インタビュー
7周年を迎えた「マビノギ」が掲げるのは“原点回帰”。アップデート「Genesis」の目標を運営・開発チームに聞いた
- マビノギ室 室長 ファン・ソニョン氏
- マビノギ室 マビノギFUNチーム チーム長 チェ・ソンウク氏
- マビノギ室 マビノギFUNチーム 事業パート シム・ギュヨン氏
- 運用本部/運用部 ゲーム運用チーム 平原亮太氏
今後の発展につなげるため,Chapter1をリニューアル
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回のGenesisは,2012年4月のオフラインイベントで「初心者に焦点を当てたマビノギの変革」と紹介されていましたが,このアップデート実施に至った経緯などを教えてください。
Chapter4の開発が終了し,次のChapter5に移る前に,これまでのマビノギを振り返り,一度整理する必要があると判断しました。マビノギは日本で7周年,韓国で9周年を迎えるという長寿のタイトルですから,そのコンテンツを改めて見直そうというわけです。
そこで,マビノギの根本のコンテンツは何かと考えて,やはり一番最初に実装されて好評を博した,Chapter1をリニューアルしようと決めました。
4Gamer:
確かに,マビノギといえばChapter1のイメージは強いです。主要なキャラクターが登場したのもChapter1ですし,サービス開始当初のコンテンツでしたから,思い入れのあるプレイヤーも多いのではないでしょうか。
ファン氏:
当時は唯一無二のコンテンツでしたからね。しかし,開発してからかなり時間が経っていますから,今の新規プレイヤーが遊ぶには不親切な作りになってしまっているのです。わざわざ調べなければ分からないような難しい部分があったり,あるいはパーティを組んでくれる人が見つからなかったり……。プレイヤー動向を確認してみると,最後までプレイしていないという人も多いのです。
4Gamer:
それはもったいないですね……。
Genesisのリニューアルでは,こうした部分を改善して,最後までプレイしやすくなるように調整しています。例えば,パーティ専用だったダンジョンに一人で入場できるようになる,あるいはクエストを進めるために必要だった待機時間が大幅に減少するといった具合ですね。
それと,これまでChapter1は人間でしかプレイできませんでしたが,後から追加された種族のエルフやジャイアントでも遊べるようになります。
4Gamer:
基本的に今回のリニューアルは,新規プレイヤー獲得のための施策という意味合いが強いのでしょうか。
ファン氏:
もちろん,そういう意図もありますが,どちらかというと,自然な流れでマビノギの世界に入っていけるような,遊びやすいゲームにしたいのです。
リニューアル後のChapter1は,すでにクリアしている人でももう一度プレイできるようになっているのですが,韓国のプレイヤーからは「懐かしい」と好評だったりしますので,今,遊んでくださっている方にも楽しんでいただけるはずです。
戦闘システムの大幅リニューアルと将来希望「吟遊詩人」を実装
4Gamer:
Genesisでは,Chapter1のリニューアル以外に,どういったアップデートが行われるのでしょう。
ファン氏:
これはChapter1の整理より前に実装されることになりますが,新規プレイヤー,既存プレイヤーどちらにとっても大きな変更として,戦闘システムに手を加えます。これまでのマビノギでは,スキルを使うにはキーを押してから一定の準備時間が必要で,その後もう一度キーを押すことでスキルが発動していました。しかし,このシステムでは戦闘のテンポを若干阻害しますし,危機的な状況で対応するのが難しく,新規プレイヤーは慣れるまでにストレスを感じてしまいます。
そこでリニューアル後は,キーを押すと即座にスキルが発動するように変更し,代わりに連続して発動できなくなるよう,クールタイムを設定します。
4Gamer:
というと,一般的なオンラインRPGのスキル発動に近づいたイメージですね。
ファン氏:
そうですね。同時に上級者向けの設定として,攻撃を受けた後の硬直時に,ディフェンスやカウンターを発動できるようにします。
例えば,これまではクマに攻撃されると一発目で硬直してしまい,その後連続で攻撃を食らうしかありませんでしたが,新しいシステムではこれに対して反撃ができるわけです。
4Gamer:
それは戦闘面でかなり大きな変化になりそうですね。これまでは,安全に戦う手段としていわゆる“アイスボルトカウンター”などが使われていましたが,敵によってはそれも変わってきそうです。
平原氏:
ええ。カウンターでスキルを発動する場合にもクールタイムがありますから,温存しておいて敵の攻撃に合わせるのも一つの手段になるでしょう。コンボの組み合わせはいろいろと増えるのではないでしょうか。
4Gamer:
のけぞり中のディフェンスやカウンターは,モンスターも使うんですか? 使われると,ものすごく厄介なことになりそうですが。
ファン氏:
いえ,もともと戦闘の難度を下げることが目的でしたから,今回のアップデートではモンスターのAIに手は加えません。ただ,今後追加されるモンスターに,これまでと異なるAIを組み込んで,新しい行動パターンを持たせることは考えています。
それともう一つ,Genesisでは将来希望に「吟遊詩人」が登場予定です。プレイヤーからのリクエストも多く,“マビノギ”という言葉が,もともと“吟遊詩人の歌”という意味を持っていることもあり,大きな変革となる今回のアップデートではぜひ実装しておきたいと思いまして。
4Gamer:
吟遊詩人というと,音楽知識や楽器演奏周りのスキルが得意な感じでしょうか。
ファン氏:
そうです。それに加え,音楽で攻撃するスキル「メロディショック」や,パーティのステータスを向上させたり,採集などの効率を高めるサポートスキルも追加されるので,吟遊詩人ならではのスタイルでプレイできます。
メロディショックは,楽器を振り回すことで生じた音符を使って敵を攻撃するスキルになります。
ほかにも,吟遊詩人実装に合わせて新しい楽器が増えるほか,ハードロックやヘビーメタルのような新たな演奏モーションも実装されます。
4Gamer:
新楽器は,やはりロック寄りのものですか?
シム氏:
いえ,リラ(竪琴)とシロフォーン(木琴)です(笑)。
戦場の序曲 |
子守唄 |
ヴィヴァーチェ |
忍耐の歌 |
豊作の歌 |
行進曲 |
リニューアル後は新展開を予定。生活系オンラインRPGとして更なる発展を
Genesisの後は,どういったアップデート計画になっているのでしょう。
ファン氏:
リニューアルの一環で,Chapter3とChapter4のメインストリームにも手を入れる予定です。また,以前から要望のあったユーザーインタフェースの改善を行い,より分かりやすいものにします。あとは,まだ詳しくお話できないのですが,ほかのゲームでは見たことのないような斬新なシステムの開発も進めているので,楽しみに待っていてください。
4Gamer:
斬新なシステムですか,気になりますね。ともあれ,しばらくはリニューアルが中心になっていく予定なんですか。プレイヤーの皆さんからすると,Chapter5の実装も気になるところだと思うのですが。
ファン氏:
もちろん,Chapter5の開発も始まっていて,韓国では2012年内に実装予定です。ただ,先ほどもお話したとおり,マビノギをさらに発展させるために,過去のコンテンツを放っておくわけにはいきませんので,ここは先に手を入れさせていただきたいのです。
4Gamer:
今回Chapter1に手が入っているので気になったのですが,Chapter1のストーリーの「続き」は予定していないのでしょうか。これまでは,Chapter1終了後にイリア大陸が実装され,その次はChapter3のアルケミスト……とアップデートされてきたので,ストーリーが途切れているように感じます。
最初におっしゃっていたように,Chapter1はマビノギの根元にあるコンテンツだと思いますし,そこからつながるストーリーを見たいというプレイヤーも多いのではないでしょうか。
ファン氏:
ストーリーが伝わりにくい状態になってしまっているのは否定できません。ただ,我々の力不足でそう思われてしまっているだけで,設定ではちゃんとすべてのストーリーがつながっているのです。
実を言うと,2012年に行う一連のリニューアルは,その部分の整合性を取るという意味合いがあります。Genesisのアップデートや今後のアップデートでは,チャプター内のクエストを追加するなどの手を加えています。
4Gamer:
なるほど。そうした部分も含めて「これまでのコンテンツの整理」というわけですか。
ファン氏:
そのとおりです。もちろん,Chapter5などのストーリーもマビノギの大きな魅力なので,今後も皆さんに面白いと思っていただけるようなものを作っていきますし,マビノギは生活系コンテンツを中心としたゲームですから,その点を追及していくことも変わりません。
平原氏:
運営チームとしては,以前から懸念していたChapter1の難度が今回解消され,今後はプレイヤーの定着率も上がっていくと考えていますので,今まで以上にマビノギを盛り上げていければと思っています。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
平原氏:
皆さんからの長年のご支持には,非常に感謝しています。Genesisアップデートでリニューアルされる部分,そして今後導入される新しい要素を,ぜひ楽しんでください。
ファン氏:
マビノギには面白いコンテンツがたくさんありますが,残念ながらこれまでは,そのすべてを楽しみにくい作りになっていました。2012年は一連のリニューアルを通じて,隠れてしまっていた魅力を引き出し,皆さんにお見せしていきます。今まで以上にマビノギを楽しんでください。
シム氏:
日本のプレイヤーの皆さんは,長い間マビノギを遊んでくださっている方が多く,先日のオフラインイベントでも,その熱気に驚かされ,元気付けられました。Genesisアップデート以降,マビノギには大きな変化が訪れますが,今後も長く愛されるタイトルとなるよう,頑張ります。
チェ氏:
2012年の後半には,日本独自コンテンツに取り掛かる予定です。非常に多くのリクエストがあったコンテンツなので,期待してください。
4Gamer:
え,日本独自コンテンツの予定があるんですか? そんな大事なことを最後にサラっとおっしゃらないでくださいよ。
チェ氏:
まだ詳しくはお話できないので,今回はあるということだけで勘弁してください(笑)。
4Gamer:
では,情報公開を楽しみにしています。ありがとうございました。
2012年4月に正式サービスの開始から7周年を迎えたマビノギは,その独特のゲームデザインゆえに長くプレイし続ける熱心なファンがいる半面,現在主流のオンラインRPGに慣れ親しんでいる人たちにとって,若干とっつきにくい部分があった。
Genesisを始めとする2012年のアップデートでは,そうした課題をクリアすべく,システムと各Chapterの内容がリニューアルされるというわけである。以前から遊んでいるプレイヤーは戸惑うこともあるかもしれないが,開発チームは,マビノギを長期にわたって発展させていくため,今が重要な準備期間なのだと認識している様子。今回のリニューアルがその発端となり,より多くの人がマビノギを楽しめるようになることを期待したい。
なお,Genesisのアップデートは2回に分かれており,インタビュー中にある戦闘システムの変更と吟遊詩人の実装は5月24日,Chapter1のリニューアルは6月14日に実施されるとのことだ。
「マビノギ」公式サイト
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