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[TGS 2019]eスポーツの当事者達がそれぞれの立場から現状と未来を語った「MCJ TALK SHOW『eスポーツとビジネス。期待と課題。』」をレポート
モデレーターを務めたのは,黒川メディアコンテンツ研究所 黒川塾 主宰の黒川文雄氏。登壇したのは,DMM GAMES PJS エグゼクティブプロデューサー 斎藤隆行氏,CyberZ RAGE総合プロデューサー 大友真吾氏,ディスクエンターテイメントシステム eスポーツ部門 統括責任者 橋本尚吾氏,KDDI コミュニケーション本部 宣伝部 部長 馬場剛史氏,大塚食品 飲料事業部 副部長 小林一志氏の5名だ。
「東京ゲームショウ2019」公式サイト
タイトルどおり誰もが一様に「期待」を抱いてはいるものの,課題もまだ多いというeスポーツの現実が,それぞれの立場から,ときに赤裸々に語られたこのパネルディスカッションの模様をレポートしていこう。
「PUBG JAPAN SERIES」や「RAGE」などeスポーツイベントを主催する立場である斎藤氏と大友氏は,近年,オフライン,オンラインを問わず大型のイベントが成立しうる環境になってきたと語る。一方,インターネットネットカフェ「DiCE」を運営する橋本氏も,店舗を中心としたコミュニティの形成を目指しており,東京だけでなく仙台や札幌などでの成功例を紹介していた。
馬場氏や小林氏は,どちらかというとeスポーツ業界の外側にいる形だが,自社のサービスや製品がeスポーツファンに支持されるような未来を目指しており,そのためにも,eスポーツのすそ野を広げる環境作りを手伝いたいという姿勢のようだ。
斎藤氏と大友氏は「メディア露出が増えた実感はある」とコメントしたが,とはいえ,このまま一過性のブームで終わりかねないという危機感は共通している様子で,これから根付かせていくことが大事であり,そのためにはeスポーツ事業を継続していくことが肝要だと語っていた。
しかし黒川氏から,eスポーツに特化したホテルが大阪にできたことについての感想を求められると,「先を越された」と正直に語りつつ,将来的にはそういった業態への進出も考えたいとコメントした。
そこから話題は,eスポーツのマネタイズに移る。斎藤氏は,「将来的にはマネタイズしたいが,今はeスポーツを発展させることに注力」している投資段階だと語りつつ,「eスポーツに関連する会社で黒字が出ているところは,ほぼないだろう」と,厳しい現実を語った。ゆくゆくは,一般的なプロスポーツと同様,興行として成立させたいと考えているが,そのためには競技者の育成や,競技者の収入増はもちろん,ファンを増やしていく必要があると考えているという。
橋本氏もまた,店舗でイベントを開催するだけでは,(いくらイベント自体が盛り上がったとしても)売り上げ的に厳しい部分はあると吐露する。日本は比較的,自宅でもeスポーツに適した環境を作りやすいが,友達と気軽にeスポーツカフェに遊びに行くような文化が根付いてほしいと語り,そのためには店舗発信でコミュニティを作っていくことも重要だという考えを示していた。
馬場剛史氏 |
小林一志氏 |
こうした話を受けて馬場氏は,「5G通信によって視聴体験も変わる。これまでできなかった体験が可能になるという部分から,eスポーツのすそ野を広げていきたい」と展望を語り,小林氏も,「2017年以降,日本のeスポーツ市場は大きくなったが,世界的に見ればまだ小さいので,文化的に根付くように盛り上げていきたい」と,今後もeスポーツ普及への協力を惜しまない姿勢を明らかにした。
現在,テレビや新聞などでeスポーツの盛り上がりが取り上げられる機会は数年前より明らかに多くなっており,さまざまな形で新規参入する企業も増えている。
しかし,それぞれのeスポーツ現場で,盛り上がりを誰よりも体感しているであろう斎藤氏や大友氏,橋本氏が,より良い形でeスポーツを根付かせるためには,まだこの先にさまざまな形の“投資”が必要だと考えている様子が今回のパネルディスカッションからうかがえた。
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