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Tobiiの視線追跡技術を搭載した「Vive」用ゲームやフォヴィエイテッドレンダリングの技術デモを公開
Tobiiの製品管理部門副社長 ヨーキム・カーレン(Joakim Karlen)氏によると,視線の情報は同社が2016年に発売したPC用デバイス「Tobii Eye Tracker 4C」に内蔵されているアイトラッキング専用チップ「EyeChip」によって処理されているという(関連記事)。EyeChipはViveのスクリーンとレンズの間にあるスペースに収まる程度の小さなサイズだ。
今回のSVVR 2017で公開されたのは,Teotl Studiosが2016年にリリースしたアドベンチャーゲーム「The Solus Project」を実際に楽しめる技術デモだった。VRゲームでは圧倒的に利用頻度が高い,ポインターで指した場所にテレポートするという移動方法はそのままに,コントローラではなく視線で狙いを付けられるようになっていた。Tobiiのテクノロジーが遺憾なく発揮されており,地面に落ちているオブジェクトも見るだけで拾い上げることができる。
なかでも興味深かったのは,キャラクターが左腕に装着している小型機器のコンソールが,視線を合わせていないときにぼやけるという演出だ。これは,プレイヤーが焦点を合わせた部分以外をぼやけさせることで,被写界深度(Depth of Field)を表現する「フォヴィエイテッドレンダリング(Foviated Rendering)」という技術である。
現在,この記事を読んでいる人もモニターやスマートフォンの画面の周囲がぼやけているのを認識できるだろう。これをレンダリングで表現すると,ユーザーが見ていない“ムダな景色”の解像度を落として,映像のレンダリング処理にかかる負担を軽減させることが可能になる。当然,焦点が合っている範囲の解像度を高める形で利用することも可能だ。
Tobiiのブースでは,ヨーロッパの城をモチーフにした建物の中庭が舞台になっているフォヴィエイテッドレンダリングの技術デモも見せてもらった。そのトラッキングスピードは非常に俊敏で,筆者が視線を動かしても瞬時に焦点が合うため,実際にフォヴィエイテッドレンダリングが有効なのかが分かりづらかったほどだ。
今後,VRテクノロジーが向上して映像が精細になっていくにつれて,フォヴィエイテッドレンダリングによる負担軽減が大きな役割を果たすことは間違いないだろう。
また,前出のカーレン氏は「すでに多くのハードウェアベンダーが,我々のテクノロジーに興味を示している」と語る。今後,HTCやLG以外のメーカーがSteam VR対応HMDに参入する可能性を匂わせつつ,「早ければ1年後には製品化され,市場に出回っているはずです」と明かしてくれた。
それがViveの次世代モデルなのか,それともまったく新しいVR HDMなのかは知る由もないが,Oculus VRのチーフサイエンティスト マイケル・アブラッシュ(Michael Abrash)氏も注目するTobiiの技術や動向に期待したい(関連記事)。
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