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ドイツのアナログゲームイベント「SPIEL Essen 2024」に,日本発ブースはどのぐらいある?
本記事では,そうした日本発ブースの模様を写真とともにレポートしていきたい。
世界最大規模のアナログゲーム見本市「SPIEL Essen 2024」の会場をレポート。20万4000人が来場しコロナ禍前の勢いが復活
2024年10月3日から6日まで,世界最大級のアナログゲームイベント「SPIEL Essen 2024」がドイツのエッセンで開催された。コロナ禍で縮小されていた規模も元に戻り,今年は20万4000人もの来場者が訪れたという。ボードゲーマーなら一度は行ってみたい夢のイベントの現地の模様をレポートしよう。
日本から出展を行っている団体は,「ボードゲーム」「TCG」「TRPG」の3ジャンルだ。
出展が多いのは,会場の全体的な傾向と同様にボードゲームジャンルとなる。会場配置でも日本からの出展ブース同士は近くになるよう設計されており,密集感も相まって「あちらにもこちらにも日本ブースがある」という感覚を覚えた。
個々のブースに関するトピックでは,インディーゲームや中小規模制作のゲームを紹介する日本ブースが多くなった。もとより日本発作品を海外に紹介する活動を続けていた「JAPON BRAND(ヤポンブランド)」はもちろん,今年は「アークライトゲームス&ゲームマーケット」ブースでもこうした紹介スペースが設けられた。
2024年は「ゲームマーケット2024春」にて「海外挑戦プラン」が公募されており,同プラン出展者のゲームマーケット作品がSPIEL'24にて展示されていた。
それ以外でも多くの団体が出展した。各団体ともに新作を用意してSPIEL'24に臨んでおり,日本発ゲームに親しむ来場者の姿が多く見られた。
ホビージャパンブース。今回の出展作「エスペライゼーション」はアメリカのアナログゲームイベント「Gen Con」でも大人気だった作品だ |
オインクゲームズブースでは新作「海底探検深版」にちなんで潜水艦のバルーンがぶら下がっていた。昨年共同で出展していたitten・Saashi&Saashiとは隣同士のブースだ |
itten・Saashi&Saashiブース。出展作「TOKYO HIGHWAY」と「BUS&STOP」にちなんで交通標識を模した装飾がブースにあしらわれていた |
新作「ラピッドダンジョン」などを販売したGOTTA2ブース。尾州デニムを使ったポーチトレイなど,ゲームサプライ品を展開するDokkoi.JPの商品も販売されていた |
家紋をモチーフにしたゲーム「MON」を大きく打ち出していたスタジオムンディブース |
「どうぶつしょうぎ」の試遊・販売を行っていたねこまどブース。色でコマの種類を区別できる「カラー将棋」など将棋グッズの販売も |
Engames,コロコロ堂,サニーバード,ClaGlaが共同出展。盛況のため売り切れる作品もあったようだ |
JELLY JELLY GAMESブース。新作「トロッコタウン」の発表やクリエイターによるサイン会なども開催 |
日本発TCGの存在感も大きい。TCG関連ブースはまとめて配置され1つのエリアを形成していたが,そのうちの大部分が日本発TCGのブースとなっていた。
TRPGジャンルでも,昨年に引き続き「冒険企画局」がブースを出展していた。
数字から見る,SPIEL全体から見た日本ブース
さて,SPIEL'24で日本発ブースはどの程度存在感があったのか,数字も見ていきたい。
以下の表はSPIEL'24出展ブースのうち,登録しているブースの出身国を多い順に並べたものだ。932団体中576団体と4割程度が未登録であるし,他国のブース経由で出展している企業やクリエイターもいるため,これをもって正確な数字とは言えないが,全体の傾向を見ることはできるだろう。出展ブース数が10を下回る国については省略したが,これ以外にも30か国以上の国が出展している。
国 | 地域 | 出展団体数 |
---|---|---|
ドイツ | ヨーロッパ | 181 |
アメリカ | 北米 | 47 |
スペイン | ヨーロッパ | 36 |
フランス | ヨーロッパ | 26 |
イタリア | ヨーロッパ | 25 |
オランダ | ヨーロッパ | 24 |
ポーランド | ヨーロッパ | 23 |
イギリス | ヨーロッパ | 20 |
中国 | アジア | 19 |
ベルギー | ヨーロッパ | 13 |
日本 | アジア | 13 |
ギリシャ | ヨーロッパ | 12 |
スイス | ヨーロッパ | 11 |
タイ | アジア | 11 |
カナダ | 北米 | 10 |
チェコ | ヨーロッパ | 10 |
このうち,日本からの出展を登録している団体は13団体。同数のベルギーと並んで10番目に多い国となっており,その次点にギリシャ,スイス,タイ,カナダ,チェコと続く。
日本よりも多くの団体が出展している国では,開催国のドイツが最多の181団体。それ以外でも欧州諸国が多く見られる。イギリスを除けば,ほとんどがドイツと地続きとなっている国であり,物流面・渡航面で便の良い国々が多く参加していると考えてよいだろう。
それ以外の国ではアメリカが全体で2番目と大きな存在感を放っている。アメリカも多くのアナログゲームファンを擁し,世界最大級のアナログゲームコンベンション「Gen Con」を開催していることを考えると納得の数字だ。
次いで中国が19団体を出展し,日本はその次点となっている。欧州外の地域,特にアジア地域の中では出展数が多く,積極的に出展している国にあたり,存在感も増しているのではないだろうか。
出展者の活躍とは異なるが,SPIEL'24では日本語の会話を耳にしたり,日本からの来場者に会ったりする機会がとても多く感じられた。
筆者が見聞きした範囲に過ぎないが,一般来場者もとても多くなった印象だ。事前にSPIEL'24参加を連絡してくれた拙著「Essen SPIEL Guidebook 2023」読者の方,SNSで参加表明をされている方,現地でお話した方を数えると,一般参加している来場者は1人や2人ではない。もとより日本ではSPIEL Essenを知っているアナログゲームファンが少なくなかったが,現地に足を運ぶ人も増えてきたということだろうか。
今後,SPIEL Essenにおいて日本からの出展・一般来場ともに盛り上がっていくのが楽しみだ。
著者紹介:
Im Karton
海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」(シュピールエッセン)をはじめ,アメリカ「Gen Con」(ジェンコン),フランス「Festival International des Juex」などを訪問。昨年はSPIEL Essenに行きたい旅行者向けのガイド「Essen Spiel Guidebook 2023」を同人誌として刊行。
Omochicard
Im Kartonメンバー。SPIEL Essenの訪問は今年で5回目。訪問時は旅行の計画や日本へボードゲームを送る宅配便の発送などを担当。海外ボードゲームが大好き。好きなボードゲームは「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」や「Kemet: Blood And Sand」。
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