イベント
[CEDEC 2008#13]「ファンタシースターオンライン」,アジアにおける苦闘の軌跡を「他山の石」に
そんななかで,当サイトの記事として目新しい話題になるのは,セガの第3CS研究開発部 見吉隆夫氏の講演「ネットワークゲームの開発と海外展開について」であろうか。この講演は「ファンタシースターオンライン」の海外展開と,「ファンタシースターユニバース」のサービスにおいて,突き当たった困難を中心に語るものだ。
どちらの作品も,日本国内市場で十分な成功を収めていることもあり,微笑ましい話題なども交えられていたものの,講演の主眼は各メーカーに,「もって他山の石とする」ことを期待したものだろう。
「ファンタシースターオンライン」は,プラットフォームにコンソールゲームを含むという限定を付けなくても,スクウェア・エニックスの「クロスゲート」などと並び,比較的早期に広く海外展開した国産オンラインRPGの一つとして貴重な事例だ。独自に工夫された外国語チャットツールこそあまり活用されなかったものの,アメリカ,ヨーロッパではおおむね好評を博し,ゲームプレイをきっかけとした国際結婚の事例も,報告されているという。
まず台湾におけるサービス。ここで突き当たったのは,チートの問題だ。セガは台湾で「ファンタシースターオンライン」のPCパッケージ版を発売し,サービスを提供した。だが,ご承知のように同作品はMO形式であり,キャラクターデータそのほかはクライアントPC側に保存される仕組みだった。台湾サービスでは早々にチーティングが発生し,サービスが荒れ,発売から3か月でプレイヤー数が激減してしまった。性善説的な構造のオンラインゲームは,耐えられなかった。そして哀しいことに,この構図は韓国サービスでもまったく同様だったのだ。
一つは操作体系だ。もともとゲームパッドを前提に作られた作品を,本当にマウスとキーボードだけで操作する前提でサービスすることには,多くの問題があったという。
ご存じのように,中国市場はなんといってもPC用MMORPGが圧倒的な環境だ。したがって,マウス主体のターゲット固定型アクション要素(いわゆるクリックゲー的操作)以外は,なかなか受け入れられなかったのである。実際,W/A/S/Dキーによるキャラクター移動ですら,一般に「World of Warcraft」以降初めて広く受容されたといわれている。
パッドの存在を基本的な前提として,軽快なアクションとコンボ技を多用する「ファンタシースターオンライン」シリーズの,魅力を引き出すことの困難さは想像するに余りある。
公式サイトでの操作ムービー提供などといった努力は重ねたものの,これが躓きとなったことは否めないという。
第二の問題は課金形態だ。基本無料のMMORPGがすっかり定着している中国市場で,プレイ時間による従量制課金によるサービスは,受け入れられにくかったとのこと。
最後に,中国オンラインゲームシーンで重要な役割を果たす,ネットカフェの問題が来る。ネットカフェサービスに参入せずして,中国でのヒットを狙うことは考えられない。ところが,「ファンタシースターオンライン ブルーバースト」のサービス提供に際して手を組んだ現地パブリッシャは,不幸なことにネットカフェサービスにおいて,影響力を持っていなかった……。
かくして,初代「ファンタシースターオンライン」のようなチートによる激甚な凋落こそなかったものの,中国市場で「ブルーバースト」がバーストすることはなかった。
会場からは,「ある程度困難が予想され,また実際に困難だった海外サービスに,なぜあえて固執したのか」という質問が出た。これに対しては,前段階としてソニックというキャラクターの成功があり,「ファンタシースターオンライン」の企画立案に当たっては,世界展開が当然の前提という認識だった旨の回答があった。
そうした痛手もあって,日本でのサービスは当初大きな落ち込みを経験するものの,現在ではその痛手から回復し,順調に運営されているとのこと。
実際,具体的な数字周りこそそれほど明らかにしていないものの,ここまで赤裸々な告白が目玉になっているとは,聞き手としてあまり予想していなかった。各メーカーにはぜひ,先達の苦労を教訓にした飛躍を期待したいところだ。
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン ブルーバースト エピソード4
- 関連タイトル:
ファンタシースター ユニバース
- 関連タイトル:
PHANTASY STAR UNIVERSE
- 関連タイトル:
ファンタシースターユニバース イルミナスの野望
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン ブルーバースト
- この記事のURL:
キーワード
(c) SEGA, 2000, 2001
(C)SEGA, 2000, 2005
(C)SEGA Corporation, 2005
(c)SEGA
(C)SEGA
(C) SONICTEAM / SEGA, 2000, 2004