連載
「あんぷらぐど☆げーまーず」第3回:今日は探偵,明日は犯人。戦略性と運のバランスが絶妙な「犯人は踊る」
アナログゲームの定番となっているテーマに「犯人当て」がある。これは「複数のプレイヤーの中から犯人役を探す」というもので,カジュアルなものからかなり頭を使うものまで,古今東西さまざまなタイプのものが今も生み出され続けている。近年話題になった人狼ゲームもその一種といえるだろう。
今回はそうした犯人当てゲームの中から,子供から大人まで幅広く楽しめる,鍋野企画の「犯人は踊る」を紹介する。2013年から少しずつ内容やパッケージを変更しつつ,現在も販売が続けられている,インディーズ作品としては非常に息の長いタイトルだ。
探偵と犯人,宿命の対決
ゲームは,カードが各プレイヤーに4枚ずつ配られた状態でスタートする。カードは全部で11種32枚なので,8人であればすべてを使い切る形だが,7人以下でプレイするときは,「犯人」や「探偵」など必須のカードを除いて,登場しないカードが出る可能性も出てくる。プレイヤーは手番が来たら,カードを1枚場に出し,その指示に従う。場に出したカードはそのままにしておき,手札の補充は行わない。
10種類以上あるカードの中で,勝利条件に関ってくるのが「探偵」と「犯人」だ。探偵カードは,出したときにほかのプレイヤーに対して「あなたが犯人だ」と指名できる。もし相手が犯人のカードを持っていたら,見事探偵カードを出したプレイヤーの勝利だ。一方の犯人カードは,場に出すことができればそのプレイヤーの勝利となるが,出せるのは手元のカードが1枚しかないとき(=手札が犯人カードだけのとき)だけとなっている。
このように,次第に手札が少なくなっていく中,探偵は犯人を見つけようと考えをめぐらせ,犯人は最後まで正体を隠し通そうとする……という駆け引きがなかなかアツいゲームになっている。
次々と入れ替わる犯人の行方を追え!
これだけ書くと,考えを巡らせて,少しずつ犯人を追い詰めていくような展開を想像するかもしれないが,実際はまったく逆で,プレイヤーは目まぐるしく変わる状況に一喜一憂することになる。
というのもこのゲーム,すべてのプレイヤーが右隣からカードを1枚引く「うわさ」や,全員が左隣のプレイヤーにカードを1枚渡す「情報交換」など,手札のやり取りを発生させるカードがかなり多く,探偵カードも犯人カードも,ゲーム中にプレイヤーの間を次々に移動していくからだ。「『犯人』と一緒に持っていた『アリバイ』を持って行かれた!」とか,「『犯人』と『探偵』が両方手元に!」といったことも珍しくない。まさに“犯人は踊る”のだ。
もっともそのおかげで,ゲームが進むほどほかのプレイヤーがどんなカードを持っているかが分かり,終盤になれば「あいつはあのカードを持っているはずだから,ここはこうして……」と戦略を練ることになる。とはいえ,そうやって考えた“勝利の方程式”が,手札交換などによってあっさりとひっくり返されるのがこのゲームの面白さ。頭を使う部分と,運が絡む部分のバランスが非常にうまくとれているので,子供と大人が一緒にプレイしても十分楽しめる。
みんなで何度でも楽しめる,パーティーゲームの秀作
勝っても負けても「もう1回」となり,1プレイにかかる時間も短いため,繰り返し遊んでもあまりストレスにならない本作。
犯人当てというわかりやすいテーマや,とぼけた味わいの魅力的なイラスト(なんと,同じ種類のカードでもイラストが1枚1枚異なっている)のおかげで,幅広い層にすすめられるので,ぜひ友達や家族と「おまえが犯人だ!」「残念,違いますー」といった感じで盛り上がってほしい。
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