連載
東京レトロゲームショウ2016:第36回 月夜の晩は,「怨霊戦記」で街に忍び寄る恐怖と戦っちゃおう
本作を開発したスタジオWINGは,主に超能力やオカルトをテーマにしたアドベンチャーゲームを数多く手掛けてきたソフトハウス(という呼び名自体,懐かしいけど)で,初期の頃には,MSXで「モリコ脅迫事件」や「白と黒の伝説」シリーズといった作品を発売しており,その後,PC-8801やPC-9801といった機種でも開発を行うようになった。
当時,筆者はMSXユーザーだったので「モリコ脅迫事件」と「白と黒の伝説」のどちらも強烈な個性を持ったゲームとして,よく覚えている。とくに後者のグラフィックスは,まだ子供だった筆者にはそのゲーム画面が掲載されている雑誌のページすら開きたくないと思うほどの恐ろしさで,スタジオWINGの名を深く胸に刻み込む原因ともなっている。あの頃は純粋だったなあ……。ちなみに,どちらもカセットテープで発売されたゲームであり,そのこと1つを取っても時代を感じさせる。
ストーリーは,ある月夜の晩に黒マントの男と遭遇し,男が連れていた謎の化け物(餓鬼)に襲われた主人公の北原弘行が,架空の地方都市,宮寺市を襲う怨霊の恐怖から街を救うために奔走するというもの。本作はいわゆるコマンド選択式のアドベンチャーゲームで,宮寺市の各所を行き来しながら情報を集め,怨霊を陰で操っている生霊の正体を調査していく。まあ,序盤からあからさまに怪しい人物が登場するのでバレバレなのだが,そこらへんはお約束ということで。
夜風に当たって疲れを癒していた主人公の前に,突然現れた黒マントの男。すべての事件はここから始まるのだ |
行く先々で主人公の前に現れる謎の男,鳴神。どう見てもあからさまに怪しいが,一体何者なんだ……(棒読み) |
舞台となる宮寺市は,○○町,△△町といった具合に20か所以上の地区に分かれており,かなりの広さがある。本作では,調査のために街のあちこちを回る必要があるのだが,目的地に行くためにはそれぞれの地区を順番に移動しなくてはならないうえ,地区のつながりが結構複雑で,しょっちゅう道順が分からなくなってしまうのがネックと言えばネックだ。うう,また道を間違えてしまった……。
また,特徴的なのが,わずか4色で描かれた独特のグラフィックスだ。色数が少ないこと自体は当時のゲームとしては珍しくないのだが,それでも単一色の濃淡のみで表現された背景は,ひときわ強烈なインパクトを放っている。これらの背景には写真を加工したものが使われており,本作ならではの不気味な雰囲気を作り上げている点も見逃せない。夜間に街を探索していると,時折,背景に溶け込むようにして怨霊の姿が一瞬だけ現れて消えるという演出も秀逸で,これが本当に怖い。
実写を加工した背景は雰囲気抜群。巫女の依姫は物語における重要人物だ |
画像右上に怨霊の姿が写っているのがお分かりいただけただろうか……(ナレーション風に) |
さらに,スタジオWINGはサウンド面にもこだわりのあるソフトハウスで,FM音源によって奏でられる“怨霊サウンド”も,これまた怖い。シナリオ面に目を向けると,始めは怨霊の存在などこれっぽちも信じていなかった人々が,怨霊が街を侵食していくにつれて次第に恐怖に侵されていく過程や,ただのプログラマーだった北原が怨霊と対峙できるだけの力を獲得していく流れは,オカルトものの定番ながらも目が離せず,この手の話が好きなら,ぜひプレイしておきたい1本といえる。
とはいえ,本作にはゲームの進め方次第で途中でゲームオーバーになってしまう展開もあるので,これから遊ぶ人はきちんとセーブできるPC-9801版を選んだほうがいいだろう。もちろん,こちらもプロジェクトEGGにて配信中なので,そうと決まればさっそく遊んでみてほしい。
プロジェクトEGG「怨霊戦記」(PC-8801版)
プロジェクトEGG「怨霊戦記」(PC-9801版)
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プロジェクトEGG
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