インタビュー
[インタビュー]3つの社長を兼務するペク氏が,スマイルゲートのゲームを強固なものに―――日本のお客さんが「スマイルゲート」という名前を聞いて「あぁあの会社ね」と分かるようなブランドを作りたい
韓国のゲーム会社で,MMORPG「LOST ARK」,FPSなら「クロスファイア」,最近では「Epic Seven ―エピックセブン―」,「ロードナイン」などで名高い。
日本法人があることは知っていたのだが,粛々と運営されているもののとくに大きな動きを見せず,そうこうしているうちに「LOST ARK」が日本だけサービス停止になって(グローバル版はサービス継続中),代表の変更が発表されたのが,この春のことだ。
新代表となった白 永勲(ペク・ヨンフン)氏は,ポッと出の人物などではなく,CJ Internet JapanのCEOや同社ゲーム部門の理事,Netmarbleの事業統括やNetmarble JapanのCEOなどを歴任してきた,「日本のゲーム業界に大変詳しい韓国人」だ。
Netmarle時代は,日本市場で「七つの大罪 〜光と闇の交戦〜」や「二ノ国:Cross Worlds」をローンチさせて成功させた実績を持つ。
現在は,スマイルゲートホールディングスメガポート部門※の代表と,「Stove」の代表も兼任しており,ここに3つ目の役割である「スマイルゲートジャパンの代表」が追加された形だ。なかなか人遣いが荒い。
とはいえ成果は上々で,韓国ゲーム業界関係者によれば,ペク氏が来てから,韓国ではMMORPG「ロードナイン」(iOS / Android / PC)がヒットし,さらに低迷していた「Epic Seven ―エピックセブン―」(iOS / Android)が復活。「NetmarbleのDNAを,やや硬直したSmilegateの組織に注入し,状況は好転しているようだ」とのこと。
そんなペク氏が東京ゲームショウにこっそり来ていたので,ちょっとだけ時間をもらって話を聞くことができた。まずは“意気込み”レベルの話でしかないが,そのマインドを聞きつつ,今後のスマイルゲートの動きに期待しよう。
4Gamer:
お久しぶりでございます。今日はお時間ありがとうございます。
ペクさんが日本法人の代表をやるということで今回お時間もらったわけですが,業界でもそんなに表にガンガン出るほうじゃないので,もしかして業界でも知らない人がいるかもしれないので,まず自己紹介からお願いしてもいいですか。
日本では,2003年から2021年末までCJ Internet(Netmarble Japan)で働いてました。その期間で,3回くらい代表を努めましたが(笑),トータルでは……7,8年くらいでしょうか。
4Gamer:
あれ,3回もやってたんですか!?
ペク氏:
そう,3回やりました(笑)。その後は,韓国の111Percent※という,中規模の,アイデアで勝負するベンチャーっぽい企業で代表をやっていて,2023年の6月にスマイルゲートホールディングスのメガポートの部門代表として就任することになりました。
※アイデアで勝負するベンチャーっぽい企業……などと控えめな表現で言っているが,ハイパーカジュアルゲームを作り続けて,3年でDAU180万人ほどになった会社だ。氏は,ゲームを「数字」でも「コンテンツの中身」でも見ることができるわけで,なかなか強い
4Gamer:
Netmarble時代から存じてますので,ペクさんがスマイルゲートの日本法人の代表というのは個人的には納得できる人事ではあるんですが,逆に,なぜスマイルゲートの日本法人は,ちゃんと稼働するまでこんなに時間を要したんですか?
ペク氏:
いや,以前も日本法人がなかったわけではないですよ。
4Gamer:
存じています。しかしなんていうか……「ちゃんと動いてなかった」ような気がしてまして。
ペク氏:
なるほど。
日本法人が設立されたのは,正確には覚えてませんが,結構前だったはずです。そのときは,現地の会社とパートナーシップを結んでサービスをしていたんですが,私が就任することで「やはり直接サービスを展開しよう」という切り替えをすることになったようです。
4Gamer:
満を持して稼働を始めた日本法人には,何か数値的な目標とかあるんですか?
ペク氏:
今はまだ,数字で話すのはとても難しいと思います。来年もしまたお会いする機会がありましたら,その時に数字目標のお話ができるかもしれません(笑)。
でも今は本当に始まったばかりなので,数字的な目標よりも,日本のもっと多くのユーザーに「スマイルゲートはいいゲームサービスをする会社だ」と認識してほしいですし,現在はそれを目標にしています。
4Gamer:
目標にしてはちょっと弱気な……?
ペク氏:
なるほど。では「必ずそれを叶うようにしたいと思っています」ではどうですか(笑)。
4Gamer:
了解です(笑)。でもちょっとだけ質問を変えますね。
先ほど,パートナーシップを結ぶのではなくて直接サービスをするのだとおっしゃっていましたが,では日本法人の役割としては,どのようなものが想定されているんですか?
ペク氏:
ゲームというのは文化……うん,そうですね,文化に近いと思うんです。
昔Netmarble Japanの代表をしていたとき,文化の違いはとても大きいと考えていました。そういった経験をだいぶ積んだと言いますか(笑)。
4Gamer:
その違いを吸収するのが役割?
ペク氏:
吸収するというよりは,現状ではコンサルティングに近い役割かなと思っています。
細かい文化面において,韓国の開発チームやマーケティングチームでは,日本に向けてサービスをするときにいろんな問題が出てきてしまいます。
4Gamer:
例えばどのあたりで感じますか。
ペク氏:
告知の出し方だったり,ビジネスモデルの設計の仕方だったり,そういうところですね。あと,イベントの設計や,コンテンツをどのように調整すれば日本のお客さんに喜んでもらえるか,どうやって馴染んでもらえるか,という方向性や改善意見の提示とかもしますね。
ですので,単語としては“コンサルティング”に近い業務だなぁと思いますし,それを現状の役割として行っている状況です。
4Gamer:
なるほど。確かにそれはコンサルかもしれません。
私がはじめて日本で仕事をしようとした時,ビックカメラに行ったらチラシが目に入りました。そのチラシが,ある意味とてもカルチャーショックでして……。
4Gamer:
量販店のチラシのどのあたりが……?
ペク氏:
いろんな商品の,いろんな情報が,所狭しとドバーっと並んでるんですよ。これ何? どういうこと!? とちょっと意味が分からなかったです。でも日本のスタッフに聞いたら「割引とか商品の情報を載せてるだけで,ごく一般的ですよ」と。
4Gamer:
まあ,そうですね(笑)。
ペク氏:
日本と韓国は,ある意味では雰囲気が似てるところもあるかもしれませんが,実は結構細かいところでいろんな差がありまして。そういったディテールを調整して,よりマーケットにちゃんと合わせるような助言だったり,提案だったりをして調整する役割を,日本法人でやっています。
4Gamer:
なるほど。ということは割と直接的にタイトルに絡んだ仕事をするわけですね。
あと,韓国の会社が日本法人を作るというと,日本のIP使うための窓口かなとかそういうイメージがちょっとあるんですけど,そのあたりのことは考えていますか?
おっしゃる通り,日本のIPを生かしていくのは仕事の一つではありますが,現時点で優先度が高いのは,韓国のゲームをちゃんと日本でサービスするための,クオリティ面だったり,よりユーザーさんに喜んでもらえるような改善だったり調整だったり,そういうものを提案していくということですね。
4Gamer:
なるほど。
ペク氏:
日本の有名なIPを使ったり,可能性があるのであれば製作委員会に参画するなど,私は元々そういったことにとても関心があります。
今でもその興味は高く,今後も広い間口で進めていくことになると思いますが,次のステップに進むまでには,まだ少し時間が必要だと思います。
4Gamer:
では先ほどの改善提案などみたいなこと以外に,急ぎでやらねばならないと思っていることはありますか?
ペク氏:
Stoveというゲームプラットフォームの運営ですかね。
それについて今日(TGSで)驚いたのは,去年に比べてたくさんのインディーゲームが出展されていました。かなりの本数増えてる気がします。
それらのインディーゲームをStoveに導入して,韓国やアジア圏で楽しめるような,そんな可能性も感じました。そういったところでも日本法人がキチンと機能するように,今後の役割としてアップデートしていくことも必要かなと思っています。
4Gamer:
そもそもペクさん,Stoveの代表でもありますもんね。
ペク氏:
そうですね。まぁ兼任は,昔からずっとやり続けているので慣れています(笑)。
韓国のインディーゲームイベント「BIC」と,韓国のゲームプラットフォーム「Stove」が共同で行った記者会見をレポート[BIC2024]
韓国のインディーゲームイベント「BIC2024」の初日,BICの事務局長であるソ・ジョンスク氏と,SmilegateのStove事業総括代表であるペク・ヨンフン氏による共同記者会見が行われた。Smilegateが展開するゲームプラットフォーム「Stove Indie」が,BIC2024のプラチナスポンサーという関係性になっている。本稿では,記者会見の内容をお伝えしよう。
- キーワード:
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- 編集部:Akasaka
- BIC2024
- BIC
4Gamer:
そうやって兼任しながら20年以上も日本のゲーム市場を見てきたわけですが,そんな日本のゲーム市場が,これ全然韓国と違うな……みたいなことって,どういうことがありますか。
ペク氏:
昔は結構あったんですが,例えば2006年のときと比べると,だいぶ差は縮まっているように感じます。
当時の韓国ゲーム市場はPCベースのオンラインゲームで,日本は主にコンソールゲームとWebゲームでした。Yahoo!さんのWebゲームとかありましたよね。
そういったものも徐々にスマートフォンへと移行し,最近のお客さまはグローバルゲームを体験するのが非常に容易になっています。そんなことも影響して,そういう差がどんどん縮まってきているのではないかと思っています。
4Gamer:
カルチャーに根付いた,プレイヤーの考え方の違いみたいなものはないんですか?
ペク氏:
あぁそういうのはちょっとありますね。
例えば韓国プレイヤーの場合は,一般的な傾向で言うなら結果を重要視します。一方で日本のプレイヤーは,過程を大切にしている人が多い気がしますね。
4Gamer:
あぁそれはすごく理解できます。プロセスに重きを置くことはありそうです。
ペク氏:
やはり,“スタートライン”の違いで各国それぞれの差異はあるとは思います。
韓国はオンラインゲームからスタートした文化なので,結果を重んじるような市場の特徴がありますし,日本はコンソールゲームからスタートしたので,プレイの過程を重んじるというか。そういったところで,韓国と日本のプレイヤーに違いが出てくる結果になったじゃないかなと。
4Gamer:
オンラインゲームがスタートポイントだと「競争がメイン」という意味ですか? MMORPGは「PvP」とか「攻城戦」とか,そういうので成り立ってましたしね。
ペク氏:
そうですね。オンラインゲームからスタートした韓国は,競争させることが基本です。例えばMMORPGなんかだけではなくて,「テトリス」もお互いに競争しながらプレイできるようなPCオンラインゲームがありました。しかもそれ,めちゃくちゃ流行りましたね。
日本はコンソールベースなので,ユーザーの目線で,自分のペースで,自分が過程を楽しめる……そういう部分が重要視されているのかなと思います。
4Gamer:
私も両国を見てきているので,「あぁ確かに」と思う部分が多いです。
ペク氏:
ですよね。基本的にその差はどんどん縮まってきているとは思うんですが,そのベースにはこういう始まりの違いがあって,それぞれの特徴があると思ってます。
いや,でもとても良い質問です。私はこの問題について多くの考えを持っているので,次回は時間があるときに,ぜひゆっくりお話したいですね(笑)。
4Gamer:
いいですね,ぜひやりましょう! すごく興味があります。
しかしそういう違いがあるという合意を得たところで,それは結局オンラインゲームの運営方針とかイベントの内容とかの違いになって,表に現れるわけじゃないですか。だから,国を越えてオンラインゲームをサービスするのは結構難しいんじゃないかな,とずっと思っているんです。
ペク氏:
はい,まさにその通りです。いろんな難しい部分があります。
4Gamer:
例えば日本で言うなら……ちょっと前であれば「TERA」とか,最近ではバンナムさんの「BLUE PROTOCOL」とか,MMORPGのサービス自体が結構厳しそうだなという雰囲気があります。FF14は別として。
そのあたりに対して,ずっと日本を見てきたペクさんは,MMORPGが盛んな国韓国の人として,日本のMMORPGはこの後,どうなると思います?
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ペク氏:
「MMORPG」と言ったとき,ほとんどの人は単なるジャンルとして決めつける傾向があるのですが,実はMMORPGの中には多様なゲームプレイがあると私は思っています。
MMORPGの字面をそのまま解釈すると,大規模で,マルチプレイヤーで,オンラインで,ロールプレイをするゲームです。でも中でも韓国のMMORPGは,お金がたくさんかかるゲームになっています。あと韓国産MMORPGの特徴として,非常に多くの日課がありますよね。
4Gamer:
デイリークエストみたいな。
ペク氏:
はい。時間をいっぱい遣わないとならないという部分もあり,またお金をいっぱい投資しないといけないという部分もあり。なので,さっきの話とカブってしまいますが,過程を楽しむよりも結果中心になっていて,こういった特徴が表れたかなと思います。
あの……Gravityさんが運営しているあの……なんでしたっけ,だいぶ昔のMMORPGで,コミュニティが盛んで……。
4Gamer:
ラグナロク オンライン?
ペク氏:
そうです! それもMMORPGですが,例えばROの場合は競争というより,コミュニティ要素が強いわけです。協力し合うという部分に重きを置いてあり,MMORPGのジャンルの中でも,こういう要素があれば日本でも成功事例が作れるわけです。
4Gamer:
なるほどROですか。
韓国は,プレイヤーを集めてほかのギルドと競争するような,GVG※的なコンテンツがあって盛んでしたけど,みんなで一緒にがんばって勝つのが面白いわけです。
しかし日本は競争させるというよりは,みんなで集まってお祭りをしたり,写真の撮影会をしたり,その場を楽しむような運営が重要かなと思っています。
※Guild vs. Guild。ギルド戦のこと。
4Gamer:
うーん,そこは結構納得できますね。「日本人はPvPが嫌い」と言われていたころに比べて,だいぶ変わってきましたが,それでもなお根強くカルチャーとして残っている気がします。
ペク氏:
そうですよね。
以前の経験で言うならば,日本のプレイヤーさんはRAIDで競争をするようにしても,RAIDを通してボスを倒す時間で競争する感じなんですよね(笑)。実際に競争をするのが,そんなに好きではないと言いますか。
日本では,そういうタイムアタック的なものは受け入れられているほうだと思いますが,直接プレイヤー同士が殺し合うことには抵抗感があります。そういった違いを感じていましたし,FPSなんかは別ですが,たぶんそこはいまでもそんなには変わらないんじゃないでしょうか。
4Gamer:
韓国のMMORPGでは,なかなか日本に根付かない?
ペク氏:
競争型のMMORPGが日本で成功するのは,そんなに簡単な話ではないと思います。
ただ,それをちゃんと把握したうえで,ストーリーテリングがある,何か協力をするようなMMORPGならまだ可能性があると思います。みんなが協力し合うという環境が構築できるというゲームがサービスができたら,MMORPGとしてのジャンルとしても意味があると思うんですよね。
4Gamer:
つまり裏を返すと,韓国ではそういうものは作ってもらえない……?
ペク氏:
作ることができないというよりは,韓国にいる人たちは,当たり前なんですが韓国の市場を中心に,韓国ユーザーを中心に考えます。特にMMORPGにはそのような考えを持つ人たちが多いので,作れないよりも,選択が少ないんだと思います。
4Gamer:
あぁなるほど。まぁでも確かにとくに日本に向けて作ったりはしないですしね。
ペク氏:
そうですね。過程を楽しめる作品を作れないわけではないと思うんですが,やはり選ぶとしたら韓国の国内を優先するという選択をするしかないかなと思ってます。
2010年初めのころ,韓国のゲームが日本に進出して成功したりランキング1位まで取ったりとか,そういうのが全然想像もできなかった時代でした。でも実際は,韓国発のゲームがたくさん実績を出していて,最近では「NIKKE」が大きな結果を出しています。
4Gamer:
確かに,もうそんなに違和感なく入ってきてます。
ペク氏:
日本のユーザーの皆さんにもたくさん好かれている,長寿MMORPGを作ることができるようにはなりましたが,現時点での韓国会社においては,優先度としては単に後回しになっていて,日本に合わせられていないだけなのかなと思います。
4Gamer:
では世界に目を向けたらどんな感じでしょう?
ペク氏:
MMORPGは,ジャンルというよりは“特徴”なんだと思います。その特徴に合わせて開発すれば,世界に向けてもまだまだ可能性があると思います。ただ単に高い課金を要求するということを控えて,協力と合理的な競争が組み合わせられているMMORPGであれば,十分に可能性があるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
日本もそこまでではないですが,世界に目を向けてもMMORPGってもはや主流のコンテンツではなくなっていて,もうムーブメントが去っちゃったのかな……という,ちょっとした寂しさがありまして。
連続して長い時間を要求するのが,今のプレイヤーにはあまり響かないんですかねえ。
今回も前回以上に感じましたが,マルチプラットフォームに展開するタイトルが多くなってきていますよね。
以前でしたら,PCやコンソールなど特定のデバイスでプレイできる感じ,ゲーム内のクエストを行うだけでもPCやコンソールでやらなければいけなかったわけです。でもいまはモバイルで簡単に状況をチェックできて手軽にプレイできて,簡単なクエストであればこなせるようになっています。
こういう発展によって,長時間プレイヤーをディスプレイの前に束縛するようなことは解消されています。連続した長い時間を投資するよりも,頻度高めにアクセスするような状況を作れば,MMORPGの可能性がまだあるんじゃないかと思ってます。
4Gamer:
要は満足度の問題ということでしょうか。
ペク氏:
はい。以前のように長い束縛を要求するのではなく,少しずつチェックして確認して,オンライン世界であっても継続的に関係を持っている……という,そういう考えを持って作るのがいいのではないかと。そうすることで,プレイヤーさんも満足感を得ることができると思いますし。
4Gamer:
それがそれでうまくいくと,ますます現実世界に帰ってこれないという問題もあります。
ペク氏:
それはただのやりすぎです(笑)。
まぁオンラインで本当の満足を感じられるのは,ゲームだけではないかと思います。LINEやKAKAOなどでのチャットも,MMORPGのゲーム内チャットも“ソーシャル”関係だと考えていますが,それらの中での関係がどこまで進んでいくのかによって,人それぞれ満足感が違うと思いますね。
4Gamer:
実は今回インタビューを受けていただく時に,言っても業界が長い方で社長ですので,「会社」とか「ビジネス」の話にしようかと思ってたんです。しかし,失礼ながら想像以上にゲームのことを語れるんですね。
ペク氏:
ユーザーさんは常に変化していますし,何を提供すれば満足していただけて,何を提供すれば楽しんでもらえるのか,常に考えていなければならないと思います。本日のように,ゲームに関するディスカッションができて,私もとても楽しいです。
4Gamer:
そういうことを常に考えてるんですね。
ペク氏:
そのような悩みを抱えていないと,プレイヤーさんに愛されるゲームは作れないし,ゲームの価値も上がらないと思います。ゲームの本質について考える必要がありますし,スマイルゲートは,プレイヤーさんやマーケットの考えに寄り添った,その上でようやく,成長を続けていけると考えています。
4Gamer:
ゲームのプロデューサーと話してる感じすらしてきますね。
ペク氏:
いやいや(笑)。そこは全然です。私は,私たちのお客様である全世界にいるユーザーさんの目線で,彼らを徹底的に満足させなければならないと考えています。
4Gamer:
ではそんな顧客目線を持った社長に率いられたスマイルゲートは,この後どういう立ち位置を作ろうと思っていますか?
ペク氏:
私はスマイルゲートホールディングス メガポート部門を管轄する代表として,パブリッシングとプラットフォームという二つの軸を中心に申し上げます。
4Gamer:
ぜひ。
ペク氏:
1つ目はStoveというプラットフォームに関してですが,多様なインディーゲーム,パッケージゲームをプラットフォームに登場させる予定です。このあとは,さらにユーザーの要求が非常に多種多様になっていきますので,多彩なゲームがStoveで入手できるように,Stoveを正しく作っていかなければならないと考えています。
2つ目のパブリッシングに関しては,先ほど言ったように,どのゲームが1年後,2年後,3年後にユーザーに愛されているかを考えながらタイトルを選び,そういうゲームをサービスし,持続的にユーザー満足度を上げてロングランできるゲームをパブリッシングしたいです。
4Gamer:
極めてシンプルですね。
ペク氏:
この2軸はどちらも大事です。Stoveプラットフォームに多くのタイトルを誘致してプレイヤーにさまざまな選択肢を与えつつ,未来のプレイヤーにも満足感を与えられるようなゲームをパブリッシングして,会社としての持続性を保つようにしようと考えています。
そして最後に,日本の目標……というか達成したいことを申し上げますと,日本のお客さんが「Stove」とか「スマイルゲートメガポート」という名前を聞いた瞬間,あぁあの会社ね! と分かるような,ちゃんとしたブランディング力を作り上げたいなと思っています。
4Gamer:
いい感じの締めをありがとうございます。今後のご活躍に期待しています。
――――2024年9月26日
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