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名門オーディオ企業のゲーマー向けヘッドセット「MMX 300」を試す。モニターヘッドフォンの特徴はゲームにも最適だ[PR]
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印刷2023/06/09 12:00

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名門オーディオ企業のゲーマー向けヘッドセット「MMX 300」を試す。モニターヘッドフォンの特徴はゲームにも最適だ[PR]

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 今回は,ドイツのオーディオメーカーであるbeyerdynamic(ベイヤーダイナミック)が開発したゲーマー向けのピュアアナログヘッドセット「MMX 300」を取り上げよう。世界的に「ヘッドフォン御三家」の一角に数えられるbeyerdynamicが手がけたゲーマー向けヘッドセットは,どのような製品なのだろうか,例によってじっくり見ていこう。

MMX 300
メーカー:beyerdynamic
実勢価格:3万4980円前後(税込,※2023年6月9日現在)
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MMX 300と同梱物。左上から時計回りにヘッドセット本体,持ち運び用のケース,ゲーム機接続用ケーブル,PC接続用ケーブルだ。PC接続用ケーブルには,6.3mm標準端子変換アダプタが取り付けられているのが見える。変換アダプタは,もちろん取り外し可能だ
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業務用モニターヘッドフォンをベースとした質実剛健な外観


DT 770 PRO
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 先述したとおり,MMX 300は,密閉型ピュアアナログヘッドセットだ。長年にわたってプロユーザーから高い支持を得ている定番のスタジオモニター用ヘッドフォン「DT 770 PRO」の32Ω出力バージョンをベースにしたゲーマー向けモデルのようだ。
 MMX 300は,外観もDTシリーズによく似ている。DTシリーズのエンクロージャを横切る製品名ロゴ入りの部品を取り除いて,左エンクロージャにマイクブームを取り付けたような外観だ。ただし,DTシリーズとは異なり,ヘッドセットにつながっているケーブルは,取り外し可能である。

色はすべて艶消し黒で,業務用モニターヘッドフォンがベースになっているからだろうか,精悍で質実剛健な印象を受ける
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 イヤーキャップ部分は,最近のヘッドセットに比べると,やや大型に見え,実測約100mmの正円型をしている。イヤーパッド部分を除いた厚みは実測35mmくらいだ。

首像に装着した状態
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 左イヤーキャップ中央にマイクブームが取り付けられているのを除けば,ボタンやダイヤル,装飾的な突起などはない。イヤーキャップの下側に,MMX 300の製品名と音量メーターのようなデザインが印刷されている程度だ。

イヤーパッドはほぼ円形で,ソフトなベロア素材で覆われている
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 裏側のイヤーパッドは,実測で100×105mmくらいのわずかに楕円形をしたもので,「beyerdynamicのDTシリーズと言えばこれ!」というくらいアイコニックで特徴的なベロア素材で覆われている。厚みは実測20mmくらいで,色は艶消し黒だ。
 このイヤーパッドは,スタジオ録音時の使用でも音漏れが少なくなるように気密性が高くなっているが,その分,最近流行のスポーツメッシュ素材と比べて,少々蒸れやすいかもしれない。没入感や音漏れ防止を重視して,プロユーザーから長年支持されているbeyerdynamic独自のベロア素材イヤーパッドを採用したのだろう。
 クッションは,ややソフトだが高反発というか,戻りは早い。取り外し可能で,イヤーキャップ外周に引っかけて取り付けるタイプだ。

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 イヤーパッドではなく,本体側に貼り付けられているスピーカーネットは,真っ黒なストッキング素材,というより,もっと厚手のスポンジ素材で,そこから先は開けられない。そのため,スピーカードライバー自体を見ることはできなかった。触ってみた感じだと,プラスチック素材のスピーカーグリルでスピーカードライバーが保護されているようだ。
 製品情報ページによると,スピーカードライバー(※ドイツ製だからか,仕様表記では「トランスデューサー」と書かれていた)は,ダイナミック型で,周波数特性は5Hz〜35kHzとある。ただ,ドライバーのサイズに関する記述はない。

イヤーパッドを外した状態。スポンジ状のネットで覆われているので,ドライバー自体は見えない
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 金属製と思われるアームは,スライダーと一体となっている。エンクロージャの両端と二点留めされており,ヘッドバンドとの接合部はプラスチック製でここには左右とも表側にbeyerdynamicのブランドロゴとアイコンがエンボス加工されている。

ヘッドバンドのアームを伸び縮みさせた様子
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イヤーキャップは前後には動かず,上下のみ,目視で約30度程度動く
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スライダーの内側。長さの目安になる凹みがある
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 スライダーの裏側には長さ調整の目安となる7つの丸い凹んだ目盛があり,ヘッドバンドを伸び縮みさせると,軽いクリック感がある。長さは8段階に調整可能だ。ヘッドバンドとの接合部の裏側には,左右どちらかを示す「L/R」と「MADE IN GERMANY」の文字がエンボス加工されていた。

 ヘッドバンドの幅は,実測約35mmで,厚みは同20mmくらいだ。表も裏もクッションの入った合皮素材で,裏側の頭に当たる側は厚みがある。ロゴや製品名はない無地無印である。

ヘッドバンドは表も裏も合皮製で,ロゴなどはない
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 筆者も初めて知ったが,MMX 300は,ヘッドバンドのクッションが面ファスナーを使ったものになっており,取り外せるようになっていた。業務用製品が基になっているので,可能な限りユーザー側で消耗品の交換ができるようにしてあるのだろう。
 ヘッドバンド内部は金属素材で,軽量化のために大きめの穴が開けられている。ここに先述のクッションを巻き付けて,面ファスナーで止めているわけだ。

ヘッドバンドのクッションは,ユーザーが取り外して交換できるという珍しい仕様だ
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 左イヤーキャップに取り付けられたマイクブームは,これまで見た中では最長クラスの長さがある。製品情報ページでは「約150mm」とあるが,端子を除いた実測の長さは約128mmだった。マイクブームの端子部分が大きいわけだ。

長めのマイクブーム
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 ブームは取り外せないが,回転の自由度は高く,接続部分から300度くらい回転する。下側には回転しない。なお,上に跳ね上げても自動でマイクが消音にはならないので注意しよう。

ブームの回転範囲。後方下側の約60度分は回らない
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マイクブームを狙ったところにピタッと設置できるのは好印象だ
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 マイクに取り付けられたスポンジ製のポップノイズガードは,直径が実測約23mmで,長さが約45mmだった。
 ポップノイズガードを取り除くと現れるマイク部分は,直径が実測約13mmで,厚みは約15mm。口側は,非常に目の細かい金属メッシュのカバーが取り付けられており,裏側にはスリットが入っている。製品情報ページによると,前面の集音力が背面より高いカージオイド型(ハート型)の指向性コンデンサマイクを採用しており,周波数特性は30Hz〜18kHzだそうだ。

※息を強く吐くと生じる「ボッ」という破裂音を軽減するために取り付けられている

マイクの口側(左)と外側(右)
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 着脱可能な接続ケーブルは,3極3.5mmミニピン端子が2本あるPC接続用と,4極3.5mmミニピン端子が1本のゲーム機・スマートフォン用の2種類が付属する。どちらのケーブルも,ケーブルの途中にインラインリモコンを備えていた。

PC接続用ケーブル(左)とゲーム機接続用ケーブル(右)
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PC接続用ケーブルのヘッドフォン側端子は,付属の変換プラグアダプタを取り付けて,6.3mm標準端子向けの機器に接続することもできる
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 PC接続用は,端子部分を除いた長さが実測で約259cmと長く,ゲーム機用は同約125cmだ。ケーブルの太さは,ともに実測約3mmと比較的太めで,ヘッドセットから実測で約29cm(端子部除く)のところにインラインリモコンがある。
 ちなみに,PC接続用ケーブルの3極ミニピン端子は,アース部分が緑色(ヘッドフォン出力)とピンク色(マイク入力)に色分けされているので,接続するときに判別しやすい。ヘッドセットと接続する側は,5極のミニピン端子となっている。ロックの仕組みはないものの,しっかり接続されるので使用中に抜けたりすることはなさそうだ。

 インラインリモコンは,サイズが実測約46×21×9mmで,表側には,マイクミュート用のスライドスイッチがあり,表側から向かって左側面には音量調整ダイヤルが,右側面にメディアコントロールボタンがある。裏側には,beyerdynamicのブランド名とロゴがエンボス加工されていた。
 マイクミュート時は,赤い目印が見え,オン時は目印が見えなくなる。メディアコントロールボタンは,利用するアプリケーションによって機能が変わり,電話の着信を受けたり,メディア操作や一時的な再生ミュートを行ったりできる。

インラインリモコンの左側には音量調整ダイヤル(左)が,右には多機能のメディアコントロールボタン(右)がある
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 MMX 300は300gをわずかに切るくらいの重量だが,装着してみると驚くほど軽く感じられ,長時間の装着でもストレスが少ない。

公称重量はケーブル込みで332gであるが,ケーブル抜きの実測では約289gだった
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 重心というかバランスがいいのだろうか。側圧もカチッとした装着感ながら圧迫感を覚えることがなく,よく調整されている。快適だが少しフォーマルなカチッとした服を着たような感じだ。ヘッドバンドから頭頂部の圧迫感も少ない。さすがはプロ向けヘッドフォンの人気ブランドと言って差し支えないだろう。長時間のゲームプレイでMMX 300を使っても,頭が締めつけられて不快に感じる心配はしなくてよさそうだ。

●MMX 300の主なスペック
  • 基本仕様:アナログ接続対応,密閉型エンクロージャ採用
  • 公称本体サイズ:未公開
  • 公称本体重量:約332g(ケーブル含む)
  • 公称ケーブル長:約2.5m(PC接続用ケーブル),約1.2m(スマートフォン接続用ケーブル)
  • 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン×2(PC接続用ケーブル),4極3.5mmミニピン×1(スマートフォン接続用ケーブル)
  • 搭載ボタン/スイッチ:マイクミュートスイッチ,メディアコントロールボタン,音量調整ダイヤルなど
《ヘッドフォン部》
  • スピーカードライバー:ダイナミック型
  • 周波数特性:5Hz〜35kHz
  • インピーダンス:32Ω
  • 出力音圧レベル:96dB
《マイク部》
  • 方式:コンデンサ型,13mm径
  • 周波数特性:30Hz〜18kHz
  • 感度:未公開
  • インピーダンス:1.5kΩ
  • S/N比:未公開
  • 指向性:単一指向性
  • ノイズキャンセリング機能:未公開


フラット+高域の山の周波数特性で音を把握しやすいeスポーツ向け


 ここまでの紹介を踏まえて,MMX 300をテストしていこう。まずはヘッドフォンの特性からだ。繰り返しになるが,MMX 300は,ピュアなアナログヘッドセットであり,計測テストはいつもどおりPCで行っている。サウンド出力および入力はともに,リファレンス機材となるデスクトップPCに組み込んだ「Sound Blaster ZxR」に,MMX 300をアナログ接続して計測をしている。
 テスト自体は,いつもどおり2種類の検証を行う。

  • ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによるヘッドフォン出力の周波数特性計測と試聴
  • マイク入力テスト:マイク入力の周波数特性および位相計測と試聴

 ヘッドフォン出力時の測定対象は,アナログヘッドセットで遅延はないので,出力遅延計測は行わず,周波数特性のみ計測する。具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」で示しているので,そちらを参照してほしい。
 また,マイク入力の測定対象は,周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は,「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」にまとめたとおりだ。

ヘッドフォン出力品質テスト用のリファレンス波形
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 それではまずMMX 300の出力周波数特性を見ていこう。ヘッドフォン出力時の周波数特性は,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したデータそのものと,「データのうち,周波数特性がリファレンス波形とどれくらい異なるか」の差分を取った結果を4Gamer独自ツールで画像化したもので示す。リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は,ブレが少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は,同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。
 差分画像の最上段にある色分けは,以下のような音域を左から順に示したものだ。

  • 重低域:60Hz未満,紺
  • 低域:60〜150Hzあたり,青
  • 中低域:150〜700Hzあたり,水
  • 中域:700Hz〜1.4kHzあたり,緑
  • 中高域:1.4〜4kHzあたり,黄
  • 高域:4〜8kHzあたり,橙
  • 超高域:8kHzより上,赤

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 MMX 300のヘッドフォン出力特性は以下のようになった。

MMX 300の出力特性
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 一目見て,凹凸の少ない滑らかなグラフであることが見て取れよう。測定結果を見ると,60Hz付近に低域の山があり,1.5kHz付近に谷が,低域の山より高い山が8kHz付近にあるドンシャリ型に見える。しかし,差分を取ってみると,60Hz〜2kHz付近は高低はあるものの,割とフラットに近い。強いて言えば,60〜300Hz付近が低域の山だが,見てのとおり,あまりグラフの高低差はない。一方,高域は差分を見ても8kHzが頂点であることは変わらず,全周波数帯域で一番大きな山になっている。
 つまり,ドンシャリというよりは,60Hz〜2kHz付近がフラットに近く,それに8kHzを頂点とする高域の山を加えた「フラット+高域の山」というのが正解だと思う。低域は強くないが弱くもないので,低弱高強とは言えない。小さい中域の谷が1.5kHzにわずかに存在するだけで,高域以外の高低差が非常に少ないのが特徴だ。高域の山は,通常よりやや高い8kHzがピークなので,プレゼンス帯域が耳に痛いということもなさそうだ。

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 この結果を念頭に置いて,ステレオ音楽を試聴してみた。モニターヘッドフォンが基になっているだけあって,各周波数帯域のバランスは非常によく,低弱感はまったくない。低域から中域までの高低差が少ないからだろうか。さらに,高域の山がしっかり存在しているのと,60Hz以下が出過ぎていないので,明るく華やかな印象も受ける。8kHzにピークがあるおかげで,高域のせいで耳が痛くなることもないし,歪みも極小という印象だ。非常にクリーンな音に聞こえる。
 ただ,いわゆるホームオーディオ系の「音を楽しむための色気がある音」ではない。一言で言えば「優秀なモニターヘッドフォンの音」であり,今何が鳴っているか「聞き取る」とか,どういう音が鳴っているのか「聞き分ける」とか,どこでその音が鳴っているのか「捉える」ことを目的としたヘッドフォン出力を実現している。しっかりしたサウンドデバイスにMMX 300を接続して音を聞くと,驚く人も多いのではないだろうか。こうした特性は,音の位置を正確に把握しやすくなるので,eスポーツタイトルに適していると思われる。

 サラウンドゲームタイトルではどうであろう。MMX 300はピュアアナログヘッドセットなので,別途バーチャルサラウンドプロセッサを用意しないといけない。よって,今回も最近レビューしたほかのアナログヘッドセット同様に,サラウンド試聴はEPOSのUSBサウンドデバイスである「GSX 1000 2nd Edition」(以下,GSX 1000 2nd)の7.1chモードを使用した。GSX 1000 2nd側の設定は,以下のとおり。

  • EQプリセット:ニュートラル
  • サウンドの指向性:ニュートラル
  • 残響レベル:無効

 GSX 1000 2ndを選択した理由は,最新世代のバーチャルサラウンドプロセッサーを利用できる優秀なサウンドデバイスのひとつであるためだ。また,PCの画面を切り替えて専用の設定ソフトにアクセスしたりすることなく,機器上で設定変更ができるので,テストに集中できるからというのもある。

 まずは「Fallout 4」を試す。ヘリの前でぐるぐる回ると,少しの移動で定位感が劇的に変わるのは期待どおり。モニターヘッドフォンの面目躍如だろう。そのあとの飛行シーンでは,右前方に定位するヘリのローター音はもちろん,「キーン」という効果音が左から鳴っているのを捉えることができる。音楽試聴に比べると,サラウンドゲームのほうが音楽試聴時よりも少々低弱高強に聞こえる。着陸時の効果音もしっかり重低域まで再生されるが,常時聞こえているエンジン音などと同様,前に出てくる感じにはならず,やや控えめな音量で再生される。
 平均音圧レベルが低いFallout 4だが,GSX 1000 2ndの音量を最大(99)にすれば,全体の音量が足りないと感じることはなかった。「音がでかい」まではいかないが,MMX 300は,多くのゲーマーにとって必要十分な音量で再生できると言ってよいと思う。

 続いては「Project CARS 2」でテストした。前後にいる敵車のエンジン音は簡単に聞き分けられ,かなり細かい独立した音の動きもしっかり捉えることができる。敵車とのすれ違いによるエンジン音の移動も把握しやすい。一方,ワイパー音や縁石に乗り上げたときの低音は聞き取れるが,やはり控えめだ。ただ,むしろワイパー音は,あまりドッカンドッカン低音が出るとプレイしにくいだろうから,このバランスは好ましい。
 本作の甲高い効果音は,音量を上げると多くのヘッドセットで耳に付くものだ。しかしMMX 300は,高域のピークが8kHzだからか,大きめの音量でプレイしてもとくにうるさいとか,耳に痛いとは感じない。非常にプレイしやすいはずだ。

 PC版「MONSTER HUNTER: WORLD」(以下,MHW)では,村の中を歩き回って自分で操作したときの聞こえ方を確認している。
 本作では,わずかな移動でも環境音がどんどん変わる。とくに印象に残ったのは,距離感が音でとても捉えやすい点だ。遠くの岩場に波がぶつかる音が,確かに遠くから聞こえた。バーチャルサラウンドプロセッサの距離感までしっかり伝えられるヘッドセットということだ。
 一方,足音や重低音を含んだ効果音は,低い帯域までしっかり聞こえるのだが,これまたほどほどの音量で再生されるので,低音のエネルギーが強すぎてプレイの邪魔になることはない。とくに,足音は強すぎず,それでいて低域含めしっかり聞こえるので,足音が重要になるシーンで聞き取れないということはないと思う。

 PS4版MHWでも試してみた。MMX 300はアナログヘッドセットなので,ゲーム機接続用ケーブルに差し替えて,PS4のゲームパッドに接続して試す。なお,PS5と異なり,PS4はシステム側でバーチャルサラウンドプロセッサをサポートしていないので,本作のようにゲーム内で独自にサラウンド対応している場合のみ,これを有効にすることでバーチャルサラウンドサウンド再生が可能だ。
 またPS4版MHWでは,オプションでダイナミックレンジを3段階に切り替える機能があるので,今回は,一番音量差が少ない「ナローレンジ」に設定した。これにより平均音圧レベル≒全体の音量はやや上がる。また,ヘッドセットの音量は,システム設定で最大にしている。

 この状態でPC版と同じような動きをしてみたが,結論から言うと,ほかのヘッドセットで時々経験した,前後のサラウンド定位がひっくり返って聞こえるとか,定位感が甘くなるという聞こえ方はしなかった。きれいにサラウンドで聞こえて,定位の曖昧さはない。水車の前でぐるぐる回っても,PC版と遜色ないサラウンド効果が得られる。
 距離感は,さすがにPC版――というかGSX1000 2nd――とは聞こえ方が違い,「もう少し近くで鳴っているな」と思ったが,これはナローレンジで音量を圧縮しているからかもしれない。足音は,PC版よりわずかに軽い印象だが,捉えにくいということはない。MMX 300をゲーム機で使用するのは「アリ」で,素晴らしいサウンド体験ができると思う。


本格的なコンデンサマイクのサウンドで,配信用途までカバーできる


マイク入力品質テスト用のリファレンス波形
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 マイクの入力品質評価に移ろう。こちらも先述したとおり,Sound Blaster ZxRにMMX 300のマイク端子を接続して計測を行っている。入力レベルは高いので,Windows側でのマイクブーストは不要だった。今回の設定は「Mic Input = 81」,「Mic Boost = 0dB」にした。

 結果は以下のとおり。

MMX 300のマイク入力特性
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 65Hzあたりを頂点とした低域の山が一番高く,1.3kHzあたりが一番低い谷となり,高域は判別しにくいが6〜10kHzあたりが高い。低強高弱型のあまり激しくないドンシャリ特性と言える。筆者は初め,600〜1.3kHzあたりは山と思っていたが,よくよく見ると低域から高域に向けてなだらかに下がっている途中,400〜750Hz付近にイレギュラーな凹みがあるというほうが正しいと思う。高域も確かに18kHzくらいまで存在するので,30〜18kHzという公称特性に偽りなしだ。
 なお,位相は完璧でモノラルマイクと思われる。

 自分の声を録音して聞いてみると,非常に広い帯域でバランスよく声を集音しているのが分かる。入力レベルの設定は重要だが,適切に行えば歪みの少ない「本格的なコンデンサマイクのサウンド」で集音できるわけだ。
 低域の山がわずかに高いので,声の量感も豊かで,高域はノイジーにならず,とてもスムーズに聞こえる。アナログヘッドセットらしい広帯域入力で超高域まできちんと集音するので,これならゲームプレイのみならず,実況などの配信用途でも十分使えそうだ。

 ノイズも,Mic Boostを低め(今回は0dB)に設定しておけば,結構少ない。超高域まで集音するので,若干ヒスノイズは乗るが,大音量で再生しないと分からないし,普通の音量だと耳を澄まさないと聞こえない程度だ。低周波のルームノイズはそもそも気にならなかった。パッシブノイズリダクション(マイクの指向性などでノイズを低減するアナログな手法)としては十分及第点であろう。
 ただ,マイクはなるべく口元に寄せて設置した場合の話なので,その点は注意してほしい。筆者のヘッドセットレビューでいつも書いているとおり,マイクは下唇の少し下,なるべく口元に寄せるのが鉄則だ。

 蛇足だが,beyerdynamicは,プロ用に数多くの単体マイク製品もリリースしている。筆者は,音響特性の計測に使うbeyerdynamicの「MM 1」を所有しており,一時期はかなり多用していた。MMX 300のマイク部分にも,プロ用マイク製品のノウハウが活かされているのだろう。落ち着いた音で集音され,筆者は結構好みの音質傾向だ。


モニターヘッドフォンとゲームの相性の良さを実感する逸品


 MMX 300を試してみて,つくづくゲームとモニターヘッドフォンは相性がいいと思う。ゲームでは「音を聞き取る」「聞き分ける」「捉える」ことが求められるが,これはすべて,モニターヘッドフォンが得意としていることだ。加えて,MMX 300は歪みも少なく,非常にクリーンかつバランス良く音を再生してくれる。マイクも,いわれないとヘッドセットの音だとは想像し辛い品質の集音が期待できる。機会があれば試して見るといい。
 ただし,MMX 300を使うときは,良いサウンドデバイスも使ってほしい。

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beyerdynamicのMMX 300製品情報ページ

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