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ファンに受け入れられるIPビジネスとは。IVS Cryptoの講演「Web3.0の旅に出かけましょう〜日本の知財・IPをWeb3へ」の模様をお届け
本稿では,その中から「Web3.0の旅に出かけましょう〜日本の知財・IPをWeb3へ」の模様をお伝えしよう。
本講演には,Animoca BrandsのCEOである岩瀬大輔氏,double jump.tokyoの代表取締役CTOである満足 亮氏,バンダイナムコエンターテインメントの執行役員である池田 準氏が登壇した。モデレーターを務めたのは,CryptoGamesのCEOである小澤孝太氏だ。
初めに自己紹介が行われ,岩瀬氏は講談社や集英社といった大手出版社と提携したIP事業を,満足氏は「『キャプテン翼』ボールはともだちプロジェクト」や「資産性ミリオンアーサー」を,池田氏は「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」(外部リンク)を設立し,Web3領域の会社を含む幅広い会社に投資していることを主に紹介した。
最初のトークテーマは,「なぜ日本の知財・IPをWeb3領域で活用すべきか」だ。
また,マンガの世界で大きな役割を果たしているファンアートや同人誌の文化が,オフィシャルでは存在していないことに触れ,NFTによってロイヤリティを得られる仕組みや,アニメなどのクラウドファンディングでDAO(分散型自律組織)のような仕組みが生まれる可能性があるとした。
ここで小澤氏が,そうした変化によってIPの作り方や編集の立ち位置が変わってくるのではと尋ねると,岩瀬氏はDAOの投票で決めたら作品が面白くなるわけではなく,1人の天才クリエイターのひらめきによって名作が生まれる側面もあるので,一筋縄ではいかないと回答。
さらに,岩瀬氏はコロナ禍を経てマンガ・アニメが好調な時代に,ファンから反発を受けやすいNFTビジネスを始める必要性が薄いことを課題として挙げたが,一方でモバイルゲームのように,いずれは定着するものだと予想した。
満足氏が,昨今ではゲームに限らず投資をしなければいけない時代になってきており,株や不動産は知識がないから難しいが,自分の得意なジャンルのゲームになら投資しやすいという人もいると述べると,小澤氏はちょうど株高でリテラシーが上がってきていると応じた。
一方で,投資の話を大きな声でするのは,SEC(米国証券取引委員会)の厳しい姿勢がブロックチェーン業界で話題の中心となっている時代によくないのではと指摘するのが岩瀬氏だ。これに対して満足氏は,高騰するトレーディングカードにも似たような側面があると語り,法律上の投資ではなく,アートを保有するような広義の投資だと捉えてほしいと補足した。
小澤氏がIPをWeb3に持ってくる際の課題について尋ねると,池田氏は既存のIPはWeb2を前提にした権利関係が存在し,ファンも今の世界観が好きなので高いハードルがあると答えた。そして,Web3はユーザー数が少ないため参入しづらく,Web2に限りなく近い形のサービスだが,いつの間にかNFTを持っているというような橋渡しの必要性を指摘した。
ここで次の話題に移り,岩瀬氏が小澤氏にマスアダプションの展望を尋ねた。小澤氏はおそらく3〜5年はかかるが,ヒットサービスの創出から一般化すると語り,キャバ嬢へのプレゼントに「STEPN」のNFTスニーカーが使われていたことを例示した。
小澤氏が満足氏に話を振ると,満足氏は池田氏のWeb2に近づけるという考えとは違って,むしろWeb3らしさを押し出していくべき時期だと主張。岩瀬氏はそれに同意したうえで,クリプトバブルの崩壊によって現実が見えたことで,逆にビジネスを進めていきやすくなった側面もあると述べた。そして,既存のIPにとって参入しづらいという池田氏の考えは分かるが,マスアダプションのためには既存IPの参入が必要だとした。
全体的にIPホルダーであるバンダイナムコエンターテインメントの池田氏を,Web3領域を得意とする岩瀬氏と満足氏が説得するような構図となっており,各社の立場による見え方の違いが感じられる講演だった。
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