でも成功し,世界規模での確実な土台を築き上げた同社だが,次は人数が多いミドルセクション層(ライトゲーマー層)で顧客を増やそうとしている。これも成功すれば,オンラインゲーム市場を席巻できる可能性は非常に高いだろう。
 またRMTについても明確な否定を表明した同氏と,逆にRMTサイトを立ち上げたSony Online Entertainment。今後しばらくは,業界をリードする両社の今後だけでなく,市場全体の動きにも注目したいところだ。(Seal)

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