3Dゲームでは,もはやグラフィックスが綺麗なのは当たり前。最近では,リアリティ溢れる物理シミュレーションがなければ物足りないとまで言われる。そんな現代のゲーム開発者達をして「次に来るもの」と言わしめるのが,ゲーム内のキャラクターや群集の行動をシミュレートする思考ルーチンに特化したAI(人工知能)開発用ミドルウェアである。 今回,AGCエキスポ会場に展示されていた「AI.implant」は,AI専用のミドルウェアだ。2005年末に開発元のBioGraphicsがEngenuity Technologiesに買収されたことで資金繰りが円滑となったためか,今春にリリースされたAI.implant ver. 4.0の評価は高い。「3ds Max」や「Maya」のプラグインとしてシームレスに利用でき,森や都市環境での群集のパニックシーンなどでは,人数の規模や配置場所のスケーラブルな制御がリアルタイムにできるようになった。Unreal EngineやGamebryoなどにも正式対応しており,Xbox 360やプレイステーション3のツールとしても利用できる。
今回のAGCで発表されたのは,その最新版となるAI.implant ver.4.5だ。ゲーム中でスクリプト化されていない場所にオブジェクトが移動した場合でも,無理なくキャラクターがパスファインディングするDynamic Path Refinement機能を新しく搭載。ハシゴを昇ったり,亀裂をジャンプしたりという細かい動きもできるようになった。 AI.implantは,「Age of Empires III」(邦題 マイクロソフト エイジ オブ エンパイア III)にライセンスされて話題になったが,今後も「John Woo Presrents: Stranglehold」といった期待作で採用される見込みだ。AI.implantは,CGを活用して古代の戦争を再現するといったテレビ番組の制作などでも活躍しており,これからも大きく注目されていくだろう。(ライター:奥谷海人)
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