
プレイレポート
足首からバーコードリーダーまで,特殊なコントローラと奇想天外なアイデアが楽しい「make.ctrl.Japan」ブースをレポート
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2日めと3日めで別のゲームになっていた「ACID FOOT」
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「ACID FOOT」で使うのは,なんと足首型のコントローラだ。足首を掴んで左右に動かすと,画面内の足首もそのとおりに動く。スネのボタンを押すと足首がジャンプするので,地上にあるタンスにぶつけるのだ。
このときタンスの角にぶつけたり,足の小指を当てたりできれば高得点だが,高速で落下する足首を狙ってぶつけるのはなかなか難しい。足首をあっちこっちに動かしつつ,タンスに当てる直前で「無難に当てやすい箇所にヒットさせてそれなりの点数を狙うか,ギリギリまで攻めて高得点を狙うか」といった瞬時の判断力が問われる。
また,空中に浮かぶ「黄色い足首」を取るとさらなるジャンプができ,高度が上がった分だけ加速できるのでスコアも増える仕組みだ。しかし,足首の動きには慣性があるため,靴の上から足をかくようなもどかしさがある。
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本作を制作したのは,ミニマルなバイトで稼ぎつつ,ガラガラを回すガチャで散財する「くじ引きサイクル」(関連記事)で知られるのへもん氏だ。前作「チョークの叛乱」(関連記事)では黒板消しとクリーナーのコントローラを使ったが,アジア圏以外のプレイヤーにはネタが伝わりにくかったそうで,今回は万国共通である「タンスの角と小指」がテーマになったという。
3Dプリンタで作った足首にはマイコンモジュール「M5Stack」が内蔵されており,動きを検知して画面内の足首に反映させている。さらなる分かりやすさを追求する氏は「今後は足首をレースゲームのように走らせてタンスにぶつけるゲームを作りたい」と語っており,新作に期待したいところだ。
……などと思っていたら,その日は意外とすぐだった。具体的には取材の翌日,つまりBitSummit Driftの3日め,タイトルこそ同じだが,先に語られた構想どおり,スネのボタンをアクセルとして足首を爆走させ,フィールドに落ちているスピードアップアイテムを回収しつつ,タンスにぶつかっていく別ゲームになっていた。
小指やタンスの角が高得点,ぶつけるチャンスは1回きりという基本部分は同じだが,より分かりやすくなった印象だ。2日めにプレイした人と3日めにプレイした人とでは,ゲーム内容がまったく異なっているというのが面白い。のへもん氏は2日めの終了後,夜中までかかって新作を仕上げて展示にこぎつけたそうで,この情熱とスピーディさがインディーゲームらしい。
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街のボスになり,ブランデーグラスをくゆらせて視殺戦に挑む
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「ボス,ブラインド,ブランデー」は,街のボスになってライバルのボスと戦うゲームだ。街のボスと言えば,グラスに注いだブランデーを転がしつつ,ブラインドを指で押し下げて外をうかがうのが定番である。本作では本物のブランデーグラスとブラインドのコントローラが用意され,これを使ってライバルのボスと対戦する。手にしたブランデーグラスをグルグル回してパワーを蓄積し,ブラインドを押し下げて視線のビームを放つのだ。
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しかし,ブラインドを下げた際は自分も無防備になってしまい,ライバルから攻撃されてしまう。そして,相手の攻撃に合わせてタイミング良くビームを放てばカウンターとなって大ダメージを与えられる。積極的に攻めるか,じっくりと待ってカウンターを狙うかはプレイヤー次第というわけだ。ブランデーグラスにはセンサーと重り,ブラインドには傾きセンサーが取り付けられており,プレイヤーの動きがそのままゲームに反映される。
本作はレジ袋を揉んで炒飯を炒めるような音を作る「音効炒飯」(関連記事)や,ターンテーブルの上で軍手を使って遊ぶ「軍手&ピース」(関連記事)を手がけた中野 亘氏の作品。ブラインドをめくっていると怒られるなら,めくる専用のブラインドを用意すればいいのではないか,ということから本作が作られたという。
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走って叫んでスリッパの飛距離を伸ばす「Kick And Loud」
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「make.ctrl.Japan」ブースでは定期的に絶叫が響き渡っていたが,その源がこの「Kick And Loud」だ。スリッパを遠くに飛ばすゲームだが,そのための方法が面白い。
まずはリアルにスリッパを履いて,プレートの上で足踏みダッシュ。足踏みが早いほど加速がつき,スリッパが遠くに飛びやすくなる仕組みだ。次は足を振ってスリッパを飛ばし,的にぶつける。ここではスリッパが飛ぶコースが決まる。最後はマイクに向けて絶叫だ。声のボリュームが大きいほど,スリッパが遠くに飛んでいく。
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足踏みダッシュにスリッパ飛ばし,最後に絶叫と,身体を使うアクションでまとめられているのが面白いところ。どれも普段はなかなか機会がないアクションであり,家族に見つかったら怒られる類のものだが,ゲームということで思う存分にやれるのが気持ちいい。
終わったときの開放感もひとしおで,BitSummitというお祭りの場にマッチしたゲームと言えるだろう。
本作は,コーラ瓶を振って宇宙へと飛ばす「Jet Cola」(関連記事)のTamakotronicaの作品だ。足踏みダッシュはアコースティックギターで使われる「ピエゾマイク」を用い,震動を音量として検知。的にはスポンジとボタンが仕込まれており,スリッパが当たった位置を判別する。ラストの絶叫は,砲丸投げの選手が投擲後に叫ぶのをゲームに落とし込んでみようということで取り入れられたそうだ。
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次々と吐き出されるレシートをかきわけ,バーコードを読み取る「BARC」
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次々に吐き出されるレシートからバーコードを読み取るパニック感が面白いゲームが「BARC」だ。プレイヤーはバーコードリーダーを片手に,ドローンをお客としたレジ業務に勤しむ。
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目の前のベルトコンベアには,バーコードが貼られたさまざまな品物が流れてくる。画面にバーコードリーダをかざし,ドローンが欲しがっている品のバーコードを読み取ろう。注文の品をすべて揃えてあげれば,ドローンは満足して帰っていき,スコアが増える。
しかし,ドローンは喋らないため,何を欲しがっているかは分からない。ドローンがやってくると,筐体のプリンタからリアルの紙レシートが発行される。レシートには注文している品とバーコードが書かれており,まずはこれをバーコードリーダで読み取ったあと,画面に流れている注文品のバーコードも読み込むのだ。
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ドローンが1体だけならばノンビリと作業すればいいが,そうもいかない。次々とドローンが現れ,その分の新しいレシートが発行されるため,机の上はレシートで溢れかえることに。そして,注文を捌くには,前述したとおり,品物を渡したい相手のレシートからバーコードを読み取り,次にベルトコンベアの品物を読み取る……という手順を踏まなければならない。
そして,ベルトコンベアに流れてくる品物の並びはランダムだ。無秩序に流れてくる品物をそれぞれ必要なドローンに送りたいが,その前には送りたい相手のレシートを読み込むという一手間が必要になる。送りたいドローンのレシートといっても,次々と発行されるリアルな紙のレシートをどこに置いたか分からなくなり,パニックが加速していくのである。
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まずはドローン1にスイカを送る。次にドローン2が注文したホットドッグが流れてきたので,ドローン2のレシートをスキャンしたあとにホットドッグをスキャン。そうこうしているとドローン1のレモンが流れて来たので,ドローン1のレシートをスキャンしないといけないけど……どこに置いたっけ? と,もたもたしてるとドローン3が来て,机の上にはさらにレシートが増えてしまい……といったように,プリンタからレシートをちぎる暇もないくらい,てんやわんやな状態になってしまうのだ。
さらに競合他社のロボがやってきて,コンベアの品物を壊すのでレーザーで撃退しなければならない。レーザーには赤と緑の2種があり,赤レーザーは赤いターゲット,緑レーザーは緑のターゲットにしか効かない。もちろん発動の前にはあらかじめ「レーザー赤」か「レーザー緑」のレシートを読み込む必要がある。また,修理を求めるドローンも来るのだが,こちらもあらかじめ「リペアツール」のレシートを読み込んでからでないと修理できない。
こうしてしっちゃかめっちゃかになっていると,ついには競合他社のボスロボットが襲来。ボスの身体に表示されたマーカーを見て赤と緑のレーザーを使い分けるガンシューティングのようなプレイも楽しめるのだ。
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バーコードを読み取るという行為はこれまでにもゲームで取り上げられてきたが,本作ではリアルのバーコードリーダとレシートにより,机の上がぐちゃぐちゃになる修羅場感覚も楽しめる。2人プレイも可能で,お互い声を掛け合いながらレシートをやり取りするのも面白い。
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本作を作ったのは,電力を使わずに感触が伝わる特殊なスイッチで猫にご飯を作る「Pastry Panic (with cat)」(関連記事)のYong Zhen Zhou氏。シンガポール国立大学でヒューマンコンピュータインタラクションデザインを研究する氏は,ある日「アニメ調の猫が持つバーコードリーダからレーザーが出る」という動画を目撃。自分でもバーコードリーダを買って遊んでみたところ面白かったのでこれをゲームに生かそうと思い立ったという。
ゲームデザイン上,画面内の品物や敵にもバーコードを出さなければならないのだが,サイズが小さくても大きくてもバーコードリーダが読み込んでくれないうえ,画面内にバーコードを出すためのスペースも確保しなければならないため,調整に苦労したそうだ。
そんな氏は,将来的には「BARC」をゲームセンターやイベント会場にも置きたいと考えているとのこと。バーコードリーダをあちこちに動かし,レシートも整理して……といった手ざわりが楽しく,ファミリー向けとしても面白いのではないかと感じられた。
新たな遊びを考えるのに加え,特殊な自作コントローラがテーマの「make.ctrl.Japan」。今回も創意工夫に溢れた作品ばかりで,取り上げられなかったゲームも多い。来年の開催も楽しみに感じられたイベントだ。
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