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そういえば,Web3.0って何? IVS Crypto 2023 KYOTOで行われた「今さら聞けないWeb3.0の基本」聴講レポート
講演は,“そもそもWeb3.0とはなにか”という根本的な説明で始まった。Web3.0とは,ブロックチェーン技術を応用したサービス群を指す言葉で,もともと「ブロックチェーン業界」と呼ばれていた。そして,2021年後半あたりからは「Web3.0業界」と呼ばれるようになったそうだ。なぜ呼び名が変わったのかというと,ブロックチェーンに怪しいイメージがついてしまい,業界のリブランディングを図り,Web3.0という言葉が生まれたという。
そしてWeb3.0とは,インターネットをもっと良くしていこうというムーブメントだと,のぶめい氏は説明した。インターネットが登場したときは,学術的,軍事的な目的で使われており,素人がすぐに使えるものではなかった。だが,素人には難しかったものをサービスとして提供する企業がビジネス化したことでインターネットが普及し,そういった企業は大きく成長。そのもっともたる例がいわゆるGAFAだ。これらの企業の登場により,インターネットは飛躍的に便利になった。
インターネットを当たり前のように毎日利用しているので,なんとも思わない人もいるかもしれないが,一企業がデータを管理することで弊害も発生している。その例として以下の3つをのぶめい氏は挙げた。
2)Googleの検索アルゴリズムが変更され流入が激減してしまった。新規流入減ってしまうが仕方がない
3)ゲームアプリが突然サービス終了になり,大切なデータが消えてしまった。理不尽だが,現在のWebサービスでは仕方がない
そして,こういった不便なことを,ブロックチェーン技術などを使ってもっと良くしていこうという動きがWeb3.0なのだという。
続いて,のぶめい氏はWeb2.0で浮き彫りになった課題を明示した。なかでもWeb2.0最大の過ちが,ビジネスモデルに広告モデルを採用していることだと述べた。
広告モデルが使われていることのなにが問題かというと,フェイクニュースや炎上を目的とした,人を怒らせるようなコンテンツがWeb2.0では評価されてしまうことだ。広告はなるべく多くの人に情報を伝えることで価値が上がるため,とりあえず人を集めれば成立する広告モデルを採用した以上,こうなってしまっても仕方ない。
また,ネット上のサービスを利用するうえで,デジタルデータを企業側が所有することが多い。この構造だと,いわばデータを人質に取られているようなもので,ユーザーは企業に搾取されているようなものだという。
例えば,個人情報はその「個人」のものだが,その個人情報を元に配信されている広告の収益は還元されていない。個人データを使って利益をあげたのであれば,そのデータ提供者に多少なりとも収益を分配するべきというのが,のぶめい氏の考えだ。
これがWeb3.0になると,データは「企業」ではなく「個人」が所有し,コンテンツ配信と課金の間に仲介者が存在しない形が理想とされているという。
次に「Web3.0の根底に流れる思想」についての説明が行われた。
Web2.0のインターネットでは,成長した巨大企業に力が集まりすぎてしまう中央集権的な構造となり,その弊害が出ていた。そして,誰もが公平に利用でき,中央集権的な管理者のいない分散型のインターネットインフラをつくろうというのがWeb3.0の目指すところなのだという。
では,分散型になることで,いったい何が変わるのだろうか。その例としてのぶめい氏は,以下の画像を提示しつつ,例を挙げた。
Web1.0では,毎回ユーザー名とパスワードを入力することでサービスを利用し,Web2.0では,Googleアカウントなどを用いたSNSログイン,そして,Web3.0ではどこかの会社が提供しているサービスに依存することなく,各ユーザーが持つウォレットだけを使う。これが実現するだけでもかなり便利そうだ。
のぶめい氏によると,Web3.0は「未来のインターネットってこうあるべき」という思想に近いものであるという。「3.0」とナンバリングすると,2.0の上位互換であるかのように見えるが,Web2.0とWeb3.0のインターネットは共存する。「インターネットを利用する際の選択肢が増える」程度に考えておくと良いと話していた。そして,Web3.0の利点は実感しにくいが,“世界全体がWeb2.0からWeb3.0の選択肢が生まれつつあるのが「今」”という理解でいいそうだ。
ここまでの説明でも何度か出てきた分散管理というのはイメージしづらいが,分散管理されているものは,世の中に溢れているとし,その例としてサバンナの生態系や,人間の細胞を挙げた。
サバンナでは動物たちが各々の特性に合わせて活動することで自然にバランスが保たれている仕組みになっており,この仕組は人間が管理しているものではなく,管理者がいない自立分散的な仕組みです
私達の細胞も分散管理
我々の体を構成する細胞も分散管理されています。細胞はアミノ酸を受け取ってタンパク質に変換して返す。細菌を排除する。などシンプルな命令をひたすら実行する生物の最小単位です。細胞一つ一つに脳があるわけではなく,人間の意志が介在しないのでこれも分散管理されている一例です。私達も細胞により分散管理されているのです。
ちなみに,Web3.0と同じ文脈で語られることが多い言葉に「DAO(自律分散型組織)」があり,これは人間が作り出したソフトウェアをサバンナの生態系のように,自然に近いレベルまでそれらを落とし込もうとする思想のことを指しているそうだ。
ここまではWeb3.0の思想や概念的な話だったが,Web3.0業界でどのようなビジネスが生まれつつあるのかが紹介された。
Web3.0でのデジタルデータはトークンとして表現され,トークンは大きくわけてFT(Fungible Token)とNFT(Non-Fungible Token)の2種類がある。FTは,ビットコインやイーサリアムなど暗号資産全般を指し,NFTは暗号資産以外のデジタル上のモノ全般を指すという。
なお,Fubgibleとは「代替え可能」という意味で,貨幣を通貨として利用するためには全貨幣が同じ形,機能を持っている必要がある。つまり代替可能でなければならない。例えば◯や□,△の形をした500円玉があったとすると,人によって「私は□がいい」「僕は◯がいい」という好みが発生するので,形によって需給に差が生まれ,500円が500円としての機能を失ってしまうとのぶめい氏は説明していた。
FTは通貨同様,「価値のモノサシ」として利用されることを想定しているので,丸いビットコインや四角いビットコインがあっては困る。したがってFTはすべて同じ形,同じ機能を持つ「Fungibleな通貨」でなければならないのだという。
NFTは「代替えできないモノ」全般を指し,デジタル上のチケットやキャラクターを表現できる。つまり,デジタル上にコピーできない個性を表現できるようになった点が新しいそうだ。
Web3.0のビジネスでは,デジタルデータをトークン化することで,個人情報を開示することなく個人がグローバルに直接取引可能になるため,価値の流動性を高めているだという。そして,以下の要素があるものが,トークンを使ったビジネスに向いていると説明された。
1)グローバルに取引できるもの
2)3者以上のステークホルダーが存在する
3)個人情報が必要ないもの
そして,Web3.0のビジネスを考えるときに,これはトークンを使って何の価値と流動性を高めていくのかということを意識すると,そのビジネスの新しい部分が見えてくるというのが,のぶめい氏の持論だ。
また,上述したようにトークンにはFTとNFTの2種類があるが,のぶめい氏はWeb3.0のビジネスにおいてFTの発行は必須ではないと考えている。もちろんFTのほうがNFTよりも流動性が高いため,価値が上がりやすい。FTを配ることで,短期的に人は集まりやすくなるが,FTの発行により投機性が高まり崩壊も早くなるという。したがって,FTを発行するのであれば,サービス/プロダクト単体で持続可能なビジネスモデルを構築している必要があるそうだ。
つまり,Web3.0で展開される大抵のサービスはNFT発行のみで事足りるのだという。そして,NFTの発行だけで成り立つビジネスモデルがどんどん増え,そのビジネスモデルが十分に成長したあとに,FTを発行するという流れがトレンドになるというのが,のぶめい氏の見立てだ。
最後にのぶめい氏は,Web3.0でビジネスを立ち上げるのであれば,まずはNFTの発行だけにとどめることを勧めて講演を締めた。
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