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[GDC 2011]実は日本はすごかった。iPhoneアプリ制作会社のCEOが語る,日本の携帯電話の先進性
ngmocoは,主に携帯電話用のゲームを開発している会社で,iPhoneを傾けて遊ぶアクションゲーム「Rolando」などで知られている。ちなみにYoung氏は,Virgin InteractiveやElectronic Arts(以下,EA)に所属していたベテランプロデューサーで,「Ultima Online: The Second Age」や「Majestic」(2001年)などに携わった経験がある。そのほか,EAのロサンゼルス開発支部ではゼネラルマネージャーとして,Medal of Honorシリーズや,The Simsシリーズを統括してきたという,華々しい経歴の持ち主でもある。そんなYoung氏は,「iPhoneに惚れたからEAを辞めて会社を作る」と言い,それを実現した人物でもある。
講演の序盤は会社を作るにあたっての心構え的な内容で,GDCのレクチャーというよりは,自己啓発セミナーでも受けているようなイメージだった。本稿では講演の後半で取り上げられた,日本の話について紹介しよう。
Young氏は,日本がモバイルマーケットのLeading indicator(先行指標)になったとし,その実例をあげた。とくにYoung氏が注目しているのが,独自の進化をとげた“ケータイ”だ。最近では皮肉を込めて“ガラケー”などと呼ばれることが多い日本の携帯電話だが,その先進性をYoung氏は評価した。
例えば,カメラやGPS機能の実装やHTML mailへの対応などを,ほかの国よりも早く実現させていただけでなく,それらを普及させて,サービスに落とし込んでいた。
日本以外の多くの国でこういった機能やサービスが広く普及したのは,iPhone登場以降だったということなので,確かに日本は早かったわけだ。また,3G回線を利用する端末の普及も早く,現在ではほぼ100%になっている。
さらに日本は,データ通信の定額プランの導入が早かったり,インターネットに接続する機械に携帯電話を使う人が多かったりと,携帯電話の通信機能を利用したマーケットの形成が群を抜いて早く,さまざまなビジネスを生み出していた。
日本で暮らしていると気付かないものだが,あらためて指摘されると,確かにかなり先を行っていた印象はある。とくに非接触型ICチップを用いた電子マネー系のサービスは,日本でかなり普及しているが,国外を見渡せば,まだまだこれからという国が多く,1歩どころか2歩も3歩も日本がリードしているという。
つまり日本のケータイは独自の進化を遂げたが,それは決してほかの国よりも遅れていたわけではなく,先を行きすぎていたという見方ができるそうだ。
また,最近の携帯電話というスマートフォンの話題ばかりが目につき,現状ではiPhoneの一人勝ちのように見えるが,市場でいえば,いわゆる“ガラケー”のほうがずっと大きいのだという。1社が提供しているものと,複数の会社がしのぎを削っているものを単純に比べるのはどうかと思うが,なにかのサービスを立ち上げた場合には,iPhoneよりも日本のガラケー市場のほうが利益を上げやすいそうだ。事実,日本のソーシャルアプリマーケットは,2008年と比べると20倍近く成長しているという状況で,“ありえないレベル”なのだという。もちろん日本でもスマートフォンの普及が急激に進んでおり,このままガラケーの天下が続くことは考えづらい。そんなことはサービスを提供している各社もとっくに分かっており,スマートフォンへの対応,海外への投資などが急激に推し進められている。
実際のところ,Young氏のngmocoもDeNAに買収されており,完全子会社という扱いで,iPhoneのアプリなどを制作している。アメリカで急成長を遂げた会社を,あっさりと買ってしまうあたりに,DeNAの勢いを感じずにはいられない。そして,アメリカに来てまでDeNAの急成長ぶりを聞くことになるとは思っていなかったので,正直驚いた。
GDCでレクチャーを聞いている人達は,かなり高額な参加費用を支払っていることもあり,途中でつまらないと思うと,容赦なく出て行き,ほかのレクチャーの会場へ向かう。実際に途中で次から次へと人が出て行ってしまうレクチャーがある中で,ほとんどの人が最後までこの講演を聴いていたという事実も見逃せないだろう。
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