業界動向
中国ゲーム産業,前年比−10%以上のマイナス成長。低迷に終わった2022年を振り返る
市場全体の売り上げは2658.84億元(約5.19兆円)※で,YoY−10.33%と大きく下落。また,中国ゲームユーザーの規模や国内外の売り上げ,そして(PCゲームを除く)各プラットフォームも程度の差こそあれマイナス成長を記録した。中国国内でのCOVID-19による経済停滞,グローバル全体でのIT業界不調のダブルの打撃を受けた,2022年の中国ゲーム産業を総括してみよう。
※以下はすべて,2023年2月15日のレート,1ドル=133.43円,1元=19.50円で計算している
「2022年中国游戏产业年度报告」(中国語)
2022年中国ゲーム市場の売り上げは,2658.84億元(約5.19兆円)でYoY−10.33%。2014年から始まった産業報告統計以来,初となるマイナス成長。
中国のゲームユーザー規模は約6.64億人で,YoY−0.33%。2021年ですでに成長カーブがゆるくなったが,これも過去8年で初めてのマイナス成長となった。中国でも少子高齢化が進んでいるので,ここからは既存ユーザーの奪い合いになることが予想できる。
すでにユーザー規模は飽和状態になったことから,ゲームにおいていかに国内ユーザーの客単価(ARPU)を上げるか,そして海外市場を開拓するのかが,これからの課題になる。
プラットフォーム別ではモバイルが大幅低減するも,PCだけがプラス成長
市場別 | 売り上げ | 成長率 | 市場全体占有率 |
---|---|---|---|
スマホゲーム | 1930.58億元(約3.77兆円) | YoY−14.4% | 72.61% |
PCゲーム | 613.73億元(約1.20兆円) | YoY+4.38% | 23.08% |
Webゲーム | 52.8億元(約1029.6億円) | YoY−12.44% | 1.99% |
コンソールゲーム | 23.53億元(約458.8億円) | YoY−8.8% | 1%未満(※) |
※AR/VR,アナログ,アーケードゲームなどを含む「その他」の2.32%に含まれている
プラットフォーム別の内訳を見ると,全体で7割以上の売り上げとなっているモバイルゲームの売り上げは,1930.58億元(約3.77兆円)のYoY−14.4%と,大幅に低減。モバイルユーザー規模も,6.54億人のYoY−0.23%とマイナス成長していることもあり,7割依存しているモバイル市場の縮小は,そのまま全体市場の縮小となって反映されている。
そんな全体的に低迷しているゲーム産業の中,PCゲームだけが唯一プラス成長をしていることが目立つ。そして2020年からは初めてコンソールが単独市場として統計され始め,2021年はYoY+22.34%の大きい成長を見せた。しかし市場規模自体はなかなか大きくならず,連続7年でマイナス成長しているウェブゲーム市場の半分よりも少なく,全体の1%未満程度の市場シェアしかないことが分かる。
なお中国産ゲームの中国国内市場での売り上げは,2223.77億元(約4.34兆円)のYoY−13.07%。海外市場においての売り上げは,173.46億ドル(約2.32兆円)のYoY−3.7%。中国産ゲームにおける海外進出の主要市場は,依然変わらずにアメリカ,日本,韓国の順番。それぞれ,全体海外収入の32.31%,17.12%,6.97%を占めている。
中国産ゲームが海外各地域における収益分布 | ||
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アメリカ | 32.31% | |
日本 | 17.12% | |
韓国 | 6.97% | |
ドイツ | 4.34% | |
イギリス | 2.69% | |
フランス | 2.15% | |
タイ | 1.34% | |
サウジアラビア | 1.16% | |
インドネシア | 0.90% | |
ブラジル | 0.88% | |
その他 | 30.16% |
2022年の版号を振り返る
2022年には合計512タイトルが版号を取得し,中国国内の販売許諾を受けた。
512タイトルというと十分な数に見えるが,版号審査を再開した中国ゲーム産業の全盛期ともいえる2019年の“1570タイトル”と比べると1/3未満の数だ。中国国内の市場でゲームをリリース/発売するときに必要となるこの版号だが,海外産タイトルへの承認は2022年12月の一回のみで,44の海外ゲームが版号を取得したに過ぎない。年間全体の,わずか1割未満だ。中国産ゲームが怒濤のごとく海外進出を進めている一方で,海外産ゲームが中国国内の市場を開拓するのは,いまだ難しいと言えよう。
プラットフォーム別の発行状況を見ると,スマホゲームは全体の9割に近い473タイトルで,PCゲームが45タイトル,コンソールが9タイトル,ブラウザゲームは2タイトル。中国での市場規模と比例する形で,コンソールの9タイトルにXboxタイトルはなく,PS4/5が3タイトル,Switchが6タイトルとなっている。
2022年版号取得状況(プラットフォーム別) | ||
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スマホゲーム | 473タイトル | 89.41% |
PCゲーム | 45タイトル | 8.51% |
ブラウザゲーム | 2タイトル | 0.38% |
PS4/5 | 3タイトル | 0.57% |
Nintendo Switch | 6タイトル | 1.13% |
※うち17タイトルはマルチプラットフォームでリリース |
こうした政策的な要素に翻弄され,「三國志 真戦」(iOS / Android)や「ザ・アンツ:アンダーグラウンド キングダム」(iOS / Android),「ポケモンユナイト」(Switch / iOS / Android)のように,グローバルリリースから1年以上も経ってからようやく中国での版号を得られたタイトルもあるし,「METAL SLUG: AWAKENING」や「エースレーサー」など,とっくに開発が終わっていても,ずるずると版号を待って時間が過ぎてからリリースされるケースもある。
厳しい版号制度によって,よりハイクオリティのタイトルに満ちたゲーム市場を目指すと言った中国当局だったが,実際のところは怒濤の発展を遂げた中国ゲーム産業にブレーキを掛けたことが否めない。
また同会では,コロナの影響で2022年開催されずにいた中国最大のゲームショウとなるChinaJoyが,2023年7月28日〜31日に上海で開催されることも発表された。これからの中国ゲームがどこへ向かって行くのか注視しておきたい。
「2022年中国游戏产业年度报告」(中国語)
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