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[インタビュー]ベテラン声優のライバルは誰!? 歌舞伎の朗読劇「こえかぶ」第2弾の制作陣インタビューで弾むトーク
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印刷2023/09/29 12:00

インタビュー

[インタビュー]ベテラン声優のライバルは誰!? 歌舞伎の朗読劇「こえかぶ」第2弾の制作陣インタビューで弾むトーク

 人気声優12名による歌舞伎の朗読劇「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 〜雪の夜道篇〜」が,2023年10月7日より東京・草月ホールにて上演される。その開演に先駆けて,ちょうど初回の稽古を終えられたばかりの制作陣にインタビューを実施した。

 今回の合同取材会では,演出家の岡本貴也氏をはじめ,斎賀みつきさん,立花慎之介さん,平田広明さん,吉野裕行さんらキャスト陣が意気込みを語ってくれた。

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こえかぶとは


 「こえかぶ」は,人気声優陣が古典歌舞伎の物語を朗読するという新しいコンテンツ。2022年10月に第1弾が上演,好評を博したのを受けて,雪の夜道をテーマにした第2弾が始動した。現代の言葉で展開するため,歌舞伎入門としてもぴったりな演目となっている。

○演目とあらすじ
 今回の「こえかぶ」は現代のラジオスタジオを舞台に,歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」と,「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)」が上演される。こちらの2作品は,雪のシーンが印象的な演目でもある。

●あらすじ
 時は1952年10月。季節外れの秋の台風が接近し,次第に風雨が強まる夜。放送協会のラジオスタジオでは人気番組『声で楽しむ歌舞伎 こえかぶ』の生放送が迫る中,出演者が誰も到着しないという緊急事態が発生していた。

 番組ディレクターの鈴木昌治,そして昌治に無理やり連れてこられた二人の俳優・黛寛太と風吹蘭,アナウンサーの京本竹夫はこの状況をどう乗り切るのか。個性豊かな4人によるドタバタ劇(しかも今日は二本立て!?)が幕を開ける......!

●「仮名手本忠臣蔵」
 江戸時代に実際に起こった,赤穂浪士の討入事件を題材にした演目。主君の敵を討つために密かに動いていた,大星由良之助(おおぼし ゆらのすけ)をはじめとする家臣団,四十七士たちの困難や,彼らを取り巻く人間模様を描いた物語で,十一段からなる長大作でもある。

●「雪暮夜入谷畦道」通称・直侍(なおざむらい)
 悪事を重ねて追われる男,直次郎(なおじろう)が,江戸を離れる前に恋人の遊女・三千歳(みちとせ)に一目会おうと,彼女の滞在する入谷へ忍んでいく物語。庶民の生活をリアルに描き,テンポのよい七五調の名台詞を数多く生み出した作者・河竹黙阿弥(かわたけ もくあみ)の代表作の一つ。

○各日の出演者と配役
 「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 〜雪の夜道篇〜」は,3日間の上演で,キャストが日替わりとなっている。
(敬称略・五十音順,演目表記では「雪暮夜入谷畦道」を「直侍」,「仮名手本忠臣蔵」を「忠臣蔵」と記載)

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●10月7日(土)の出演者(敬称略)
内田 夕夜
(現代劇:アナウンサー ・京本竹夫役 「直侍」:丑松役 「忠臣蔵」:由良之助役)
斎賀 みつき
(現代劇:舞台俳優・風吹 蘭役 「直侍」: 三千歳役  「忠臣蔵」:平右衛門役)
高橋 広樹
(現代劇:映画俳優・黛 寛太役  「直侍」:直次郎役 「忠臣蔵」: 勘平役,塩冶判官役,重太郎役,九太夫役)
羽多野 渉
(現代劇:ラジオディレクター・鈴木昌治役 「直侍」:蕎麦屋役,丈賀役,市之丞役 「忠臣蔵」:おかる役,力弥役)

●10月8日(日)の出演者(敬称略)
置鮎 龍太郎
(現代劇:アナウンサー ・京本竹夫役 「直侍」:丑松役 「忠臣蔵」:由良之助役)
甲斐田 ゆき
(現代劇:舞台俳優・風吹 蘭役 「直侍」: 三千歳役  「忠臣蔵」:平右衛門役)
諏訪部 順一
(現代劇:映画俳優・黛 寛太役  「直侍」:直次郎役 「忠臣蔵」: 勘平役,塩冶判官役,重太郎役,九太夫役)
福山 潤
(現代劇:ラジオディレクター・鈴木昌治役 「直侍」:蕎麦屋役,丈賀役,市之丞役 「忠臣蔵」:おかる役,力弥役)

●10月9日(月・祝)の出演者(敬称略)
立花 慎之介
(現代劇:ラジオディレクター・鈴木昌治役 「直侍」:蕎麦屋役,丈賀役,市之丞役 「忠臣蔵」:おかる役,力弥役)
朴 璐美
(現代劇:舞台俳優・風吹 蘭役 「直侍」: 三千歳役  「忠臣蔵」:平右衛門役)
平田 広明
(現代劇:アナウンサー ・京本竹夫役 「直侍」:丑松役 「忠臣蔵」:由良之助役)
吉野 裕行(現代劇:映画俳優・黛 寛太役  「直侍」:直次郎役 「忠臣蔵」: 勘平役,塩冶判官役,重太郎役,九太夫役)


演出家・岡本貴也氏が,キャスト陣と作り上げるドラマチックな宝物


――岡本さんは,数多くの朗読劇を手掛けられていますが,歌舞伎を取り上げるうえで,通常の朗読劇の脚本・演出とは異なる点や意識されていることはありますか?

岡本貴也氏(以下,岡本氏):
 歌舞伎の魅力である,ストーリーの面白さをお客さんに伝えるために,言葉遣いを現代語に直してみたり,あえてドラマチックにしてみたりと変えてみました。現代と,江戸時代のドラマの在り方はだいぶ違うんですよね。江戸時代のドラマを,いかに現代のお客さんにドラマチックに感じてもらえるかに腐心しました。

 全体のガワとしてはラジオドラマという設定でくるんでいます。ラジオドラマにも事件を起こして全体的にドタバタと楽しい,笑えるような舞台になればいいなと思って作りました。

――今回の公演の見どころ・聴きどころを教えてください。

岡本氏:
 これだけのベテランの声優さんたちが一堂に会して,技術や声の魅力をふんだんに使い,日本の国劇である歌舞伎を生で演じることは,それだけで光り輝く宝物のような作品になるのではと思っております。

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和気あいあいのインタビュー! キャスト陣が“難しい本”と言う「こえかぶ」の台本とは


――ここからはキャストの皆さんにおうかがいします。「こえかぶ」への出演オファーを受けたときのお気持ち,本公演に対する意気込みを教えてください。

斎賀みつきさん(以下,斎賀さん):
 お話をいただいたときは,どんなものなのか分からなかったので調べました。これまでにも一度「こえかぶ」が上演されていて,「歌舞伎でこういう演目をやっているんだよ」というのを楽しく伝えるものなんだと。それが台本からも見て取れましたので,歌舞伎を知らない人にも分かりやすく「こんなに面白く観られるものなんだ」と分かってもらえるような作品にできればいいな,そういう作品作りのお手伝いができればいいなと思いました。

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平田広明さん(以下,平田さん):
 「こえかぶ」が上演されるのが2回目ということですが,今回,初めて知りました。僕は以前,お能の現代語訳の朗読をやらせていただいたんです。宝生流の家元に教わりながらね。お能の難しいところを口語にして,ある程度お芝居仕立てにすることによって,若い方にも興味を持っていただこうと。そのとき「ああ,こういう企画は非常にいいな」と思っていました。

 今回はそれの歌舞伎版ですかね。僕自身,歌舞伎には縁がありまして何度か観にいくようにはなったんですけれど,どうしても幕が開く前に筋書き(パンフレット)をきっちり読まないと気が済まないんです。できるだけイヤホン※1は着けたくないですからね。

 何を言っているのか全然分からないところも,筋書きを読んで,頭に入れて観ると何となく分かります。それからもう一段進歩すると,筋書きは我慢して,チラシ※2の裏の少なめのあらすじで何とかついていこうと。そうやって努力しながら観てはいるんです。

 それが今回のように「こういう演目があるよ,芝居仕立てにするとこうだよ」というのをやっていただけると,歌舞伎への距離が近くなるのかなと思っております。お能に引き続き,そういうお手伝いができるかなと,うれしく思いました。あとは,難しくなきゃいいなと思いました。

※1 イヤホンガイドという音声での同時解説サービス。物語の背景や,俳優,役柄などの説明が聞けるもので,劇場で専用イヤホンが貸し出されている
※2 演目や出演者が載っているチラシで,裏面には簡単なあらすじと見どころが書かれている。劇場内や歌舞伎座周辺で配布されている


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吉野裕行さん(以下,吉野さん):
 「こえかぶ」第2弾ということで,過去にも1度上演されているわけですから,安心だなと思いました。こういった企画の第1弾に自分が出るというのはプレッシャーなので。そういった意味では第2弾に参加できるのはうれしかったですね。やはり経験したことのないことは経験したいですし。

 ただ,申し訳ないのですが,僕自身の歌舞伎の知識はほぼゼロですね。何となく「歌舞伎ってあるよね」という薄っすらした情報しかありません。過去には「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」を2回観ただけで,本当に初心者ですから。でも,歌舞伎を演じるわけではなく朗読なので,どういうものに仕上がるかはやってみてからですね。楽しくやれたらいいなと思っています。

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立花慎之介さん(以下,立花さん):
 僕は元々,声優になる前,日本舞踊をやっていたので,いわゆる日本の古典芸能は好きなほうだったのですが,歌舞伎はあまり通ってこなかったところではあります。

 僕も能の朗読をやらせていただいたことがあり,「ああ,面白いな」と思っていました。そこへ「こえかぶ」のお話をいただいたので,「今度は歌舞伎もできるんだ,すごく楽しそうだな」と率直に思ったんですね。それで「やりたいです」と,事務所に即,返事をした記憶があります。

 また,アニメや声優ファンの子たちにも,僕と一緒に歌舞伎を理解してもらえたらうれしいなと思っています。僕を通して歌舞伎の面白さを伝えられたらと,楽しみにしている部分もありますね。でも,あとから同じグループの先輩方の名前を見たときに,「これは本番ヤベェぞ」と……。

吉野さん:
 思うよね。

立花さん:
 思うよ……,いやいやいや,吉野さんもですよ!?
(立花さんと同日に出演されるのは,平田広明さん,朴璐美さん,吉野裕行さん)

一同:
 あははは!

立花さん:
 本当に,稽古でやったさらに上を本番でやってくる方々なので,楽しみなんだけど怖くて緊張する部分もあるだろうなと,ドキドキしています。

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――歌舞伎との関わりや,思い出があればお聞かせください。観劇・視聴の機会がなかった場合は,歌舞伎にどんなイメージを抱かれているかお話いただけますでしょうか。

斎賀さん:
 私も吉野くんと同じで,歌舞伎をしっかり観たことはありません。テレビの特集とかで見たりして,どういうものかは何となく頭の中にあるんですけれども,しっかり1本観たことはなくて。でも,とても大事な日本の芸能の1つでありますので,それにちょっとでも関われる,経験して知識を得られることはすごくうれしいなと思っています。

平田さん:
 僕は新劇の出身で。新劇は地味で……,暗くて……,予算がない。そういうところで育ちましたので,歌舞伎を観たときに「キレイな舞台で,キレイなお衣装を着てうらやましいな」と思いました。一番最初に観たのは中学生か高校生のときの演劇鑑賞教室だったんですけど,それはかすりも引っかかりもしなかったんですけどね。

 でも,縁あって「スーパー歌舞伎II ワンピース」のつながりで,市川右團次(いちかわ うだんじ)さんから中村隼人(なかむら はやと)くんを紹介していただいて。それで正月に浅草公会堂でやる若手の「新春浅草歌舞伎」を見に行ったりするようになりました。それでも中身が分からないところもいっぱいあるんですけどね。

 つい先日もフランスの戯曲の朗読劇を,坂東巳之助(ばんどう みのすけ)さんと,中村米吉(なかむら よねきち)さんとやらせていただいて。男女の二人芝居で,彼らは日替わりで出演したんですけどね。それで裏話を聞いたりして,僕の中では勝手に歌舞伎との距離は少々近いのかなと思っておりますけれど,近づけば近づくほど煌びやかで華やかでうらやましい世界だなと思います。

 「ワンピース」の歌舞伎をきっかけに知り合ったので,若い歌舞伎俳優さんが多いのですけれども,皆さんしっかりなさってて,巳之助さんは踊りも達者だし。隼人くんはとんでもなく二枚目ですし,米吉さんは女形をなさるんですけど,「キレイな子がいるな……,あ,男の人だった,男なんだ」って。

 話してみると,皆さん聡明だし,とにかくお芝居が好きで,僕もこんな若いときから芝居を一生懸命やっていたら,もうちょっとうまくなったのかなと思いますが。次の時代の歌舞伎が楽しみだなあと感じているのが,最近の僕の歌舞伎の印象です。

吉野さん:
 歌舞伎は昔からある古典は全然分からないんですけど,今,「ワンピース」のお話もあったように,そういう現代の作品が身近にさせてくれているというのは間違いなくあると思います。「ファイナルファンタジー」の歌舞伎も,原作が好きだったから観に行ったわけですし。

平田さん:
 「ワンピース」の歌舞伎は,観てない?

吉野さん:
 観てないです。すみません!

平田さん:
 何で観てないのー?

吉野さん:
 「ワンピース」はほら,(アニメに)出てないから! 自分の仕事に関わっているもの以外を観ると,ストレスになるから観ない……。「なんでこんな面白い作品に俺は出られないんだろう」って辛いので,僕は観ません。

平田さん:
 俺は「ファイナルファンタジー」の歌舞伎,観てない……。

吉野さん:
 (「ファイナルファンタジー」シリーズに)出てない? いや,出てるんじゃないの〜!? 出てそうだよ? 出てるでしょ,この顔は!

平田さん:
 だって,「ファイナルファンタジー」ってシリーズがいろいろあるでしょ?

吉野さん:
 あ,歌舞伎になったのは「ファイナルファンタジーX」です。

平田さん:
 惜しい! ※3
※3 平田さんは「ファイナルファンタジーXII」にバルフレア役,「ディシディア ファイナルファンタジー」シリーズにラグナ・レウァール役として出演

一同:
 あはははは!

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吉野さん:
 やっぱり今こうやって分かりやすい題材でやってくれるのは本当にありがたいし,逆にそこからもっと昔はどうだったかと観たくなる要素が出てきました。古典作品も,物語が分かれば「人間だからこういう心の揺れ動きがあるんだな」と,分かると思うんですよね。

 また,歌舞伎もいろいろジャンルがあるじゃないですか。今の時代の歌舞伎も,これからどんどん生まれるんじゃないかなという風に思っています。そうすることで,歌舞伎が続いていくんじゃないかなと思いますし,そうあってほしいですね。今やっている歌舞伎が僕にとっての入口となったように,この「こえかぶ」が皆さんのきっかけになったらいいなと思っています。

立花さん:
 歌舞伎とは縁遠かったのですが,子供のころ,お正月とかにテレビでやっているのを見ることはありました。すごく煌びやかで,着物を着たりしていいなって思うんですけど,そもそも何を言っているのか全然分からなくて……。大人になっても理解しようとしても,言葉が難しくてなかなか頭に入ってこないと。

 でも結婚してからは,たまたま僕がテレビで観ているときに妻が「この歌舞伎,こういう内容なんだよ」と教えてくれることもあって。彼女は昔から歌舞伎を家族で観ていたそうなんです。

 それで「この場面はそういうことなんだ」とあらためて分かってきて。歌舞伎には舞台上のルールがあったり,隈取(くまどり)の色も赤だったら正義,青だったら敵みたいな,細かいルールが分かってくると,ちょっとずつ面白くなってきました。細かいルールも含めて,まだまだ知っていける要素があったり,奥が深いなと思っている段階です。

 妻からいろいろな歌舞伎の物語を聞いて僕が思ったのは,出てくる主人公や男のキャラクターがマジでろくでもないヤツばかり,ということですね(笑)。「大丈夫なの!? 当時,こういう話が盛り上がってたの!?」っていうくらい,今考えるとどうしようもない男の話が多いんです。

 でもそれが面白くて。そこで恋物語があったり,悲劇もあったり,今でいう昼ドラじゃないですけどドロドロしたものだったりを,どうしようもないヤツらがやっていくのが歌舞伎なんだなと思って。そういう意味では,もっと分かりやすく知りたいなと思っている段階です。


――初めて台本を読まれた際の印象はいかがでしたか?

斎賀さん:
 朗読劇と聞いていたのですが,台本を読んだときに,劇中劇もあるんだと。我々声優として舞台に立つのではなくて,キャラクターとして舞台に立って,そこから歌舞伎の物語を役として読むという形だったので,すごく驚きましたし,どういう風に自分の役を表現していったらいいんだろうとも思いました。

 最初に登場する人物をまず確立して,その人がどういう風に読むだろうと考えさせられるというか。なかなかやりがいのある,料理しがいのある作品ですね。やるほどに理解を深めていって,本番ですごくいいものを出せればいいなと思いながら,下読みをさせていただきました。

 今日のメンバーの中では,私だけ出演する日にちが違うんですね。実際に共演する役者さんたちはまったく違うタイプなので,全然違うものになると思いますけれど,ある意味役得ですね。このグループのお芝居も聞けたのが新鮮でした。自分と同じ日の役者さんがどう来るのか,次の稽古に向けて1つ楽しみができたなと思います。

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平田さん:
 能の朗読では,すごくカッチリとしたお能をお芝居にしたという感じで,中身はこういうことかと,純粋に分かりやすくなっていたんですけど……。これを脚本・演出家の前で言うのもなんですが,「こえかぶ」がこんなにコントだと思いませんでした。なので,歌舞伎を分かりやすく伝えるというお仕事以前に,やらなければならないことがいっぱいあるんだなと感じましたけど,ちゃんとできたらすごく面白いんじゃないかと思います。

 どうしても頭の中がコントでいっぱいになるんですけど,話をよく聞いていると知らなかったことがいっぱいありました。劇場には声優ファンの方が観にいらっしゃると思うのですが,我々のわちゃわちゃも楽しみつつ,全部じゃなくても,我々のお芝居の中から一言,二言でも歌舞伎に通じる内容が掴めればいいなと思っています。

 立花くんのように「へえー,赤と青の違いってそういう意味があったんだ」とか,そういうものを持って帰っていただいて,歌舞伎に興味を持ってもらえたらいいなと思います。

 このお芝居を観たあとは,歌舞伎の演目を観てみたくなると思いますし,その時は筋書きもチラシも見ずに楽しめるかなと思います。「こえかぶ」をきっかけに,観てくれるお客さんがそうなったらいいなと思っております。(台本に関しては)“難しい本”ですね。

吉野さん:
 “難しい本”です!

岡本氏:
 すみませんー!

一同:
 あはははは!

吉野さん:
 そう思います。

立花さん:
 終わり!?

吉野さん:
 まあ,そうですね,朗読でも歌舞伎の演目をやるって以上は,その歌舞伎の文言というか,型……って言っていいんですかね,僕,分かんないのにこんなこと言ったらアレですけど,やっぱりあると思うんですよね。

 その1つが七五調みたいなあのリズムですか。それがそのまま台本の中に入ってくるとなると,どうしてもそのリズムに引っ張られると思うんですよね。お芝居としては,おそらくそこじゃないところで勝負したほうがいいのかなとも思うんですけど,書いてある文章がそうである以上,やっぱりそう読むと思うんですよね。

 あと,言葉が分からない。これって致命的だなって。観る人の知識の量にもよるし,そこに委ねることになりますけれど,やっぱり分からないということが没入感と集中を切らせるので「ん?」という疑問を持たせるような本は,僕は嫌いです。そういうところを潰して,分かりやすくするのがいいかなと思っているんですけど,そういった意味では歌舞伎は難しいと感じています。

 それをいかに,皆さんが疑問に思ったりとか,「何だろう?」とよそ見をしないようなものをちゃんと作れるかなというのが勝負になるだろうなと思っています。“難しい本”です。

立花さん:
 まず,冒頭部分が喜劇というか,現代のラジオスタジオから始まって,歌舞伎の部分は真面目にやらなければいけないと。で,所々に現代のキャラクターが入ってきたりとか,感情がジェットコースターのように変わったりする部分があって。その切り替えが難しいなと感じました。

 また聞きなれない言葉,見慣れない漢字があったりして,事務所に「ルビ振ってくれないと読めないです」って話をしました。ネットで調べればある程度出てきたりするんですけど,いくつか読み方があってどれが合っているのか分からない,アクセントも聞かないと何が正解なのか分からなかったり。辞書を引いても分からないことがあるので,未知の台本だなと思いました。それが最初に読ませていただいたときの印象ですね。

 読んでいくうちに,自分のキャラクターがほかの人たちを引っ張っていかなければならないと気づいて「いやいや,この3人の先輩を引っ張っていくの,無理じゃね?」って思ったりもしました。台本としての難しさと,喜劇としての面白さの中にある難しさみたいなものが,いろいろ混じっている台本だなと感じましたね。やりがいはあるんですけど,“難しい台本”だなと思いました。

――今回のこえかぶで取り上げる演目,演じられるお役について,どのようなイメージをお持ちでしょうか。

斎賀さん:
 両方とも初めて触れる物語なので,まっさらなところから知って,素直に受け止めて自分の中で料理しているところです。現代劇での自分の役(舞台俳優・風吹 蘭)としては,風吹さんが皆さんの目に,その人として見えればいいなと思っています。その人が持っているドラマ,その人が実際に歌舞伎を読むという段階になって,どういう風に役を演じるかを重点的に考えています。私というよりは,風吹さんのフィルターがかけられていたらいいなと思っております。

平田さん:
 僕の演じる京本竹夫という役は元々,役を演じる予定はなく,アナウンサーとしてタイトルコールをするだけのはずだったんです。それが段々,ト書き読みのような語りを振られることになります。そのうちに一つ役を押し付けられ……,というような立ち位置なので,歌舞伎の中身というよりは竹夫というキャラクターをどうやって掴むかが大事なのかなと思っています。

 観客の方に歌舞伎との橋渡しをするうえでも,「歌舞伎なんか分かんない」という立場の人間が入っていたほうが,初めての方にはいいんだろうなと思うので。「歌舞伎は苦手,できない」と,観客の代弁みたいな感じで入っていければいいなと考えています。

 そして「仮名手本忠臣蔵」は,何とイヤだイヤだ言っていた竹夫が,主役の大星由良之助(おおぼし ゆらのすけ)をやるんです。今日は初めての読み合わせだったんですけど,3ページくらいで時間切れになったんですよ。

一同:
 ふふふふふ。

平田さん:
 良いところも,悪いところもまだ見せてない状況で,これからどういうことになるやら,次の稽古で分かると思います。だから(インタビューには) 「仮名手本忠臣蔵」のところだけ空けておいていただければということで,よろしくお願いいたします。

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吉野さん:
 作品の中でいくつか役をやるんですが,イメージというより,役割ですよね。役割として台詞を言っているので,正直あまり深く考えたくないというのがあります。そうでなくとも,実際の歌舞伎の尺からギュッとして取っているダイジェストですから。話を聞けば分かると思うんですけど,展開がすごい速いし,物語を知っている人からしたら「なんであそこがないんだ」となると思うんです。

 さっき,立花くんも言っていましたけど,反社の物語ですよね。時代的にそういうのが多いんだなと。だからこそ,今の時代に持ってくるとどういうものが作られるのかなというのが楽しみです。何が伝えたいところなのか,お客さんにどう映るのかが楽しみでもあります。

 あと単純に,「ワンピース」や「ファイナルファンタジー」じゃなくても,今の時代の日常の中にある何かを題材に,歌舞伎が作られていったら面白いなと期待しています。そもそも歌舞伎がそうだったと思うので,そうあってほしいなと思います。

 自分の役に関しては,もっと稽古しないと分からないですね。いかに最終的に1つの物語として「こういう演出で,こういう意図でやっているんだな」と伝わるものに仕上げられるかですよね。まだ1回目の稽古で,すべてはやっていないですし,やったうえでそこからの調整になると思います。

立花さん:
 何役かやらせていただくんですが,鈴木昌治というラジオのディレクターは,流れ上,自分も役をやらなくてはいけないと。彼はあくまでもディレクターなので,現場にはいるけれども声のお仕事をしたことがないわけです。昌治というキャラクター作りを最初にしなくてはいけないので,よりハードルが高いなと感じました。

 また,キャラクターを切り替えていくこともそうですね。「仮名手本忠臣蔵」は,女性の“おかる”をやらせていただくのですが,男性が女性を演じる“女形”(おんながた)としてやるのか,もしくは女性キャラクターに寄せてしまうのか,それはやってみないと分からないなと。そちらはまだ稽古ができていないんですが,ディスカッションしていいところに落とし込めればと思っています。

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――「こえかぶ」で歌舞伎に興味を持ち始めた方や,歌舞伎ファンの方に向けてメッセージをお願いします。

斎賀さん:
 とにかく,まずは観て,聞いて,感じて,「歌舞伎の本公演をしっかり観てみたいな」と思ってくださるようにやっていきたいと思いますし,「こえかぶ」というコンテンツをどんどん続けて,いろんなものを観たいなと思ってもらえたらいいなと思っています。我々も楽しみながら演じていきたいと思いますので,ぜひ皆さんも楽しんでいただければと思います。

平田さん:
 同じですね。歌舞伎に興味を持っていただけるきっかけになればいいなと思います。「忠臣蔵」に関しては,歌舞伎だけの演目ではないので,「聞いたことある,知ってる知ってる,赤穂浪士でしょ」という方もいらっしゃるかと思います。作品の入口としては,とってもいいのかなと思います。

 僕も古典落語にそんなに興味を持っていなかったんですけど,柳家小三治さんが好きで通うようになったんですよ。そこで,聞いたことのない話をいっぱい聞いてたら,「面白いなあ,どの時代の誰が書いたんだろうな?」と思うようになりました。

 歌舞伎も同じで,現代語に直したらすごくのめり込むような話はいっぱいあるんじゃないかと思うんですよね。次へ次へという興味が湧くようになってくれればとてもありがたいなと思います。まだまだ難しいと思われている歌舞伎の題材はいっぱいあると思うので,この先どんどん「こえかぶ」が広がっていくといいなと思います。

 できれば,コミカルな役は難しいので,次回はそうじゃないのがいいなと,個人的に思っています。

岡本氏:
 重く受け止めます(笑)。

平田さん:
 あ,これが振りになってまた……? 困っちゃうな。以上です。

吉野さん:
 皆さんもおっしゃるように,歌舞伎に興味を持つきっかけの1つであってほしいのもそうですけど,朗読で歌舞伎を楽しんでもらうと謳っていますので,「こえかぶ」が一つのコンテンツとしてずっと残ってくれたらいいなと思っています。

 「こえかぶ」だから歌舞伎に入れるよ,という状態が作られていって,ずっと続いていったらいいなと。少しでも入口を広く浅くしてあげて,もう1回勉強する機会を与えてもらえるような。

 今回はこの2作品をやっていますが,次回はまた違うものをやったりしてね。僕ら声優がやっていますけど,声優に限らず,みんなでできることがあるんじゃないかなと思います。まずは,今回の公演をやりきれたらいいなと思っています。

立花さん:
 これをきっかけに,朗読にも歌舞伎にも興味を持っていただけるとうれしいなと思います。ハードルが高いと思われている方がたくさんいらっしゃると思いますが,そこを気にすることなく,「声優ファンだからちょっと観に行こうかな」でいいので,ぜひ来ていただきたいです。

 せっかく3チームありますし。同じ台本なのに,チームが変わるとまったく違うものに仕上がるのが朗読の面白さの1つだと思っているので,比べるとかではなく,3公演,別視点で楽しんでもらえたらうれしいですね。そういうものを含めて「こえかぶ」を楽しんでいただければ幸いです。

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――キャストが日替わりですが,同じ役を演じられる役者さんの演技が気になる,あるいはライバル心が燃え上がる,というようなことはありますか?

斎賀さん:
 ないです。リスペクトはあれどライバル心はないですね。お二方ともステキな役者さんですし,それぞれ絶対違う風に演じてくださると思うので。先ほど立花くんが言ってくれたように,全部の回が全部違う,それぞれの解釈で全然違うとなっていくと思うので,そういう思いじゃなく観てほしいなという感じではあります。

平田さん:
 あるって言ったほうが面白いですかね?

一同:
 (笑)。

平田さん:
 大体,僕と同じ役を誰がやるのか知らないんですが……。(内田夕夜さんと,置鮎龍太郎さんだと聞いて)夕夜と龍ちゃんか。

斎賀さん:
 メラメラしますか?

平田さん:
 ないですね。でも夕夜はきっと俺にメラメラします。会うたびに「僕がジョニー・デップをやるんだ」って言ってますから。夕夜はあります,断言します。別にライバル心のある声優がいないってわけでもないんですけど,「こえかぶ」にはないですし。僕個人の話をすると,声のお仕事でオーディションで行って「アイツには負けたくない」とかっていうのは,元々そんなに……。(キャスト陣に向かって)ある?

吉野さん:
 ある人もいるんじゃないですか?

平田さん:
 (ライバルがいないと)ダメか? 俺?

吉野さん:
 いやいや,ダメとかではないです。

平田さん:
 ただ,このメンツの中で藤原啓治がいたらちょっと思ったかもしれない。

一同:
 ああ〜。

吉野さん:
 (ライバルが)あったじゃない。

平田さん:
 (今回に関しては)そういうのはないです。

吉野さん:
 僕もないかな。立花くんもさっき言っていたけど,チームごとに変わるものですし,座組みなんですよね。座組みで,役割だから。そこで差別化を図ったりもするんですよね。自分がやりたい芝居をやるわけでもないし,人の芝居に合わせてどこか縫っていくところもあるし,もちろん自分がエゴを通すところもあって,なのでどのメンバーを見てもみんな違うと思います。

 このメンバーで誰か1人だけ違っても,違うものになるかと。今日は,別の日に出演される斎賀さんがいらしていますが,朴さんと合わせたら僕らもまったく同じとは言えないですから。

立花さん:
 僕と同じ役を演じるキャストは年齢も近いですけれど,ライバル心というのはとくには感じなくて。逆にそれぞれの考える面白いキャラクター,面白い芝居,いろいろなものを出してくると思うので,逆に自分が本番やる前に見たくない,聞きたくないですね。それが「あ,いいな」って思ったら取り入れちゃいそうなので。まったく聞かない状態で,公演が終わったあとに2チームを聞いてみたいなと思いますが,とくにライバル心はないですね。

――ありがとうございました。

画像集 No.015のサムネイル画像 / [インタビュー]ベテラン声優のライバルは誰!? 歌舞伎の朗読劇「こえかぶ」第2弾の制作陣インタビューで弾むトーク

【はみ出しトーク】

平田さん:
 ライバル心,あるって言ったほうがいいよ,盛り上がるんだから。

斎賀さん:
 言ってくださいよ(平田さんが)。

吉野さん:
 声優としてはあるかもしれないけど,たまたまこの場にはちょっといないみたいで……。

平田さん:
 作れよー。

一同:
 ふふふふ。

吉野さん:
 作るのー? でも,夕夜さんがあるっておっしゃってたから。

平田さん:
 俺が言ってるだけだから……。

吉野さん:
 そこは自信を持って!

平田さん:
 (夕夜さんのテイで)「平田さん? ああ,出てるの,へえー」って。

一同:
 ふふふ。


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