GDCはカンファレンスやセッション以外に，(E3ほど巨大ではないものの)展示会場も存在する。
　展示会場には，AMDやインテルといったCPUメーカー，ATIやNVIDIAといったGPUメーカーのブースもあるが，3Dグラフィックス制作ツールのメーカー，ゲームエンジンメーカーのブースが目立つ。
　そして会場の奥まったところにはUbiSoftやLucasArtsなどの大手ゲームスタジオのブースもあるが，これらのブースでは作品の展示などは基本的には行われていない。それらのブースはゲーム開発者の就職相談所になっているのだ。
　「ゲーム開発者のゲーム開発者によるゲーム開発者のためのGDC」ならではのEXPOといったところ。
　さて，そうした展示のうち，特に興味を惹かれたゲームエンジン関連の展示について取りあげてみよう。


LithTechエンジンのLithTech社，社名を変更して新ゲームエンジンを発表

　「ノーワン・リブス・フォーエバー」シリーズや，「TRON2.0」などのビッグタイトルが採用しているゲームエンジンはご存じLithTech Jupiterエンジンだが，このLithTechエンジンの生みの親LithTech社がTouchdown Entertainmentと社名を変更した。「ここ」の公式サイトに行くとWebサイトのデザインも変わっているのに気づくはずだ。
　また，同社はこのタイミングで，Radical Entertainment社と共同開発した新ゲームエンジン(ゲーム開発用ミドルウェア)"Copperhead"を発表した（Copperheadは毒蛇の"マムシ"の意味がある）。
　さて，Copperheadエンジンはグラフィックスだけでなく，サウンドエンジン，物理エンジンを全て含む統合型エンジンで，PC用だけでなく，Playstation2，Xbox，GameCubeの4つのプラットフォームに対応したバージョンが存在する。
　ハードウェア層の上にAPI層があるようなイメージで，ハードウェア層のエンジンを差し替えてコンパイルしなおすことで，制作したゲームを簡単に別のプラットフォームで動かせる。そう，Copperheadは，いわゆるクロスプラットフォーム対応型ミドルウェアであり，1つのゲームタイトルを上記4種類のハードウェアに移植が透過的にスムーズに行えるのだ。
　PCバージョンのCopperheadは，話を聞く限りでは，Xbox版とほぼ同じ仕様で，DirectX8世代のGPUテクノロジーベースで制作されている模様だ。具体的に対応している3Dグラフィックステクノロジーとしては内積型バンプマッピング，シャドウバッファ，トゥーンシェイダー，ボーンスキニングなど。
　気になるLithTechエンジンとの関係だが，基本部分はRadical Entertainmentが開発したということで，全く別物だとのこと。
　また，Touchdown Entertainmentは，LithTechエンジンを今後も存続させ，Copperheadエンジンと共存させていくことを明らかにした。
　その棲み分け方についてきいてみたところ，「一人称シューティング(FPS)やRPG/アドベンチャーゲームならばLithTechエンジンの方が適しており，Copperheadはスポーツゲーム，レースゲームなどに適している。」との返答が得られた。ただ，その根拠は不明。
　Copperheadを採用した具体的なタイトルについてどんなものが予定されているのかと聞いてみると，外部へのCopperheadのライセンシングは始まったばかりであるためまだ未定だとのこと。ただし，Copperheadエンジンの実質的な開発元であるRadical Entertainment社は，今回のような外部ライセンシングビジネスを始める前に，自社タイトル3作品をCopperheadエンジンベースで制作して発売している。
　その3タイトルとは具体的には
「Dark Angel」(Xbox，PS2)
「Simpsons Road Rage」(Xbox，PS2)
「Dark Summit」(Xbox，PS2)
の3つで，現在そのどれも発売中だ。
　そういう意味ではCopperheadエンジンでどんな感じのゲームが実現できるのかというのを確かめるには，上記3タイトルを見てみるのがいいだろう。

写真1，2：Touchdown Entertainmentブース
写真3，4：「Dark Summit」
写真5，6：「Dark Angel」
写真7，8：「Sinpsons Road Rage」