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[GDC 2018]SIEのPlayStationブースで,次世代型e-Sports観戦システム「EDS」を体験してみた
そこでは,Unreal Engine 4(以下,
一方で,「CryENGINE」を有するCrytekは,2017年に引き続いてブースを出展していなかった。Crytekは,経済的に苦しい状況が続いているという噂であるが,それを裏付けるといったところか。
一方,Qualcommブースは,新型のVR HMD開発キットを展示して盛り上がっていたが(関連記事),AMDはブース出展なし。ARMや,PowerVRを有するImagination Technologies(以下,Imagination)も,既存製品の展示を行うのみであった。
今回,Imaginationブースに立ち寄ったとき,顔見知りの担当者に「今年のGDCにおけるゲームグラフィックスは,レイトレーシングが話題の中心だね」と話しかけたところ,「我々の取り組みは,時代を先取りしすぎた」と笑っていた。
SIEの先端技術チームが手がける,VR時代のe-Sports観戦システム「EDS」
Expoの概況はこれくらいにして,本題に入ろう。
Sony Interactive Entertainment(以下,SIE)のブースは,昨年同様,展示会場の南ホール入口ほぼ正面あたりという一等地にあり,多くの来場者で賑わっていた。
今回のSIEブースにおける展示で,最も注目すべきものは,PlayStation関連の先端技術を開発するチーム「Magic Lab」が開発した「Exploring Dynamic Spectating」(EDS)という技術だ。
現在のe-Sports観戦は,ゲームをプレイしているプレイヤーが見ている画面を,そのままストリーミング出力したものを観戦用とするものが多い。これはこれで楽しい体験ではあるが,3Dグラフィックスで構築されたゲーム世界なら,プロセッサの演算パワーとクラウド技術などを組み合わせて,もっと新しい体験が提供できるはずだ。ということで,研究開発中なのがEDSなのである。
とくに,「他人がプレイしているゲーム」の観戦において,最も難しいのがVRゲームだ。プレイヤーが見ている視界をディスプレイ出力して見せる事例は多いが,一人称視点の映像となることもあり,いまいちVRの楽しさが伝わりづらい。「それならば,観戦者もVR HMDを被って,プレイヤーの見ているものと同じ視界を見せるのはどうか」と思う人がいるかもしれないが,どうしても観戦者が予期しない動きが発生するので,それがVR酔いを引き起こしやすいのだ。
そこで,プレイヤーがプレイしているVRゲームの中に,ゲームには一切干渉できない「ゴースト」として,観戦者が入り込んで自由に観戦できるようにしようというのが,EDSなのである。
SIEブースでは,フリスビーのような円盤を投げてキャッチするミニゲームのプレイを,来場者が3Dテレビや裸眼立体視ディスプレイ,あるいは別のPlayStation VR(以下,PS VR)を通して,自由に観戦できるようになっていた。
VRの場合,周囲の人からは,VR HMDを被った人が,両手に持ったコントローラを振り回して何かをやっている様子が見えるだけなので,滑稽さがもたらす面白さはあるものの,何をやっているのかは伝わりづらい。
そこでEDSを利用すると,観戦者は,ゲーム世界の中でプレイヤーの動きを反映したキャラクターが動き回っている様子を見られるので,プレイヤーが何をしているのか,その状況を容易に理解できるのだ。
そのうえ,観戦者側もゲームパッドを操作したり,VR HMDを被っているなら,自分の体で動いたりして,ゲーム世界を自由に動き回って観戦できる。プレイヤーのすぐそばにまで接近して見ることもできるし,敵キャラクター側の視点から見ることだってできるのだ。
あくまでも技術デモであったため,今回のEDSによるデモに使われたゲーム自体は極めてシンプルだったが,これがサッカーゲームなどであれば,ボールをドリブルする選手の後ろをついて回ったり,ゴールポスト真横に立ってみたりもできるだろう。あるいは,両者が向かい合った状態を真横から見る格闘ゲームの観戦なら,背景で腕を振り上げているモブキャラの視点で楽しむことだって,EDSなら可能となるかもしれない。
現在のソリューションは,視聴する側のハードウェアとして,高性能なゲーム機やPCが必要となるそうだが,サーバー側でゲーム世界を管理しているタイプのオンラインゲームであれば,観戦者が見る映像をサーバー側で描画して,ストリーミング配信することも可能であるという。そうなれば,スマートフォン程度の性能でも,EDSでの観戦は実現できそうだ。
EDSの技術が実用化して普及すると,いわゆる「ゲーム実況」も,これまでとは違った実況や楽しみかたができそうで,夢は広がる。今後の発展と実用化に期待したい。
SIEのMagic Lab公式Webページ
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