[GDC 2013]「オークションハウスはDiablo IIIに大きなダメージを与えた」。元ディレクターがGDC 2013で振り返る
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そんなDiablo IIIで,その企画当初から7年にわたって開発チームを率いていたのがWilson氏だ。もっとも,それ以前のシリーズには関わっておらず,今回のセッションでも冒頭から,「私はDiabloシリーズの成功と名声を受け継いだだけなんです」と笑いを取っていた。
そんなオリジナルクリエイターではないという立場から,ファンの中には当初から「Diablo IIそのままにしてくれ」と要望を出してくる人もいれば,「Diablo IIみたいにしないでくれ」と言う人もおり,コミュニティをうまくまとめきれないかもしれないという不安があったそうだ。ただ,修羅場を超えてきたWilson氏なだけに,「開発者の皆さんの中に,私のようにヒット作を受け継ぐ人もいるかも知れませんが,この業界ではそういった例はいくらでもありますから,恐れることはありません」と述べていた。そして氏は,「もし,グラフィックスだけを変えて同じゲームを作るのなら,それは“創造の死”だ」と続け,新しいフィーチャーを取り込んだり,前作を改良したりしていくのは,間違った判断ではないと断言する。
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そのうえでWilson氏は,Diablo IIIの新機能や調整で成功したこと,逆にうまくいかなかったことを,ヘルスシステムやクラス,スキル,アイテムのスタッツ(統計)などを例に解説していったが,なかでも最も興味深かったのが,ローンチ後に採用された,リアルマネートレードによる「オークションハウス」についてだ。
オークションハウスはもともと,売買から生じる詐欺行為をなくし,より公平にプレイヤー間でやり取りできる仕組みを提供することを目的に作られたシステムだ。しかし,当初は「ほんの一握りのプレイヤーしかオークションを利用しない」「価格の高さが取引される金額やアイテム数の量を抑える」と考えていたらしく,結果的にはオークションハウスがローンチされるや,まったく見当違いの方向に機能してしまったとWilson氏は話す。
現時点でオークションハウスにアクセスする人は全体の50%のユーザーにもなり,利用者数は一日で100万人ほど,取引量は月間300万件に及ぶという。ただ,本来のゲームの目的である「ディアブロを倒すために良いアイテムを入手する」のではなく,「取り引きをするためにクエストをこなしていく」という不本意な使われ方になってしまっているそうだ。Wilson氏は「オークションハウスはDiablo IIIに大きなダメージを与えた。止められるものなら途中で止めたかったが,(多くの人が利用しているフィーチャーである以上)簡単に止めることはできなくなった」と,その心境を打ち明けた。
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それでもなお,Wilson氏はゲームにオークションシステムを取り入れ,詐欺行為を減らすという仕組みを作ることは,1つの革命であり,その選択には満足しているという。ウィルソン氏は,講演の最後に「ゲームをさらに良くするための1つの大きな解決策がある」と述べていたが,今回その具体的な内容について触れられなかったのは残念なところだ。もはやWilson氏は関わっていないが,Diablo IIIの今後の奮闘に期待したいところである。
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- ライター:奥谷海人
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