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ゲーム業界がどんなに変わっても,我々が成すべきことは「良いゲーム」を作ることだけ――LINEの信用を得た中国のゲーム開発会社「Longtu」とは
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印刷2016/09/06 14:16

インタビュー

ゲーム業界がどんなに変わっても,我々が成すべきことは「良いゲーム」を作ることだけ――LINEの信用を得た中国のゲーム開発会社「Longtu」とは

今年のChinaJoyは,PS4とXbox Oneが大々的に登場。Longtu Gameは,コンソールが覇権を握ろうが,スマホの時代が続こうが,良い作品を作ることが最も重要と言い切る
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2016年の7月28日から31日まで,上海で行われた「ChinaJoy 2016」の話題の中心は,なんといってもスマホとVR。コンシューマもいまから花開こうかというタイミングではあるが,まだまだマーケットとしては小さく,ChinaJoyで存在感を示すほどではない。

わざわざここで書くまでもないが,中国という国のゲームエンターテイメントの成長カーブは半端なく,PCとスマホ合わせたオンラインゲームの市場が,2015年時点ですでに2兆2000億円を超える。最新のデータである2016年Q1時点では,すでに約6500億円ほどになっていて(→こちら参照),成長はまだ続いている。ここにコンシューマとVRが参戦し,今後さらに伸びていくことになるのだろう。

さてそんな中国ゲームマーケットについて何か聞いてみようと思ったときには,誰に聞けばよいのだろうか。政府のお役人? プラットフォーマー? ……いや,やはり現場でゲームを開発して運営/経営している人に聞くのがよいだろう。彼らは肌感として,数字として,熱量として,マーケットに対峙しているのだから。

2兆2000億円という前述の数字の半分を叩き出すモバイルゲームの会社達は,現状と未来をどのように見ているのだろうか。それを聞いてみたく,何社かの会社にインタビューの打診をしてみた。そのインタビューの模様をお伝えしよう。


 2016年7月28日〜31日まで行われていたChinaJoyで,何社かに送ったインタビューオファーを,受けてくれた中の一社がLongtu Game(龍図遊戯)だ。

日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか

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「違いを理解すること」と「理解した部分を中国向けに修正する」ことは全然別なこと――2年で急激な成長を遂げたHeitaoのやり方とは


 日本のプレイヤーは社名を聞いてもピンと来ないだろうが,2008年創業の比較的新しい会社で,すでに従業員数は1300人を超える。元々IP重視の傾向が強かったが,2016年になってさらに「S-IP戦略」を標榜。他社/自社を問わず,徹底してIPにこだわる戦略を打ち出して,さらなる飛躍を遂げようとしている。
 中国らしい「熱血江湖」や,古参のオンラインゲームプレイヤーには懐かしい「MU(邦題:ミュー 奇蹟の大地)」をスマホ版にした「奇跡MU:最強者」,LINEのキャラクターを使った「小熊愛消除」など,あらゆるゲームジャンルで,あらゆるIPを使って作品を展開している。本文中に出てくるがLINEとも提携しており,今後の動きは目が離せない。
 パブリッシャーとしてのさまざまなチャレンジも欠かさないようで,新作「螺旋境界线(Helix Horizon)」にいたっては,オープニングムービーが「日本の新作アニメかな?」と思うレベルになっている。


 ChinaJoy会期中の忙しい中,合間を縫って話をしてくれたのは,CEOのYang Shenghui氏。大学卒業後にすぐLongtuを作ってCEOとしてやってきた,創業者社長だ。

Longtu GameのCEO Yang Shenghui氏。“業界人”っぽいあの独特の香りがしないので,財務畑出身の人なのかと思った……
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「Longtu Game」公式サイト




4Gamer:
 本日はお暑いなか,ありがとうございます。まずは,いまの仕事に就くまでの経歴などを教えてください。

Longtu Game CEO Yang Shenghui氏(以下,Yang氏):
 大学のころからゲームが好きでして,その頃からゲーム関係の仕事に就こうと考えていていました。そして,卒業後に今の会社Longtu Gameを作りました。

4Gamer:
 ということは,創業者社長ですね。

Yang氏:
 はい。つまり,ゲーム以外のことはあまりやっていないんですけどね(笑)。

4Gamer:
 パッと見,真面目そうな硬いイメージなので,違う畑の出身の人なのかなと思いました。

Yang氏:
 いや,そんなに真面目ではないですよ(笑)。

4Gamer:
 まぁ,大学生のころからゲームが好きで,卒業後にゲーム会社を作るくらいですしね……。学生のころは,どんなゲームをプレイしてたんですか?

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Yang氏:
 オンラインではない,シングルゲームが主に好きでしたね。とはいえ,お約束のDiabloやStarCraft,World of Warcraftといったゲームも好きでしたし,日本のゲームもずいぶんたくさん遊びました。

4Gamer:
 日本のゲームではどんなタイトルがお気に入りでしたか。

Yang氏:
 タイトル……というより会社ですかね。カプコンやSNKのタイトルをよく遊びました。あとなんていう名前でしたっけ……“ときメモ”(ときめきメモリアル)のような恋愛アドベンチャー系も好きでした。日本のゲームからは本当に多くのものを学びました。

4Gamer:
 “ときメモ”はちょっと意外です……。
 では,会社を起こしてからこれまでの歩みはどんな感じでしょう。

Yang氏:
 もともとは,数名でやっていた小さな規模の開発スタジオでした。そのころはブラウザゲームの開発をメインにしていて,2014年からモバイルゲームに参入しました。今はパブリッシングに力を入れているのですが,当時はWebゲームの開発において,周りから高い評価を受けていたと思います。

4Gamer:
 高い評価を受けていたポイントはどこですか?

Yang氏:
 私達はパブリッシャではなく,自身が開発に携わっていたわけなので,ユーザーにどんな体験を与えるかとか,どういったクオリティのものを出していくかとか,そういうことを軸に考えています。中国には多くのゲーム会社がありますが,自分達は開発からやってきているので,“作品にかける情熱”という部分において,ほかの会社と違うと思っています。

4Gamer:
 作品の作り込み……とはちょっと違うんですか。

Yang氏:
 作り込みというより……そうですね,ゲームデザインでしょうか。
 パブリッシュする作品であっても,自分達の目から見て面白いものを積極的に探してきています。そして,その作品の持つ力を大事にしているつもりです。


もはや中国では,日本のIPは必要とされなくなりつつある


「Sword and Magic」(剣与魔法)なる,ちょっと懐かしい雰囲気の名前を持つファンタジー感バリバリの3D MMORPG
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4Gamer:
 少し前までの中国のゲームユーザーのイメージというと,カジュアルなタイプのゲームを好む層が多いという印象でしたが,昨今ではゲーマーとしての好みがどんどん先鋭化してきて,より複雑なゲーム,コアなゲームというものを好む傾向に入った感じでしょうか。

Yang氏:
 ご承知のように中国は大きいので,ゲームで遊ぶ人も遊ばない人も,数としてはとても多いです。お話にあったカジュアルゲームが好きな人も非常に多いんですが,この国はもともとオンラインゲームが流行っていたこともあって,複雑な操作やルールを好むコアユーザーもまた,非常に多いんですね。あらゆるジャンル,難度のものが遊ばれているといえるでしょう。

4Gamer:
 確かにオンラインRPGがあれだけ流行った国ですしね。
 しかし,これだけ多くの人がそれだけ多くのジャンルのゲームを遊んでいるのに,御社はIPに特化した戦略を取っています。それは,3年後5年後を見据えた動きだったり,何かそういう大きな枠組みでの話なんでしょうか。

Yang氏:
 私はIPに対して2つの考え方を持っています。
 1つ目は,IPを持っているとユーザーに対する影響力が大きくなるということです。ユーザーを惹きつけるという意味においては,もともと有名なゲームのIPを利用してモバイルゲームの二次開発を行うということは,とても意義のあるIPの利用の仕方だと思っています。
 また,そういった有名IPでモバイルゲームを開発する上で,そのIPの良さを知ることは必須になります。当然そのIPを勉強して作ることになるので,出来上がるモバイルゲームのクオリティも自ずと上がります。そういった意味でもIPは非常に利用する価値があると思っています。

4Gamer:
 極めて分かりやすいIPの使い方ですね。

Yang氏:
 一方で,たとえばパズル&ドラゴンズのように,オリジナルですけどちょっと独特の遊び方があったりして,ユーザーに対して突破力のある,フックが効いているようなもの,そういったものも一種のIPだと思っています。
 いずれにせよ,ユーザーにどういった影響力を与えるかということに昔から注目していますから,そういったところがIPを重視しているように見える理由ではないでしょうか。

4Gamer:
 しかし中国だと,何年か前まではやはり独自のIPというものは,そこまで育っていなくて,日本のIPを使うことが多かったように感じられます。ゲームであれアニメであれ。そこがたぶん,ここ数年間で大きく変わったんじゃないかなと思っていて。そういった中国マーケットの成熟と,ユーザーの思考の違いについてはどうお考えですか。

Yang氏:
 中国は人口が多いこともありますので,やっぱりオリジナルを作ろうという気運がどんどん強くなってきています。また市場のサポートもそこに向かって手厚くなってきているので,お金が入りやすくなって良い循環になってきていると思っています。
 確かに今まではクオリティの低いものもあったのですが,昨今のユーザーはやはりクオリティの高いものをどんどん要求していますし,作る側としても良い物を作りたい,よりクオリティの高いものを提供したいという意識が強くなってきています。

4Gamer:
 やはりそうなんですね。ChinaJoy会場を見ても,昔より他国のIPに寄りかかってる印象が薄くなっていたので。

Yang氏:
 そうでしょう? もちろんこれは,映画やゲーム,アニメといったすべてのものに対して言えることです。そのすべてにおいて,クオリティの基準となるレベルがどんどん上がっているんです。
 たとえば中国独自の武侠モノみたいな作品などは,海外のIPが入ってきにくいジャンルなので,中国サイドで発展する余地がまだまだあると思います。いきなり日本や世界の有名IPレベルを目指していくより,まずはそういったところからどんどん進めていくんじゃないかと思います。

4Gamer:
 コンテンツ大国への道を歩み始めた,と。

Yang氏:
 そうとも言えますね。むろん今でも日本の漫画やアニメは非常に優良ですし,そういうものの力を借りたり,勉強させてもらったりするところは多分にあります。
 ユーザーも,もはやクオリティの低い作品は求めていないですし,あと何年かすると,中国企業も淘汰されていくでしょう。そんな状況でも残る会社なばら,日本に負けない非常に高いクオリティのものを作れるんじゃないかと思っています。

4Gamer:
 China Joyに来るのは実は数年ぶりなんですが,以前来た時は,やはりまだ中国でオリジナルのIPを作り出す力がなくて,みな口を開けば「日本のIPが欲しい」と言ってました。
 それが今年いろいろな人に話を聞いてみると,どうもそういう時代はとっくに終わっていて,日本のIPの力を借りずとも国内で新しいものを創りだして,それを普及させて,独自のものがきちんと立ち上がっているんだな,という印象を受けたんですけど,その印象は概ねにおいて正しいということですね。

Yang氏:
 はい,まったくそうだと思います。ここ数年で大きく変わりましたから。

4Gamer:
 正直な話をすると,そのあたりまだちょっと私は舐めていて「なんだかんだ言ってもまだ日本のIPは強いだろう」と思っていました,私がそう考えていたのと同じように,日本のIPを持っている会社には「安全そうな会社に高く売ろう」と考えている人もまだいると思うんです。でも,もうそういう時代じゃないんですね。

Yang氏:
 まったくそのとおりだと思っているので,ぜひそう記事に書いておいてください(笑)。

それにしても中国や韓国など,アジア圏のMMORPGはみんな弓キャラが大好き。露骨に強かったりすることも多いのだが,なぜなんだろう
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LINEとの提携で,“ユーザーの遊び方の差”を吸収する


4Gamer:
 私は日本のメディアなわけですが,今日この場に来ていただけたということは,日本のマーケットに何かしらの興味を持っていただけているのだと解釈しています。中国に比べるとはるかに人数の少ない,ちょっと特殊なゲームマーケットである日本の市場について,どういうお考えでしょうか。

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Yang氏:
 確かに日本は人口は少ないかもしれませんが,市場としては非常に大きいと思っています。なにしろ,積極的に課金をする人が多いイメージもありますし。
 以前岡本吉起さんにお会いしたことがあるんですが,彼の作った数々のゲームを見ていると,まだまだ日本のゲーム市場は強いし,発展する余地も大きいのではないかと考えています。

岡本吉起氏:ゲームプロデューサー。コナミからカプコンへ移り,その後独立してゲームリパブリックを創業。同社解散後にスマホゲームに参入し,「モンスターストライク」を開発。モンストだけでなく,かつては「タイムパイロット」「ソンソン」「エグゼドエグゼス」など著名な作品を多く開発している。


4Gamer:
 日本は世界的に見てちょっと特殊な市場なので,サービスさせて成功させるのは大変だ,と世界の皆さんがおっしゃいます。

Yang氏:
 日本のゲーム市場は確かにちょっと特殊なところがあるので,日本に進出するためには,まず日本を深く理解する必要があると思っています。

4Gamer:
 しかしヤン社長は,若いころずいぶん日本のゲームで遊んでいたようですし。

Yang氏:
 おっしゃるとおり,もともと日本のゲームに非常に大きな影響を受けていますので,そういったところもある程度分かっている……つもりなので,チャンスはあると思っています。

4Gamer:
 では,いずれそういう動きを?

Yang氏:
 いや,やはり日本の企業さんと組んでパブリッシュするとか,一緒にゲームを作ってそのクオリティの高さを一緒に学ばさせてもらって,さらにクオリティの高い作品を作るとか,日本で成功するためにはそういったところを地道にやっていかなくてはいけないな,と思ってます。

4Gamer:
 意外に慎重ですね。

Yang氏:
 日本に進出するとなると,成功とした場合と失敗した場合の差が非常に大きいと思いますので……。

4Gamer:
 日本のゲームを若い頃から遊んだヤン社長でも慎重なわけですが,逆に日本の企業が中国に進出しようと思った時に,今決定的に欠けているものはなんだと思いますか?

Yang氏:
 やはりまず根本的問題として,ユーザーの遊び方の違いが挙げられるでしょう。日本の有名IPを中国に持ってきて,非常にクオリティの高い面白いゲームができれば両方の国で当たる可能性もあるかもしれませんけど,基本的には遊び方の違いが激しいと思います。

4Gamer:
 “遊び方の違い”とは具体的にどのあたりを指すんでしょうか。

Yang氏:
 そこは課金システムに一番顕著に出てますね。日本のゲームは課金システムがガチャくらいで,ほかはあまり深く作られていないので,遊び方がとても少ないです。一方で,イベントは細かく行われていますが。
 逆に中国はキャラクターの成長という要素が重要で,単純であってもキャラクターの成長のために頑張って,みんなに自分のキャラの強さを見せつけたい,それでコミュニケーションがしたい,という欲求が強いんです。

記事冒頭でオープニングムービーを載せた「螺旋境界?(Helix Horizon)」は,声優陣も豪華。……というより,日本のゲームだと言っても違和感がない
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4Gamer:
 その点は,中国のどの社長も言いますが,どこでその遊び方の差が出たと思います?

Yang氏:
 ゲームの歴史,ですかね。日本のゲーム文化は,実質コンシューマゲームからスタートしているので,テレビの前で自分1人で,または数人で遊べればいいという考えがあると思うのですが,中国はPCゲームから始めた人が多くて,しかもそれはMMORPGのような多くの人でワイワイ遊ぶものだったり,RTSでの対戦であったり,とにかく“誰かと遊ぶ”ことが重要だったんです。そこが大きな違いになったんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 なるほど。ゲーム文化の成り立ち,ですか。

Yang氏:
 当然のことながら日本の会社は,日本で売れるようにゲームを作るので,それを中国に持ってきて売れないというのは仕方がないし当たり前だと思います。それは逆も然りで,中国で売れるために作っている中国のゲームを,そのまま日本に持っていっても売れるわけがありません。

4Gamer:
 “両方で売れる”っていうのはやっぱりとても難しいことなんですかねえ。

Yang氏:
 それを模索してみようと思って,先日LINEと提携しました。LINEのゲームが中国でうまくいくかどうか試してみようと思っていまして。

4Gamer:
 LINEと提携……ってそれまだ未発表ですよね?(注:2016年8月5日付けで発表された

Yang氏:
 なのですぐに記事にはしないでください(笑)。


業界がどんなに変わっても,成すべきことは「良いゲーム」を作ること


4Gamer:
 しかしなるほど,LINEですか。タイトルを相互にパブリッシュする感じですか?

Yang氏:
 ええ。JV(ジョイントベンチャー)を作って,一緒に開発して一緒にパブリッシングをしていく予定です。

4Gamer:
 お,JVなんですね。JVを中国に作って,Longtuが開発をメインで行って,中国と日本でローンチさせる?

Yang氏:
 概ね合ってます。正確には,中国にJVを作って一緒に開発するのですが,中国のパブリッシングはLongtuが行って,そのほかの世界はLINEが行うことになると思います。

4Gamer:
 “そのほかの世界”というのは?

Yang氏:
 日本や台湾などを筆頭に,LINEが強い東南アジアなどがメインになると思います。

4Gamer:
 なるほど。LINEがJVの相手としてLongtuを選んだのはどういう部分だと思いますか?

Yang氏:
 優秀な作品を作れる開発力があり,優秀なチームを持っており,どういう作品を作れば良いのかが分かるというところでしょうか。

4Gamer:
 ということはLINEはそこが弱い?

Yang氏:
 そうですね。そこが弱いというか,彼らは“外向きに発信”する会社なので仕方ありません。

4Gamer:
 LINEは,中国はまだうまいこと進出できてないですし,そういう理由も大きそうです。

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Yang氏:
 中国以外では本当に強いですけどね。中国でもLINEを展開したいという希望が強かったですし,僕らから見ると逆に日本を自分たちだけで攻略するのは難しいので,今回の件はお互いが嬉しい状況で,すんなりJVが決まりました。

4Gamer:
 開発人数はどれくらいで考えてます?

Yang氏:
 JVのほうは100人ほどです。Longtuは開発が数百人規模なんですけど,すでに50以上の会社やスタジオに投資をしていますので,そういうところを含めるとかなりの数になると思います。カジュアルゲームもあればMMORPGもあるといった感じで,パブリッシングしているゲームジャンルも多く,なんでもできるというところで,LINEからお話をいただけました。
 LINEは,カジュアルゲームは良いのですが,MMORPGみたいなものは少ないので,そういったところでお互いがWin-Winの関係になれるのではないかと期待しています。

4Gamer:
 たしかに日本のLINEゲームは,ツムツムをはじめとしてカジュアルは強いんですけど,コア系のゲームはちょっと弱いんですよね。むろんユーザー層の問題もあるとは思いますが。しかし,例えばアクションRPGだったりオンラインRPGだったり,そういう部分にLongtuがすっぽり収まる感じなんでしょうか。

Yang氏:
 イメージとしてそうなんですが,もちろん実際はそんなに簡単ではないです。中国のゲームがこれだけたくさんあるなかで,どれも日本では成功していないわけで,今ある我々の作品をLINEのゲームとしてあてはめてもうまくいくとはまったく思っていません。
 やはり,ちゃんと日本の遊び方に合わせて,非常に深いところまで考えられた作品を作って,それを出していく感じになると思います。

4Gamer:
 お時間もそろそろなので,では最後の質問を……。
 LINEとのJVといった大きい話があるなかで,中国そのもののゲーム業界に目を向けてみると,コンシューマ機の市場が政府の肝入りで始まったり,もしくはVRがとても盛んになったり,もちろんモバイルゲームはどんどん競争が激しくなっていて,そんな状況下で中国の,もしくは世界のゲームマーケットは,3年後にどうなってると思われますか。

Yang氏:
 3年……3年も経つと非常に変化が大きいと思うんですけど,やはりモバイルゲームは今以上に大きい市場になっていると思います。中国市場でいえば,コンシューマゲームはあまりうまくいかず,VRに関しては,コンシューマゲームと一緒に成長していく形だと思います。

4Gamer:
 中国でコンシューマゲームがうまくいかないとお考えになっている理由はなんでしょう。

Yang氏:
 単純に「入る時期を逸した」という感じです。もちろんそれはSonyやMicrosoftのせいではなく,中国の規制のせいなんですが。すでに中国のユーザーはPCゲームとモバイルゲームにハマっていて,完全にそれで遊び慣れているので,わざわざコンシューマゲームを買う必要がほとんどないのではないかと。
 一般的なレベルで言っても,ゲームでテレビを使うという概念がほとんどありません。というかスマートフォンでこんなにたくさんのゲームが遊べるのに,わざわざお金を払って本体を買ってソフトを買ってまで遊ぼうという人は,相当コアな層だけでしょう。そしてその層はあまり多くないので,そういう意味であまり今後も広がらないのではないかと。

4Gamer:
 VRに関しては,Longtuは何か動きを見せないんですか。

Yang氏:
 すでにVRやARの開発会社に投資はしているんですが,自社で何かをしているというのはないです。

4Gamer:
 デベロッパでありパブリッシャでもあるゲーム会社が,ほかの会社に山ほど投資をするというのは中国ならではだな,と思います。日本ではあまり聞かないですし。

Yang氏:
 私達は,新しいものを作ることに興味があります。しかし自分達でそれをやり続けるにも限界があるので,いろいろな会社に投資をしています。

4Gamer:
 ここ2〜3年は,ゲームマーケット自体が大きく動く時期だと思うのですが,その中でLongtuが注力していこうと思っていることはありますか。

Yang氏:
 確かにゲーム業界は,ここ2,3年で大きく動くかもしれませんが,ゲームを作っている側として,オリジナリティのある高いクオリティのゲームを出し続けていくことが一番重要です。そういう意味では,何年経とうがあまり変わりません(笑)。
 中国のゲームプラットフォームのメインストリームがPCからモバイルに変わったように,この先も大きく環境が変わることがあるかもしれませんが,我々開発のプロは,やはり良いコンテンツを出し続けていくだけです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

――2016年7月29日収録


「Longtu Game」公式サイト

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