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[CEDEC 2020]「ノンゲーム分野におけるUnreal Engineの活用について」聴講レポート。ゲーム以外で活用されるゲームエンジンの事例を紹介
このセッションでは,Epic Games Japan Business Development Managerの杉山 明氏により,ゲーム開発以外のさまざまな分野で採用されているUnreal Engineの活用事例や最新機能について紹介された。
Unreal Engineは今やゲーム開発に使われるだけでなく,建築や自動車の設計,映画・テレビ番組の制作,トレーニングなど,さまざまな分野で活用されている。
建築分野では,リアルタイムに高品質なビジュアルを表現できるツールとしてUnreal Engineが採用されており,試行錯誤を速やかに行ったり,早い段階で問題を発見したり,プロジェクト関係者間のイメージ共有に役立てたりといった使い方がされているという。
その実例として,タワーマンションや病院,空港など多岐にわたるプロジェクトに従事するアメリカの建築設計事務所・HOKが,Unreal Engineを使ってRhino,SketchUp,Revitといった設計のためのソフト間のCADデータを相互にやり取りしていることが紹介された。
Unreal Engineは,バーチャル空間を使ったコラボレーションにも活用されている。その1つが,建築物設計の検討をバーチャル空間で行うツールだ。このツールは,PCを使うユーザーとVRのHMDを使うユーザーが混在可能で,プレゼンテーションボードやタスクリストなどの機能も備えているという。杉山氏は「Unreal Engineを使えば,異なる拠点から複数のユーザーが参加可能なコラボレーションツールを構築できる」と説明した。
続いて,建築ビジュアライゼーションスタジオのBuildmediaが,Unreal Engineを使って開発したバーチャルモデルルームが紹介された。このモデルルームはタッチスクリーンとVRに対応しており,各部屋からの眺望や日光の当たり方をシミュレーションできる。また同スタジオでは,カタログやWebサイト向けの画像,動画をUnreal Engineのリアルタイムレイトレーシング機能を使って提供しているとのことだ。
ドイツの自動車大手であるダイムラーの子会社・Daimler Proticsでは,Unreal Engineを使って開発したエンジニア向けコラボレーションツール「Engineering Hub」が採用されているという。このツールは,CADデータを直接インポートできることに加え,ほかの国にいるスタッフとの意見のやり取りや,その場でのデータの変更,計測などを可能にした。また空間を視覚的に把握できるといったメリットもある。
アウディは,Unreal Engineを使ったデジタルショールームを採用している。Unreal Engineは,製造用の巨大なCADデータをショールーム用に自動変換するシステムに使われているとのことで,それまで数日かかっていた作業が17分に短縮され,効率の良いコンテンツ制作が可能になったそうだ。またビジュアルクオリティの向上により,顧客は自分の選んだ外観や内装などを,より具体的にイメージできるようになった。
Unreal Engineは2016年以来,120タイトル以上の映像コンテンツの制作に採用されている。人気テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」もその1つで,映像を手がけたThe Third Floorはカメラワークのプランニングやキャラクターの動きの検証,バーチャルセットの作成などにUnreal Engineを活用したという。
また「スター・ウォーズ」の実写ドラマシリーズ「マンダロリアン」の制作では,Unreal Engineでリアルタイムにレンダリングした映像をLEDウォールに表示し,実写撮影をしているとのこと。この手法により,リアルタイムのライティングが可能になるとともに,屋外,屋内,乗り物内などさまざまな場所での実写撮影ができるようになった。
Unreal Engineは外科手術,航空機の操縦,工事現場での特殊作業などのトレーニングやシミュレーションのツールとしても活用されている。セッションでは,コンクリートカッターの正しい操作手順や,シリカ粉塵が人体に及ぼす影響などをVRで学べるコンテンツが紹介された。
CEDEC 2020公式サイト
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