[GC 2006#35]ロシアの1C Companyが開発中の「Theatre of War」は戦車マニアにも嬉しいこだわりのRTS
ロシアに本拠を置くデベロッパ/パブリッシャの1C Companyは,GC会場であるライプチヒ・メッセ内に展示ブースは持たず,第2ホールに設置されたビジネスセンター内の商談スペースにメディアを案内し,新作の紹介を行っている。 GC 2006も2日目となり,一般客の入場が始まったため観客数が跳ね上がった。人ごみをかき分けて行う取材より,静かな環境で話を聞けるこういったスタイルのほうが,個人的にはありがたいというのが本音である。
例によって硬軟取り混ぜ,たくさんの開発中タイトルを抱える1C Companyだが,彼らの一押しが自社内で開発中の「Theatre of War」だ。4Gamerでは初紹介となる本作は,第二次世界大戦を舞台とするRTS。プレイヤーは戦車部隊の指揮官として,1939年のドイツ軍のポーランド侵攻から1945年のベルリン陥落までを戦うことになる。 40種類のミッションと五つのキャンペーンから構成されるTheatre of Warの特徴は,なにより「史実に忠実」であること。Kar.98kライフルの射程距離やI号戦車の正面装甲厚など,小さな図書館なら作れてしまうほどに,ゲームに登場する事物の資料を徹底的に調べ上げたそうである。まさにロシア的忍耐力と呼べるのではないだろうか。違うかもしれないが。
我々に見せてくれたのは,ドイツ軍の戦車中隊が国境を越え,陣地にこもるポーランド軍部隊と戦うシーンだ。RTSではあるが,「資源の開発」や「生産」といった要素を取り去って純粋に戦略を楽しめる,最近ちょっと流行のスタイルである。
戦車と兵員を配置し,攻撃目標を設定するとゲームスタート。戦車や兵士にはそれぞれさまざまなパラメータがあり,それらによってある程度自律的に行動できる。例えば兵士のパラメータには「体力」と「士気」があり,指揮官が誤った命令を連発したり,砲撃にさらされると士気が低下し,士気がある程度以下になると勝手に戦場を離脱することがある。むろん,撃たれたりすると体力は低下し,ゼロになればおしまいだ。
戦車を先頭に押し立てて前進するドイツ軍だが,やがて,ポーランド軍の反撃も始まり,敵野砲が火を吹く。その砲の口径はたったの37ミリだが,こちらも大砲じゃなくて機関銃しか装備していないI号戦車やII号戦車だ。敵の一弾がII号戦車の正面を貫くと,爆風でキャタピラが吹き飛び,起動輪がむき出しに……。
ちなみに,戦車のダメージモデルの設定もなかなかのもの。砲弾の貫徹力や彼我の距離,命中角度などから正確にダメージを判定し,結果を表示するのである。命中により,正面に小穴が開き,エンジンからは煙を吹き出し擱座するII号戦車。戦車兵2名が戦死。だが,戦車はまだ使用可能だ。この場合再び戦列に復帰させることが可能で,後方から戦車操縦のスキルの高い兵士が自動的に駆けつけて搭乗する。
このように,兵士それぞれには固有のスキルがあり,戦闘を重ねることによりそれらが向上するといったRPG的な要素もある。その兵士が戦死してしまえばそれっきりだが,生き延びれば次のマップでも使用可能なため,その点を考慮した戦いが必要なのだ。 とはいえ,なかなか進捗しない戦いに業を煮やした指揮官は,「空軍支援」を要求。それに応じたドイツ空軍爆撃機が地平線に姿を現すと,やがてポーランド軍陣地に爆弾の雨を降らせ,ついにミッションクリアである。
印象としては,戦車だけでなく各種兵器のディテールの細かさが際立つ。II号戦車など,細かい型番まで識別できるほど描きこまれているし,「IL-2 シュトルモヴィク」シリーズを手がける同社だけに,爆撃機のみならず,投下する爆弾までディテール豊かだ。良く手入れされたポーランドの農園地帯も美しく,グラフィックスはかなりハイレベルといえる。 また,ズームアップして兵士に近寄ると,実にさまざまなアニメーションを見せてくれる。二人の兵士が息を合わせて野砲の向きを変えるときなど,彼らの掛け声まで聞こえてきそうだ。
美しく緻密なグラフィックスと,徹底的に調べられたディテール(戦車のエンジン音まで実物から録音したとのこと),そして操作しやすそうなユーザーインタフェースなど,なかなかの仕上がりを見せるこのTheatre of War。発売は2006年9月もしくは10月が予定されている(松本隆一)
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