インタビュー
data.ai(App Annie)の日本ビジネス責任者にモバイル市場の“いま”を聞く。データから見える,今後伸びてくるであろう分野とは
モバイル市場をデータで見るdata.ai
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。上村さんの自己紹介を兼ねて,現在の役割をお聞かせください。
上村洋範氏(以下,上村氏):
App Annieは2014年に日本法人を立ち上げたのですが,私はそのタイミングで入社しております。当時は新規開拓担当の営業職として,ゲーム会社さんやほかのエンターテインメント領域を担当しておりました。その4年後,2018年にマネジメント職となり,現在では日本全体のビジネスを統括しています。
4Gamer:
data.aiの事業について,あらためて教えてください。
上村氏:
data.aiは,モバイル市場のデータやインサイトなどを提供している会社です。ゲームに限らずモバイルで事業を展開していこうとしている企業さまが,ビジネスをどうモバイルにシフトするか,そもそもモバイルの市場にどんなニーズがあるのかなどを調べる際に,ご支援させていただいております。
data.ai自体は2010年にアメリカで創業し,サンフランシスコにある本社をはじめ世界12都市に展開しています。現在,データを提供しているお取引先は全世界で1200社を超えています。モバイルのデータというのは,放送における視聴率,ウェブにおけるPVをイメージしていただけると分かりやすかと思います。
4Gamer:
具体的にどのような情報を提供されているのでしょうか。
上村氏:
モバイル,とくにアプリの世界では,各社さんがKPI(Key Performance Indicators=重要業績評価指標)を持たれているので,そこに準じるような形でデータをご提供しています。例えば各アプリのダウンロード数や収益状況,アクティブユーザー数,セッション数といった利用状況,あるいはそのアプリのユーザーが,ほかにどのようなアプリを利用しているかなど,さまざまですね。いま挙げていないものも含め,40指標以上のデータを提供させていただいています。
4Gamer:
データの提供先は全世界で1200社以上とのことですが,これはゲーム会社に限らないのでしょうか。
上村氏:
私が入社した2014年のころはゲーム会社さんとのお取引がメインだったのですが,そこから7年を経たいまは,より幅広くなっています。ご承諾をいただいている会社さんの一部になりますが,ご支援させていただいている会社さんのロゴなどをまとめました。こちらをご覧いただくと,分かりやすいかと思います。
モバイル市場の“いま”を聞く
4Gamer:
ここからモバイル市場について伺っていきたいのですが,そもそも現時点でモバイル市場の規模はどのようになっているのでしょうか。
上村氏:
アプリストアでかかる手数料を含めてにはなりますが,まず世界全体で見てみると2020年から2021年にかけて160億ドル近く,日本円で1.9兆円近く伸びています。2018年からの比較で見ると57%の成長を見せており,市場規模は非常に大きくなっていますね。
ダウンロード数も3年間で30%の成長を見せ,約830億となっています。こういった点から,市場としてはまだまだ伸び続けていることが,ご理解いただけると思います。
日本はどうかと言うと,実は去年から今年にかけては若干の減少傾向が見られました。しかし,この3年間で比較してみると,消費支出は約20%の成長を見せています。2021年の消費支出が約158.3億ドルなので,約1.7兆円,月に換算すると1440億円,日単位で割り出すと1日48億円のお金がアプリストアを経由して動いていることになります。
4Gamer:
国内だけで1日48億円というのはすごいですね。グラフを見ると,日本のダウンロード数は3年前と比べても減少傾向にありますが,こちらはどう見られますか?
上村氏:
ダウンロード数は2014年以降,減少傾向が続いていて,市場が縮小しているのではないかといったご質問もよくいただきます。でも,私はまだそんなことはないのかな,と考えております。収益も昨年は減少していましたが,実は一昨年から去年にかけての市場の成長は,従来であれば2,3年かけて到達するような規模のものだったのですよ。
4Gamer:
コロナ禍の影響がそれだけ大きかったわけですね。
上村氏:
そうです。なので,去年から今年で下がっているからといって,マーケットが縮小しているとは言えないと思いますし,今後もまだ伸び続けるであろうことが期待されています。計上しているのはあくまで新規ダウンロードの数ですので,むしろまだ新しいユーザーがこれだけ入ってきている,ということの証拠になっているのですね。これがもっと大幅に減ってしまったら危機的だとは思いますが,現状は数として多いと思います。
4Gamer:
日本市場は3年間でダウンロード数が減少しているにも関わらず,消費支出が伸びていますが,1人あたり,または1タイトルあたりの課金額が増えているということでしょうか。
上村氏:
そのとおりです。1デバイスあたりの課金額を比較すると,日本はトップなのです。現在,iPhoneユーザーを見てみると,日本では1デバイスあたり月19ドル使っているのですが,2位のアメリカでも月11ドルとなっていて,2倍近く差が開いています。日本の人口はアメリカの3分の1程度ですが,それでも消費額は2倍近く多くなっていますので,1人あたりの消費額は非常に高いですね。
4Gamer:
ゲームのジャンルに注目してみると,どのような分野が伸びてきていますか。
上村氏:
去年1年間で世界全体を見てみると,ダウンロード数はトップ3がいずれもハイパーカジュアルのアクション,パズル,シミュレーションとなっています。やはりダウンロード数では,ハイパーカジュアルが群を抜いて伸びているというのは,グラフからも見て取れるかと思います。
4Gamer:
消費支出では,4XマーチバトルやMMORPG,チームバトルがずば抜けていますね。具体的には,どのようなタイトルが該当しますか。
上村氏:
4Xマーチバトルは「ロードモバイル」(iOS / Android)ですね。MMORPGの中でいちばん大きかったのは,アメリカで展開されている「僕のヒーローアカデミア」のゲーム「MHA: The Strongest Hero」です。日本ではあまり知名度はないのですが,大きく伸びてきています。3つ目のチームバトルは,広告でよく見かける「ヒーローウォーズ」です。この3ジャンルがほかのジャンルに大きく差をつけているのが世界的な傾向になります。
コロナ禍が日本のモバイル市場に与えた影響
4Gamer:
コロナ禍の影響で日本市場が大きく成長したというお話がありましたが,当時のデータを見ても変化は顕著なものだったのでしょうか。
上村氏:
2019年1月から2021年3月までの日本市場におけるダウンロード数と収益をグラフ化すると分かるのですが,ちょうど真ん中の2020年1月のころからダウンロード数が大きく伸びています。2019年,2021年との同月対比で見ても大きく異なるあたりからも,外部環境の変化が大きく影響を及ぼしたことがうかがえます。
4Gamer:
同じく2020年の2月以降は収益も大きく伸びていますね。
上村氏:
そうですね。スライドにも記載していますが,2019年と2020年を対比すると115%成長と,非常に高い成長率を維持しています。このタイミングでとくに収益を上げていたのは,「ディズニー ツイステッドワンダーランド」(iOS / Android),「原神」(PC / iOS / Android / PS4 / PS5),「ドラゴンクエストウォーク」(iOS / Android),「ドラゴンクエストタクト」(iOS / Android),「放置少女〜百花繚乱の萌姫たち〜」(iOS / Android)などですね。
4Gamer:
確かに「ディズニー ツイステッドワンダーランド」は当時からものすごい盛り上がりを見せていました。
上村氏:
一方で非ゲームへの影響はどうだったかと言うと,ゲームと同様に2020年からダウンロード数や収益は大きく伸びています。過去にこんなトレンドを示したことはなかったので,やはり在宅を強いられたり,余暇が増えてしまったりしている影響が強く出ているのかと思います。
収益に着目すると,とくに大きかったのはマッチングサービスを含むソーシャル系,動画配信サービスなどのエンタメ系,あとは漫画を含むブック系が全体を強く押し上げる要因になってきました。
4Gamer:
コロナ禍で人と会うのが難しくなっているのに,マッチングサービスが伸びているのは面白いですね。
上村氏:
逆に,人に会えないからこそ余計に人恋しくなる反作用があるのだと思います。自分の行動が制限されたり,できなくなったことがあったりするからこそ,こういった変化が出てきたのでしょう。
4Gamer:
ソーシャル,エンタメ,ブックといったアプリはダウンロード数でも大きく伸びているのでしょうか。
上村氏:
ダウンロード数に関して言えば,お買い物をサポートするような,小売店に紐づくライフスタイル系のアプリが一番多くなっています。あとは「ZOOM」や「Slack」といったビジネスまわりのツール系や,EC系アプリなどを含むショッピング系も伸びてきています。次に出すスライドの右上にあるグラフを見ていただくと,ライフスタイル系がほかに大きく差をつけていることが分かります。
4Gamer:
右下のグラフを見ると,収益面では本当にブック,ソーシャル,エンタメの3カテゴリが強いですね。
上村氏:
ソーシャル系の課金は分かりやすいもので言うと,LINEのスタンプ,あるいはマッチングのサブスクリプションなどです。エンタメ系はNetflixなどのいわゆるVODと呼ばれるコンテンツや,ライバーの配信に対する投げ銭で収益を上げているものなどがあります。ブックに関しては,漫画の収益がどんどん高くなってきていますね。
4Gamer:
広告やアプリ内課金など収益にもいくつか種類がありますが,それぞれどの程度の規模になっているのでしょうか。
上村氏:
全世界で見ると,モバイル広告に投じられたトータルの金額が2950億ドル,約33兆円になります。前年比でも23%増となっているので,モバイル広告の費用はまだまだ伸びてきていることがわかります。
アプリストアのへの支出は世界規模で見ると先ほど申し上げた通り19兆円程度ですが,このうち68%がゲームに使われています。ゲームと非ゲームを比べると後者のほうが成長率は高いのですが,これは非ゲーム側で特定のジャンルがマーケットとして注目されて,そこに参入して成功した人が増えていった結果だと考えています。ゲーム側の市場が小さくなっているというわけではないですね。
4Gamer:
日本国内に限定しても同様の傾向が見られるのでしょうか。
上村氏:
日本はアプリストアへの支出全体が207億ドル,約2.3兆円となっていて,こちらは2%増です。ゲームだけで見ると減少傾向になったのですが,非ゲームが前年比25%の勢いで成長しており,全体として見ると増加となっています。
重ねてになりますが,モバイル市場は一昨年から去年にかけて2,3年ぶんの成長を遂げたので,去年から今年にかけてのゲームの減少傾向はあくまでその揺り戻しであり,マイナスとして考える必要はないと思っています。
4Gamer:
サブスクリプション型の課金サービスもありますが,こちらはどの程度規模がありますか。
上村氏:
日本の去年1年間を見てみると,マネタイズとして大きいのは,やはりガチャと呼ばれるタイプのシステムで,それに対してサブスク,定期購入のモデルは5分の1くらいになっていて,現時点ではまだ開きが大きいですね。
また,先ほどのグラフのなかで右端に広告と書かれていますが,こちらは広告マネタイズを持っているアプリのアプリ内課金での金額なので,これが広告によって得た収益ではありません。
個人的に注目しているのは,中国では定着しているVIPと呼ばれるモデルで,国内でも現時点でサブスクと同程度のボリュームが出てきています。こちらも伸びてきている印象です。
4Gamer:
Apple ArcadeやGoogle Play Passといった定額サービスについてはいかがでしょう。
上村氏:
現状,我々はApple Arcadeなどに関して追跡できるデータを持っていないのですが,やはり強力な販売チャンネルとなっていく可能性は強いと,我々は考えています。現時点でサブスクリプションの利用者が少ないということは,逆に新たに市場を切り拓いていく可能性があるとも言えるので,今後強くなっていく部分だろうなと思います。
ビデオストリーミングを筆頭に,多くの業界でサブスクリプションのサービスモデルは普及していますよね。なので,そのモデルがゲームに採用されるのも自然な流れだと考えています。Apple ArcadeやGoogle Play Passは,アプリストア側の課金体制を補完するものとして重要なサービスになってくるのかな,と想像しています。
このサブスクリプションの仕組みはビジネス世界におけるSaaS(Software as a Service=インターネット経由でクラウドサーバー上のソフトウェアを利用できるサービス)と同じだと思っていて,短期的には大きな影響力がなくても,一度損益分岐点を超えてしまえば,かなり強い利益を出す可能性があると思います。
ユーザー層を分けることで見える傾向
4Gamer:
ゲームの遊ばれ方についても知りたいのですが,世代別で見るとどのような傾向がありますか。
上村氏:
アメリカと日本を対比して見ていきたいのですが,Z世代,ミレニアル世代,X世代&ベビーブーム世代の3つに分けてみると,やはり面白いのはZ世代の部分ですね。アメリカでは「Roblox」が本当に強くて,アクティブユーザー数がもっとも多いです。そこに続く形で「Among Us」もユーザーを残していて,「Roblox」と対を成す,いまならメタバースと表現されるような「Minecraft」もまだ多くのユーザーがプレイしています。
日本の市場は「モンスターストライク」(iOS / Android)や「パズル&ドラゴンズ」(iOS / Android)といったロングランタイトルが圧倒的に強いのですが,その中で「ウマ娘 プリティーダービー」(iOS / Android / PC)が伸びてきていますね。育成をして最終的にほかのユーザーと競うような要素もあるゲームですが,こういったテイストのシミュレーションゲームが上位に上がってくるというのは非常にユニークな,新しい風なのかなと思っています。
4Gamer:
男女別で見てみるといかがでしょう。
上村氏:
性別ごとに見ると,アメリカで上位に入っていた「Roblox」PC / Xbox One / iOS / Android,「Among Us」(PC / iOS / Android / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch),「Minecraft」(PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch / iOS / Android)はいずれも女性ユーザーが多いのです。同様に日本を見てみると,特徴的なのは女性ユーザーが多いゲームとして「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(iOS / Android)が入っていることですね。
こちらはしっかりとリズムゲームを遊びこまないとレベルも上がっていかないので,わりとコアなゲームだと思います。ある意味でアイドルを育てるゲームなので,男性ユーザーに人気な「ウマ娘」と並んで育成ものが上位に入っているのは面白いな,と。もう1つ注目したいのは,Niantic社のゲームが男女に別のタイトルで入っていることです。
4Gamer:
男性では「ポケモンGO」(正式名称はPokémon GO。iOS / Android)が1位,女性では「Pikmin Bloom」(ピクミンブルーム,iOS / Android)が2位となっていますね。
上村氏:
「Pikmin Bloom」にも歩数計としての機能があって,位置ゲーム的な要素も入っているのですよね。ここで大きいのは,Niantic社が得意としていた「Pokemon GO」のユーザー層に加えて,新しいユーザー層を獲得できていることなのです。これは会社のポートフォリオとしては非常に強いと思います。
「Pikmin Bloom」は課金が少ないことで有名だと思うので,コアなユーザーもいますが,どちらかと言うと女性が日々の歩数管理にエンターテインメントの要素を取り入れるといった形で,利用されているケースが多いのではないかと考えています。これだけ綺麗にユーザーを分けて獲得できているのは,非常にすばらしい企業戦略だと思いますね。
4Gamer:
そのほか,ユーザーを分類することで何か特徴が見えたものはありますか?
上村氏:
アプリゲーム市場が成長していることは重ねて申し上げてきましたが,ユーザーがアプリを使用している時間で見てみると,一番多いのはソーシャルネットワーク&コミュニケーションの部分なのです。全体で見ると利用時間の約半分を占めているのですね。そこに続くのが写真/ビデオ,YouTubeなどの動画系も含めたアプリです。ゲームは全体で見ると,10%から15%くらいの割合なのですよ。
利用時間の約半分を占めているソーシャルの中でもとくに大きいのは,世界で見ても日本国内で見ても「TikTok」です。グラフで見ても分かるのですが,伸び方がすごい。「TikTok」はTikTok For Businessというビジネスソリューションを提供していて,ゲーム配信なども戦略的に取り組んでいるのですね。そういう意味では,「TikTok」が今後,ゲームユーザーがゲームに触れる時間を押し上げていく可能性もあるかもしれません。
“メタバース”とされるアプリは今後伸びてくる?
4Gamer:
ユーザー層によって人気タイトルが大きく異なることが改めて確認できましたが,モバイル市場全体を見てみると,どのようなまとめ方となりますか。
上村氏:
マーケットをざっくりとまとめると,この図のようになると思います。これはバブルチャートではないので,円の大きさは関係ないものとして見てください。
4Gamer:
大きく分けると5つのグループが目立っていると。
上村氏:
まず左側は,いわゆるハイパーカジュアルと呼ばれる,ダウンロード数を牽引しているタイトルですね。こちらは比較的Z世代の女性ユーザーが多く,「Among Us」に関してはゲーム実況などでも遊ばれています。一方で収益を大きく出しているのは,右端で我々がコアゲームとして分類しているRPGやFPS,ストラテジー系が強いですね。ここは以前から変わらずといったところです。
最近の動きとして興味深いのは,この図で没入感が強いゲームと表現している,ゲームの世界での生活を楽しむようなものや,アイドル育成のように自分の好きなキャラクターを育てるもののような,のめり込む要素の強いゲームですね。ここは1つのジャンルとして浮かび上がってきているように思えます。「Roblox」や「Minecraft」はユーザー生成コンテンツが強く,メタバース的な文脈も多分にあります。
4Gamer:
ここ数年での変化,トレンドのようなものはあるのでしょうか。
上村氏:
1,2年ほど前から当たり前になっていますが,やはりシングルプレイよりもソーシャルの要素が強くなってきています。クロスプレイやチームプレイ,コミュニケーションなども当然のものになっていて,もっと言えばクロスプラットフォームも広まってきています。デバイスを問わずに遊んでいくような流れは,今後もどんどん進んでいくでしょう。
あとは,国内では位置情報ゲームですね。「Pokemon GO」「ドラゴンクエストウォーク」に加えて「Pikmin Bloom」もそういった要素を持つものとして出てきたことで,完全に1つのジャンルとして根付いています。それと,知育系の存在も大きいと思います。
4Gamer:
知育系はほかのものとは少し方向性が違いますね。
上村氏:
私も小さな子供がいるのですが,やっぱり子供にiPadをわたして遊ばせます。そのときに,ほかのゲームを遊ばせるのは早いけど,知育系のものならいいかなと思います。周囲のお父さんやお母さんに聞いても同じようなことを言っていたので,知育系ゲームみたいなものは,いまの子育ての中で立場を築いていると思います。
私たちが小さいころは,例えば進研ゼミで答案用紙を送って,赤ペン先生に丸をつけてもらって,シールを集めて景品と交換しましたよね。ああいう勉強に遊びのテイストを取り入れたものの現代版が,知育系アプリになるのかなと思います。Z世代よりもさらに若い人たちになると,知育系アプリをとおってくるのはごく当然のことになっているのかな,と。
4Gamer:
現在の状況を踏まえて,今後伸びてくるであろう分野はどこでしょうか。
上村氏:
一言で言うと,この先伸びてくるだろうと思っているのはメタバースですね。2022年が終わるころには年間で31億ドル,3200億円くらいの規模になってくるだろうと推測しています。このメタバースの領域ではやはり「Roblox」が市場を牽引していて,そこに次いで「Minecraft」がいる状態です。
当然ですけど,ゲームはどんどん進化をしていて,メタバースの世界もゲームも進化を続けています。いまでは「Play-to-Earn」と呼ばれる,ユーザー生成コンテンツでユーザーがゲーム内でお金を稼ぐ時代になってきています。ここにNFTなどがつながってくるのが次の進化だと思いますし,2022年の終わりにはそれも当たり前になっているのではないでしょうか。
4Gamer:
「Roblox」は日本ではまだメジャーとは言いにくい気もしますが,それでも伸びてくるとお考えですか?
上村氏:
確かに現状,「Roblox」のユーザーの大半はアメリカの方々ですが,日本でのダウンロード数や収益も伸びてきてはいます。もちろんアメリカのユーザー数などに比べるとまだ差は大きいですけど,逆にそれがホワイトスペースの広さを示していると言えます。伸びしろはかなりありますね。
「Roblox」で1つ面白いのは,ユーザーがどんどん変化してきていることです。元々は13歳以下のユーザーが過半数を占める勢いでしたが,年月が経ってユーザーが成長していることも含めて,13歳以上のユーザー層がかなり増えてきています。
おそらく,一定数のユーザーがいれば当然,品質の高いユーザー生成コンテンツも出てきて,そういうものが普及したことでユーザーの行動も変わってきているのだと思います。この変化はある意味で未来を暗示しているかもしれなくて,日本でも同様に子供たちのあいだで「Roblox」が流行り,次第に上の世代に広がっていく可能性があります。
4Gamer:
ちなみに,「Roblox」のユーザーはほかにどのようなアプリを利用しているのでしょうか。
上村氏:
「Roblox」と並行して遊ばれているのは,やはりアバター生成ツールが多いです。日本で言う「REALITY」や「IRIAM」のようなものですね。「Roblox」ユーザーの世代には,自分をアバターに置き換えて画面に表示することが当たり前になっています。そういった部分もあって,アバター系のアプリも世界規模で大きくダウンロード数を伸ばしています。
4Gamer:
自分がアバターを使うことに抵抗のないユーザーが多いわけですね。
上村氏:
はい。それも1つのメタバースだと思いますが,自分をアバターとして登場させて,その世界の中で生活しながら何かのメッセージを発していくというのが,今後のトレンドになっていくのは間違いないでしょう。
──2022年2月4日収録。
「data.ai」公式サイト
- この記事のURL:
キーワード