インタビュー
サービス10周年を迎えた「ミュー」を新旧運営スタッフが振り返る。新キャラの実装も明らかになったインタビューを掲載
そんな盛り上がりのなか,10周年ということで,これまでのミューを振り返ろうと新旧の運営スタッフが集まり,当時の思い出や,今だから言える話を存分に語ってもらった。運営とプレイヤーとの距離感の変化やミューという作品の在り方,運営が見てきた悲喜こもごもをお伝えしよう。
もちろん,直近や今後のアップデートに関してもいろいろと聞いてみたので,ミューのこれからが気になっているプレイヤーも余さずチェックしてほしい。
ミュー日本運営チーム,GMモスグリーン氏。公式生放送でもおなじみの衣装で駆けつけてくれた。正式サービス当初からの運営チームメンバーであり,長期間ミューに携わっている |
ミュー日本運営チーム,ポンガイエロー氏。公式生放送で顔出しをかけてイベント中ということもあって,今回は顔出しNGとのこと。今後の配信を要チェック |
「AVA」日本運営プロデューサー,井上洋一郎氏。ミューではβテスト時代はサブプロデューサー,2004年夏から2006年夏前までの約2年間はプロデューサーとして活躍。ミューの運営開始初期をもっともよく知る人物 |
「AVA」日本運営チーム,アヴァグリーン氏。もともとミュープレイヤーだったがGMに採用されてゲームオンに入社したという経緯を持つ |
「ミュー 奇蹟の大地」公式サイト
プレイヤーとの触れ合いから始まった「ミュー」10年の歩み
4Gamer:
本日は,よろしくお願いします。2014年2月で10周年を迎えたということで,改めてですが,おめでとうございます。
ゲームオン一同:
ありがとうございます!
4Gamer:
今回新旧の運営スタッフの皆さんにお集まりいただきました。定番ではありますが,これまでの歩みから簡単に振り返っていきましょうか。
はい。まず,ミューのβテストが始まったのは2003年6月ですね。昨今のMMORPGに比べるとβテスト期間が長かったんですよ(※編注:2003年4月にαテストが行われ,同年6月にオープンβテストを実施している)。
4Gamer:
翌年2月27日に正式サービス開始ですから,半年以上になりますね。
GMモスグリーン氏:
ええ。ですが当時は,それが割と一般的だったんです。
4Gamer:
ここ最近よりも,じっくりとテストを実施していたというイメージがありますね。ちなみに当時,βテストからのプレイヤー定着率はどのくらいだったんですか?
井上氏:
サービス開始当初は月額課金制でしたが,βテスターの半分程度のプレイヤーが遊んでくれていたと思います。定着率としては非常に高かったですよ。
GMモスグリーン氏:
月額というか,40日で2000円という値段設定だったよね。
井上氏:
あー,そうだったね!
4Gamer:
どうして40日だったのでしょう。
井上氏:
いま考えるとキリが悪い日数なんですけど……あれは,他社さんの作品と月額料金で比較されるのが嫌だったから,と聞いています(笑)。
4Gamer:
当時でいうと……まだ月額制だったあの作品でしょうか。
井上氏:
ご想像にお任せします(笑)。
GMモスグリーン氏:
ちなみに,当時課金していただいたプレイヤーさんには,「プレミアムミュティズンカード」を配布したりしましたね。そのカードを持っていると優先的にテストサーバーにログインできたり,いろいろ特典があったんですよ。
井上氏:
それから六本木ヴェルファーレで,最初の大きなイベントが行われたんです。あれが,2004年7月の中旬でした。
4Gamer:
いまはニコファーレのある場所ですね。
井上氏:
そうです。パッケージ版の発売に合わせたイベントだったんですが,橋本真也選手をゲストに迎えたんですよ(関連記事)。当時「ハッスルハッスル!」という仕草が流行していたので,そのつながりで,ゲーム内のエモティコンに取り入れるなど,ちょっと変わったプロモーションを行っていました。
4Gamer:
はやりましたね(笑)。懐かしいです。
GMモスグリーン氏:
ですよね(笑)。それで,ゲーム内で「ハッスル」とチャットするとキャラクターがその仕草を自動的に行うんです(関連記事)。当時,開発元に仕草の詳細を伝えるため,井上さんがハンディカメラを持って「ハッスルハッスル!」の振りをするGMを撮影していました。
そうだったね(笑)。ほかにも,多摩川でアザラシのタマちゃんが話題になったときも,ゲーム内の川のほとりで「タマちゃん」と呼ぶと川からタマちゃんが顔を出すなど,面白いコラボをやっていました。
4Gamer:
タマちゃんって,それもまた懐かしい(笑)。
井上氏:
当時,私の前に担当していたプロデューサーが,そんな面白いコトをするのが好きな方だったんです。
GMモスグリーン氏:
オフラインイベントで,お客さん同士の会話のきっかけを作るために,じゃんけんカードを交換する仕組みを作ったり,いろいろと工夫をされていましたよね。
井上氏:
そういったイベントでの工夫や,攻城戦導入時のネットカフェキャラバンなどは,実は「AVA」にも受け継がれているんです。
4Gamer:
なるほど。
GMモスグリーン氏:
たしか,ゲーム内に関連したリアルガチャのような企画をオフラインイベントで始めたのも,ミューが最初だったんじゃないかな。
4Gamer:
え,そうなんですか?
井上氏:
断定まではできませんが,相当初期だったのは間違いないですね。先ほど話したパッケージ版発売イベントで,「MUガチャ」というゲーム内アイテムが手に入るガチャを会場に設定していたんですよ。
4Gamer:
確かにリアルガチャ……というと,それ以前からあったかどうか記憶にないですね。そう言えば,そもそもその時期は,ミューにガチャはなかったですよね?
井上氏:
ありませんでした。このMUガチャを喜んでくれているお客さんの流れを見て,2004年11月に,ゲーム内にMUガチャを導入させていただいたんです。
GMモスグリーン氏:
ハイブリッド課金の走りのような感じでしたね。
井上氏:
これには賛否両論ありましたが,結果としてプレイヤーさんに受け入れてもらえたと思います。当時,ミューはまだ基本プレイ無料化はしておらず,定額課金制のなかで,プロデューサーとして,どのようにお客さんを維持していくかということに注力していましたから,ホッとしました。
ほかにも新規のプレイヤーに定着していただくために,運営チームが新規プレイヤーを誘って,いわゆる初心者ギルドに入ってもらう「MU学園」という施策もやっていました。
4Gamer:
サービスが始まったあとになると,みんな先を進んでいますから,新規は入りづらくなってきますからね。
井上氏:
ですから,ソロでゲームを進めてもらうのではなく,とりあえずギルドに入って友達を作ってもらうんです。そうすることで,継続率が高まるんですよ。実際にMU学園を始めてから,新規プレイヤーの3か月後の定着率が3割ほどになりました。通常は1割未満と言われているので,効果の高さが分かると思います。
GMモスグリーン氏:
それまでも,GMが新規プレイヤーに「何かわからないことや,お困りのことはありますか?」と声掛けしていたのですが,それでは不十分だったんですよね。
4Gamer:
プレイヤー側と運営側という形では,多かれ少なかれプレイヤーが壁を感じてしまうでしょうし,気軽に接するという存在ではないですね。
運営とプレイヤーの距離が遠くなった理由とは。関係を取り戻すキッカケは新しいコミュニケーションツールの登場
ただ,このMU学園は2005年初頭になくなってしまったんです
4Gamer:
それはなぜですか?
GMモスグリーン氏:
不正アクセスが頻発していた時期で,そちらの対処に人員を割かなくてはいけなくなってしまって。
4Gamer:
なるほど。その当時はオンラインゲームで,不正アクセスによるアカウントハッキングが狙われ始めた時期だったように思います。
GMモスグリーン氏:
アヴァグリーンさんがGMとして運営に加わったのが,ちょうどそんな時期でしたよね。
アヴァグリーン氏:
ええ。僕はそれまでプレイヤーとしてミューを遊んでいたのですが,GMになったときに,いきなり不正対応のまっただ中で。最初はその対応業務がメインでした。
4Gamer:
それは,またキツイですね。逆に明るい話題はどうしょうか。
井上氏:
明るい話題となると,ポンガイエローとGMモスグリーンの時代になると思います。僕らの担当していた時期は,いろいろと暗い話題ばかりになってしまいそうで。
僕としては,初めてのGM業務は面白い体験でしたよ(笑)。
4Gamer:
まあ,過ぎてみれば,それはそれで面白かったということはありますよね(笑)。では,ポンガイエローさん,GMモスグリーンさんいかがでしょう。
GMモスグリーン氏:
キャラバンなどでお客さんに楽しんでもらえたのは,楽しかったですし,とても嬉しかったですね。いまでこそいろいろ会場でイベントを開催していますが,当時は,運営チームとプレイヤーさんが出会える場所が,ネットカフェなどのオフラインイベントくらいしかありませんでしたから。
井上氏:
こうしたオフラインイベントは,コアなプレイヤーさんの声を直接聞ける貴重な場だと思っています。お客さんとの信頼感も生まれますし,開発元との打ち合わせでも,データでは見えないそういった声があると説得力が増すんですよ。
4Gamer:
プレイヤーにとっても,大切な機会になるでしょうね。
GMモスグリーン氏:
一方で,2007年以降はいろいろな変化があり,大変だったときもあるんですよ。
4Gamer:
2007年というと,その前年にプロデューサーが井上さんから変わっていますが,そこでどんな変化があったのでしょうか。
GMモスグリーン氏:
交代してすぐではありませんが,2007年3月に行われた基本プレイ無料化が大きな転機になったんです。
井上氏:
僕がプロデューサーを退いたのは,基本プレイ無料化を見据えての交代という側面があったんですよ。
GMモスグリーン氏:
それで,体制もガラッと変わってしまったので,いろいろと混乱もありました。
4Gamer:
そんなに大きく変わったんですか?
GMモスグリーン氏:
たとえばオフラインイベントがあまり行われなくなりました。あと,基本プレイ無料化と同時に,移動に関する制限……つまり,マップ移動ウインドウを使ってスムーズに移動したい場合は有料アイテムの「エンブレム」を購入してくださいというものも入ったんです。この仕様は僕個人は反対で,何度も上司に掛け合ったのですが……。
4Gamer:
それまで日常的に使っていたショートカットが,基本プレイ無料を機に有料になってしまったと。それは,プレイヤーからの反発が大きかったでしょう……。いまはどうなっているんですか。
2012年に制限が取り払われて,条件を満たすだけで利用できるようになりました。
4Gamer:
というと,5年間ですか。かなりの長期にわたっていたんですね。
GMモスグリーン氏:
はい。このように,基本プレイ無料化以降は,有料アイテムの導入もあって,プレイスタイルが徐々に変化していきました。クエスト主体のゲームシステムに変わりはないんですが,強力な装備やアイテムをガチャで入手するという人が少しずつ増えていって。
4Gamer:
それまで一握りの人しか入手できなかったような,強力な装備に手が届くようになったと。
GMモスグリーン氏:
ええ。エクセレント(EX)装備で固めることも当たり前になりましたし,アイテム強化も今では+15まで行けるようになりました。エフェクトもすごくなっていて,光だけでなく風が巻き起こるような感じなんですよ。
アヴァグリーン氏:
やり込んでいると,そういったアイテムが欲しくなりますよね。でも,それを強化するために宝石を大量に投入して,失敗したら装備ごとなくなってしまうというのも恐ろしいわけで。
4Gamer:
ああ……ガックリきますよね。
アヴァグリーン氏:
強化の失敗が引退の原因になるというのは,理由としてあると思うんですよ。僕は昔からそう言い続けているんですけど。
4Gamer:
ミューと同時期のタイトルは,だいたいそんな感じのシステムが多かったように思います。
井上氏:
そうですね。私がプロデューサーをやっているときも,装備の合成に失敗して消滅させてしまい,引っ込みがつかなくて,さらに装備を強化しようとして結局すべての装備を消滅させたというプレイヤーさんがいまして。
4Gamer:
それは,胃が痛くなりそうな状況ですね……。
井上氏:
丸裸になった状態で「装備がなくなったので引退します」というSSが送られてきたことがあったんですよ。
4Gamer:
それは,運営に直接ですか?
井上氏:
ええ。
GMモスグリーン氏:
実はそういうメールは少なくないんですよ。
井上氏:
ギャンブル要素が強いシステムの怖いところは,それで引退を表明した人につられてギルドメンバーが次々にやめていってしまうという現象が起こりうることです。ギルドは人をつなぎとめる働きもありますが,その逆の効果もあるわけです。そこはミューに限らず考えていかなければならないことだと思います。
4Gamer:
コミュニティごと別のゲームに移動する可能性はありますね。
GMモスグリーン氏:
一方で,そうした運の要素が盛り上がりにつながることも間違いなくて。たとえばプレイヤーさんのブログなどで,合成に挑戦してみたという投稿はいまだに多いですし,ライブ配信でGMが合成放送を行ってみたところ,その反響も大きかったんです。
4Gamer:
運の要素もほどほどだと楽しめるとは思うのですが……。ところで,ライブ配信も行っているんですね。
GMモスグリーン氏:
はい。このライブ配信は,運営とプレイヤーさんとの触れ合いの復活を目指して,2012年5月に開始したんですよ。
4Gamer:
そんなにプレイヤーと触れ合う機会ってないものなんですか?
GMモスグリーン氏:
先ほどもお話ししたように,2007年の基本プレイ無料化からごく最近まで,我々運営チームがお客さんの前に出てくることは,ほとんどなくなっていましたから。
ポンガイエロー氏:
ですが,Twitterやライブ配信という仕組みが一般化したおかげで,プレイヤーさんとの距離が縮めやすくなったと感じています。
井上氏:
やはり運営が楽しんでいる姿を見せるというのは,とても大切だと思うんですよ。AVAではそういったことを念頭に置いていろいろ施策をしていますが,ミュー運営チームも同じようにやってくれていると感じています。
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