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[AMショー2011]「『レトロゲームから最新機器まで一挙公開!』〜アミューズメントマシンの昔と今〜」で語られた“ゲーセン”の過去と現在
同イベントは,アミューズメントマシンの歴史を紐解き,同時にAMショー2011での見どころを教えてくれるというステージイベント。ここでは会場に展示された貴重なゲーム機の数々,そしてアミューズメントセンターの歴史を振り返る同イベントの内容を紹介しよう。
キーワード1:「感じる」
同イベントの基本的な考え方として,アミューズメントマシンの魅力は「感じる」「つながる」「集める」の三要素に大別できるという。
まずは,上記三つのうちの「感じる」というキーワードに関して。
アミューズメントマシンの歴史は,1960年代を中心にその多くが制作された,エレメカ(エレクトロメカニカルマシン)からスタートした。エレメカとは,簡単にいえば機械仕掛けのゲーム機。当時は,スクロールする道の上を走る自動車の模型をハンドルで操作する「ミニドライブ」(1959年)や,プレイヤーが実際にハンマーを握ってモグラを叩くいわゆる“モグラ叩き”の「モグラ退治」(1975年)といったエレメカが大人気となった。
エレメカは当時のアミューズメントセンターの王者であり,現在もその系譜は脈々と受け継がれている。「全身を使って架空の世界で遊ぶ」という哲学は,後のビデオゲームと同じものであるという。
1970年代にはビデオゲーム機が誕生。「スペースインベーダー」(1978年)のヒットをきっかけに,「ギャラクシアン」(1979年)などさまざまなゲームが登場した。ハードウェアの発展により「表現力が広がり,ゲームが娯楽として人々に印象付けられた時代である」と講演では解説される。
1980年代に入ると,家庭用ゲーム機が登場して,家でもビデオゲームを楽しめるようになった。しかしそれはまた「なぜ,アミューズメントセンターでなければならないのか」という問いに直面すること,つまりアミューズメント施設の存在価値を問われることでもあった。
業界が出した答えは,「遊園地に近い感覚」を持つ「体感ゲーム」だ。バイク型筐体にまたがる「ハングオン」(1985年),プレイヤーの乗り込む自動車型筐体が動く「アウトラン」(1986年)といった体感ゲームは,アミューズメントセンターでしか楽しめない。これは「なりきっての遊び」の一種であり,現在も続くメインストリームの一つであるという。
キーワード2:「つながる」
次なるキーワードは「つながる」。
アミューズメントセンターは1985年の風俗営業等取締法改正をきっかけに,大きな転換を迫られた。午前0時以降の営業が禁止となったため,昼間のお客を増やす必要が出てきたというのだ。
ここで隆盛を誇ったのが,セガの「UFOキャッチャー」を始めとするプライズゲーム機。ぬいぐるみという,当時はまだ馴染みのなかった景品を採用したことにより,女性客やファミリー層を増やすことに成功した。
1990年代には「ストリートファイターII」を始めとした対戦格闘ゲームの時代が訪れる。人間vs.コンピューターではなく人間同士が対戦することで,アミューズメントセンターは「ゲームを媒体としたコミュニケーションの場」になったという。
また1995年に発表された「プリント倶楽部」をきっかけに,プリントシール機,通称“プリクラ”のブームがスタートした。友達や恋人同士で写真を撮影したり,交換し合ったりといった「今までとはまったく違ったコミュニケーション」が生まれ,プリントシール機は「新時代のコミュニケーションツール」として機能した。
そして2000年代,アミューズメントセンターではオンライン化による革命が起こったという。インターネットの普及によりビデオゲーム機による遠隔地との対戦が可能になった。また,メダルゲーム機がジュニア層やシニア層に支持されるといった現象が起こり,アミューズメントセンターは新たなコミュニケーションの場になっていった。
キーワード3:「集める」
オンライン化は,アミューズメントセンターにおける第3のキーワードを強化したという。
それは「集める」ということ。
これまでアミューズメントセンターでプレイヤーが行える「集める」という行為の対象は,プライズ機のぬいぐるみなど実体を持つものに限られていた。
しかし,ビデオゲーム機がオンライン化し,プレイヤー個々人のデータが保存できるようになると,ゲームの中に登場するアイテムや経験値も集める対象になった,と講演では指摘されていた。また「甲虫王者ムシキング」のようにトレーディングカードゲームの要素と融合したものは,ゲームと「集める」要素はより親密なものになっている。
講演は「今と昔,技術やブームが変わっても,アミューズメントセンターが夢を与える本質は変わらない」との結論で締めくくりとなった。
仮想世界での体験を「感じる」と同時に,アイテムや経験値を「集める」のがオンライン化以降のビデオゲーム機体験。その過程はプレイヤー同士が「つながる」ことによってより豊かなものとなり,新たに体験を「感じる」,アイテムや経験値を「集める」ための原動力となっていく。このように,3つのキーワードはお互いのはたらきを増幅・強化しながら,新たなアミューズメントセンター体験になっていくのだと感じられた。
講演ではアミューズメントセンターでのインタビューも紹介されたが,「対戦するのが楽しかった」「まったく知らない人と対戦したり,情報を共有したり,友達になったりするのが魅力」「技量の高い人のプレイを見るために同好の士が集まることが醍醐味」など,プレイヤー同志の繋がりがアミューズメントセンターの魅力であるとする声が多く見られた。今後開発されていくアミューズメントマシンにおいても,「感じる」「つながる」「集める」という3つのキーワードは重要なものとなりそうだ。
なお,テーマステージの周辺には,懐かしのビデオゲーム機が多数出展されている。とくに体感ゲーム機は,――個体数を考えると――実物を見ることができる貴重な機会。というわけで,会場に来られなかった人のためにも写真を掲載しておこう。
・実際に遊べたタイトル・筐体
「スペースインベーダー」
「ストリートファイターII」
「バーチャファイター2」
「電車でGO!」
「デッド・オア・アライブ2ミレニアム」
・展示のみだったタイトル・筐体
「パックマン」
「テーカンワールドカップ」
「アフターバーナーII」
「甲虫王者ムシキング」
第49回「アミューズメントマシンショー」公式サイト
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