プレイレポート
アメリカ産海賊MMORPG「Pirates of the Burning Sea」のプレイレポートを掲載
本格的な航海シミュレーションが武器のMMORPG
そんなパイレーツの魅力は,ディズニーの「ピーター・パン」から,最近では「パイレーツ・オブ・カリビアン」まで,さまざまな映画で描かれているし,ゲームでは「Sid Meier's Pirates!」や「大航海時代 Online」などで満喫できる。
今回紹介する「Pirates of the Burning Sea」も,大航海時代のロマンを扱っており,アメリカでは「Yohoho! Puzzle Pirates」に次ぐパイレーツ系MMORPGだ。
このPirates of the Burning Seaを開発したFlying Lab Softwareが,最初にゲームの制作を発表したのは,2003年のことだ。当初は船をメインフィーチャーとしただけのMMORPGとして,2004年に発売される予定だったのだが,一旦リリースを延期することでゲームエンジンを作り直し,陸地でも三人称視点でアバターを操作できるように一新させた。その間にもValveの「Steam」経由での独自展開を模索していたようなのだが,MMORPGのノウハウに長けたSony Online Entertainmentの胸を借りることで,ようやく発売にまで漕ぎ着けたのだ。
Pirates of the Burning Seaのコンセプトは素晴らしい。プレイヤーは18世紀初頭のカリブ海を舞台に,パイレーツや海軍将校となって自分のスキルを磨き,与えられたミッションをこなしたり,ほかのプレイヤーとの海戦を楽しんだり,経済活動で多くの資金を得て,より大きな船や強力なアップグレードに投資したりする。やることが多く,エルフやオークの登場する一般的なMMORPGとはまったくテーマが異なるタイトルなので,かなり新鮮なプレイフィールが味わえるだろう。
開発期間が長かっただけのことはあり,グラフィックスは非常に丁寧に描かれており,波の効果や船のディテールには目を見張るものがある。帆を上げると縄ばしごを駆け上がったり,忙しそうに甲板を歩き回ったりする船乗り達も細かく描かれており,ひとたび海戦が始まれば,帆や船体に穴が開いたり,マストが折れたりといったダイナミックなエフェクトも楽しめる。
自分の船を乗りこなしてカリブ海で大暴れ
それぞれのクラスには,ファイティングスタイルや操舵能力,経済能力など異なるスキルが用意されている。キャラクターの作成要素としては,最初に好きな顔立ちや服装などを選べるようになっているのだが,それらはゲーム中,Tailor(仕立て屋)を利用することで変更可能だ。ただし,キャラクターデザインはいかにも「潮風に洗われた男達」といった感じの,無骨で威嚇的なものが多い。アバター性に着目すると,日本人には若干馴染みにくいかもしれない。ちなみに女性キャラクターは,コルセットで締め上げたようなセクシーなスタイルがベースとなっており,洋ゲー然としたデザインが嫌いではないなら,それなりに見栄えのするものだ。
昨今のMMORPGと比べると,防具などの種類はかなり少ないので,キャラクターの容姿が劇的に変化することはなく,腰につけた剣の形状が変化したり,肩にオウムが乗ったりという程度である。
本作の舞台は,東はメキシコ沿岸からパナマ,北はフロリダやニューオリンズ,南は南アメリカの北岸一帯あたりがフォローされており,マップ画面では4勢力の支配する港町が色分けで表示されている。自分の勢力が支配する港であれば,自由に行き来でき,クエストや交易の拠点として利用できるわけだ。
これはスペインのNavy Officer。レイピアを使った剣技が優雅だ。左下のスロットに割り当てたスキルを作動させながら戦う |
同じく,スペイン帝国所属のPriveteer。パイレーツハンターだけあり,海戦中に相手の船に乗り込んで大暴れすることもできる |
海賊の勢力でプレイしたときのPirateキャラクター。拠点は一般的な港町とはずいぶんと違い,イギリス将校が幽閉されているエリアなどもある |
さて,キャラクターを作り,戦い方や船の動かし方を学べる簡単なチュートリアルを終わらせると,指導役だったNPCから謎の地図を手渡される。この地図の謎を解いていくのが,すべてのプレイヤーに共通するメインストーリーとなる。スタート地点の港町(所属する勢力によって異なる)に降り立つと,そこには,頭上に緑色のビックリマークを浮かべた,多くのクエストNPCが待っている。しばらく町の中を走り回っていると,あっと言う間に10個以上のクエストを入手できる。簡単そうなものからこなしていき,少しずつキャラクターのレベルを上げていこう。
クエストの数は豊富だが,内容的にはほとんどが「お使い系」や「討伐系」だ。町の中の倉庫に隠れているライバルのパイレーツをやっつけるものもあれば,ドックの端で待ち受けているLongboat Coxswein(舵取り/プレイヤーの右腕役)を通じて,海戦エリアや郊外マップに移動することもある。これらのクエストは,どれもインスタンスエリアで行われ,比率としては8割ほどがシングルプレイ専用。マルチプレイ専用ミッションはあまりメインストーリーと絡んでいないようなので,全体的にソロプレイ重視のデザインになっているといえよう。といっても,シングルプレイヤー用クエストをほかのプレイヤーと共有できるオプションもあり,その場合は人数に合わせて難度が調整される。
インスタンスエリアでは,ゲーム内の時間帯によって日の傾き具合や天候が変化する。雨が降ると視界が悪くなり,当然戦略も変更せざるを得ない |
ソロプレイ用のクエストの中にも,NPCの船団とともに模擬の団体戦が楽しめるものがある。ちなみに旗のデザインはギルドで登録可能だ |
海戦では,画面左下のスロットで弾の種類などを選んだのち,一定のタイミングで点灯する「Fire All」ボタンを押して攻撃する |
ストラテジックなプレイで海戦を制す
これらのファイティングスタイルは,基本的には1対1の戦いで活用できる。タイミングや状況に合わせて,画面左下にあるスワッシュバッキング・スキルのアイコンを押していくという操作系統だ。相手キャラクターの足元に表示された円型パラメータが完全な形を保っている状態では,思うようにダメージを与えることができないが,相手の剣を払い除けたり,足を踏みつけて相手のバランスを崩したりして,ヒットチャンスを増やしていくわけだ。このあたりのシステムは,プレイしていてなかなか面白く,研究のしがいがある要素だ。
衣装同様,船のボディーカラーも気軽に変更できる。この船は相当なダメージを受けいているが,応急処置的な修理でも結構回復する |
帆を集中的に攻撃されて,ほぼ操縦不能の状態。敵AIはそのことを察知して,遠距離でのいやらしい攻撃を仕掛けてきた |
最悪のケースは帆が破れたうえ,マストも破壊されて航行不能に陥ってしまうこと。描かれているプレイヤーキャラクターもお手上げ状態 |
しかし剣での戦い以上に面白いのが,船を使ったOpen Sea(公海)上での海戦である。船体は,攻撃を受けた方向によってダメージが異なるので,相手をどの方向から攻撃するか,あるいは自分の船のどこに攻撃を受けそうかを考慮しつつ,操船していく必要がある。風向きを利用して上手く回り込んだり,自船を横付けして相手の船に乗り込み,白兵戦で一気に制圧したりという,戦法のバリエーションの豊かさも魅力だ。
砲撃戦だけを見てみても,船体に穴を開けるものから,帆を破いて機動力を低下させるもの,そして乗組員を直接射撃するものなど,さまざまな攻撃手段が用意されており,実に幅広い海戦が楽しめる。
なお,船体にダメージを受けすぎてディフェンス・ポイントがゼロになると,船は沈んでしまう。プレイヤーの船が沈んだ場合は,最寄りの港からリスタートすることになるが,その船の積み荷は,特殊アイテムを含めて海の藻くずとなってしまう。クエストアイテムなどを集めているときは結構な損害だが,プレイヤーは複数の船を常時所有できるので,2番手,3番手の船で再び航海に出ることも可能だ。
船は,すでに70種ほどのタイプが用意されている。ただし,当初からプレイヤーに用意されているもの,もしくはショップでディーラーから購入できるものは,性能が非常に低く,そのままゲームを進めていくことは難しい。ある程度資産が貯まったら,プレイヤーキャラクターが生産した船をショップ内のオークションハウスで競り落としたり,仲間から直接購入したりするのが得策だ。
限界までズームすると,こんな感じになる。大砲に弾を込めたり,縄梯子を登って周囲を見回したりする船員達の細かい描写は必見だ |
Grappleに成功すれば,相手の船に乗り込んでの白兵戦となる。キャラクタークラスやスキルによって,Grappleの成功率は変化する |
相手の船に乗り込めば,敵味方のNPCも入り乱れての激戦となる。レベルが高ければ,大差の勝利になりやすい |
複雑な経済システムやPvPの仕様は吉か凶か!?
クエストは海戦だけでなく,相手の本拠を急襲したり,盗品を奪い返したりというような,陸戦主体のものも数多く用意されている。キャラクターの足下にある円形のパラメータが防御力を示し,剣で斬られたりすると,色が薄く,細い円になっていく。この状態では相手の攻撃がヒットしやすくなり,複数の敵に狙われるとかなりつらい。ちなみに,味方のNPCが生き残っている限り,プレイヤーキャラクターは死んでもリスポーンできる |
本作の経済活動は,チュートリアルのクエストで選んだ港町に,Warehouse(倉庫)を建設することから始まる。それぞれの港町では,鉄鉱石や木材といった異なる資源が産出でき,倉庫には,製鉄所や製糸所などの施設を一つ追加できる。そして,それらを利用して生成した資源をほかの港街と交易したり,プレイヤー同士で交換したりすることで,利益を得ていくのである。
これらの交易品は何十種類もあるのだが,プレイヤーが建設できる施設は一つのアカウントで10個まで。倉庫も,最初は200ダブルーン(doubloons,ゲーム内通貨)と安価なのだが,二つめで3200,三つめでは16,200ダブルーンと,増やすたびに急激に高価になっていく。
ようやく10個の施設を切り盛りできるほどキャラクターを育てられても,経済活動の目的でもある「ハイスペックな船」を作るためには,製材からロープまでさまざまな資源が必要であり,一人で造船するのは事実上不可能となっている。
そこで,オークションハウスを利用した売買を利用したり,ギルドを作って(あるいは参加して)仲間達と交換し合ったりすることで,生産の効率を高めていくのだ。つまり,より高性能な船を持ちたいというプレイヤーの願望は,仲間達との連係プレイへ必然的にたどり着くわけである。
メインクエストで,謎の地図を解読するカギを握る人物と出会った。この地図には,果たしてどのような謎が隠されているのだろうか…… |
フィニッシュムーブやガンショットなど,攻撃方法はさまざま。基本的には,先に相手の体勢を崩すことが重要となる |
相手の攻撃のブロックなどは,プレイヤーのスキルの有無によって自動的に繰り出される。もちろん失敗することも少なくない |
PvP(対人戦闘)要素も,Pirates of the Burning Seaにとっては見逃せない要素の一つである。敵対する勢力の港の近くでNPC船を沈没させると,その港はUnrest(政情不安)の状態になって,その周囲にPvPゾーンが展開される。そして,その抗争に関わる二つの国家によって,最大25対25の対人戦闘が楽しめるのだ。仕掛けた勢力が勝ったなら,当然その港の支配権が得られる。ちなみに,ある勢力がマップ中のすべての港町を支配した場合,アイテムやステータスなどはすべて維持されたまま,支配状況だけが巻き戻る仕様だ。
Pirates of the Burning Seaは,戦略性やシミュレーション性の高さから「考えながらプレイする」ことが求められ,かなり玄人好みのMMORPGといえる。個人的には,大航海時代Onlineのように,知らない土地や遺跡を発見するような“探検要素”がもう少しあれば良かったと思う。今後どれだけの人気を獲得できるかは運営次第だろうが,多くのニュービーで溢れかえるというよりも,どちらかといえば年齢層の高い,大人向けのゲーム世界が楽しめる作品といえるだろう。
本作における交易や生産などの経済活動は,ゲームを有利に進めていくうえで,非常に重要だ。これは,倉庫と木材切り出し用キャンプを設置しているところ |
海戦では,相手の船とクルクル円を描いて追いかけっこをしながらの戦闘状態に陥ってしまうこともある。先に沈んだほうが負け |
欧米ではすでにローンチされて3か月が経っているが,12あったサーバーが4つにまとめられるなど,集客にはかなり苦労している様子 |
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