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Rovio Entertainment,King,グリー,Klabの首脳が一堂に会したパネルディスカッション「進化し続けるゲーム業界」をレポート
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印刷2015/04/24 17:10

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Rovio Entertainment,King,グリー,Klabの首脳が一堂に会したパネルディスカッション「進化し続けるゲーム業界」をレポート

画像集 No.003のサムネイル画像 / Rovio Entertainment,King,グリー,Klabの首脳が一堂に会したパネルディスカッション「進化し続けるゲーム業界」をレポート
 一般社団法人・新経済連盟主催のイベント「新経済サミット2015」において,「進化し続けるゲーム業界 モバイルゲームはこの先どうなるのか」と題されたパネルディスカッションが,2015年4月8日に行われた。
 このパネルディスカッションに登壇したのは,「Angry Birds」で有名なRovio Entertainment(以下Rovio)のCEO ペッカ・ランタラ氏,「キャンディークラッシュ」で知られるKingのCEO リカルド・ザッコーニ氏,そしてグリー 代表取締役会長兼社長である田中良和氏の3名。モデレーターはKlab 代表取締役社長の真田哲弥氏が務めた。

 今回は,イベント自体がゲーム業界に特化していたものではなく,聴講対象者もゲームに詳しくないであろうと踏まえていたためか,全体的に概論の域に留まる感のある内容となっていた。ともあれ本稿では,パネルディスカッションの模様をレポートしていこう。

写真左から,Klab 代表取締役社長の真田哲弥氏,King CEOのリカルド・ザッコーニ氏,グリー 代表取締役会長兼社長の田中良和氏,Rovio Entertainment CEOのペッカ・ランタラ氏
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概説:ゲーム市場におけるモバイルゲームの現状とは


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 ディスカッションのメインテーマは,ざっくり言えば「モバイルゲームの現状と今後」ということになる。
 真田氏は,世界的に見るとモバイルゲームの市場はさらに拡大傾向にあるが,日本のデベロッパは,必ずしも世界市場において大きな成功を収めているとは言いがたいと指摘。
 そこで今回は,日本を含め世界的に成功を収めているKingとRovioのCEOを招き,日本と世界の市場の違いや,今後グローバル市場で成功していくためには何が必要かをディスカッションしようというわけである。

 真田氏は,ディスカッションに入る前に,ゲーム産業の現状について簡単な解説を行った。
 ゲームのハードウェアは,据置型のコンソール機と携帯型のモバイル機に大別されるが,市場規模では2013年にはモバイルゲームがコンソールゲームを追い越し,現在はモバイルゲームがゲーム産業の中心的地位を占めていると言える。
 真田氏は,ゲーム産業が花開く変化を遂げた理由として,汎用性の高いプラットフォームであるスマートフォンが登場したことと,ゲームに対するユーザーの支払いが,パッケージゲームのようなプリペイド式から基本無料+アイテム課金型のポストペイド式に変わったことを挙げた。

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 モバイルゲーム市場を語る際には,そのゲームがどれくらいの人に遊ばれているかというMAU(Monthly Active Users,月間アクティブユーザー数)や,ユーザー1人あたりの月間利用額であるARPU/ARPPU(Average Revenue Per [Paid] User)が指標となる数字としてよく挙げられる。
 真田氏は,この2つの数字の傾向を見ることで,おおまかにゲームのカテゴリを分類できると語る。

 MAUが高くARPPUが低い,つまり母数となるプレイヤー数は多いが課金率は低いゲームは,カジュアルゲームと呼ばれる。「キャンディクラッシュソーダ」や「Angry Birds」が含まれるのはこのカテゴリだ。
 その反対に位置するコアゲームは,MAUは低いがARPPUは高い傾向にあるゲームを指す。モバイルゲームでは明確にコアゲームと言えるゲームは少ないが,MMORPGのようなスタイルのゲームはコアゲームと呼べるだろうと真田氏は語る。
 そして,MAUもARPPUもそこそこ高い,カジュアルとコアの中間的なゲームはミッドコアと呼ばれ,日本市場ではこのグループが売上の中核を形成していると真田氏は説明。代表例としてガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」やSupercellの「Clash of Clans」などを挙げていた。

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 またゲームでは,ユーザー層による分類以外にも,その内容(ジャンル)も重要になってくる。
 真田氏は,ヒットするゲームのジャンルは地域によって偏りがあり,中国や韓国ではMMO系が,欧米ではカジノ,シミュレーション,パズルといったジャンルがヒットする傾向にあると述べる。日本市場ではRPGが最も強いが,これは世界的に見てもレアケースなのだとか。

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RovioとKingはどうやって成功したか


 次に,RovioとKingはどのようにして世界的な成功を掴んだか,両社のCEOによって語られた。

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 Rovioのランタラ氏は,良いゲームを作ることがスタートでありゴールだと述べるが,良いゲームであれば売れるとは限らないと釘を刺す。現在のモバイルゲーム市場では,72時間で900本ものゲームがリリースされており,これはNES(ファミリーコンピュータ)が発売から9年間で発売されたゲームの数に相当する。市場にはアプリが星の数ほどあり,日々競争が激化しているため,成功を収めるのは非常に難しいというわけだ。
 ランタラ氏は,そういった状況の中で成功するため,Rovioではブランディングに力を入れたと述べる。
 各種有名IPとコラボしたスピンオフ作品の制作などを行うことで認知度を上げ,「Rovioのゲーム」であることがユーザーの選択において重要な判断材料となるようにしたのである。加えて,アニメや映画,グッズなど,ゲームの枠を超えたライセンスビジネスやクロスプロモーションも重要だと述べていた。
 もう一つ重要なのが,発表するゲームの多様性を担保すること。Rovioでは「Angry Birds」のキャラクターを使ったレースゲーム「Angry Birds GO!」をリリースしているが,こちらは1億2000万ダウンロードを突破している。1つのジャンルに留まらず,複数のジャンルに手を伸ばすことで,ビジネスの可能性は広がるとランタラ氏は話していた。

 Kingのザッコーニ氏も,クオリティの高いゲームを作ることは第一条件だと語るが,1つだけではなくたくさん作ることが重要だと付け加えた。
 Kingの場合,世界的に見てもっとも人気のあるカジュアルゲームに焦点を置き,創業から12年の間で,実に200タイトルにも及ぶゲームを作ってきたという。Web上にテストプラットフォームを置き,3人のチームで5か月程度という低コスト&短期間で,月に1本のペースで新作を量産していったそうである。
 もちろん,そうやって完成したゲームの出来栄えはさまざまで,すべてクオリティが高かったわけではないと氏は続ける。
 だがここで重要なのは,「うまくいく」モデルを生み出すことだ。世界を席巻した「キャンディークラッシュ」のように成功例を作れれば,以後はマネタイズやUI設計などにそのモデルを踏襲していくことができるからだ。

 ザッコーニ氏は,広告や宣伝は重要であり,Kingでも予算を組んでいるが,「キャンディクラッシュソーダ」の場合,とくに大きなマーケティング施策を打たなかったとコメント。
 それにもかかわらず,日本ではリリース後1週間で「最もダウンロードされたゲーム」にランクインしたり,アメリカではリリース2日目で「ベスト5ゲーム」に選ばれたりしたとのこと。
 成功したモデルをしっかり分析し踏襲すれば,続けてヒットを出すことも可能だということを示した良い例と言えるのかもしれない。


日本市場に参入する難しさと成功するための施策


 世界的には大きな成功を収めているRovioとKingだが,市場としての日本に乗り込むにあたっては,さまざまな苦労が伴ったそうだ。

 Rovioのランタラ氏は,かつてフィンランドの電気通信機器メーカー・ノキアのCMO(Chief Marketing Officer)として日本市場参入の苦労を経験していたが,Rovioでも苦労するポイントは同じだったそうだ。
 そのポイントとは,「日本にディストリビューション(流通)のネットワークを作らねばならないこと」「日本人に共感を持ってもらわねばならないこと」の2点だという。
 ランタラ氏は,現地のパートナーを見つけることが,日本市場で成功する大きな鍵になると強調した。たとえば,海外では配信が開始されている最新作「Angry Birds Fight!」の場合は,現地のパートナー企業と組んで展開を行っているそうである。

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 Kingのザッコーニ氏は,日本のゲーム市場を「世界でもっとも進んだ市場であり,プレイヤーももっとも洗練されている」と分析し,日本市場から学ぶことは多いとした。Kingでは,日本向けの専門マーケティングチームを作っているとのこと。
 またザッコーニ氏は,日本市場はミッドコアおよびコアカテゴリの人気が高く,若い男性をターゲットにしたゲームが多いとコメント。そのため日本市場に対しては,カジュアルゲームの人気が高いグローバル市場とは異なるアプローチが必要だと述べた。
 とはいえザッコーニ氏は,このような日本の市場背景を見て,同社がカジュアルゲームを提供すれば,男女問わず楽しんでもらえることを確信したと話す。言い換えれば,カテゴリ内に強大な競合相手が存在しないことから,シェアを獲得できる可能性が高いと見込んだということだろう。
 もちろん,ただ参入するだけではなく日本向けの施策も導入した。たとえば,日本では,プレイヤーにゲームを長く遊んでもらえるように,ゲーム内イベントなどを短いスパンで配信し続ける「ライブオペレーション」と呼ばれる運営が一般的だ。
 これまでKingでは,ライブオペレーションのような手法を行っていなかったのだが,日本市場から学び導入したと,ザッコーニ氏は述べていた。


日本企業が海外で成功するには


 続いて議題に上がったのは,日本企業が海外市場に進出するにあたり,何が成功の鍵になるのかという点だ。これについては,グリーの田中氏とKlabの真田氏がそれぞれの見解を述べた。

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 田中氏は,まだ自分達も成功と言うには道半ばだと前置きをしつつ,現地での開発を重視しているとコメントした。というのも,グリーではこれまで,アメリカや韓国で作ったゲームを日本に持ち込んだり,日本で作ったゲームを海外で展開したりと,さまざまなパターンにトライしてきたが,成功したのは「北米向けのゲームは北米で作る」という現地開発の方式だったのだとか。
 そのため,企画やグラフィックスなどが海外展開に向いたゲームを日本で作るのは難しいと判断し,現在では,企画段階から完全に現地で制作する方式に移行しているという。たとえば,現在,グリーの米国スタジオでは300人ほどが勤務しているが,そこで働く日本人は3〜5人程度だという。経営陣もほぼアメリカ人が主体で,ほぼ完全なローカルオペレーションになっていると田中氏は語った。
 ただし,日本と韓国では比較的市場の傾向が近いため,日韓共同でゲーム制作を続ける予定とのこと。

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 Klabの真田氏からは,同社のグローバル展開における具体的な手法が紹介された。
 Klabでは,ユーザーが期待するゲーム性が異なるという理由から,マーケットを欧米・中韓・日本の3つに分類しているという。
 また,ゲームの企画はそれぞれの地域で立てるが,開発に関してはノウハウが分散するのを防ぐため,日本で行っているとのこと。その例として挙げられたのが,海外ドラマ「glee」(グリー)の音楽ゲームだ。
 このタイトルには,KLabがブシロードと共同で開発・運営している「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」の技術やノウハウが導入されている(関連記事)。
 これは,Kingのザッコーニ氏が語っていた,成功したゲームのマネタイズやUI設計などのモデルを新作に踏襲できる,という手法に通じるところがあると言える。

 田中氏は,同社が海外展開をする際,ゲームを展開する国で開発も行う施策を採っていることについて,ランタラ氏とザッコーニ氏に見解を求めていた。
 これに対してランタラ氏は,日本での開発には興味があるとし,実際「Angry Birds Fight!」も日本で開発が進んでいると明かした。
 一方のザッコーニ氏は,先のテーマで日本市場の重要性を語ったが,Kingではあくまでグローバル市場での展開に重きを置いており,ゲーム制作に関しては国よりも才能,つまり開発力が基準になると話していた。


モバイルゲームのこれから


 最後に,モバイルゲーム産業がどのように変化していくのか,そしてそれに同対応していくのかを,ランタラ氏,田中氏,ザッコーニ氏が語った。

 Rovioのランタラ氏は,モバイルゲーム市場の未来は明るいと語る。
プレイヤーがゲームに対してお金を払うという習慣を獲得してきており,市場全体の売上が伸びてきている。また,開発者の技術水準が上昇していて,ハードウェアやネットワークインフラも進歩し続け,市場が活性化する複数の要素が揃っている。氏はこれを「成功のカクテル」だとたとえていた。なおランタラ氏は,今後はマルチプレイヤーのレイヤーにおいてもイノベーションが続くだろうとも予見していた。
 ランタラ氏はさらに,モバイルゲームがコンシューマーゲームや各種メディア,アニメーションなどとの間に接点を増やしていくことが重要だと語る。また,広告に関しても,プレイヤーに対してよりよい経験となるような手法が発展していくのではないか,そのイノベーションはコンシューマーゲームにも良い影響を与えるだろうと,自身の見解を語った。

 グリーの田中氏は,ゲーム産業はまだまだ先が長い成長産業だとコメント。日本ではそろそろ成長限界に達しているが,近年注目されている中国市場をはじめ,インドや東南アジアなどの市場が拡大していくのは間違いないし,世界的に見ると規模は拡大し続けると語った。
 また,スマートフォンの世界的な普及によってゲームを遊ぶための敷居が下がり,今後もマーケットは拡大していき,モバイルゲーム産業は10年後にはより大きなビジネスになっているだろうと見解を述べた。

 Kingのザッコーニ氏はまず,現在のアメリカでは,人々が1日あたりでモバイルコンテンツに費やす時間がテレビの次に多くなっているが,テレビに消費する時間が以前に比べて減っていないという検証結果が出ていると話す。そこには「エンターテイメントの消費のされかたの違い」にあると述べた。
 普通に考えれば,1日の時間は有限なので,何かに時間を消費すれば別の何かに消費する時間は減るものだ。しかし,モバイルコンテンツは,電車やバスなどでの移動中であったり,テレビを見ながら同時に利用されたりといった“隙間”に時間を費やせる。つまり,ほかのエンターテイメントと競合しない,場合によっては共存できるというのが大きなメリットということである。
 そのため,ザッコーニ氏はモバイルゲームは短時間で遊べることが重要だと語る。さらに,今後はモバイルに限らずどんなデバイスでも遊べることや,それを誰と遊ぶのかが一層重要視されるのではないかと語った。そこでゲームのブランディングはより重要になっていくだろう,というのが氏の見解である。

 最後に真田氏から,世界的に見てモバイルゲームのマーケットが今後もより拡大していくことは疑いがないというコメントが添えられ,パネルディスカッションは締めくくられた。

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