[GDC07#08]CryTekがゲームエンジンライセンスのビジネスに本格参入。ライセンスタイトル第1弾には日本の著名業界人も関与
Electronic Artsからリリース予定のFPS「Crysis」を開発中のドイツのデベロッパであるCryTekが,同タイトル用に開発されてきた“CryENGINE 2.0”をライセンスビジネス化すると発表した。
これまでも,CryENGINE 2.0のレンダリング技術などの一部は公開されていたが,ライセンスビジネス化の発表に伴い,2007年のGDCでは,さまざまな機能を含んだミドルウェアスイートとして,その内容が大々的に公開されることとなった。
ミドルウェアスイートとしてのCryENGINE 2.0は,リアルタイム3Dレンダラー,独自開発の物理エンジン,キャラクターアニメーションシステム,サウンド,AI,クライアント/サーバーネットワークシステムを完全にフィーチャーしている。中でも「CryENGINE Sandbox 2」と呼ばれるゲームエディタは,樹木などのオブジェクトの配置がリアルタイムで行われ,開発者がそのままゲーム世界からの視点でチェックできるという特徴がある。
同じFPSゲーム出身のミドルウェアとしては,Epic Gamesの“Unreal Engine 3”が先手を取っており,採用タイトルもいくつかリリースされている。これに対しCryENGINE 2.0は,物理エンジンが自社開発ということもあり,比較的安価で提供されるのではないかと予想される。
CryENGINE 2.0のライセンス化に合わせて,初のライセンスタイトルとなる作品も発表された。それがハワイのホノルルに本拠地を置くゲームデベロッパ,Avatar Realityの最新プロジェクト(タイトル未定)である(関連記事)。 このAvatar Realityを構成するメンバーがユニークで,Bullet Proof SoftやBlue Planet Softwareなど,1980年代から業界に関わってきたHenk B. Rogers(ヘンク・ロジャース)氏に加え,SquareUSAのSenior Vice President兼CTO,Electronic Artsで技術面や次世代機担当Vice Presidentなどを歴任してきた橋本和幸氏がマネージメントを担当する。また,役員にはNintendo of Americaの元代表取締役社長である荒川實氏,そして「テトリス」の生みの親で知られるAlexey Pajitnov(アレクセイ・パジトノフ)氏など,豪華な顔ぶれが連なっている。
Avatar Realityの最新プロジェクトは,MMOタイプのライフシミュレーションゲームで,“Massively Multiplayer Virtual World”(MMVW)とも呼ばれており,テラフォーミングされた未来の火星を舞台に,自分のアバターを製作してソーシャルネットワークを形成するというものだ。具体的な発表は行われていないが,“ゲーム”という位置付けというよりは,「Second Life」のようなスタンスに近いと思われる。 “MMVW”には,新世代MMOゲームともいえる斬新な感触のほかにも,高性能ゲームエンジンや著名な開発陣など,注目すべきトピックがいくつもある。今後とも注目の作品となりそうだ。(ライター:奥谷海人)
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