連載
連載「オンラインゲーム ネットカフェランキング」――第二回めのお題は,「オンラインゲームにおける無料体験プレイの意義とその変化」について
ネットカフェでのオンラインゲームの稼働時間を指数化し,独自に集計/ランキング化した「オンラインゲーム ネットカフェランキング」。連載2回めとなる今回は,オンラインゲームにおける「無料体験プレイの意義」と,その変化についてお届けしたいと思う。
月額課金が主流だった黎明期からはじまり,無料のβサービスの隆盛,そしてアイテム課金など,時代の変化にあわせながら,ネットカフェ側が担う役割も変化している。ソーシャルゲームやブラウザゲームなど,新たなタイプのゲームが人気を博している昨今。ゲームの遊ばれ方やニーズについて,ネットカフェの歴史を振り返りながら考えてみたいと思った次第だ。
オンラインゲーム ネットカフェ稼働ランキング
集計期間:2010年12月1日〜12月31日
順位 | タイトル | ジャンル | ポイント | |
---|---|---|---|---|
1 | - | モンスターハンターフロンティア | ACT | 299120 |
2 | - | リネージュII | RPG | 205319 |
3 | ↑1 | ラグナロクオンライン | RPG | 135807 |
4 | ↓1 | タワーオブアイオン | RPG | 128507 |
5 | ↑1 | 777タウンnet | カジュアル | 52916 |
6 | ↑10 | メイプルストーリー | ACT/RPG | 37297 |
7 | ↑4 | アラド戦記 | ACT/RPG | 36846 |
8 | - | サドンアタック | FPS/TPS | 35272 |
9 | ↓4 | ドラゴンネスト | ACT/RPG | 34796 |
10 | ↑1 | Alliance of Valiant Arms | FPS/TPS | 28780 |
11 | ↓1 | 真・三國無双online | ACT/RPG | 28624 |
12 | - | マビノギ | RPG | 26460 |
13 | ↓6 | リネージュ | RPG | 25123 |
14 | ↓1 | チョコットランド | RPG | 23239 |
15 | ↓1 | 雀龍門2 | カジュアル | 22979 |
16 | ↓1 | スペシャルフォース | FPS/TPS | 20194 |
17 | - | ファンタジーアースゼロ | FPS/TPS | 20081 |
18 | ↑1 | カウンターストライクオンライン | FPS/TPS | 19602 |
19 | ↑2 | 麻雀4 | カジュアル | 17361 |
20 | - | 大航海時代ONLINE | RPG | 16864 |
……と,その前に。まずは稼働時間のランキングデータから見ていこう。
前回から比べると,12月に大型アップデートが実装された「メイプルストーリー」が大きく順位を上げて6位にランクイン。同じく11月末にアップデートがあった「アラド戦記」と同様に,カジュアルアクションゲームの動きが目立つ結果となった。
年末年始の長期休暇期間の影響か,プレイ時間は全体としては前月比と比べて大きく上昇。そのなかでも,上位4タイトルの安定感はさすがといったところ。
やや順位を落としている「ドラゴンネスト」も,1月には大型アップデートを控えており,ここからどのくらい盛り返していくのかに注目しておきたい。
オンラインゲームにおける「無料体験プレイの意義」
なにもゲームに限らない話だが,「体験させる」ということは,とても重要なプロモーション手法の一つである。
洋服を購入するときの試着やスーパーの試食,車の試乗などは,昔から存在する「体験モデル」だし,最近では,音楽などもiTunesなどのサービス上で,試聴してから購入することができる。映像系のコンテンツにしても,連続モノのドラマやアニメは,レンタルショップで一話目が無料で見られたりすることは,もはや当たり前の状況だろう。
まずは一度体験してもらうことで,その後の利用を促したり購買意欲を高めるというやり方は,ネットカフェにおけるオンラインゲームの展開上も重要な役割を果たしてきたのだ。今回は,そのあたりを順を追って説明していこう。
【月額課金時代】
漫画喫茶/ネットカフェというのは,いわばロケーション商売であり,多くのお客さんをいかに長時間滞在させられるかで売り上げが決まる。比較的長時間遊び込むオンラインゲームは,ネットカフェ事業者のニーズにも非常にマッチした商材であり,また韓国におけるPC房のノウハウ/技術を流用できるという意味でも,ビジネス的な環境が整っていた。
当時,ネットカフェで展開されていた代表的なタイトルは,「リネージュ」や「ラグナロクオンライン」「ファイナルファンタジーXI」「ウルティマ オンライン」など。これらはすべて,毎月決まった金額の利用権を購入することで継続してプレイすることができる「月額課金モデル」のゲームである。
この時期のネットカフェ特典として,「ネットカフェフリープレイ」や「1Dayチケット」が挙げられる。いずれも,ネットカフェの利用者に向けて,オンラインゲームを体験してもらうための取り組みであった。
ちなみに「1Dayチケット」というのは,継続プレイに月額1500円の支払いが必要な作品を,105円で最大2日間遊べるというもの。当時,大変な人気を博したサービスである。
さまざまな意味でプレイのハードルが高かったオンラインゲームを手軽に遊ぶことができ,IDの取り方のレクチャーや序盤のプレイ方法のアドバイス,タイトルによっては店舗内に攻略本が常設されるなど,各種サポートも充実していたネットカフェは,さながら初心者がオンラインゲームを遊ぶための教習所的な役割を果たしていた。
現在では“古参”と言われるプレイヤーの方の中にも,オンラインゲームに初めて触れた場所がネットカフェだったという人は,少なくないのではないだろうか。
【無料βの流行,そしてアイテム課金歩時代へ】
月額課金ベースのオンラインゲームが隆盛を極める一方で,続く後発タイトルは,そうした先行タイトルの牙城を崩すために新たなビジネスモデルを切り拓いた。
それが――現在の“基本無料”に繋がる――無料βテストから課金へと繋げるビジネススタイルだ。一例を挙げると,無料β期間中に10万人のユーザーを集め,正式サービス時,つまり月額課金が始まる時点で1〜2万人の課金ユーザーが残る,といった手法である。
その後,定額の課金を必要としないビジネスモデル“アイテム課金”のタイトルが登場するにあたり,ネットカフェにおける取り組みも見直しを迫られていくことになる。
多くのオンラインゲームは簡単な会員登録のみで遊べるようになり,オンラインゲームの“難しそう”というイメージも,年々薄れていったからだ。
アイテム課金時代に入ると,ネットカフェは,「より良いプレイ体験の場」という役割へと変化する。
端的に言えば,ネットカフェ専用のアイテムを使えたり,ネットカフェ限定の特殊なキャンペーンが実施されることで,より効率的なレベル上げが可能になるなど,お金を払ってプレイすることの意味/効果……,いわば課金アイテムの効果を疑似体験させる意味合いへと,その役割が移り変わっていったのである。
基本無料のゲームであっても,お金を払った方がより快適に遊ぶことができるわけで,それはある意味当たり前のことなのだが,その効果を体験してもらうことは,月額課金タイトルを始めるまでのハードルが高かったのと同様に,なかなか難しいものである。
冒頭でも述べた通り,世の中のあらゆるビジネスにおいて,まずその良さを体験/体感してもらうことは,とても重要なファクターなわけだが,アイテム課金型のゲームにおいても,それは同じことだったということだろう。
ともあれ,このようにオンラインゲームにおける“無料体験”の役割も,時代と共に大きく変化しているのだが,今後,そうしたニーズがどういう形へ変化し,またそれに対して,ネットカフェがどう対応をしていくのか。これからのオンラインゲーム市場共々,注目の価値はあるだろう。
- 関連タイトル:
ラグナロクオンライン
- 関連タイトル:
リネージュ
- 関連タイトル:
ウルティマ オンライン
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXI
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