企画記事
“PCの節電”考えてる? 電気代が高くつきそうな2024年冬のために,PC販売のプロに「気軽な節電法」を聞いてきた
今年を振り返ると,なにかと電気代の話をよく聞いた。というのも多くの電力会社が「電気代を値上げ」したし,物価も上がったしで,各方面からの打撃が生活に響いた。エアコンが必須だった夏の電気代なんて,請求書を見るのが怖かった。この冬だってめちゃくちゃ怖い。
そんな現代人のライフスタイルで必要不可欠なものと言えば……そうパソコン。PCだ。これがないと仕事ができず,ゲームもできない。「PCでゲームしないと生きてけないし!!」という人も多いはず。
そこで疑問が浮かんだ。これまで“PCの電気代”って気にしたことなかったかもと。トラウマになるほど高かった電気代の原因って,実はPCなのでは……? 基本つけっぱだったし。筐体もホッカイロだし。キーボードもマウスもめっちゃ光ってるし。うん,絶対これのせい。
ということで今回は「PCの電気代や節電について」,PC販売のプロである“ドスパラ秋葉原本店の店長”に尋ねてきた。来る2024年の冬本番は,PC節電マスターになって省エネで乗りきるぞ!!
ドスパラ秋葉原本店 |
店長の久末翔希氏(「World of Tanks」元プロプレイヤー) |
「電気代」ってどう発生するの?
まずは前提条件として,まったく無知な身ながらも,電気代が発生するギミックを調べたのでフワッと説明していこう。
今回は例として「消費電力が常に100WのPC」があるとし,このPCを“まる1日使用した場合の電気代”を求めていく。
なお,電気代の基準とするのは,2023年12月現在における東京電力の電力量料金「1kWhあたり30円(※)」とする。
※1キロワットアワー=電力1000Wを1時間使用したときの電気代
家電や電子機器でよく見かける「W数(ワットすう)」とは,その機器を1時間使用したときに消費する電力量のことだ。
なので,電気代は「W数÷1kWh×使用時間」で計算すればOK。ここで100WのPCを1時間,あるいは1日中使ったときの電気代を算出すると。
・100W÷1000Wh×30円×1時間=1時間/3円
・100W÷1000Wh×30円×24時間=1日/72円
100WのPCを1日中使ったときの電気代は「72円」。けっこう安く見えるが,1か月(30日)だと……「2160円」。現実的な長時間使用は1日12時間ほどだろうが,その場合も月1080円。意外と高い。
これでなんとなく,電気代が発生する仕組みを理解できただろうか。事前の準備が整ったところで,さっそく本題に入っていく。
なお,話の流れは「気軽な設定変更で節電」と「PC構成から見る節電」となるので,自身に合ったほうを参考にしよう。
気軽な設定変更で節電
Q:PCの消費電力ってどれくらい?
A:最小で20W〜,最大で400W〜(青天井)
4Gamer:
最初に,PCの消費電力ってどれくらいなんでしょう。
久末翔希氏(以下,久末氏):
PCの構成パーツやスペックで前後しますが,大別するとビジネスクラスのノートPCなら「20W〜30W」ほど。ミドルクラスのデスクトップPCなら「200W〜400W」ほど。ハイエンドのゲーミングデスクトップPCなら「400W〜700W」ほどの消費電力があります。
■それぞれ最高W数×24時間使用時の電気代
・ビジネス:1日/21.6円。1か月/648円
・ミドル:1日/288円。1か月/8640円
・ハイエンド:1日/504円。1か月/15120円
※あくまで,1日中つけっぱなしの場合の目安です
Q:モニターの輝度を下げると節電になる?
A:わずかに節電になる
4Gamer:
液晶モニターの輝度を下げるのは節電として有効でしょうか。スマートフォンだと,バッテリーの持ちがけっこうよくなりますよね?
久末氏:
モニターの輝度を下げると“バックライトの消費電力が下がる”ので,わずかですが節電になります。
ただし,輝度を極端に下げると視認性が悪くなり,結果的に作業時間が延びて電気代が上がるなんてこともあるので,下げすぎはおすすめしません。無理のない範囲で設定しましょう。
Q:ピカピカなゲーミング系は電力を食う?
A:そこまで変わらない
4Gamer:
ゲーミングPCはめちゃくちゃ光りますが,消費電力も大きいですか。
久末氏:
ピカピカ光るのは消費電力が高いように思われますが,モニターの輝度と同じく,変わるといっても数Wほどの電力量です。それにこれらのライトはLEDの使用率が高く,消費電力も控えめな傾向にあります。
Q:スピーカーの音量を下げるのはどう?
A:意外と節電になる
4Gamer:
PCのスピーカーの音量を下げるのはどうでしょうか。
久末氏:
アリです。あまり注目されない部分ですが,オーディオ機器は音量を下げることで節電効果が見込めます。
ちょっとコアな話になりますが,スピーカーは“データを音として増幅させるための外部電源”を作動させるため,音量を下げることで消費電力の低減が見込めます。また,イヤホンやヘッドセットはそれらが最小構造のため,スピーカーよりも電力消費が少ないです。
そのため,音量や使用機器を意識すると省エネになります。
Q:PC設定でできる節電法は?
A:デスクトップ画面の壁紙を暗めのものにする
4Gamer:
PC上の設定だけで可能な節電法ってありますか。
久末氏:
一番手軽なもので言うと,「デスクトップ画面の壁紙を,暗めな画像や単色背景にする」ことです。これはモニターの輝度を下げるのと同様の効果が見込めるので,ごくわずかですが節電になります。
4Gamer:
アプリのダークモードなども有効なんでしょうか。
久末氏:
うーん,ダークモードの多くは節電目的ではないはずなので,一概には言えませんが。多少の効果は見込めるかもしれません。
Q:オカルト的な節電法とかは?
A:そんなにない
4Gamer:
PC好きに伝わる,オカルト的な節電法とかはありますか。
車の燃費が変わる不思議なエンジンオイルみたいな路線で。
久末氏:
あまり聞きませんねー。PCは構成と電力の関係が厳密なので。
Q:熱対策すると節電になる?
A:熱対策をする過程で節電になることがある
4Gamer:
PCの熱対策は節電になりますか。
久末氏:
熱対策を行う過程で,自然と節電になることがあります。
専門的な話だと,CPUの発熱を抑えるための方法に「ダウンクロック」がありますが,これは電力を制限して処理性能を落とす機能であり,必然的に消費電力を下げることができます。
そもそもの消費電力が低く,発熱しにくいCPUを選択するのも節電になりますし,部屋の温度を下げる,サーキュレーターで室内の空気を循環させることでもファンの回転数が下がり,消費電力の低減につながります。つまり,負荷を抑えることでの節電と言えます。
4Gamer:
暑さの話だと,夏場と冬場でPCの電気代は変わりますか。
久末氏:
PCは原則,内部温度が低ければ低いほど負荷を抑えられます。
そのため室内の温度調整を行わない環境であれば,冬の寒さのほうがPCにうってつけで,消費電力も抑えられるはずです。
ただ暖房を使う場合は,PCが吸気する空気も暖まることで負荷を高めますので,冬でも電気代が上がる可能性は十分あります。
4Gamer:
となると,PCの周りに氷をいっぱい並べるとかは?
久末氏:
力技ですが効果はあると思います(笑)。PCの温度管理は最終的に,冷えた空気を給気させ,熱を排気させるエアフローが重要ですので。
Q:スリープ機能はシャットダウンより省エネ?
A:短時間ならスリープ,長時間ならシャットダウン
4Gamer:
スリープ機能も節電話でよく聞きますが,有効でしょうか。
久末氏:
「PCを再使用するまでの時間」によります。
PCは起動時に大きな電力を消費するため,10分程度であればシャットダウンよりもスリープのほうが消費電力を抑えられます。
個人的にではありますが,私は4時間を超えるならシャットダウン,超えないならスリープといった目安でやっています。
4Gamer:
エアコンも,つけて消してが一番ダメって言われますもんね。
まあ,PCに関しては今まで節電を気にしたことはなかったですし,気にしたところで「僕には必要だからつけっぱなし」でしょうが。
久末氏:
消すのが面倒に思っちゃいますよね(笑)。そもそもPCユーザーは「(PCだけは)電気代を気にしない人」も多そうですし,家電業界のように節電がアピールポイントになりづらいのでしょう。
昔と比べると,SSDのおかげで起動時間も短くなっているものの。
4Gamer:
ちなみに,SSDとHDDで消費電力に違いはありますか?
久末氏:
消費電力はそれほど変わりませんが,起動時間には「SSDは約10秒」「HDDは約1分」などと差があります。そのため,PCを立ち上げるまでの時短的な意味合いで節電につながるかもしれません。
4Gamer:
最近はSSDも安くなってきていますしね。
久末氏:
はい。今はSSDもかなり安くなってきていて,3年前と比べると半額くらいで買えてしまいますので,お買い求めの際はぜひ!
PC構成から見る節電
Q:超ハイスペPCで節電する方法ってある?
A:性能と消費電力はトレードオフなので厳しい
4Gamer:
ここからは「PC構成から見る節電」をうかがっていきます。
まず,超ハイスペックなPCでの節電は難しいですか。
久末氏:
PCは原則,スペックと節電がトレードオフなので厳しいと思います。
Q:パーツは最新世代のほうが消費電力も低い?
A:一概には言えない
4Gamer:
エアコンや冷蔵庫などは最新機種のほうが節電性能も優れていると言われますが,PCの場合はどうでしょう。
久末氏:
一概にそうとは言えないです。
PCパーツの多くは,製品のシリーズ名称に記載された値が高いものほど最新で,性能向上に伴い消費電力も上がることが多いため,最新PCを買えば節電できるとは言いがたいです。消費電力を抑えたいのなら,スペックを基準に買い替えるべきでしょうね。
4Gamer:
買い換えでスペックを下げる選択はしづらいですね……。
Q:PCで消費電力の大きいパーツは?
A:グラフィックスカードです
4Gamer:
PCで最も消費電力の大きいパーツってなんでしょう。
久末氏:
やはりグラフィックスカードです。最新世代ならパーツ単体の消費電力だけで“デスクトップPC 1台分”くらいあります。
ただし,現行のミドルクラス製品は技術進歩により,ワットパフォーマンス(1Wに対する性能)が年々向上していることで,過去のハイエンドクラスと同性能で消費電力が低減されている例も多いです。
4Gamer:
節電を考えるなら,グラフィックスカードから選ぶべきですか。
久末氏:
そうですね。電気代を考えてPCを組むのは珍しいかと思いますが,節電を踏まえるなら第一にグラフィックスカード,第二にCPUです。
現行世代なら「GeForce RTX 4060」あたりの,消費電力を抑えつつ,人気ゲームも一通り遊べるミドルクラスがおすすめです。
Q:ほかのパーツで節電するなら?
A:電源がわりと大事
4Gamer:
ほかのパーツで節電になるのは,どのあたりでしょう。
久末氏:
それなら電源でしょうね。電源には,電力効率がよくなる選び方として“パーツの総使用電力の2倍のW数を選ぶ”という方法があります。
それ以上でもそれ以下でも電力効率は低下してしまうので,パーツを組み合わせて値を算出したら,最後に電源を選びましょう。
4Gamer:
適正値が大切なんですね。
久末氏:
電源にはほかにも「80PLUS認証」という,コンセントからPCに電気を流すときの電力変換効率性能を表すグレードがあります。「STANDARD」から「TITANIUM」までの6段階に応じて,結果的に消費電力が変わるため,ここも意識しておくと節電につながりそうです。
あとはモニターの使用枚数を減らすとか,USBデバイスを減らすとか,外部機器を調整する手段はいくつかありそうです。
4Gamer:
パーツの使用電力って,どうやって計算すればいいんでしょう。
久末氏:
ドスパラ公式サイトに「パーツを選ぶと,どの電源がオススメかを算出してくれる便利ページ」があるので,ぜひ活用してください。
4Gamer:
メチャクチャちょうどいいのが。
Q:節電目的でノートPCを買うのはアリ?
A:なにを優先するかで決めよう
4Gamer:
ゲーミングノートPCはゲーミングデスクトップPCより消費電力が低いと聞きますが,節電目的で選ぶのはアリでしょうか。
久末氏:
デスクトップPCに比べると消費電力はおおむね抑えられますが,電気代と性能,どちらを優先するかの話になりますね。
例えばグラフィックスカードですが,ノートPCでは製品名称が同じでも,“ノートPC用にカスタムされ,性能も消費電力も制限”されています。これにより,想定していたよりも実際のスペックに満足いかないケースも少なくないので,そこの兼ね合い次第です。
4Gamer:
ノートPCに乗り換えるだけで節電,なんて甘くはないんですね。
Q:逆にハイエンドPCで暖房代は浮く?
A:暖房にはなるが,夏場は冷房代が
4Gamer:
逆に考えて,ハイエンドPCを暖房代わりにする路線はどうですか。
久末氏:
私の場合だと,家では机の足元にそれなりのPCを置いていますが,けっこう暖かくなりますね。暖房いらずとまでは言えませんが,間接的に節電にはなっている……かもしれません。
ですが,夏場はPCをつけてるだけで部屋が暑いです(笑)。
4Gamer:
夏はPCゲーマーの大敵ですねえ。
Q:それで,店長さんはPCで節電してる?
A:考えたことない
4Gamer:
ちなみに,PCで節電を考えたことは。
久末氏:
ないです。僕はスペック最優先の性能重視,最強PCを常に持っておきたいので,PCの電気代については考えたこともなかったですね。
そんなんだから家のPCが毎日熱々なわけで(笑)。
4Gamer:
やっぱり。(PCジャンキーなら)普通は考えませんよね。
久末氏:
普段は電気代に無頓着で,明細すら見ませんし。しかし,この1年で電気代が上がったという話はけっこう目にしたので,なんとなく見てみたところ,毎月1万円くらい上がっていたのにはかなり驚きました。
4Gamer:
実害がデカい。
久末氏:
ただ,PCで節電できることは確かにたくさんあるはずです。もし電気代を気にしている人がいれば,ワットパフォーマンスに優れる,消費電力を極力抑えたPCなどもご提案できますので,冬場にPCの買い換えを考えていらっしゃる方々は,ぜひドスパラにお越しください!
4Gamer:
宣伝力も高い。
ということで,ドスパラ秋葉原店での話は以上だ。PC上での節電設定はすぐにできそうなので,今日から試してみようと思う。
あらためて,PCの電気代の多くは使用しているパーツの性能で大きく変わる。そしてゲーム,クリエイティブ,ビジネスなどなど,自身の用途に合わせてパーツを選ぶのが大切だ。よく分からないときは,こうした専門店のプロたちに最適なPCを聞いてみるといいかもしれない。
「ドスパラ」公式サイト
「ドスパラ秋葉原本店」ページ
ドスパラ「電源容量計算機」ページ
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