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ドミノ倒しのような目まぐるしいドタバタ展開が魅力のパニックコメディ「ドミノin上海」(ゲーマーのためのブックガイド:第15回)
「ゲーマーのためのブックガイド」は,ゲーマーが興味を持ちそうな内容の本や,ゲームのモチーフとなっているものの理解につながるような書籍を,ジャンルを問わず幅広く紹介する隔週連載だ。気軽に本を手に取ってもらえるような紹介記事から,とことん深く濃厚に掘り下げるものまで,さまざまなテーマでお届けする。
第15回で紹介するのは,先月(2023年2月)文庫版が刊行された,恩田 陸さんの長編「ドミノin上海」。その書名にもあるとおり,複数の人物の異なる物語がまるでドミノ倒しのように連鎖する,スピーディな展開が魅力のパニックコメディ小説だ。
ドミノin上海
とある高校の伝統行事をとおし,多感な時期の高校生の心境を丁寧に描いた青春小説「夜のピクニック」に,国際ピアノコンクールに臨む若者たちの姿を描いた青春群像小説「蜜蜂と遠雷」。関係者の証言をつなぎ,未解決のまま数十年が経った大量毒殺事件の真相に迫るミステリー作品「ユージニア」。不思議な力を持つ一族の物語を幻想的に描く「常世物語」シリーズなど,ミステリーにホラー,SF,ファンタジー,そして青春モノと,さまざまなジャンルの小説で読者を魅了する恩田 陸さん。そんな幅広い作風で知られる恩田さんの作品の中でも異彩を放つエンターテイメント小説があった。
今回紹介する「ドミノin上海」は,その舞台を前作「ドミノ」からおよそ5年後の上海へ移し,200ページ近く上回る大ボリュームで新たな大騒動を描く一冊だ。主要人物(キャラクター)は,前作から引き続き登場する人物を含めた25人と3匹。続編でも各々の出来事がドミノ倒しのように連鎖して物語が展開していくのだが,そのドタバタ感は圧倒的だ。物語の軸には,上海に持ち込まれた幻の至宝「蝙蝠」を巡る話があるのだが,主要人物それぞれの物語はバラバラで,どう絡むのか想像できないカオスっぷりでワクワクさせてくれる。
注目のポイントは,登場人物たちの“キャラ立ち”だ。物語の中心地となるレストランの料理長に,デリバリー寿司の業者,風水師に美術家,ゲームアプリ会社の上海支部長といった,立場や“そこにいる理由”がまったく異なる個性的な面々が登場するが,それは人間だけではない。動物園からの脱出を企てるアウトローなパンダ,動物園の捜索犬として活躍するミニチュアダックスフント,そして“幽霊になったイグアナ”という不可思議な3匹の動物たちが,まったく展開が読めない物語作りに貢献してくれている。
まるでバラバラだった話がつながっていく感覚は,「街 〜運命の交差点〜」「428 〜封鎖された渋谷で〜」といったサウンドノベルシリーズや,近年話題となったドラマチックADV「十三機兵防衛圏」といった群像劇をたしなむゲーム好きに刺さるところがあるだろう。
なお,前作を読んでいなくても十分楽しめる。未読の人も「ドミノin上海」を手に取ってみて,気に入ったらかつての東京駅周辺での大騒動を“体験”してみてほしい。
「ドミノin上海」
著者:恩田 陸
版元:KADOKAWA
発行:2023年2月24日
価格:960円(税別)
ISBN:9784041133200
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KADOKAWA公式サイト「ドミノin上海」(文庫版)書籍情報ページ
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