インテル,デュアルコア「Pentium D」と対応チップセットを発表
■HTテクノロジに比べ30〜40%の性能向上を実現
Pentium Dを手に持って報道陣に示す,インテル株式会社代表取締役共同社長 吉田和正氏
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インテルは本日(5月27日),デュアルコアCPU「Pentium D」および,対応チップセット「Intel 945G/P Express」を発表した。 Pentium Dは,先月発表されたハイエンド向けの「Pentium Extreme Edition 840」に続く,2製品めのデュアルコアCPUであり,メインストリームをターゲットとした製品。今回発表されたPentium Dは840/830/820の3製品で,動作クロックはそれぞれ3.2/3/2.8GHz,1000個ロット時の卸価格は,それぞれ5万7180円,3万4090円,2万6000円となる。 Pentium DはPentium Extreme Edition 840と同じく,Smithfield(開発コードネーム)コアを採用しており,1コアあたり1MBのL2キャッシュを装備する(合計で2MB)。また,64ビット拡張技術の「EM64T」やWindows XP SP2のDEP(データ実行防止機能)でサポートされた「XDビット」機能も実装されている。
なおPentium Extreme Edition 840では,Hyper-Thredingテクノロジ(以下HTテクノロジ)も有効になっているため,OS側からは4個の論理CPUとして認識されるが,Pentium Dでは無効になっており,OS側からは2個の論理CPUとして認識される。 また,Pentium D 840と同830の2製品は,CPU負荷に応じて動的にクロックと動作電圧を変更する「拡張版SpeedStepテクノロジー」をサポートする(Pentium D 820とPentium Extreme Edition 840ではサポートされない)。Pentium D 840と同830で,拡張版SpeedStepテクノロジーを有効にすると,CPU負荷が低いときには2.8GHzで動作し,CPU負荷が高くなると,最高クロック(840では3.2GHz,830では3GHz)で動作することになる。
Pentium Dは,一つのCPUパッケージに二つのCPUコアを内蔵したデュアルコアCPUであるため,疑似的なデュアルCPU環境を実現するHTテクノロジよりも,高いパフォーマンスを発揮する。 発表会場では,それぞれPentium D 840(クロック3.2GHz)とHTテクノロジー対応のPentium 4 540(クロック3.2GHz)を搭載したPCで,同時に720×480ドット・DVD-VideoクオリティのMPEG-2ファイル(37秒間)をAVC/H.264にトランスコードするデモが行われた。Pentium D 840では43秒で終了したのに対して,Pentium 4 540では1分6秒かかっており,Pentium D 840のパフォーマンスの高さがよく分かる。アプリケーションによっても異なるが,マルチスレッドに最適化されたアプリケーションなら,Pentium Dは同クロックのHTテクノロジー対応Pentium 4に比べて30〜40%の性能向上が見込めるという。
現状のゲームソフトの多くはマルチスレッド環境に最適化されていないため,デュアルコアによるパフォーマンス向上の恩恵を,劇的な形で享受できるわけではない。しかし,今後は「Lejendary Adventureエンジン」のように,マルチスレッド環境に最適化されたゲームエンジンを採用した作品が増えてくることが予想される。 なお,ライバルのAMDも,デュアルコアCPU「Athlon 64 X2」を近日中にリリース予定であり,PCの世界が一気にデュアルコア時代へと舵を切ることになる。
写真左:プレゼンテーション中では,「3Dゲーミング」が,PCの新しい利用形態の一つとして挙げられていた。PCゲーマーにとってみると,いまさらな気もするが,インテルが,このCPUの用途としてあえて意識し,強調していることが重要だ
写真右:Pentium D 840とPentium 4 540によるAVC/H.264トランスコードのデモ。左がPentium D 840で,右がPentium 4 540の画面。進捗を示す緑色の棒グラフに注目。Pentium D 840で8割程度終わった時点で,Pentium 4 540ではまだ半分程度
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■3DMark05のスコアが2倍に向上したIntel 945G Express
Intel 945Gに内蔵されているインテルGMA 950では,3DMark05のスコアが従来の約2倍に向上している
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Pentium D対応チップセットとして同時に発表されたのが,「Intel 945G/P Express」(以下Intel 945G/P)である。新たにDDR2-667をサポートし,メモリ帯域幅が従来のIntel 915G/Pの8.53GB/secから10.6GB/secに向上した。 サウスブリッジもICH7シリーズとなり,PCI Express ×1を6本サポートするほか,転送速度3GbpsのSerial ATA II Phase 2にも対応する。また,RAID機能をサポートしたICH7Rでは,従来のRAID 0とRAID 1に加えて,RAID 5やRAID 10にも対応するようになった。
グラフィックス統合型チップセットのIntel 945Gは,インテルGMA950と呼ばれるグラフィックスコアを内蔵する。従来のIntel 915Gに内蔵されていたインテルGMA900と比べると,動作クロックが333MHzから400MHzに高速化されたほか,メモリ帯域幅の増大,3Dパイプラインの改良によって,3DMark05のスコアは約2倍に向上しているという。なお,インテルGMA950は,DirectX 9準拠のPixel Shaderをサポートしているが,Vertex Shaderについてはソフトウェアによるエミュレーションとなる。 Intel 945Gの3D描画性能は,Intel 915Gに比べれば向上したとはいえ,単体GPUと比べればかなり低いため,最新の3Dゲームを快適にプレイするには力不足である。しかし,3Dゲームなどのニーズに応えるため,今後もさらに3D描画性能向上にフォーカスしていくとのことだ。 今回発表されたIntel 945G/Pは,ビデオカードを2枚差すことで3D描画性能を高めるNVIDIA SLIはサポートしていないが,インテルの担当者によれば,ビデオカード2枚差しというソリューションにも注目はしているとのことで,2枚差しに対する市場ニーズが高いと判断すれば,今後のチップセットでサポートされる可能性はあるようだ。
発表会場には,同日発表されたソニーの「VAIO type R」をはじめとする,Pentium D搭載PCが多数展示されており,ツクモ電機の「TS-Jade Gamers 945G」やアロシステムの「Inspire Passant 4802XN/DVR2」のように,ハイエンドビデオカードを搭載し,ゲーム用途を重視したPCも展示されていた。(石井英男)
写真左:ツクモ電機のゲーマー向けPC「TS-jade Gamers 945G」。Pentium D 830とGeForce 6600GTを搭載する。メインメモリも標準で1GB装備した高性能PCである
写真右:ソニーのフラッグシップモデルとなる「VAIO type R」。Pentium D 830とGeForce 6600を搭載しており,500GB(250GB×2)のHDDを内蔵している
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