インタビュー
「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」Ryu☆×TaQ対談。BEMANI×オーケストラ×DJで贈る,新感覚の音楽イベントにかける思いを語る
4Gamerでは,同コンサートに出演するサウンドクリエイター/DJのRyu☆氏と,音楽監督/作曲家/プロデューサーで,コンサートで演奏を担当する「gaQdan」の創設者であるTaQ氏に話を聞く機会を得て,2人に「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」にかける思いを語ってもらった。
EDP公式サイトの「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」特設ページ
オーケストラ未経験でも身構えずに楽しめる,BEMANIアーティストたちによる新感覚のコンサート
4Gamer:
「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」の開催が近いなか,貴重なお時間をいただきありがとうございます。
TaQ氏:
よろしくお願いします! 2人でこうして顔を合わして話すのって,実は20年振りぐらいなんだよね(笑)。
Ryu☆氏:
はい。本当に久しぶりで。TaQさんはgaQdan,僕はEDP(EXITTUNES Dance Production)やbeatnationと,お互いゲームに関わる音楽活動をしていますが,それぞれまったく別の道を進んできましたから。
TaQ氏:
気が付けばそれだけの年月が経っていた。BEMANI SYMPHONY Concertがなければ,一切の接点がないままだったかもしれないよね。
久しぶりに会ってから,Ryu☆君がずっと敬語で話しかけてくる。昔はもっと親しい感じで話してたよね? まずは“ですます”をやめてもらうところから始めよう(笑)。
Ryu☆氏:
いえ,そこは(笑)。僕がこうしてEDPの立ち上げやさまざまなゲーム音楽イベントを展開してきたのは,TaQさんのクラブイベント「bounce」を引き継ぐじゃないですけど,感銘を受けたことが何より大きいですから。
TaQ氏:
「bounce」に出演してもらったころが懐かしいなあ。1回目……“ゼロ回目”っていった方がいいのかな。本当に初期のころから出てくれていたんだよね。
大阪や福岡をツアーで回ったけど,あのころは毎回ドタバタで。エアコンが付いていないオンボロ車に楽器や機材を積んで,1000キロ走って……。
Ryu☆氏:
ドングルを忘れたこともありましたね。
TaQ氏:
そうそう! 「ソフトウェアが立ち上がらない!」って青ざめて。あの時は本当に好きなことをただやっていただけで,Ryu☆君がやっている今のEDPの規模とは全然違うけどね(笑)。
Ryu☆氏:
いえいえ。「bounce」って,当時はまだああいった形のゲーム音楽のイベントはなくて,間違いなく音楽ゲームイベントの草分けで。つまり「bounce」はゼロをイチにしたイベントであって,僕がやってきたことはそのイチをもっと大きくしてきたという感覚なんです。
4Gamer:
20年ぶりにBEMANIで再集結したお二人ですが,それはやはりオリジナルサウンドトラックがきっかけですか?
Ryu☆氏:
TaQ氏:
声を掛けてくれて本当に嬉しかった。「今はEDPみたいなダンスミュージックはやっていないけど大丈夫?」って思ったけど(笑)。
Ryu☆氏:
(笑)。gaQdan自体でも,以前からBEMANIの楽曲を演奏されていたんですよね。
TaQ氏:
うん。もともとgaQdanは練習好きが多いというか,収録がなくても毎週集まって練習してるんだけど,そこで「練習曲にすごくいい」と言って,BEMANI楽曲をオケ用にアレンジして使っていたんだよね。
曲の長さは2分弱だから繰り返しの練習にちょうどいいし,演奏して気になったところをすぐに確認できる。ゲーム用に制作された曲だから音数が多いし,意図的に一息つくための間とかも取られてるから,とにかく練習に最適だった。もちろん,自分で作った曲は使わないんだけど(笑)。
Ryu☆氏:
そこは“もちろん”なんですか(笑)。
TaQ氏:
いや,ほら,モールス信号みたいな曲をやっても練習にならないかなって(笑)。
それで,練習用にアレンジしていくうち,それがけっこうなレパートリーになっていたんだよね。あくまで練習用で,最初は外で披露するつもりはなかったんだけど,自分のルーツでもあるし,アレンジはよくできているしで「いつかこれを本当に演奏できたらな」っていう気持ちはあった。
そんなときに「BEMANI SYMPHONY」でRyu☆君に“発掘”してもらえて,しかもコンサートもできるとなったときは本当に嬉しかったよ。
4Gamer:
コンサートはいつごろ決まったんですか?
Ryu☆氏:
「BEMANI SYMPHONY」のプロジェクトには,「世の中に大きなインパクトを与えたい」というテーマがあって。アルバム制作って,それだけでも消費カロリーがとても高いものですが,よりインパクトのあるプロジェクトにするために,コンサートは欠かせないと。なにより「アルバムを作るならコンサートは絶対やりたい!」という思いが強かったというのが前提にありますけどね。
TaQ氏:
アルバム制作の時点で決まっていたんだ。それを知っていたら,もっと生で演奏しやすいようなアレンジにしたのに(笑)。
Ryu☆氏:
(笑)。こうおっしゃっていますけど,TaQさんたちのアレンジやgaQdanの演奏は本当にすごくて。
もともとの音数が多い音楽ゲームの楽曲って,こういったアレンジをする場合は音数を引いて演奏できるように調整するものですが,TaQさんは「美味しいところが減るだろう」と言って,もともとの楽曲に詰め込まれた音の数を再現しようとしてくれたんです。
TaQ氏:
だって,挑戦状みたいなものじゃない。BEMANIって,いわば“奏者になるゲーム”で,あれだけ速くて手数のある高難度の楽曲を,プレイヤーはものすごい練習を積んでクリアしているわけだよね。それを考えると,曲を作った側が変にがっつりとBPMを落としたり,音数を減らしたりってできないなって。
ゲーム用のデバイスを使って5つや7つのボタンでプレイするものを,オーケストラという300年以上前からある“ユーザーインタフェース”で操作するって考えるとだいぶ話は違うんだけど(笑)。それが完璧にできる……と約束はできないけど,チャレンジしないわけにはいかないかなと。
Ryu☆氏:
エレクトロ系とオーケストラの両方に精通しているぶん,BEMANI楽曲をオーケストラにしたときの“うまみ”の出し方が絶妙で。それを演奏するgaQdanの力もあって,最初から「これはコンサートですごいことになる」って感じました。
アルバムの時点でも好評をいただいていますが,「生ライブはもっとすごいことになるから,会場に来てください!」と,皆さんに伝えたいです。
TaQ氏:
聞いてみたいことがあったんだけど,Ryu☆君はもともとオーケストラに興味はあったの?
Ryu☆氏:
トラッカーとしてもDJとしても,オーケストラには強い憧れがありました。
何百年も愛され続けている楽曲と演奏形態で,今も多くの人の心を震わせている,すさまじいものの集合体というか“究極の音楽形態”だなと。
それを,自分がこれまで関わってきた音楽で,25年近くの歴史と6000以上のライブラリがあるBEMANIシリーズと融合させて新しい感動を生み出したい。「BEMANI SYMPHONY」にはそういった思いがこもっています。
4Gamer:
そんな思いが込められたコンサートで,注目してほしいところはどこでしょう。
Ryu☆氏:
大きなコンセプトとしてあるのは,BEMANI×オーケストラ×DJの融合ですね。あまり見たことがない編成になると思いますし,DJも完全同期で演奏するので音の出し方もかなり変わったものになると思います。
TaQ氏:
あと,会場の規模的に100基ぐらいかな。たくさん積んだスピーカー一つ一つで,ものすごい音圧でサウンドを響かせるところも特徴だよね。
それで言うと,「普通のオーケストラをイメージするとちょっと違いますよ」とは伝えておかないといけないかな。オーケストラなので音の広がりはもちろん大事だけど,やはりBEMANI楽曲というところもあってガツンとパンチのある音にはこだわりたい。
Ryu☆氏:
オーケストラという言葉で参加を躊躇する人もいるかもしれませんが,そのあたりはBEMANIらしさがあるというか,身構えずに楽しめるかなと。
会場も,ドレスコードはなく,席は全指定で着席して楽しめるといった形で,間口は広くなっています。ペンライトもOKなので,ぜひ自分の席でペンライトを振って盛り上がってほしいです。
TaQ氏:
着席でっていうのはチャレンジな部分だね。指定席で来やすいというのはあるけど,これまではスタンディングのイベントだったから。
演奏する方にとってもチャレンジ。ライブ感が強いスタンディングのイベントなら,ミスもノリとか「イエーイ!」みたいなのでごまかせるけど,座ってじっくり見られるとそうはいかないから(笑)。
Ryu☆氏:
(笑)。
TaQ氏:
これはゲーム用の楽曲を制作をしていたころから感じていたんだけど,BEMANIのファンは楽曲一つ一つの気持ちの入り方みたいなものに敏感で,ちょっとでも気持ちが乗り切れていない部分があると,それにすぐ気が付くんだよね。テクニックじゃなく気持ちの勝負。“1対全員”みたいなところは昔からあって,コンサートでもそこは大事だなと。
Ryu☆氏:
ちょうどこのインタビューが載る時期に発表されると思いますが,オンライン配信もあるので,当日足を運べないという人はこちらで観てほしいですね。現地のものをそのままとはいきませんが,ライブならではの臨場感を少しでもお届けできるよう考えています。
4Gamer:
配信と言えば,1月にオンライン配信限定のコンサートがありましたね。
TaQ氏:
プレコンサートじゃないけど,実際あれでファンにどんなコンサートになるかを見せられたし,こちらも「こういう形で自分たちのコンサートができる」っていう実感が得られたよね。ただ,6月のコンサートは,もっとすごいことになるという確信がある。
Ryu☆氏:
「こういう形でできるかな」というものの一つを実現化できた今は,楽曲のアレンジや見せ方はけっこう変わりますし,もっと驚くような形になるかなと。
TaQ氏:
数段階デカいものになるという手ごたえは感じている。
Ryu☆氏:
そうですね。本当にすごい出来になるので,現地参加できるという人は,全身でそれを受け止めに来てほしいです。「BEMANIへの愛が詰まっているから」と。
TaQ氏:
そう。それには自信がある。
Ryu☆氏:
すさまじいボールを投げるので,受け止めに来てほしいです。
TaQ氏:
本当に,現地で参加できる人はぜひ足を運んでほしい。どれだけすさまじいボールでも,その場で受け止める人がいないとただ投げっぱなしになっちゃうから(笑)。
あと,これはすごく大事なことなんだけど,現地参加する人には,遠慮なく拍手を送ってほしい! ステージで拍手をもらったときの安堵感や,それで得られるモチベーションってすごいんですよ。それはその日のパフォーマンスだけではなく,次の過程に進むうえでも重要で。
Ryu☆氏:
拍手は本当に力をもらえます。
TaQ氏:
もちろんSNSなどで届く文字の感想も力になるんだけど,拍手からもらえる「次もやったるぞ!」って気持ちは本当に大きい。ここ最近,ご時世的なこともあってそういう場所がなかったから,遠慮なく拍手で自分の気持ちを届けてくれると嬉しいなと!
Ryu☆氏:
あとは,先ほどちょっと触れましたけど,ペンライトもですね。「この曲はあの色だよね」というのは分かっていると思うので!
TaQ氏:
最終的には難しい話じゃなくて,「俺達,これが好きなんだけど,これヤバいよね。これドキドキするよね」っていうものを表現するから,その瞬間を一緒に楽しんでほしいんだよね。
そういう時間を過ごした人と「あのとき,同じ場所にいたよ。同じようにこう感じたよ」って話し合えることが好きで,それが大切ものにもなっていて。そんな場所と時間を作ることができるのであれば,準備に何か月もかかろうと,後片付けが大変だろうと苦労にならないというか。それは「bounce」をやっていたころから変わらない。
Ryu☆氏:
何度も「すごい」「すごい」と言ってますが,それだけ「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」でやろうとしていることに手ごたえを感じています。皆さんに感動をしてもらえるものであるのはもちろん,ゲーム音楽のライブの転換点にもなり得ると思っていて。
TaQ氏:
これが一つのフォーマットになって,世界中に広がっていったら面白いよね。それこそBEMANI35周年のときに,「あれから10年で,ああいう形のライブが増えたよね」とか話ができたら楽しい。
Ryu☆氏:
いいですね。近年,ARやVR,MR,メタバースと,バーチャルでの世界の広がりが進んでいますが,そういう時代における新しい形の生ライブとその価値を感じ取ってもらえるようなコンサートにしたいです。
TaQ氏:
楽曲も,すでに演奏する側が「これを演奏するのか!」ってドキドキするくらいのアレンジが上がってきてるので,期待していてほしいね。これ生演奏で聴いたら,膝から崩れ落ちるよって伝えておきたい。……崩れ落ちなかったらごめんなさい。
Ryu☆氏:
(笑)。
TaQ氏:
そもそも時代的に,これだけ大勢の人が集まって演奏する,複雑で手の込んだコンサートをすること自体が珍しいものではあるんだよね。
一人で作って一人で鳴らして,一人で混ぜてができる時代なのに,これだけの人数がいないと成立しない演奏形態って。つまらない言い方だけど,それっていろいろな意味で非効率的なものだったりする。
でも,そんな大勢の奏者たちの“一瞬に懸ける感覚”って特別なもので,それを感じられる場所って本当に貴重で。効率じゃ生まれない感動があるから,ぜひ現地で体感してほしいなと。
Ryu☆氏:
生ライブに足を運んだことがなくて,どういう場所かわからなくて参加を躊躇している人もいるかもしれませんが,本当に難しいことはないんです。自分の席に座って好きな曲でペンライトを振って,盛り上がったら拍手をして楽しんでください。
TaQ氏:
とにかく音楽を聴いて楽しもうと! 不安に思う前にこっちに引き込んじゃうから(笑)。
BEMANI SYMPHONY Concert 2022
開催日:2022年6月12日(日)
時間:
<昼公演>開場13:30 開演14:30
<夜公演>開場17:30 開演18:30
会場:LINE CUBE SHIBUYA
出演:
beatnation (dj TAKA,DJ YOSHITAKA,Sota Fujimori,L.E.D.,kors k,猫叉Master,Ryu☆),wac,PON,劇団レコード,DJ TOTTO,TOMOSUKE,Mayumi Morinaga,霜月はるか,常盤ゆう,NU-KO,Osamu Kubota
SPECIAL GUEST:ござ,事務員G,Keiko,TaQ
演奏:gaQdan
EDP公式サイトの「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」特設ページ
「BEMANI SYMPHONY Concert 2022」一般チケット販売ページ(ローソンチケット)
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