Metaが見据えるメタバースの将来像とは。Facebook Japan 代表取締役 味澤将宏氏による「メタバースの構築に向けて」聴講レポート

　2022年10月18日から21日まで，千葉・幕張メッセにて「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」が開催されている。メタバース関連のプロダクトやサービスの展示，有識者によるカンファレンスを実施するイベントだ。
　本稿では，初日に行われたMetaの日本法人，Facebook Japanの代表取締役である味澤将宏氏による講演「メタバースの構築に向けて」をレポートする。

Facebook Japan 代表取締役 味澤将宏氏

　ご存知の通り，Meta（旧Facebook）は2021年10月，新たなビジョンとしてメタバースの実現を掲げ，社名とコーポレートブランドを変更した（日本法人は変更なし）。Metaの考えるメタバースとは，同社のミッションである「コミュニティづくりを応援し，人と人がより身近になる世界を実現する」をベースに，「ソーシャルテクノロジーの次なる進化」と位置づけられている。
　物理的な距離が離れていても，人と人がつながり合い，コミュニティに参加できるようになる。それが同社の見据えるメタバースというわけだ。


　味澤氏によると，Metaの考えるメタバースには3つの特徴がある。
　1つめは，3D空間がもたらす「Immersiveness」（没入感）。2つめは，物理的な距離が離れていても，その場にいるかのような感覚を得られる「Presence」（臨場感）。そして，3つめは「Interoperability」（相互運用性）である。
　メタバースではアバターが複数のアプリケーション間を移動可能，かつデジタルグッズも持っていけるようなものになると説明された。さらに，味澤氏はリアルとバーチャルの空間を行き来できる，相互運用性のある世界がメタバースによって実現できると期待を語った。


　メタバースにおける新しいソーシャル体験も紹介された。現在，ゲームやエンターテイメント，フィットネスがソーシャル体験として実現されているが，味澤氏は今後について，仕事や教育，医療福祉といった生活に密着した要望が増えてくると予想する。また，メタバース上の商取引も飛躍的に増加していくのではないかと見解を示した。


　実際，メタバースが2031年までにアジア太平洋地域にもたらす経済効果は1兆ドル，2035年までに日本にもたらす経済効果は12兆〜24兆円との試算があるという。味澤氏は，メタバースによって大きな経済圏が登場する可能性が非常に高いと述べている。


　メタバース構築におけるMetaの役割は，その実現に必要なハードウェアとソフトウェア，基幹テクノロジーの開発とサポートと位置づけられている。


　ハードウェアに関しては，Meta Quest 2がVR市場を牽引しているが，日本でも好調に売上を伸ばしているとのこと。Quest Storeのゲームの売上は，グローバルにおいて15億ドルを超えている。
　味澤氏によると，売上が非常に高くアクティブユーザーが多いこと，日本発のコンテンツが数多くリリースされていることから，日本はビジネス面の重要な国の1つとされている。


　先日発表されたMeta Quest Proにも触れられた。同製品はQuest 2の後継ではなく，Metaのハイエンドラインの第1弾である。フルカラーの複合現実（MR）を可能にすること，パンケーキレンズの採用による高解像度化およびスマートなデザインの実現，そして自然な表情の反映やアイトラッキングを可能にするセンサーの搭載などが特徴となっている。


　メタバースを実現するソフトウェアとしては，VR空間にプライベートエリアを構築できる「Meta Horizone Home」，VR空間の中でミーティングなどを行える「Meta Horizon Workrooms」がリリースされた。さらに海外の一部地域では「Meta Horizon Worlds」を展開しており，順次，提供エリアを広げていくとのこと。

「Meta Horizon Workrooms」はアップデートにより，生産性が向上したとのこと

MicrosoftやZoom，Accentureとパートナーシップを結び，さまざまな形で連携している

　味澤氏は，責任あるメタバースを構築するための4つの原則を提示した。
　1つめの「経済的機会」は，メタバースにおいてもオープンかつ競争のあるデジタル経済を作っていくこと。2つめの「プライバシー」は，利用者のデータがどのように使われているかについて，透明性を持ってアクセス可能にし，またデータをどう使うかをコントロールしていくことを指す。
　3つめの「安全性と公正性」は，利用者が安心安全に使える状況を維持すること。最後の「公平性と包括性」は，Metaの基幹テクノロジーを誰でもアクセスできるオープンな形で提供することだと述べた。


　上記のとおり，Metaは日本をメタバース構築における重要なマーケットと捉え，日本で実施している2つの施策が紹介された。
　次世代XRクリエイター向け教育プログラム「Immersive Learning Academy」は，角川ドワンゴ学園と連携した取り組みである。


　もう1つは，今回開催された「METAVERSE EXPO JAPAN」だ。Metaでは“共創”というキーワードのもと，1社ではなくさまざまな企業や団体，官公庁，有識者などと共に，健全かつオープンなメタバースを構築するべく，今後もこうした場を設けていくという。
　味澤氏は「皆さんとメタバースの未来について，ディスカッションをしていきたい」と聴講者に呼びかけて，講演を締めくくった。

METAVERSE EXPO JAPAN 公式サイト