企画記事
だいじょーぶ? 3DSとかPS Vitaのバッテリー爆発してない? 怖かったから実家に帰ってみたら……(爆発してなかった)
3DSとかPS Vitaとかのバッテリー爆発してない?
もうしばらく遊んでないまま実家に放ったりしてない?
ねえ,ほんとに,だいじょーぶ…………?
2020年前後のことだ。主にSNS上で「携帯ゲーム機のバッテリーがめっちゃ膨らんでヤバい!」といった類いのトレンドが流れた。
そこで挙げられた名は「ニンテンドーDS」「ニンテンドー3DS」,「PlayStation Portable」「PlayStation Vita」など,2000年代からゲーム業界を駆け抜けていった携帯ゲーム機たち(※)。
そして彼らが知らずのうちに,危険をもたらすとかで……?
※以降,上記の携帯ゲーム機を「DS / 3DS / PSP / PS Vita」と表記
問題のあらましを伝える。携帯ゲーム機ならびにノートPC……といった特定機器のみならず,生活全般の電化製品において普遍的に扱われているバッテリー「リチウムイオン電池」(※1)は,経年劣化により膨張すると最悪“発煙・発火現象”(※2)を引き起こすとされる。
※1:繰り返し充電できる二次電池。大容量かつ長寿命が特長
※2:劣化・寿命により,リチウムイオン電池内の電解質が酸化し,ガスが発生すると,形状が膨張する。その状態で衝撃などが加わると発煙・発火を引き起こし,置き場所によっては家屋の火災を招く
リチウムイオン電池は全製品が規格統一されているわけではないため,一概に「全部ヤバい」といったことはないだろう。
メーカーごとの企業努力により耐久性などを向上させた結果,なかには問題発生率を最小限に抑えられているものもあるはずだ。
それでも,潜在的な“可能性の話”は避けられない。
なにより,我々のメンタルがビビってしまうほうがデカい。
参考:東芝「リチウムイオン電池ってどんな仕組み?」
参考:Panasonic「リチウムイオン電池」
単純に,下記の状況に思い当たる人はいるのではないか。
「あー,もう遊んでない3DS,学習机に入れっぱなしだー」
「ゲームボーイブロスにポケモン青を差しっぱなし」
「実家に置いてったPS Vita,もう何年も起動してない」
「ワンダースワンの鉄拳 カードチャレンジが現役」
このうち,ゲームボーイとワンダースワンは単三電池稼働なのでタダの引っかけ問題だが,少年時代をともに生きたスーパーアバンテ(ミニ四駆)などをおもちゃ箱に放置していたヤンチャボーイは,アルカリ電池が“白い粉”(※)を吹き出している姿を目撃したはずだ。
これもまた「触るな危険」なので,別種だが同じ問題である。
※白い粉は,乾電池内のアルカリ液が結晶化したもの。触れると皮膚障害を引き起こす恐れがあるため,速やかに水洗いする必要がある
といったように,1980年代〜2010年代あたりを少年心のままに駆け抜けてきた元ヤンチャボーイたちはとくに危険なのである。
それぞれの時代を一緒に歩んできたかつての相棒たちは今,実家の押し入れで危険な状態でいるかもしれない。きっと「さようなら」も言わないまま,次から次へと乗り換えていったのが君たちなのだから。
それでも安全と言い張れるのは,ビーダマンとかハイパーヨーヨーとかジターリングくらいのものだろう(選出はコロコロ派に準拠)。
そんなわけで年末年始ぶりに実家に帰り,もはやどこにあるのかも記憶にない相棒たちの状態を確かめにいってきた。
所有していた該当の携帯ゲーム機は「3DS LL」「PSP」「PS Vita」で,DSi/2DSは姪っ子にお下がりしたから残っていない。
というところまでは覚えていたが,気付けば3DS LLも貢ぎ物にされていたらしく,母に尋ねるも「ないよ」の一言で済まされた。
成人した者が,まともに部屋を片付けずに実家を出るというのは,こうしたナワバリバトルでの無条件敗北を意味している。
さて,スーパーファミコンやドリームキャストやXbox 360などの家庭用ゲーム機は一緒になって押し入れにいることが分かっている。だが,携帯ゲーム機はその身軽さゆえに見当がつかない。
結果からいうと,一番ヤバそうなオーラを放っていそうなPSP(しかも初代1000型)は所在が不明で,来年の自分に任せることにした。
そうしてどうにかPS Vitaだけは,子供時代のおもちゃ入れから,飼い猫のおもちゃ入れに変異していた収納棚で発見した。
これぞまさしく,世間一般の母なる生物が,彼らをいかに“おもちゃ”という大ざっぱで節操のないくくりで見ているのかがよく分かる事例だ。もっとも,その暴挙に「おもちゃじゃねえ!」と反論するこちらも,いかに整理整頓しない生態だったかがよく分かる。
といったわけで,サンプルが1点だけになってしまったが。
いざ,開封。参ろうぞ。
■ウチのPS Vita
普通に大丈夫だった。むしろ普通すぎて「これならあと20年は放置でもいいかな?」と思ってしまうくらいだった。
バッテリー膨張の主な要因がなんなのかは,科学的見地から確かな言質を出せる身ではないものの,“劣悪な保管場所”が劣化を加速させる原因となるのは間違いないだろう。そして携帯ゲーム機に限っていえば,問題はやはり温度・湿度に行き当たるのだろうか。
DSシリーズのほうは2023年3月28日の「ニンテンドーeショップ サービス終了」に伴い,久々に起動したという人も割合いるはず。
だがPSP / PS Vitaのほうは,彼らの後年を支えた偉大なる乙女ゲーマー層を除けば,スマホにSwitch(にSteam Deck)に移り変わってしまって忘れている人も多いだろう。家のどこに置いてあるのかは分からずとも,どこかにあると確信できる人は,久々に確認してみよう。
そうしないと,この話を編集部に挙げたとき「パンパンに膨れ上がったモバイルバッテリーでよければ実物ありますよ。捨てるに捨てられねえ(笑)」とウキウキで話してきた編集者のように,下図のような笑いごとじゃない時限爆弾を抱えるハメになる。
さて,そのうえでこーーーんなどうしようもないグロ画像と化してしまったリチウムイオン電池の扱いについてだが,任天堂およびソニー・インタラクティブエンタテインメントのサポート関連を調べてみた。
結論から言うと,手段は「破棄(リサイクル)」or「交換」となる。具体的な対処に当たりたい人は下記を参考にしてほしい。
■(1)破棄(リサイクル)のケース
まずは破棄について。DS/3DSの下記参考URLはPDF形式となるため,チラ見するだけならPlayStationサポートを見るほうが手軽だとしつつ,いずれも“手動で取り外してリサイクル協力店に引き渡す”ための手段が説明されている。取り外しにはドライバーなどの工具も必要だ。そのうえで両社ともに,一般社団法人JBRCの「協力店・協力自治体」検索を促している。同法人は小型充電式電池のリサイクル活動を推進している団体で,要は電池回収のプロといったところである。
一応,在住地域に協力店があるか調べてみたところ,地域内に10を越えるショップがあった。利便性は低くはなさそうなので,見た目がグロ化したバッテリーはJBRCの協力を頼るとよさそうだ(※)。
このほか,市役所などに回収ボックスが設置されていることもある。
なお,ふと思いついた“膨らんだやつを売る作戦”は,ゲーム専門店であれば相談の余地,もしくは引き取りを考慮してくれそうだが,フリーマーケットなどでの個人間売買はマジでやめておこう。
危険物所持の編集者スタッフにも「捨てろ」と言っておいた。
PDF「ニンテンドーDS」バッテリー取り扱い
PDF「ニンテンドー3DS」バッテリー取り扱い
「PlayStationサポート」バッテリー取り扱い
JBRC「協力店・協力自治体」検索
■(2)交換(=購入)のケース
交換についてはDS/3DS,PS Vitaは対応しているが(※),アフターサービスが終了しているPSPのみメーカーを介した交換ができない。PSP実機の熱狂的ファンには,新型ゲーム機が出るたびに分解しまくりの4Gamerらしく“こういう感じ”で挑むのもアリと言っておく。
※2023年4月時点のサポート状況。将来的に変化する可能性あり
なお,DS/3DSシリーズに関しては下記の「任天堂パーツ販売」でバッテリーパックを購入し,自分で交換する流れである。人によってはSwitchの純正品パーツの個別販売に目を奪われるかもしれない。一方でPS Vitaのほうは「オンライン修理受付サービス」での対応となる。
旧来の携帯ゲーム機市場がすでに崩壊してしまったこのご時世。交換という選択肢を取るにもある種の熱量は求められそうだが,DS類に関しては“予備のお守り”としてストックを持つのはありかも?
DS/3DS「任天堂パーツ販売」
PS Vita「オンライン修理受付サービス」
日本どころか世界,いやこの場合は人類だろう。現代では人類の科学文明において普遍的な汎用電池となっている(んだと思う)リチウムイオン電池は,その利便性の裏に,潜在的な危険を孕んでいる。
などと過度に脅かしたい新世代電池技術界隈からの回し者ではないし,仮にバッテリー膨張までいっても直接的な被害に及ぶケースは多くないかもしれない。正直,(心情的な)耐用年数で考えると2023年現在,3DSやPS Vitaがマズい状況になっているのは「そりゃそうなるわ……」と言われても仕方ないようなケースだけだろう。憶測の話だが。
けれど,たくさんのありがとうをくれた数々の愛機たちが,この先の人生で悪い思い出に変わってしまうのは,悲しい話だ。
DSに3DSにPSPにPS Vitaにと。人それぞれ,人生を豊かにしてくれた思い出いっぱいの子たちと適切にお別れする。そんな携帯ゲーム機終活を,この機会に考えてみるのはいかがだろう。
といっても,ウチで余生を過ごしていた子ですら,まだまだ現役稼働ヨユーである。久しぶりに触ると「(Switchよりも小柄で)持ちやすさとコントローラが一体化したプレイ感覚」は,2023年なればこその新鮮味を与えてきた。引っ越し準備よろしく,どハマりにはご用心を。
一時代を築いてきた彼らだ。それだけの力はまだまだある。
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