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ドイツのボードゲームイベント「SPIEL’16」で見かけた新作サッカーゲームをいくつか紹介
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印刷2016/11/08 18:07

イベント

ドイツのボードゲームイベント「SPIEL’16」で見かけた新作サッカーゲームをいくつか紹介

 サッカーというスポーツは,それ自身の魅力は当然のことながら,ボードゲームにしたときにも面白くなる可能性を秘めている。22人の選手達がピッチを常に動き回ることによって生まれるダイナミックな展開と高い戦術性は,ボードゲームとして大きなセールスポイントになる。
 また,サッカーの試合ではなく,選手個人やチームに焦点を当てた作品を作ることも可能だ。

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 言うまでもなく,サッカーは世界中の人々に親しまれており,オフサイドやペナルティキックなど,ルールについて細かく説明する必要が(それほど)ないというのもポイントだ。この点は,サッカー文化が生活に深く根付いているヨーロッパにおいてとくによく当てはまる。
 テーブルサッカーを筆頭に,数多くのサッカーゲームがこれまで作られてきたのもこうした理由による。ドイツ・エッセンで2016年10月上旬に開催されたボードゲームのイベント「SPIEL’16」でも,こうしたサッカーゲームが多数展示されていた。というわけで,簡単に紹介したい。


クラシックなサッカーゲームの流れをくむ「Super11」


「Super11」公式サイトhttp://www.super11.co.uk/

 イギリスのPremium Worldが制作した「Super11」は,マス目状に分割されたピッチに選手やボールの駒が置かれ,ゴールや観客席が用意されるという,サッカーのボードゲームとしては定番のアプローチになっている。

 このようにサッカーをストレートにボードゲーム化した場合,サッカーの持つダイナミズムをどう落とし込むか? という点が難しくなる。交互に選手の駒を動かしていくだけでは単調だし,チェスや将棋などと違い,とくに個性があるわけでもない11個の駒を動かすのはときに苦痛になるはずだ。といって駒の数を減らすと,サッカーの醍醐味である戦術性が損なわれてしまう。

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梱包方法にもこだわりが。制作者によれば,ゲームのあと,子供が楽しく片付けられるようにデザインされているとのこと
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 この点について「Super11」は,試合展開を流動的にするための工夫が随所に見られ,プレイしていて思わずのめりこんでしまう。まず,選手の移動距離が6面ダイスによって決まるため,各ターンの選手の動きにランダム性が出る。動かせる選手の数も自由なので,ダイスの目さえよければ「ボールを持った選手Aを1マス,もう1人の選手Bを3マス動かしたあと,選手Aが選手Bにパスする」といった,現実的なプレイが再現できるのだ。
 また,ダイスの目が1でも悲観する必要はない。「Super11」では,この目が出た場合,任意の選手を「S11」と書かれたグリッドに移動させられる。このため,通常のダイスの目では不可能な距離を移動させることも可能になるのだ。

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 また,ボールを持ったこちらの選手が相手エリアの「S11」に入った場合,「アタックカード」を引くことができ,これによってフリーキックやシュートなど,さまざまなイベントが発生する。こうしたルールによってゲームのランダム性を高め,同時にサッカーならではの展開をうまく再現している。

 このほか,得点の方法やディフェンダーによるボールカットなどもよく練られており,サッカーの試合を構成するエッセンスがほぼすべて詰め込まれている。
 対象年齢が“3歳以上”であるにもかかわらず,筆者のようにいい年をしたサッカーファンも唸らせる。誰でも楽しめる,良質のファミリーゲームといえるだろう。

点を入れるのは結構難しいので,こうしてシュートが決まったときには,思わずガッツポーズが出た
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「Super11」の制作者,Simon Turnbull氏
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使うのはダイスのみというシンプルさが特徴の
「GooaAAAal!」


「GooaAAAal!」公式サイトhttp://www.gooaaaaal.com/

制作者のLaurent Vergneau氏
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 フランスのLaurent Vergneau氏が制作した「GooaAAAal!」は,プレイヤーが9個の6面ダイスを振り,その判定によって勝敗が決まるというシンプルなサッカーゲームで,そのユニークさから多くの来場者の目を引いていた。ダイスが9個もあるので,かなり多様なアウトプットが可能だが,いったいどうやってサッカーの試合を表現するのか? 疑問に思う人も多いのではないだろうか。

 まず,得点が入ったかどうかは,9個のダイスを振って出たボールの数と相手のキーパーグローブの数との差し引きで決まる。こうしたダイスロールを前半後半,それぞれ3回ずつ,計6回繰り返して得点が多かったほうが勝ちだ。

 こう書くと,ありえないくらい得点が入る試合になるのではないかと心配になるが,思ったよりも現実の試合に近い熱い展開が楽しめるというのが,実際にプレイしてみての感想だ。理由は,ボールとキーパーグローブ以外のダイスの面がさまざまな効果を持っており,全体のゲームバランスがうまく調整されているためだろう。

(左)ボールの数とキーパグローブの数で得点が入るかどうかが決まる。(右)ダイスの各面にはそれぞれ異なる絵柄が描かれている
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 例えば,オフサイドフラッグの目は相手が出したボールの目を1つ打ち消すことができ,グローブと同じ効果を持つ。また,ホイッスルの目はフリーキックを意味しており,そのダイスを振り直すことができる,といった具合だ。

2人プレイヤー用に18個のダイスが入った通常版のセット。巾着袋で持ち運びできるので,旅行時などの携帯用ゲームとして重宝しそうだ
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 ダイスはペナルティキックにも対応しており,試合中にイエローカードが2回,またはレッドカードが1回出た場合や,試合終了時に両チームの得点が同じだった場合に,ペナルティキックを行う。
 ルールはごく単純で,4つのダイスをひたすら振り続け,ボールを先に揃えて「GooaAAAal!」と叫んだほうに1点が入る。ペナルティという,試合ではしばしば決定的な役割を演じる要素を盛り込んだあたりに,制作者のこだわりが強く感じられる。

 「GooaAAAal!」は,ダイスの各面にサッカーの要素を当てはめることで,選手とは無関係に,サッカーゲームとして成り立っている。ある意味,驚くべき作品といえるだろう。

「SPIEL’16」向けに作成された世界各国の代表のダイス。思わずコンプリートしたくなってくる出来だ
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クラブチームを運営する醍醐味が味わえる
「The Football Game」


 London Board Games Companyの「The Football Game」は,サッカーの試合ではなくクラブチームの運営をテーマにしたゲームだ。デジタルゲームでは「サカつく」「Football Manager」などが代表的な作品として挙げられるが,「The Football Game」の方向性はこれらにかなり近い。
 ブースでスタッフの人に思わず「The Football Managerを思わせる」と伝えたところ,「そうだろう,(プレイ時間が膨大になることで有名な)あのゲームをやる暇がないことが,これを制作する大きな動機になったんだよ」と言われた。

 ちなみに本作は,「SPIEL’16」終了後,Kickstarterのクラウドファンディングに成功し,現在,2017年の発売に向けて準備中だ。

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 プレイヤーはまず,自分の分身となる監督を選ぶ。監督の能力は「戦術力」「資金力」に分かれており,戦術力が高いとプレイ中に使える戦術カードの数が多くなり,資金力が高いとその分,選手獲得に使える予算が多くなる。

各プレイヤーのボード。選手がスタメンとリザーブに分かれているあたり細かい
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 監督が決まったら,次に行うのは選手の獲得だ。これは各プレイヤーが自分が持っている予算と相談しつつ順番に獲得していくわけだが,能力値が高い選手ほど高額なのはこの手のゲームのお約束。能力値を見つつ,選手のポジションにも注意してバランスのよいチームを作っていく必要がある。
 こうしてオリジナルチームを作ったら,いよいよプレイ開始だ。ゲームにはプレマッチシーズンマッチがあり,プレマッチはチームのトレーニング期間にあたる。ここでは,戦術カードを使って自チームの選手の能力を強化したり,相手チームの妨害を行ったりする。

 シーズンマッチでは,各ターンで6面ダイスと12面ダイスをそれぞれ2個ずつ振る。このうち,さまざまな色のボールが描かれた6面ダイスは,そのターンにおける自分のチームの成績を判定し,出た色と同じ選手カードの能力値が得点になる。これによってチームの順位が変動するのだが,つまり,能力値がいくら高くてもダイスの目が悪ければ意味がなく,このあたりで,「高額で獲得した選手が鳴かず飛ばずだった」という,割とよくある事態を再現している。
 12面ダイスのほうは,選手の身に起こる出来事を記したイベントカードに対応しており,これも長いシーズン中に起こりうる,さまざまな出来事をうまく表現したシステムになっている。

イベントカード(上)と戦術カード(下)はチーム所属の選手に大きな影響を与える
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現実のチーム作りにも大きな影響を与える,「選手の怪我」という要素も入っている
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 こうした進行から分かるように,「The Football Game」は現実のクラブチーム運営を見事にボードゲームに落とし込んでいる。その最たるものは,「クラブチームの順位とゲームの最終的な勝者とは直接関係がない」という点だろう。
 本作では,プレイヤーが開始時に作った選手の能力値に応じてクラブチームのランクが設定され,ランクが低い場合は,リーグ戦で善戦することで高ランクチームよりも高いポイントが獲得できるのだ。このため,最初に十分な戦力を持てなかったクラブチームでもゲームの勝者となることは十分可能だし,監督選択の時点で戦術力の高い人物を選ぶメリットもこの点にある。
 現有戦力で予想できる成績以上の結果を出してファンを満足させる,というのは実際のクラブチームの監督に求められる手腕だ。「The Football Game」でプレイヤーが目指すのも,まさにそれなのだ。

順位表の位置が高いに越したことはないが,C,Dランクに分類される弱小チームであってもゲームの勝者になれる
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サッカーゲームの多様性を再確認させられた新作たち


 以上のように,「SPIEL’16」に出展された新作サッカーゲームは,どれも個性的なものばかりで,サッカーゲームというジャンルの多様性を改めて感じさせてくれた。作品によってサッカーの表現方法は異なっているが,実際の試合がもたらしてくれる面白さを卓上でも味わってほしいという意図はどの作品にも共通している。
 冬が近づき,屋外でサッカーをするのが大変になりつつある今日この頃,部屋の中でこれらのゲームをプレイしてみるのもいいだろう。
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