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押井 守氏が「バイオハザード」映画を作るならジル&ヘレナのバディもの? 「BH ヴェンデッタ」辻本監督×押井氏のトークショーをレポート
辻本氏は監督のオファーを受けてから早い段階で押井氏に相談しており,押井氏はギャラ交渉やスケジュール設計などでのアドバイスを送ったという。ただ,ギャラに関して辻本氏は言い値で了承したとのことで,押井氏は「買うときは相手の想定する半値から,売るときは相手の想定する倍値から進める」のがセオリーだとあらためてアドバイスを送っていた。
実は辻本氏も先太りになった脚について「ドラえもんみたい」と思っていたそうだが,ケルベロスのゾンビ的な質感の調整に注力していたことや,アクションシーンでの見栄えを考慮したモデリングスタッフが善意でそのような形にしていたことから,NGを出せずにそのまま進行したという。これに対して押井氏は,まず褒めてからアドバイスをするように軌道修正させるのがいいと語った。
ケルベロスのゾンビ的な質感の話から,話題はゴア表現に。押井氏はゴア表現が好きではなかったのだが,2015年にサスペンス映画「東京無国籍少女」で出血シーンを描き,それが映像的なリズムを作ることや色調のアクセントになったことから,「意外に好き」だと感じたそうだ。また,押井氏は最近「Fallout 4」(PC / PS4 / Xbox One)にハマっているため,ゴア表現が癖になってきたという。冗談か本気か,「次回作は血みどろで」との発言も飛び出した。
また,押井氏は「バイオハザード」映画シリーズの監督を狙っている模様だ。当人は積極的ではないとしてスタンスを「オファーが来たら絶対断らない」と語ったが,辻本氏に「それを大概の人は『狙ってる』って言うんですよ」とツッコまれていた。
押井氏が「バイオハザード」映画を制作する場合,断トツでお気に入りのジル・バレンタインを主人公にして,キャラクターは“対”で置くべきものなので「バイオハザード6」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360)のヘレナ・ハーパーをパートナーに配置し,劇中でジルが動くにあたっての動機として使うという。ジルのパートナーならクリスが適役ではないのか……と思わなくもないが,それで恋愛ドラマ的な雰囲気が生じるのは本意でないので,男女ペアは避けたいとのこと。
ジルとヘレナが追う敵も理想としては女性キャラクターだが,バランスを考えると置きたいのは動物や子供だという。とくに子供を出すと,映画「エイリアン2」におけるリプリーとニュートの関係のように,母性を軸にした物語の奥行きや落としどころを演出できるそうだ。
ちゃんと原作ゲームを下敷きにした映画の構想を語る押井氏は,辻本氏に「やたら詳しくて気持ち悪い」と言わせるほどだったが,ここまで「バイオハザード」シリーズに詳しくなったのは,「バイオハザード5」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360)や「バイオハザード6」が人体と銃器で表現している「モーションの快感原則」――押井氏が言うところの,キャラクターの動きで視聴者に快感を生じさせること――に新しい可能性を見出して,プレイ動画を大量に視聴したからだという。この原則はアニメーション作品にとって基本であるため,研究は非常に重要で,ゲームでは「バーチャファイター」以来の感銘を受けたそうだ。
バイオハザード ヴェンデッタに続く辻本氏のフィルムはもちろん観てみたいが,シナリオ展開や画面構成に独特の持ち味がある押井氏の「バイオハザード」作品も観てみたいところだ。押井氏とカプコンと言えば,「重鉄騎」の実写トレイラーを手掛けた前例もあるので,2度めのコラボレーションに期待したい。……ただ,さすがに「ゾンビ日記」風になったら困るが。
最後に押井氏は,「一人前の映画監督の仲間入りをした以上は敵なので,次から容赦なく叩こう」と,ブラックジョーク混じりながら辻本氏の成功を祝した。辻本氏は,「小学生のときにアニメの『うる星やつら』を観た世代なので,押井監督がトークの相手になってくれてこんなに幸せな日はない。こんな日がまた来るよう,今後も皆さんに喜んでいただけるような作品を作っていきたい」と語った。
「バイオハザード ヴェンデッタ」公式サイト
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