Intel,「Santa Rosa」こと新世代「Centrino」を発表
2007年5月9日,Intelは開発コードネーム「Santa Rosa」(サンタロサ)と呼ばれていたノートPCプラットフォーム「Intel Centrino Duo Processor Technology」(インテル Centrino Duoプロセッサー・テクノロジー,以下Centrino Duo)の新世代版を発表した。 4Gamerでもこれまで何度かレポートしているので,ノートPCに興味のある読者なら,Santa Rosaという名前は目にしたことがあるのではないだろうか。今回は,この新しいプラットフォームのポイントを説明してみたい。
■Core 2 Duoのパフォーマンスと ■省電力機能を強化
Santa Rosa世代のCore 2 Duoでサポートされる新機能をまとめたスライド
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Centrino Duoプロセッサー・テクノロジーは,基本的にプロセッサとチップセット,無線LANモジュールからなるプラットフォームだが,Santa Rosa世代では,従来の“Napa Refresh世代”と比べて,すべての要素が刷新されている。
核となるプロセッサは従来どおり「Merom」(メロム)コアの「Core 2 Duo」だが,従来製品がシステムバスクロック667MHzだったのに対し,今世代では最高800MHzへと引き上げられ,最高クロックも従来の2.33GHzから2.60GHzへと引き上げられた(表1,2)。
※価格は1000個ロット時のもの。日本円で1000個ロット時の価格が示されているものは日本円で記した。通常電圧版となるCore 2 Duo T7000番台は,(少なくとも発表時点だと)システムバスクロック667MHz版の従来製品が7600/7400/7200,システムバスクロック800MHzの新製品が7700/7500/7300/7100と,上から2桁めで見分けがつくようになっている
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Intel Dynamic Front Side Bus Frequency Switchingの概要
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そうなると,ノートPCでは消費電力が気になってくるが,そこでSanta Rosa世代のCore 2 Duoでは,新たに「Intel Dynamic Front Side Bus Frequency Switching」と呼ばれる省電力機構がサポートされる。文脈と名称から何となく想像できた人がいるかもしれないが,これはシステムの稼働状況に合わせてFSBをより低いレベルにまで下げようというものだ。 Enhanced Intel SpeedStep Technology(拡張版インテルSpeedStepテクノロジー,EIST)では,CPUの動作クロックを低減させる「LFM」というモードをサポートしていたのだが,今世代のCore 2 Duoでは,その拡張版といえる「SuperLFM」が新たに設定されている。SuperLFMでは,FSBクロックをこれまでの200MHzから100MHzに落とすことにより,EIST時の動作クロック(FSBクロックの6倍)が1.2GHzから600MHzへと大幅に下がるが,これにより,消費電力を抑えようというわけである。
Enhanced Intel Deeper Sleepの概要
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もう一つの省電力技術として,スリープモードに拡張が行われているのも,新世代Core 2 Duoの特徴だ。この拡張は「Enhanced Intel Deeper Sleep」と呼ばれるが,それを説明する前に,ちょっとノートPCのスリープモードについて簡単にまとめておきたい。 ノートPCで一般に用意されるスリープモード――専門用語で「C4ステート」という――では,CPUコアの動作は停止して,ほとんど電力を消費しない状態になるが,逆にいえば,少しは電力を消費する。ノートPCをスリープから復帰させたら,バッテリー残量が減っていたという記憶がある人は少なくないと思うが,これはCPU内蔵のキャッシュメモリや,システム側のメインメモリに電力が供給され続けているからで,とくにキャッシュメモリは(トランジスタ数が多いため)意外に電力を消費する。
そこで用意されるのが,Enhanced Intel Deeper Sleepである。Enhanced Intel Deeper Sleepでは,CPUにあるキャッシュメモリの内容を外部(=メインメモリ側)に吐き出してしまい,CPU内蔵キャッシュメモリをオフにする「DC4ステート」が設定され,DC4ステートではCPUの動作モードがEnhanced Deeper Sleepに落ちるため,スリープ状態での消費電力が下がるという理屈である。 なお,同機能はチップセット側からのサポートも必要になる。後述するMobile Intel 965 Expressチップセットとセットでサポートされる機能と考えたほうがいいだろう。
こちらはIntel Dynamic Accelerationの概要。スライド内のリストにはLV(低電圧)版Core 2 Duoが記載されていないが,LV版でもサポートされているとのことだ
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さらに,少々マニアックで面白いのが「Intel Dynamic Acceleration」だ。4GamerのCPUレビューでは何度も繰り返されている話だが,デュアルコアCPUといえども,2個のコアがフル稼働する状況はさほど多くない。既存のゲームタイトルなど,シングルスレッド(≒シングルプロセス)のアプリケーションソフトを実行している状態では片側のコアが遊んでしまう状態も起こりえる。 だが,よくよく考えてみると,CPUのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)は,2個のコアが稼働する条件で設定されている。ということは,片側のコアが“遊んでいる”なら,熱的には余裕があると言えなくもない。
そこで,新世代Core 2 Duoでは,片方のコアに負荷がかかっていない状態,もっといえばアイドルの「C3ステート」になっているときだけ,もう一方のコアのクロックを自動的に200MHz引き上げる仕組みが組み込まれた。これがIntel Dynamic Accelerationで,同機能が働いている状態をIntelは特別に「Turbo Mode」と呼んでいる。
というわけで,現時点ではマルチスレッド化がほとんど進んでいないゲームアプリケーションはIntel Dynamic Accelerationと非常に相性がよさそうな気配である。ただし「Windows XP」や「Windows Vista」は,バックグラウンドでさまざまなタスクが実行されている。ほとんどのタスクはスリープ状態にあるものの,セキュリティ系のソフトなどは定期的に動作状態へ移行するため,CPUがTurbo Modeで動作し続けられる頻度がどの程度高くなるかはシステムの環境にもよると思われ,「これくらい期待できる」と断言できないのは少々残念だ。
■DX10世代のグラフィックス機能統合したチップセット ■&IEEE 802.11nドラフト準拠の無線LANコントローラ
Mobile Intel 965 Expressの概要。グラフィックス機能を統合しない“PM965”も用意される。また「Intel AMT」など一部の機能はビジネス向けの「Intel Centrino Pro Mobile Technology」向けとなる
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Santa Rosa世代の要件となるチップセットは,「Mobile Intel 965 Express」(開発コードネーム「Crestline」)。システムバスクロック800MHzへの対応と,先述したEnhanced Intel Deeper Sleepへの対応はもちろん,グラフィックス機能統合チップセットの「Mobile Intel GM965 Express」では,内蔵グラフィックス機能「GMA X3100」で「DirectX 10をサポートできる能力を持つ」のがウリとなっている。
「能力を持つ」という言い回しが微妙だが,これは初期に提供されるドライバでDirectX 10がサポートされないためだ。GMA X3100は,デスクトップ向けチップセットである「Intel G965 Express」が統合しているグラフィックス機能「GMA X3000」をベースに,モバイル向けの拡張が行われたものだが,GMA X3000と同じく,ハードウェアレベルではDirectX 10に対応しているというわけである。 もっとも,DirectX 10対応版ドライバのリリース日は確約されておらず,現時点では「Windows Vista Premium Ready」をクリアできるレベルの,DirectX 9世代のグラフィックス機能が提供されているに過ぎない。さらにいえば,GMA X3000ベースである以上,仮にドライバがリリースされたところで,3Dゲーマーが期待するほどのパフォーマンスは望めないので,この点は注意しておきたい。
Intel Clear Video Technologyを説明するスライド。機能自体はIntel G965 Express(=GMA X3000)ですでに導入されていたものだ
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むしろGMA X3100の特徴としてはビデオ再生品質の強化が挙げられており,ビデオ再生時のノイズやディザーの発生を抑える「Intel Clear Video Technology」がサポートされ,従来よりも美しい動画の再生が可能とのこと。ノートPCでDVD-Video再生を楽しむスタイルは広まっているので,一般のユーザーからはむしろこちらが歓迎されるのではなかろうか。 なお,Intel GM965 Expressのサウスブリッジには,ICH8-Mが用いられる。機能面は従来のICH8と同等だが,省電力モードのサポートが追加されていることなどから末尾にEnhancedが追加されている。
もう一つの要件として用意されるのが,開発コードネーム「Kedron」(ケドロン)とされていた無線LANモジュール「Intel Wireless WiFi Link 4965AGN」である。詳しくは触れないが,「MIMO」(Multiple Input, Multiple Output,マイモ)技術を用いた,ドラフト版IEEE 802.11nに対応する無線LAN技術をサポートしており,従来製品と比べて5倍高速化され,到達距離は2倍になったという。 ドラフト=草案版のサポートということで,互換性に不安をおぼえる人がいるかもしれないが,これに対してIntelでは,新世代Centrino Duoプラットフォームとの接続互換性検証を実施。互換性の問題がない無線LANアクセスポイントに対して,「Connect with Centrino」というロゴを与えるという活動により,不安を解消していくとしている。
Intel Wireless WiFi Link 4965AGNの(左)と,Connect with Centrinoロゴプログラム(右)のそれぞれ概要。右のスライドで中央にあるのがロゴだ
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■ReadyBoost+ReadyDriveの機能を持つ ■Intel Turbo Memoryはオプション
Intel Turbo Memoryの概要
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Windows Vistaでは,USBメモリをシステムメモリの延長のように利用できる――といってもシステムメモリが増えるわけではなく,スワップをUSBメモリにキャッシュすることで高速化する――「ReadyBoost」や,HDDのリード・ライトをフラッシュメモリにキャッシュして高速化する「ReadyDrive」という技術がサポートされているのを,ご存じの読者も多いだろう。
Intelは,この両方の機能を同時にサポートするノートPC向けの新しいソリューションとして「Intel Turbo Memory」(開発コードネーム「Robson」)をリリースした。Intel Trubo Memoryは,フラッシュメモリと専用コントローラLSI(ASIC)で構成された製品で,オンボード用のキット,もしくはモジュールがPCメーカーへ出荷されることになる。 USB経由でキャッシュしなければならない一般的なReadyBoostに対して,PCI Expressで接続されるために,より高いパフォーマンスアップの効果が得られるというのが,Intel Turbo Memoryが持つ大きな特徴だ。また,HDDの動作を抑えられるため,消費電力面でもメリットがあるとIntelは主張する。 Intel Trubo Memoryは,1製品でReadyBoostとReadyDriveの両機能をサポートするが,それぞれに利用できる容量は固定されており,エンドユーザー側でのカスタマイズは不可。なお,発表時点で用意されるのは,512MBと1GBの2タイプで,より大容量のIntel Turbo Memoryを供給する計画もあるようだ。
なお,これは重要なポイントだが,Intel Turbo MemoryはCentrino Duoの構成要件には入っていない。Intel Trubo Memoryを搭載しないPCでも,新世代Centrino Duoブランドを名乗れるので,この点は注意しておきたい。
Intel Turbo Memoryのメリットを強調するスライド×3
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■一般ユーザー向けPCはモバイルが主戦場に ■ゲーム用途でもそろそろ?
Santa Rosa世代のCentrino Duoを構成する要件とオプションのまとめ
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今回の大がかりな発表からも分かるように,IntelのノートPCにかける意気込みは相当なものだ。実際,世界的に見ても,PCの成長率でノートがデスクトップを抜き去って久しく,日本ではすでにノートPCが主流となっており,カジュアルタイトルを好んでプレイするゲーマーの間では,積極的にノートPCを選んでいる人も少なくないと聞く。
どうしても3Dパフォーマンス的には一段下で,それでいてコストは高くつく――3DゲーマーのノートPC評は,だいたいこんなところだろう。それほど興味を持てないという読者も,少なくないと思う。ただ,ノートPCが確実にゲーマーの元へ近づきつつあること,それ自体は,憶えておいて損はないはずだ。そろそろ,ノートPCに対しても,本気で目を向けるべき時期が来ているのかもしれない。(ライター・米田 聡)
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Core 2 |
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(C)2006 Intel Corporation |
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