そうだ アニメ，見よう：第183回は陰キャ少年×陽キャ美少女のラブコメディ「僕の心のヤバイやつ」。“ラスト5分”の盛り上がりがヤバイと話題に

　「みつどもえ」や「ロロッロ!」で知られる漫画家・桜井のりお氏が，秋田書店のコミック配信サイト「マンガクロス」で連載中の「僕の心のヤバイやつ」（少年チャンピオン・コミックス/既刊8巻）。本作は，中二病の少年が主人公のラブコメディで，「このマンガがすごい！オトコ編」に2年連続ランクインし，「次にくるマンガ大賞2020 Webマンガ部門」では1位を獲得している人気作だ。
　というわけで，「そうだ アニメ，見よう」第183回のタイトルは，同作をアニメ化した「僕の心のヤバイやつ」（毎週土曜日25：30〜テレビ朝日系全国24局ネット）。制作はシンエイ動画，シリーズ構成・脚本は「ラブライブ！」や「宇宙よりも遠い場所」の花田十輝氏，監督は「からかい上手の高木さん」や「カッコウの許嫁」を手掛けた赤城博昭氏が務めている。

「僕の心のヤバイやつ」

　中学2年生の市川京太郎（CV：堀江 瞬）は，殺人にまつわる猟奇本を愛読する重度の“中二病男子”だ。モデルとしても活動しているクラスメイトの美少女・山田杏奈（CV：羊宮妃那）をチラチラと見ては，毎日ヤバめな妄想を繰り返していた。

　ある日，山田が市川の聖域・図書室にやってきた。自分1人だと思い込み，大口でおにぎりを頬張ったり，機嫌よく鼻歌を歌ったりと，思うままに振る舞う山田。その後も山田は美少女のイメージとはかけ離れた言動をとり，市川はそんな彼女を放っておけなくなるが，その理由が分からずモヤモヤする日々を過ごしていた。


　そんな折，授業中のバスケットボールで山田が負傷するアクシデントが起こる。負傷に涙する山田を見ていた市川は，いつしか自分も涙を流していることに気づき，山田に恋していることを自覚するのだった。
　一方の山田も単なるクラスメイトとして見ていた市川に次第に関心を寄せ，漫画を貸すなど親交を深めていった。しかし，図書室に「飲食禁止」の注意書きが張り出され，2人の聖域にピンチが訪れる……。

陰キャ少年と陽キャ美少女の恋

　本作の主人公・市川はゲームや読書が好きで，女の子とうまくコミュニケーションをとれない，いわゆる陰キャの少年だ。図書室でひとり“殺人”に関する書籍を読み，どこのグループにも属さず，クラスメイトをガキだと見下す。誰にでも身に覚えがありそうな“中二病”をこじらせている。


　そんな市川の前に現れたのが，芸能活動をしている美少女・山田だ。クラスメイトにも恵まれ，スタイルも抜群（市川よりも10センチ以上背が高い），まさに市川とは正反対の陽キャといえる少女だが，学校でお菓子の「ねるねるねるね」を食べる，ちょっと変な女の子。2人が図書室で交流していくうちに，お互いを意識し始める。この過程が丁寧に描かれていて，実に心地いい。

　「陰キャ少年と美少女が，なぜ？」と思うかもしれないが，市川はここぞというときには“やる”少年なのだ。山田がセンパイに絡まれていた時は，自転車を放り投げて助ける。教師に怒られそうなときは弁護してあげる。そして，図書室でお菓子を食べているのがバレそうなときは，嫌われるのを覚悟で手を握って止める。


　小さな身体のどこにあるのかと思えるほどの勇気を振り絞って，山田を助けるのだ。かといって調子に乗らず，自分なんかが山田に好かれるはずがないと，常に自分を戒め，一歩引いて彼女に接する。
　その姿がいじらしく，キュンキュンさせられる。もしやこのお話のヒロインは市川なのでは……と思わされることもしばしばだ。

　そんな2人のドキドキの毎日と，今どきの中学生たちのピュアな恋模様を描いているのが本作「僕の心のヤバイやつ」なのだ。
　ちなみに，タイトルの“ヤバイやつ”とは，中二的な殺人衝動とかではなく，「自分の中にある，恋心なのか何なのか分からない感情」を表現したいという思いから生まれたものなのだとか。

圧巻のストーリー構成

　原作はコミックスのほかに，桜井氏がTwitterにアップしているショート漫画や小ネタをまとめた「ツイヤバまとめ」という電子書籍が発表されている。アニメでは，このツイヤバまとめのネタを随所にちりばめ，各話にボリュームを持たせているのだ。例えば第7話の保健室のシーンがそれにあたる。
　それでいて，テンポよくストーリーを進行させているので，原作を知っている人も満足できるはず。実際にアニメ第1話は，原作のKarte1〜6までがギュッとまとめられていた。


　本作は，こうした構成の巧みさが際立っており，シリーズ構成・脚本の花田氏の手腕に拍手を送りたい。とくに，エンディング後のCパートへの誘導が素晴らしく「ここにそんな重要な部分を持ってくるのか」と驚かされてばかりだ。
　公式サイトでは，今まで放送された全話のCパート（本編ラスト5分）を公開しているので，胸ときめく名場面を味わいたいという人はチェックしておこう。

■本編ラスト5分をYouTubeにて全話公開!初恋に胸ときめく、感涙の名場面をもう一度!!
【karte1】僕は奪われた
https://youtu.be/P_yb88MCZR0
【karte2】僕は死んだ
https://youtu.be/MDWtgmPfURc
【karte3】僕は抱きしめたい
https://youtu.be/GmNVUlv8TfE
【karte4】僕は心の病
https://youtu.be/DXFYAR0-kw0
【karte5】僕らははぐれた
https://youtu.be/YZZ2fbFCpPM
【karte6】僕は溶かした
https://youtu.be/_rJftHgLLqw
【karte7】僕らは入れ替わってる
https://youtu.be/bcJ6rtMRpg0
【karte8】僕は夢を見た
https://youtu.be/on8ir6bpGh4
【karte9】僕は山田が嫌い
https://youtu.be/d1N8cOAm1tY
【karte10】僕らはゆっくり歩いた
https://youtu.be/9qg4Rnyvzgg

クリスマス後の2人はどうなる？

　物語は，市川視点のモノローグで語られているが，市川だけじゃなく，山田がいつ彼に心を惹かれ，恋に落ち，思いを募らせていくか。その心理描写が，非常に分かりやすく，演出の見事さに頭が下がる思いだ。
　原作の力ももちろんあるが，構成・演出どちらも優れた，今期の中でもトップクラスのラブストーリーだと言わざるを得ない。
　現在，10話まで放送され，市川と山田の関係も親密なものになってきている。お互いが意識し合っているのに，なかなか前に進めない2人の距離感は，じれったくもあり微笑ましくもある。クリスマスを経て，この小さな恋がどうなるのか，最後まで見届けたい。

「僕の心のヤバイやつ」公式サイト

「僕の心のヤバイやつ」公式Twitter

放映データ
2023年4月〜
毎週土曜日25：30〜テレビ朝日系全国24局ネット

キャスト
市川京太郎：堀江 瞬
山田杏奈：羊宮妃那
小林ちひろ：朝井 彩加
関根萌子：潘めぐみ
吉田芹那：種﨑敦美
足立翔：岡本信彦
神崎健太：佐藤 元
太田力：福島 潤
原穂乃香：豊崎愛生
市川香菜：田村ゆかり
南条ハルヤ：島﨑信長

スタッフ
原作：桜井のりお（秋田書店「マンガクロス」連載）
監督：赤城博昭
シリーズ構成・脚本：花田十輝
キャラクターデザイン：勝又聖人
色彩設計：柳澤久美子
美術監督：黛 昌樹
撮影監督：峰岸健太郎 竹沢裕一
編集：肥田文
音響監督：小沼則義
音響制作：マジックカプセル
音楽：牛尾憲輔
オープニングテーマ：ヨルシカ「斜陽」
エンディングテーマ：こはならむ「数センチメンタル」
制作：シンエイ動画

■Blu-ray情報


【Blu-ray】
原作・桜井のりお描き下ろしページを含むスペシャルブックレットなど豪華特典満載!!

◆詳細：
https://bokuyaba-anime.com/blu-ray/

◆ご予約：
https://avex.lnk.to/BokuYaba_buylinkID

・発売日
第1巻：2023年6月30日(金)
第2巻：2023年7月28日(金)
第3巻：2023年8月25日(金)

・収録・特典内容
初回仕様：スリーブ＆デジパック仕様
映像特典：ノンテロップオープニング・ノンテロップエンディング　※Blu-ray第1巻のみ収録
音声特典：オーディオコメンタリー（市川京太郎役：堀江 瞬、山田杏奈役：羊宮妃那）