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酷暑の救世主となるか? モンベルの「ファンブローベスト」で真夏の日本と中国を歩く(「買い物Surfer」第24回)
夏が暑いのは当たり前だが,ここ数年の暑さは酷すぎる。2022年に猛暑日を記録したのは16日,2023年は22日と,最高記録を2年連続で更新していて,2024年も8月15日時点で18日と,3年連続更新の可能性もありそうだ。
なぜこんなことを書いているかというと,筆者はかなりの暑がりで,猛暑日にもなると屋外を5分程度歩いただけで汗だくになってしまうからだ。熱中症になりかけた経験もあるので,夏の気温は本気で死活問題だったりする。
そんな筆者が,中国の上海で開催されるゲームイベント,ChinaJoyの取材に行くことになった。ChinaJoyの展示面積は13万平方メートル超で,東京ゲームショウの会場となっている幕張メッセの1〜11ホールの展示面積(約7万2000平方メートル)の2倍近い広さを誇る。
それだけでも大変なのだが,筆者にとっての問題は暑さだ。夏の上海は東京以上に気温が高く,40度を超す日もあるという。もちろん会場には空調が入っているが,ChinaJoy取材の経験者に話を聞いてみると,来場者が多すぎるためか,たいして涼しくないとか。
そんな場所で1日歩き回って取材をしていたら,今度こそ熱中症になりかねない。そう思った筆者は,かねてから目を付けていた“最終兵器”を投入することにした。それが,アウトドア用品メーカーのモンベルが販売している「ファンブローベスト」だ。
ひと言で説明してしまえば,ファンによって外気を取り込むファン付きウェアなのだが,独自の工夫が凝らされていて,ちょっと気になっていた。
というわけで,「買い物Surfer」の第24回では,このファンブローベストの使用感を紹介しよう。
最大の特徴は“リュック仕様”
なぜ今回購入したのが,ほかのファン付きウェアでなくファンブローベストだったのか? それは,イベント会場を歩き回りながらメモを取ったり写真を撮ったりといった取材に欠かせない,リュックの使用を想定した作りに惹かれたからだ。
ファン付きウェアはファンによって取り入れた外気で汗を蒸発させる(気化熱を発生させる)ことで快適性を上げるのだが,リュックを背負うと背中の部分が体に密着してしまい,風が通りにくくなってしまう。
ファンブローベストにはその対策が盛り込まれているので,使用感のレポートへ移る前に紹介しておこう。
“リュック仕様”の1つめはファンの配置。一般的なファン付きウェアだと,背中寄りの腰付近に左右対称でファンが配置されているものが多いのだが,ファンブローベストの場合,左側のファンはやや上方,右側のファンは体の前面寄りに配置されている。
これには,左側のファンはリュックによって隙間が狭くなる部分,右側のファンは体の前面に空気を送り込む狙いがあるとのことだ。
“リュック仕様”としてはもう1つ,「3Dバックパネル」がある。これは通気性に優れたスポンジのような素材でできた板状のもので,ベストの内側の背中部分に取り付ける。こちらも,リュックを背負う背中に空気の通り道を作るためのものだ。
これらが狙い通り効果を発揮するなら,普段からリュックを使っている筆者にとっては嬉しいのだが,実際のところはどうだろうか?
バッテリーやファンの重さ,空気による膨らみ,ファンの音はどんな感じ?
最初に着用してみたとき少々気になったのは,バッテリーの大きさと重さだ。サイズは115×77×25mm,重さは343グラムあり,ベストの内側にあるポケットに入れて着用すると,そちら側が下に引っ張られる感覚がある。また,ファンの重さ(2個合計で217グラム)もあるので,さっと羽織れる感じではない。
だが,実際にファンを稼働させるとベストが空気で膨らみ,バッテリーやファンを持ち上げるような感じになるので,引っ張られる感覚は少なくなる。バッテリー用のポーチも付属しているが,個人的にはこちらを使わなくても特に問題はないと感じた。頻繁にオンオフを繰り返すようなときには役立つかもしれない。
重さが気にならなくなるのはいいとして,膨らみ方が気になる人もいるだろう。リュックを背負っていない状態ではさすがに背中が目立つが,背負ってしまえば,袖がないこともあって,遠くからでもひと目で「あの人膨らんでる!」と分かるようなインパクトにはならない気がする。
だが,あくまでファン付きウェア基準で見れば目立たないというだけなので,当然ながら普段着と同様というわけにはいかない。着用するならそこは割り切ったほうがよさそうだ。
周囲の人が違和感を覚えやすいのは,膨らみよりファン(モーター)の音かもしれない。特に風量を上げたときは予想よりも甲高い音になり,少々耳につく。
風量1だと屋外であればまったく気にならないレベルだが,2になると静かな住宅街ですれ違う人は気づきそう。3は自動車の往来が激しい国道沿いならかき消されるかもしれないが,最大の4は,国道沿いであっても「あの人,異音を発してる……」となりそう,といった感じだ。
で,涼しいの?
さて,もっとも気になる涼しさについて。ChinaJoyの前に,まずは7月の日本(埼玉県)での正午近くの散歩で,実際にリュックを背負ったうえでの使用感を確かめてみた。
ファンを初めて稼働させたときには,ずっと風が吹いてくる感じはあっても「涼しい!」とはならなかった。当たり前だが,真夏の真っ昼間なら30度以上の空気が入ってくることになるので,それだけでいきなり涼しくはならない。
だが,しばらく歩いて汗がにじんでくると,その風がだんだん心地よくなってくる。ファンに近い場所はもちろんなのだが,取り入れた空気が吹き出す首元がひんやりして気持ちいい。
とくに効果を感じたのは,しばらく歩いてからの休憩時だった。「歩いているときはそれほどでもないのに,立ち止まった途端に汗が噴き出す」といった経験がある人は多いだろうが,ファンブローベストの着用時はそれがかなり軽減されたように感じた。
汗っかきの筆者は,真夏に長時間外を歩くとTシャツの色が完全に変わってしまうようなこともあるのだが,ファンブローベストではそれもある程度抑えられていた。個人的な感覚としては,気化熱による涼しさではなく,乾燥による快適さのほうが大きいように思う。
なので,ファンブローベストの下には,速乾性のシャツを着るのがよさそうだ。“涼しさ”を味わいたいなら,清涼感のあるボディシートを使うといい。「シリーズ内最高濃度のメントール配合」とパッケージに書かれたボディシートで体を拭いたあとにファンブローベストを着ると,短時間ではあるが「冷たい」どころか「痛い」に近い,かいた汗がすべて引っ込むような感覚が上半身に広がり,思わず変な声が出た。
上で紹介した“リュック仕様”の「3Dバックパネル」については,正直なところ「リュックを密着させても風が通る」までの効果は感じられなかった。若干背中を反らすようにするだけで,左側のファンからの風が背中に当たりやすくなるので,そちらで十分のような気がする。ただ,背中が蒸れるようなこともなかったので,その点では意味があるのかもしれない。
このように,一定の効果は確認できたのだが,それは最高気温35度未満の「真夏日」までといったところ。35度以上の「猛暑日」になると,その効果も薄れてしまう。一度,熱中症警戒アラートが出た日の午後1時頃に外を歩いてみたところ,ほかの日のような快適さが感じられず,20分ほどで脱いでしまった。
このあたりがファン付きウェアの限界ということかもしれないが,そもそも猛暑日に屋外を長時間歩くような真似はやめたほうがいい。
また,今回試した限りでははっきりと感じられたわけではないのだが,気化熱を利用するという点では湿度も影響しそうなので,蒸し暑い日の使用にも注意した方がよさそうだ。
以上のようなことが分かったうえで,本来の目的だったChinaJoyの取材へ乗り込んだのだが,ちょうど上海の近くを台風が通過していたせいか,雲が多かったり風が強かったりで予想最高気温は毎日32〜34度と,予想よりだいぶ低めに。現地の通訳さんも「今年は涼しいですねー」と話していた。
とはいえ,来場者が多いホールはその熱気で空調の効きが悪くなる。じっとしている分にはあまり問題ないが,歩くとすぐに汗がにじんでくるくらいの気温(おそらく28度前後)になっていた。
そこでファンブローベストを使ってみたところ,屋外とは異なる使用感に。説明したように,屋外では「かいた汗に風が当たってひんやりする」感覚があったのだが,ChinaJoyの会場では汗を認識する前に乾いてしまっている感じなのだ。
そのためすぐには効果に気づかず,取材を始めて数時間経ってから「そういえば今日は汗をかいてないな」となったほどだった。個人差はあると思うが,筆者の場合,ファンブローベストがもっとも効果を発揮するのは,これくらいの環境なのかもしれない。なお,会場内は各ブースが流す音楽で非常にうるさいため,ファンの音はまったく気にする必要がなかった。
酷暑ではなく,地味に暑い日の救世主!?
というわけで,ファンブローベストを実際に使ってみた感想をまとめると,「涼しくはならないが,ある程度快適にはなる。もっとも効果的なのは30度弱ぐらいの環境で,猛暑の炎天下では効果が薄い」といったところだろうか。
なので,夏の朝夕の散歩や,屋外で行われるスポーツのナイトゲーム観戦などに着ていくぐらいがちょうどいいのではないかと思う。
都市部よりは若干涼しい環境でちょっとした運動や作業を行うとき,例えばキャンプや山登りなどにもよさそうだ。モンベルが売っているんだから当然か……。
ファンブローベスト(モンベル公式サイト)
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