ゲームが作れるバーチャルワールド「ViZiMO」とは?
ゲームが作れるバーチャルワールドとして発表された,「ViZiMO」のクローズドβテストが8月1日現在行われている。クローズドβテストといっても,実質社内テストの拡大版のような体裁で行われているので,一般の人には実態は計りにくい。新規テスターを受け入れる方向ではあるものの,システムそのものがSNSを基本としており,「紹介」を経なければ参加はできないのだ。 以下では,ViSiMOにざっと触ってみて分かった点をまとめてみたい(ここでの内容は2007年8月1日現在のものです)。
さて,3Dアバターが出てきて,物理エンジンがあってゲームもできると聞くと「Second Life」を思い出す人も多いだろう。 Second Lifeは,造形の自由度が高く,物理エンジンHavokと独自のスクリプト言語を使って,さまざまなことができる。ある意味なんでもできるので,まあ,ゲームくらいは当たり前に作れるというシステムだ。ただ,いろいろなことができるものの,インタフェースは決して使いやすいとはいえない。加えて,ゲームで使う素材は自分で一から作るか購入するしかない(球や立方体でいいなら別だが)。実際,かなりの人が「本来の楽しみ方」に至る前に挫折していると思われる。 ViZiMOを触ってみて最初に感じるのは,かなり簡単だということだ。ちゃんとしたゲームに仕上げるには時間がかかるにしても,ちょっと触っただけでかなり遊べてしまうシステムとなっている。簡単なゲームなら,試行錯誤しつつでも数時間もあればそれっぽいものが作れそうだ。
操作は,基本的に,さまざまなオブジェクトを素材パレットからメインウィンドウのワールドエディタにドラッグ&ドロップして,位置や属性を決めていくだけ。全体的な設定や,イベント(オブジェクトの接触)や特殊な動作の指定などでは,別ウィンドウでの設定が必要になるが,ほとんどの操作はメインウィンドウと素材パレット,視点操作ウィンドウで行われる。 使用するオブジェクトは,素材パレットにあるものだけとなる。この中には基本的な立体図形も用意されているものの,自分でモデリングを行うことは,ほぼできないと思っておいたほうがいいだろう。 モデリングの自由度が低い半面,用意されているものを組み合わせて使うだけなので,使用法は実にシンプルになっている。かなり便利な素材も用意されているので,組み合わせればいろいろなことができそうだ。 例えば,拳銃のオブジェクトは,手に取ると攻撃ボタンで弾丸を発射できる。ベルトコンベアは,動作させると上に乗せたものを運んでくれる。バットは手に持つと打者の構えをし,攻撃ボタンでスイングする。ちなみに,なにも持っていないときに攻撃ボタンを押すとキックするので,ボールさえあればすぐにサッカーらしきことはできる(ゴールポストなどは用意されている)。 サッカー以外に,スポーツだけ見ても,野球,サッカー,バレー,ボウリング,その他の球技,体操,陸上競技,ストリートスポーツ,その他といったジャンルに分類された用具が用意されている。 武器では,拳銃が用意されており,シューティングゲームぽいものを作ることもできる。大砲やカタパルト(投石機)などは,物理エンジンで遊ぶことを考えるとなかなか楽しそうだ。 そして重要なのは,最初からキャラクターが用意されていることだ。あるのはプレイヤーキャラクターと敵キャラクターで,NPCのように使えるキャラクターは用意されていない。敵キャラクターは,プレイヤーキャラクターを追いかけて攻撃するような,簡単なAIが組み込まれている。
跳ぶ,車に乗る,銃を撃つといった動作が最初から組み込まれている
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サンプルのピンボールでのフリッパー動作イベントの例
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スクリプトが書けるようなシステムではないので,複雑な動作をするものは作りにくいのだが,オブジェクト自体はかなり複雑に組み合わせても問題ないようだ。編集部近辺でも黙々とダンジョンを作っている人がいたりするのだが,オブジェクトが多くても,衝突判定が多発したり動くオブジェクトが密集していなければさほど重くなることはないようだ。 オブジェクトは,物理演算を行うかどうかを個別に指定できる。また,当たり判定を持たせるかどうかも個別で指定可能だ。 表からは見えない部分で動いているものとして,カウンタ,スコアボード(表示用でも使えるが),そしてイベントがある。
スクリプトなどを使わずにどうやってゲームを作成するかというと,オブジェクト同士の接触を監視してイベントを発生させることができるので,そのイベントに応じた処理を用意していくという具合になっている。イベント駆動型という奴だ。
〜〜が起こったら○○を実行する
といった処理をいくつか用意するわけである。 ここで,「〜〜」にあたるのが,「カウンタが△△より大きくなったら」であったり,「□□と☆☆がぶつかったら」であり,「○○」に入るのは,「カウンタに1を足す」であったり,「爆発させる」であったり,「ゲームを終了させる」であったりする。あまりバリエーションはないのだが,複数のものを列記することは可能だ。 例えば,
弾丸がキャラクターに当たったら, 体力値から1を引き, 体力値が0になったら, ゲームオーバー
このようなゲームロジックは,2個のイベント処理の組み合わせとみなせる。あらかじめ,体力値というカウンタを作っておく必要はあるが。
いろいろなゲームを作ろうとすると,ゲームの内容によって用意するカウンタやイベントを変えていかなければならない。まあ,これはある程度しかたないことなのだが,マルチプレイヤーゲームでは,Aさんが勝った場合のイベント処理……Dさんが勝った場合のイベント処理といった具合に,同じようなものをたくさん用意しなくてはならなかったりとなかなか面倒である。 ViZiMOでは,イベント作成ウィザードというものが用意されており,現状では,
格闘ゲーム レースゲーム アイテム集めゲーム 球技
に対応したイベント処理を生成してくれる。万能ではないが,仕組みがよく分からないうちはかなり役に立ちそうだ。 作ったゲーム(ないし,よく分からない箱庭)は,サーバー上にUpしてみんなで共有できる。4人までのマルチ対戦も可能だ。
決してどんなゲームでも作れるというわけではない。制限も多いし,万人に楽しめるものでもないかもしれない。しかし,操作は比較的簡単で,触っていて楽しい。まさに「こういうもの」がほしかった人も少なくないのではないだろうか? 現状が,かなり限定的なβテストなのが残念だ。ぜひ,10月に予定されているオープンβテストに期待していただきたい。(aueki)
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