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RWC2007 世界最強ギルドはタイの「Destruction」。ラグを計算に入れた戦術で韓国勢を降す
世界の強豪達がいったいどんな戦いを見せたのか,つぶさにお伝えしよう。
■第1試合 フィリピン(Amada) vs. 韓国(北極星)
前日の試合を見る限り,フィリピンも積極的に攻めるタイプのギルドなのだが,韓国ギルドの勢いは毎回それを上回った。カウントダウンが終わると同時にメンバーは素早く移動し,フィリピンギルドがマップ中央へ出る間もなく詰め寄る形に。韓国ギルドはクラウンがブラギの詩を演奏する合間にアローシャワーを放ち,アサシンクロスはソウルブレイカーで防御力の低いハイウィザードやプロフェッサーを狙うという,徹底した火力重視の戦術を採用していた。対するフィリピンギルドも凍結からのリカバリーの素早さ,残影から自陣に飛び込んできたチャンピオンへのカウンター攻撃など,よい動きを見せてくれたのだが,2戦とも生存者0名という結果で韓国にストレート負けしてしまった。
■第2試合 ドイツ(Rock n roll) vs. タイ(Destruction)
職業構成は基本の6名にドイツがスナイパーを,タイがチェイサーを採用している。
試合運びとしては,お互いに混戦をさけ,ランドプロテクターの間にちょうど1マス挟んだ程度の距離を保ったまま,ストームガストを撃ち合うというスタイルだ。ドイツ代表ギルドは実に無駄が少なく統率の取れた動きが特徴的で,各メンバーがポジションをきっちりと守っていた。ハイウィザードの出すガンバンテインは的確かつ丁寧で,また,チャンピオンの阿修羅覇凰拳も無駄打ちをしない正確さを心がけていたようだ。あまりステレオタイプで捉えるのもよくないとは思うが,真面目で几帳面と評されるドイツの国民性は,こんなところにも現れているのだろうか?
1戦目は支援を受けたドイツ代表のスナイパーが,前に出てきた相手プロフェッサーおよびハイウィザードにファルコンアサルト,シャープシューティングを集中的に浴びせかけ,詠唱を妨害。チャンピオンの活躍によりドイツ代表が勝利した。しかし続く2戦目,3戦目はタイ代表がおそらく故意に混戦へと持ち込み,ランドプロテクターを相殺。そのうえでハイウィザードとチェイサーがストームガストでドイツ代表メンバーを凍結させ,そのチャンスを逃さず一人一人,阿修羅覇凰拳で沈めることに成功。タイ代表のDestructionが次の試合にコマを進めた。
■第3試合(3位決定戦) ドイツ vs. フィリピン
フィリピン代表ギルドは先の試合で,ドイツ代表が混戦に弱いと読んだのか,素早く接近して互いのランドプロテクターが重なり合う形に持ち込んできた。フィリピン側の予想は的中し,組織立った動きが得意なドイツ代表は乱戦を苦手としていたようで,たちまち回復役のハイプリーストと,アタッカーのチャンピオンを失い,そのまま全滅へ。2戦目もまったく同じ形でドイツ代表は指揮系統が乱れ,立て直しを図ることもできず敗退してしまった。フィリピンによる電撃戦が,ドイツ代表には痛手だったということだろうか。
■決勝戦 韓国 vs. タイ
韓国代表ギルドはとにかく素早く,かつ果敢に攻め込む積極的な戦い方が終始目立っていた。試合開始と同時にマップ中央を越えて相手ギルドに接近し,防御力の低さから慎重になりがちなプロフェッサー,ハイウィザードも躊躇せず最前線に出ては,ディスペルやストームガストを連発する。アサシンクロスはエンチャントデッドリーポイズンを付与した状態からのソウルブレイカーを絶え間なく繰り出し,相手の前衛を牽制し続けていた。
一方のタイは粘り強さと,体勢の立て直しのうまさが際立つギルドであった。タイはチェイサーが大魔法のストームガストを撃ち,ハイウィザードはガンバンテインに徹する戦術を採用。そう,実はメンバー構成も戦術も,タイのそれは日本代表ギルドのpunchとまったく同じスタイルだったのだ。
1戦目は韓国代表が早々にクラウンとチャンピオンを失うが,タイ代表も支援役のハイプリーストが戦闘不能に。韓国側はなおも激しく攻めるが,チャンピオンの不在により決め手を欠いたままだ。逆にタイ代表のチャンピオンが阿修羅覇凰拳で反撃してじわじわと詰めていき,この試合はタイ代表ギルドが勝利した。
続く2戦目,タイは試合開始直後にハイウィザードがチャンピオンにより倒されてしまった。チェイサーとハイウィザードの連携を主軸に,攻撃チャンスを生み出す戦術だったタイにとって,これは痛恨のミス。マップ端の細い通路に少しずつ押され始め,さらにランドプロテクターの張り直しがうまくいかず,ギルドメンバーが全員凍結する。この機を逃さじと韓国代表は一気に乱戦に持ち込み,タイ代表ギルドは全滅。韓国代表ギルドは7人生存したまま,この試合をものにした。
RJCおよびRWC2007国内予選の情報をチェックしていた読者ならば,ROのPvP大会におけるクラウンの役目は主に「ブラギの詩」で,魔法のキャスティング時間とディレイを短縮させること,というのはよく知っているだろう。
ところがタイ代表ギルドはブラギの詩をいっさい使わず,決勝戦1戦目から「イドゥンの林檎」を使用していたのだ。このスキルは味方に対して一定時間,少量ではあるがHP回復を行う範囲スキル。日本のRJCにおいて試合中にイドゥンの林檎を使うようなシーンはまず訪れないが,これはおそらく決勝戦でも続いたラグへの対策と思われる。ラグによりスキルを思い通りに発動できない以上,魔法詠唱のキャスティングとディレイを短縮しても意味がない。
また,ラグから解放されたあとにハイプリーストが個別にヒールしていたのでは,とても間に合わない可能性が高い。ラグ中に受けたダメージを少しでも回復し,戦闘不能になる確率を下げるために,タイ代表ギルドはこのスキルの採用を決めたのであろう。
このあと,アイスリンクのメインステージでは表彰式が行われ,1位から3位までのギルドにはトロフィーと目録が授与された。またRWC2007だけでなく,Gravity Festival 2007の最後のステージとして,韓国のアーティストが登場しミニコンサートが行われた。2人組みのヒップホップ系アーティストは韓国では有名な歌手らしく,韓国代表ギルドは歌詞を一緒に口ずさんでいたし,会場周辺にはファンとおぼしき人が鈴なりになってステージを眺めていた。ただ,ラップ調の歌詞は当然ながらすべて韓国語なので,他国からの参加者には今ひとつピンとこない企画だったようだ。
実は本日の午前中,決勝戦が開始されて間もないころ,昨日の予選に納得のいかないブラジル代表ギルドは,アメリカ代表および台湾代表ギルドに声をかけたうえで,「一緒にGravity側に抗議しないか」とpunchに打診していたのだ。日本代表ギルドの対応としては,再戦は求めないし,右側だけのPCが不調であったという証拠がない以上,試合結果の是非に関しては抗議できない。ただし,ラグがひどかったことは事実であり,最適な試合環境を用意できなかったことについて,せめて一言Gravity側からの公式コメントがほしいという立場を伝えていた。
お別れパーティの席で,もしかしたら何かコメントがあるのではと期待していたのだが,Gravity側がこれについて触れることはいっさいなかった。よりによってラグが結んだ縁というのは少々皮肉だが,RWC2007への出場をきっかけに,世界のROプレイヤーとコミュニケーションを図れたことは,punchメンバーにとって素晴らしい体験となったに違いない。
4Gamer:
世界No.1になった気分はどうですか?
Destruction:
気分いいですよ,Happyです!
4Gamer:
対戦相手の韓国ギルドは,かなり強かったですか。
Destruction:
とにかく動きと反応が素早くて押しも強く,手ごわい相手でした。
4Gamer:
Destructionはチェイサーをメンバーに入れていましたが,あれはやはりハイウィザードをガンバンテインに専念させるために選んだ構成なんでしょうか。
Destruction:
そのとおりです。日本代表ギルドも同じメンバー構成,同じ戦術だったのには気が付いてましたよ。残念ながら日本は負けてしまいましたが……。
4Gamer:
韓国ギルドのアサシンクロスが,ソウルブレイカーを連発していましたが,あれは脅威でしたか?
Destruction:
いいえ,アサシンクロスの存在はまったくプレッシャーにはなりませんでしたよ。
4Gamer:
ちなみにギルドメンバーで今日,一番いい動きをみせたMVPは誰でしょう。
Destruction:
ハイウィザードを担当したメンバーですね。普段も同じキャラクターをやっているので,いい仕事をしてくれました。
4Gamer:
来年もこういった大会が開催されたら,参加したいですか?
Destruction:
もちろんです。そのときはまた優勝を狙いますよ!
こうして2日間にわたり開催された,RWC2007は終了した。日本代表ギルドの大活躍を見られなかったことは非常に残念だが,厳しい環境の中でベストを尽くしたpunchのメンバーには拍手を送りたい。
4年ぶりに行われた世界大会RWC。ラグナロクオンラインという共通言語を持った若きプレイヤー達が,これだけ一度に集まり,世界No.1の座をかけて熱く戦う場というのはなかなかない。大規模なイベントを毎年開催するのは難しくとも,できればもう少しだけ短い間隔で,次回のRWCが開催されることを期待したい。(ライター:麻生ちはや)
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