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急成長する「Roblox」のキーマンに聞く,日本市場の現状と展望。多くのクリエイターを招いて開催された「Robloxフォーラム in 東京」レポート
このイベントは,「Roblox」でゲームを制作しているクリエイター達や,今後利用を検討している企業などを招いたもので,「Roblox」の現状や展望を語る講演が行われたほか,関係者達がオフラインでの交流を楽しんでいた。
本稿ではそんな講演の中から,RobloxでDeveloper Relationsを担当するVice PresidentのMatt Curtis(マット・カーティス)氏のスピーチを紹介する。またセッション終了後,氏に「Roblox」の日本展開について聞くインタビューを行ったので,合わせてご一読いただきたい。
「Roblox」公式サイト
急成長する日本の「Roblox」人口と,広がるコラボレーション
Matt Curtis氏のセッションでは以下の3つの切り口から,「Roblox」の持つポテンシャルの高さがアピールされた。また2024年後半に実装が予定されている,さまざまな新機能についても紹介が行われた。
- Robloxの市場規模と日本市場の成長率の高さ
- ゲーム開発ツール,Roblox Studioの機能紹介
- 日本のIPを活用したゲームの盛況さ
「Robloxの市場規模と日本市場の成長率の高さ」の話題では,2024年6月時点における「Roblox」のデイリーアクティブユーザー数が7950万人に達したことや,一人あたりのログイン時間が平均2.4時間/日であること触れつつ,中でも日本のユーザー数&プレイ時間の伸びが,ほかの地域と比べて大きいことが説明された。
そしてRobloxが中〜長期的な目標として掲げている「世界のゲームコンテンツ収益シェアの10%を獲得する」の実現には,日本の市場開拓とクリエイターの参加が鍵であるとしている。
続いての「Roblox Studioの機能紹介」では,その名のとおり,「Roblox」用のゲーム開発ツールである「Roblox Studio」の紹介が行われた。
これは自動翻訳やプログラミングにおけるコードアシスト,マテリアル&テクスチャの自動生成など,すでに実装されている機能について触れながら,「Roblox Studio」がいかに開発者フレンドリーであるかを説明するものだったが,さらに2024年後半に実装される新機能にも言及された。
それによると,開発者向けのマーケットプレイス分析ツールが新たに導入される予定で,さらにはUGCアイテムを活用した,新たな収益化の取り組みも合わせて準備中とのことだった。
最後の「日本のIPを活用したゲームの盛況さ」では,「ソニックスピードシミュレータ」といった日本のIPを使ったゲームの成功例や,「ペタペタサマ」など日本のクリエイターが制作してヒットしたタイトルがいくつか紹介されたのち,「進撃の巨人」「ワンピース」といった人気IPとコラボレーションが,今後も予定されていることが発表された。
そして2024年末から2025年にかけて,日本市場をさらに盛り上げていきたいという氏の決意が語られ,スピーチは締めくくられた。
日本のクリエイターやコミュニティと共に歩んでいきたい――Roblox VP,Matt Curtis氏インタビュー
4Gamer:
お時間をいただき,ありがとうございます。本日の発表ですが,基本的には9月に行われた「第10回Roblox開発者会議」(以下,RDC)での発表を踏襲したものと考えていいでしょうか。
「Roblox」が今後行うクリエイター支援を発表。アクセス権の販売やアフィリエイトなど,収益化に関するサービスや機能が公開に
オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」のイベント「第10回Roblox開発者会議」で,今後公開される新機能やサービスが発表された。フレンド間のコミュニケーション機能のほか,バーチャル空間でのショップの公開,アクセス権の販売,アフィリエイトプログラムなど収益化に関する情報が明かされている。
Matt Curtis氏(以下,Curtis氏):
はい。ただRDCの講演がベースではありますが,日本の市場に特化した内容を盛り込んでいます。日本の「Roblox」市場が,DAUで昨年比56%の成長率を記録したことや,セガのソニック,サンリオのハローキティといった日本のIPが大きな成功を収めていることなどが,これにあたります。
4Gamer:
RDCでは,Robloxが「世界のゲームコンテンツ収益シェアの10%を獲得する」という目標が発表されました。これは大きな目標だと思いますが,Curtisさんとしては,どの程度の期間でこれを達成できると考えているのでしょうか。
Curtis氏:
何が何でもこの時期までに,といった期限は設定していません。すぐに達成できるゴールではありませんし,あくまで長期的な目標ということですね。同時に「Roblox」のプレイヤー数を10億人まで伸ばすという目標もありますが,これも同様です。ただ,これまでの「Roblox」の成長率や,達成してきたヒストリーを振り返ると,野心的ではありますが,達成不可能な目標だとは思っていません。ですので,このタイミングで発表させていただいたわけです。
4Gamer:
なるほど。……ちなみに登山に例えると,今は山の何合目くらいだと思いますか。
Curtis氏:
(笑)。何%と具体的に言うことはできませんが……そうですね,まだまだ登り始めたところだと思いますよ。Robloxという会社ができて18年,これまでかなり順調に成長してこれましたし,その成長はまだまだ続くだろうと,個人的には楽観的に考えています。
4Gamer:
分かりました(笑)。ただ一口に10%のシェアを取ると言っても,いろいろな形があると思います。例えばSteamやPlayStationといった既存のプラットフォームのシェアを奪っていくのか,それとも既存のゲーム市場が成長する以上に,「Roblox」が新たな市場を開拓し,その結果として10%に至るのか。Curtisさんご自身は,どんなビジョンを思い描いているのでしょうか。
Curtis氏:
その両方からアプローチしていく,というのが正しい回答になるかと思います。ゲーム業界はすでに大きな産業ではありますが,その成長がさらに加速していけば,自分達も大きくなっていけるはずです。ただ一方で,プラットフォーム間の競争というものは,確かに存在しています。その意味では,我々はクリエイターとそのコミュニティをとても大事にしているという姿勢を明確にすることで,ほかにない立ち位置が得られると考えているのです。
4Gamer:
ほかにない立ち位置というと,具体的には?
Curtis氏:
「Roblox」でコンテンツを作るクリエイターと,そのコンテンツを消費する人。そのどちらもが若い世代によって支えられており,マネタイズとクリエイターへの還元がうまく機能しているという状態ですね。「Roblox」は問題点を見つけ,それを改善してより良いものにしていくサイクルが,ほかのプラットフォームよりも早い傾向にあります。若い世代に受け入れられるためには,これがとても重要なのです。
4Gamer:
確かに「Roblox」のプレイヤー層は若いですね。
Curtis氏:
また,我々はクリエイターの皆さんがグローバルで成功することを重視しています。日本のクリエイターが制作したコンテンツを,日本のみにとどめておくことなく,世界中に展開してワールドワイドな成功につなげる。その手助けをしていきたいと考えています。日本で生まれたモノには,やはり日本独自の要素が含まれていますから,ほかの地域のプレイヤーにとっては新しい体験になります。そして,それに刺激されたクリエイターが,また新しい体験を生み出していく。そうした連鎖を生み出したい狙いもあるわけです。
4Gamer:
なるほど。しかしグローバルで見るなら,現在の日本の市場規模は遙かに小さい。「Roblox」のプレイヤー数も,増加傾向とはいえ他国ほどは多くないように思います。それでもなお,日本の市場やクリエイターを重視するのはなぜでしょうか。
Curtis氏:
日本の市場は,すごく特別なんですよ。日本のゲーム市場はとても成熟していて,長い歴史を持っています。それはコンソールゲームに限った話ではなく,iPhoneが出る前から独自の文化を築いてきたモバイルゲームにおいてもです。おっしゃるとおり,マーケット全体の規模はグローバルから見ると小さいかもしれませんが,日本が持つ影響力は今もとても大きい。イノベーティブな企業がたくさん存在していて,ゲーム全体のデザインからちょっとしたニュアンスまで,非常に洗練されて優れています。
そのうえで,高い成長率を持つプレイヤーが存在しているのですから,中国や韓国を含めた東アジア市場は,グローバルに与えるインパクトや中長期的な展開を考えると,とても重要になります。
4Gamer:
分かりました。ではRDCや本日発表された今後のアップデート内容について聞かせてください。例えばグループチャットが可能になる「パーティ」機能だったり,「Roblox」内からショッピング可能になるeコマース連携などがありますが,これらは日本からも利用できるようになるのでしょうか。
Curtis氏:
イエスかノーかで言えば,イエスです。ただ,そのすべてがすぐに使えるわけではない……という点はご理解いただければと思います。まず「パーティ」機能ですが,これは2024年末にリリースされ,日本を始めとした全世界で使えるようになります。
一方,eコマース関連はまだ初期の段階ですので,いつ頃利用できるようになるといったことは,今はお約束できません。でもeコマースは非常に大きなチャンスだと思っていますので,いずれは日本でも利用できるようにしていきたいです。
4Gamer:
やはり,そうなりますよね。
Curtis氏:
ただ我々の哲学として,地域やプラットフォームを問わない,どこでも使えるサービスでありたいというのがあります。その国の法律や,そのほかの事情によって難しいケースが出てくる可能性はありますが,これまで発表した機能はもちろん,これから作っていくコンテンツも,基本的にはどこからでも使えるようにするつもりです。
4Gamer:
日本の場合,言語が壁になってしまうケースも多いのではないかと思いますが,そこはいかがですか。
Curtis氏:
それは「Roblox」の利用者同士のコミュニケーションについてですか。
4Gamer:
それもありますし,「Roblox」内で提供されているコンテンツやサービスも,言語依存性の高いものは日本からアクセスしにくい状況が生まれるのではないかと。
Curtis氏:
なるほど。言語の問題では,テキストの自動翻訳を実装していますので,それであれば現時点でも比較的スムーズに会話ができると思います。翻訳の精度がイマイチな場合は,相手の原語を表示して,マニュアルで翻訳も可能です。
一方,AIによる音声のリアルタイム翻訳技術にも取り組んでいて,これもけっこう開発が進んでいます。なのでそう遠くない未来,言語の違いによるハードルは大きく下がると思っています。
4Gamer:
それはすごい。あとコンテンツ周りは,コミュニティで協力して翻訳できたらいいですね。
Curtis氏:
おっしゃるとおりです。現状でも自動翻訳に対してコミュニティからフィードバックをもらって翻訳の精度を上げたり,デベロッパがコミュニティに翻訳協力をお願いしたりする流れはあるのですが,それに甘んじることなく,より良い仕組みを作っていかなければならないと思っています。
4Gamer:
先ほどの講演では,「進撃の巨人」や「ワンピース」といった日本のIPとのコラボが進行中とおっしゃっていましたが,こうしたコンテンツを海外の「Roblox」プレイヤーはどう見ているのでしょうか。
Curtis氏:
面白い視点ですね。まず日本のアニメやゲームは海外でも非常に人気があって,大きな成功を収めていると思います。私が子供の頃も「ドラゴンボール」が人気でしたが,日本のアニメやマンガに対する熱量は,今のほうがはるかに高いと感じます。とくに西側諸国では顕著ですね。
そういう意味でも,日本のIPは「Roblox」をより良いプラットフォームにするために必要なものの一つだと考えています。ただコラボレーションを成功させるには,人気があるからと安易に使うのではなく,このIPとコラボレーションするなら,こういうコンテンツにすべきというビジョンを持つことがポイントになるでしょう。
4Gamer:
大きなIPを持つ企業はもちろんですが,個人のクリエイターやインディーデベロッパにとって,「Roblox」を利用するメリットは何があるでしょうか。
Curtis氏:
「Roblox」は,個人のデベロッパが互いのソースコードを持ち寄り,集まって教え合ったりする中で発展してきたプロジェクトです。なので最初は個人で参加してたい人が,大成功を収めてスタジオを立ち上げるケースを,これまでの十数年で何度も目にしてきました。私達のプラットフォームには,そうした個人と共に成長していく土壌が育っています。インディーのデベロッパにとって,これは大きな助けになるでしょう。
すでに日本のクリエイターの中からも「ペタペタサマ」や「顔から逃げるゲーム」といった人気コンテンツが生まれ,大きな成功を収めている人も出てきています。とくに次世代の若いクリエイターの皆さんには,ぜひ「Roblox」というプラットフォームを試してもらえたらと思います。
4Gamer:
若いクリエイターを求めるのは,やはりプレイヤー層が若いからですか。
Curtis氏:
そうですね。やはり若いクリエイターのほうが,同年代の求めるコンテンツがよく分かると思うので。そうして今はまだ満たされていない潜在的な需要を掘り起こすような,新しいジャンルを生み出してもらいたいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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